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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) H01R
管理番号 1012018
審判番号 審判1999-35055  
総通号数 10 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-08-05 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-02-02 
確定日 1999-01-04 
事件の表示 上記当事者間の特許第2042038号発明「ICソケット」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2042038号発明の特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯・本件発明
本件特許第2042038号発明(平成5年1月12日出願、平成7年6月5日出願公告、平成8年4月9日設定登録。以下「本件特許発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、次のとおりのものと認められる。
「IC搭載台の対向する二辺に沿い多数の隔壁を設け、該各隔壁間の各スリットにIC搭載台の二辺に沿い配設された多数のコンタクトの夫々を介入しその接触片部を隔壁内面から内方へ突出することにより、各リードに対して各コンタクトを整列し上記IC搭載台に搭載されるICパッケージの各リードに加圧接触するようにしたICソケットにおいて、上記ICパッケージの各リード先端面を上記各スリットを形成する隣接する各一対の隔壁の内壁面にて規制し、各リードの位置決めを図る構成としたことを特徴とするICソケット。」
なお、特許請求の範囲の請求項1には「上記各リード」と記載されているが、これは「各リード」の誤記と認め、本件特許発明を上記のように認定した。
2.請求人の主張
これに対して、請求人は、本件発明の特許を無効とする、との審決を求め、その理由として、本件発明は、本件出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は無効とされるべきであると主張し、証拠として甲第1号証及び甲第2号証を提出している。
3.被請求人の主張
一方、被請求人は、本件発明は、甲第1号証及び甲第2号証から当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件特許は無効とされるべきものではない旨主張している。
4.甲第1号証及び甲第2号証
まず、甲第1号証(実願平3-47582号(実開平5-1244号)のCD-ROM)には、ICソケットに関するものであって、「図7及び図8に示す第3実施例は、二辺にリード端子を有するSOP(Small Outline Package)型のICパッケージを載置する例で、突条ガイド12及び基台13はソケット本体10と一体に形成されている。突条ガイド12は、IC搭載領域の四隅に形成されていて、各辺のリード端子と、隣接する辺のパッケージ面は位置規制面12aに接触するようになっている。」(段落【0011】)、「二辺にリード端子を有するパッケージは、リード端子の先端と、隣接するパッケージ面とが突条ガイドの位置規制面に接触して位置決めされる。」(段落【0013】)とそれぞれ記載されている。また、第7図及び第8図には、IC収容部11のICパッケージPを搭載する基板の対向する二辺に沿い多数の隔壁を設け、該各隔壁間の各スリットに基板の二辺に沿い配設された多数のコンタクトピンCの夫々を介入し、その接触片部を隔壁の内面から内方へ突出することにより、各リード端子Rに対して各コンタクトピンCを整列し、上記基板に搭載されるICパッケージPの各リード端子Rに加圧接触しうるように構成し、かつ、上記ICパッケージPの各辺のリード端子の先端を上記各スリットを形成する隔壁の位置規制面12aにて規制し、各リード端子Rの位置決めを図りうる構成としたICソケットが示されている。
次に、甲第2号証(特開平4-215279号公報)には、ICチップ用のソケットに関するものであって、「ICチップ4は、図2において左右方向の位置決めが図1におけると同様に正確になされる。従って、ベース1のコンタクトガイド部1cの間隙1dに挿通されたコンタクトのリード抑え部の先端部3eに対し、ICチップ4のリード4aの先端部4bが図2の左右方向の狂いがなく正確に対向するようになる。」(第3頁右欄段落【0023】)と記載されている。また、第2図には、ICチップ用のソケットにおいて、ICチップのリードの幅が一対のコンタクトガイド部による間隙の幅よりも大きく、かつ、リードの両側部か上記一対のコンタクトガイド部に被さるように位置決め配置されたものが示されている。
5.対比
本件特許発明と甲第1号証に記載のものとを比較すると、甲第1号証に記載のものにおける「ICパッケージPを搭載する基板」が本件特許発明における「IC搭載台」に相当し、以下同様に「コンタクトピン」が「コンタクト」に、「リード端子」が「リード」に、「リード端子の先端」が「リード先端面」にそれぞれ相当している。
したがって、両者は、
「IC搭載台の対向する二辺に沿い多数の隔壁を設け、該各隔壁間の各スリットにIC搭載台の二辺に沿い配設された多数のコンタクトの夫々を介入しその接触片部を隔壁内面から内方へ突出することにより、各リードに対して各コンタクトを整列し上記IC搭載台に搭載されるICパッケージの各リードに加圧接触するようにしたICソケットにおいて、上記ICパッケージの各リード先端面を上記各スリットを形成する隔壁の内壁面にて規制し、各リードの位置決めを図る構成としたことを特徴とするICソケット。」
である点で一致し、
各リード先端面を各スリットを形成する隔壁の内壁面にて規制する際に、本件特許発明が、「隣接する各一対の隔壁」で行うものであるのに対し、甲第1号証に記載のものは、そのような構成が明記されていない点で相違する。
6.当審の判断
上記の相違点について検討する。
甲第2号証には、ICチップ用のソケット(ICソケットに相当)において、ICチップ(ICパッケージに相当)のリードの幅が一対のコンタクトガイド部(隔壁に相当)による間隙(スリットに相当)の幅よりも大きく、かつ、リードの両側部か上記一対のコンタクトガイト部に被さるように位置決め配置されたものが記載されている。
そして、甲第1号証及び甲第2号証に記載のものは、いずれもICソケットという同一の技術分野に属するものであり、かつ、甲第2号証に記載の技術を甲第1号証に記載のものに適用することを阻害する格別の要因も何等認められないから、甲第1号証に記載のものに、上記甲第2号証に記載の寸法及び配置の関係を適用して、各リード先端面を各スリットを形成する隣接する各一対の隔壁の内壁面にて規制するように構成することは当業者が容易になしうる程度のことである。
なお、被請求人は、答弁書において、本件特許発明は、各リードのほぼ中心部とコンタクトとの接触を確保することができ、両者の確実な接触が可能になるという格別な効果を奏するものである旨主張している。
しかし、上記の効果は、甲第2号証に記載のものが既に有している効果と同様のものであり、上記甲第2号証に記載の技術を甲第1号証に記載のものに適用した場合に当業者が当然予測しうる範囲のものにすぎない。
7.むすび
したがって、本件特許発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-10-15 
結審通知日 1999-10-26 
審決日 1999-10-28 
出願番号 特願平5-19635
審決分類 P 1 112・ 121- Z (H01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 須原 宏光祖父江 栄一  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 長崎 洋一
藤本 信男
登録日 1996-04-09 
登録番号 特許第2042038号(P2042038)
発明の名称 ICソケット  
代理人 山本 光太郎  
代理人 阿部 和夫  
代理人 谷 義一  
代理人 池田 知美  
代理人 升永 英俊  
代理人 伊藤 高英  

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