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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16J |
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管理番号 | 1011979 |
審判番号 | 審判1997-2253 |
総通号数 | 10 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-08-01 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1997-02-12 |
確定日 | 2000-01-26 |
事件の表示 | 平成5年特許願第350993号「メカニカルシールおよび該メカニカルシールを備えたポンプ装置」拒絶査定に対する審判事件(平成7年8月1日出願公開、特開平7-198042)について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成5年12月28日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成7年10月17日付け及び平成9年3月14日付けの各手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「回転軸と共に回転する回転密封要素と、 この回転密封要素の密封端面に摺接される密封端面をもち、かつカーボン材で構成された遊動環と該遊動環に並置された従動環で構成される静止密封要素と、 上記遊動環の密封端面が回転密封要素の密封端面に弾性的に接触するように該遊動環に上記従動環を介してばね力を付勢するばね機構と、 上記遊動環を保持させるために上記遊動環の内周側に配置され且つ上記従動環から一体に連接された筒状突出部と、 を備えたことを特徴とするメカニカルシール。」 2.引用例 これに対し、原査定の拒絶の理由に引用した実願平1-2614号(実開平2-94972号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、ポンプなどの機体の回転軸部をメカニカルシールにより軸封してなる軸封装置に関し、 回転軸22と共に回転する回転側シール部37と、この回転側シール部37の密封端面に摺接される密封端面をもつシールリング32と該シールリング32に並置されたリテーナ35で構成される静止側シール部31と、上記シールリング32の密封端面が回転側シール部37の密封端面に弾性的に接触するように該シールリング32に上記リテーナを介してばね力を付勢するコイルスプリング36とを備えていること及び 第1図には、リテーナ35のシールリング32側端面には、該リテーナ35に一体的に連接され該シールリング32の外周側に配置された突出部が記載されている。 3.対比・判断 本願発明と上記引用例に記載された発明とを対比すると、引用例に記載の「回転側シール部37」は本願発明の「回転密封要素」に、同様に、「シールリング32」は「遊動環」に、「リテーナ35」は「従動環」に、「静止側シール部31」は「静止密封要素」に、「コイルスプリング36」は「ばね機構」にそれぞれ相当し、また、引用例に記載のシールリング32は半径方向移動に対しての何らかの保持する構成が必要なものであり、そして、リテーナ35に一体的に連接されシールリング32の外周側に配置された突出部が、該シールリング32を保持するものであることは当業者がみれば明らかなこと及び、第1図は軸封装置の断面図であるから、該突出部は筒状に形成されているものとみるべきであることより、 両者は、メカニカルシールにおいて、回転軸と共に回転する回転密封要素と、この回転密封要素の密封端面に摺接される密封端面をもつ遊動環と該遊動環に並置された従動環で構成される静止密封要素と、上記遊動環の密封端面が回転密封要素の密封端面に弾性的に接触するように該遊動環に上記従動環を介してばね力を付勢するばね機構と、上記遊動環を保持させるために上記従動環から一体に連接された筒状突出部と、を備えている点で一致し、以下の各点において相違する。 a.遊動環が、本願発明では、カーボン材で構成されているのに対し、引用例に記載された発明では、その材質が特定されていない点。 b.遊動環を保持させるために従動環から一体に連接された筒状突出部が、本願発明では、該遊動環の内周側に配置されているのに対し、引用例に記載された発明では、該遊動環の外周側に配置されている点。 そこで、上記各相違点について検討すると、 ・相違点aについて メカニカルシールにおいて、その遊動環をカーボン材で構成することは周知の技術(必要なら、実公昭59-26128号公報、実願昭58-2596号(実開昭59-108867号)のマイクロフィルム及び特開平4-145267号公報参照。)であること、また、引用例に記載された遊動環をカーボン材で構成することを妨げる要因もないことより、引用例に記載された遊動環をカーボン材で構成することは、当業者にとって格別な困難性は認められない。 ・相違点bについて 引用例に記載の筒状突出部と本願発明の筒状突出部とは、その遊動環を保持する作用において格別な差異があるものとは認められず、また、他に、該筒状突出部を該遊動環の内周側に配置することによる格別な作用効果も認められないことより、該筒状突出部を該遊動環の内周側に配置するか外周側に配置するかは、当業者が必要に応じて選択し得る設計的事項と認められる。したがって、引用例に記載された遊動環を保持させるために従動環から一体に連接された筒状突出部の配置を、該遊動環の内周側に変更し、上記相違点bにおける本願発明のような構成とすることは、当業者にとって格別な困難性は認められない。 そして、本願発明が、上記各相違点における構成を備えることによる効果も、上記引用例及び上記周知の技術から当業者が容易に予測できる程度のものである。 なお、審判請求人は、審判請求理由補充書において、『筒状突起部(引用例)が、上記本願請求項1に係る発明における「遊動環の外周面と静止リテーナの内周面との間の流体通路となる隙間」内に位置することになって、この隙間を狭めてしまい、本願発明が解決しようとする課題をそのまま有することになって、上記本願請求項1に係る発明の如き効果を奏することができない』旨の主張をしているが、請求項1には、上記「遊動環の外周面と静止リテーナの内周面との間の流体通路となる隙間」に係る構成についての記載はなく、上記主張は、本願発明に限定のない構成に基づくものであるから、採用することはできない。 また、同審判請求理由補充書において、さらに『本願請求項1に係る発明にあっても、遊動環をセラミック等の脆性材料で構成すると、この内周面側に筒状突出部が位置するため、この遊動環が引張り応力を受けて破損してしまう恐れがある。そこで、本願請求項1に係る発明は、遊動環をヤング率の低いカーボン材で構成することによってこの問題を解消し、その目的に沿った効果を奏するようにしたものである』旨の主張をしているが、上記遊動環が引張り応力を受けるかどうかは、請求人も言及しているように、上記遊動環と上記筒状突出部が連接されている従動環との熱膨張率の関係により決まるものであるが、請求項1には、該従動環の材質についての記載はなく、上記遊動環と上記従動環の熱膨張率がどのような関係にあるのかは特定されるものではないことより、この主張も、本願発明に限定のない構成に基づくものであるから、採用することはできない。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、上記引用例に記載された発明及び上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1999-11-11 |
結審通知日 | 1999-12-03 |
審決日 | 1999-12-08 |
出願番号 | 特願平5-350993 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F16J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 一ノ瀬 覚、千葉 成就 |
特許庁審判長 |
佐藤 洋 |
特許庁審判官 |
鳥居 稔 和田 雄二 |
発明の名称 | メカニカルシールおよび該メカニカルシールを備えたポンプ装置 |
代理人 | 堀田 信太郎 |
代理人 | 渡邊 勇 |