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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 D04H |
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管理番号 | 1012028 |
審判番号 | 審判1996-15254 |
総通号数 | 10 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1989-01-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1996-09-09 |
確定日 | 1999-10-26 |
事件の表示 | 昭和63年特許願第76661号「不織布及びその製造方法」拒絶査定に対する審判事件(平成1年1月24日出願公開、特開平1-20371)について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯、本願発明 本願は、昭和63年3月31日(パリ条約による優先権主張1987年3月31日、アメリカ合衆国)の出願であって、その第1番目の発明(以下、これを「本件発明」という。)は、平成3年3月15日付けで補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「(1)ほぼ共通方向に間隙を置いて延びる複数本の直線ヤーンと、縦方向全長にわたってこれら各ヤーンを相互に結合し且つ少なくとも部分的にこれら各ヤーンを包み込んでいる重合体マトリックスとを有する不織布において、重合体マトリックス(52)が、ヤーン(10)に対して横方向に片寄った配列の不織布を貫通する孔隙(45)を有することを特徴とする不織布。」 2.引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由において引用した特公昭48-41786号公報(昭和48年12月8日出願公告、以下、「引用例」という。)には、製紙用ドライヤーフェルトの製造方法に係る発明が記載されており、そこには、ドライヤーフェルトとして、フェルト進行方向に多数の糸条を配列し、これを繊維ウエブ層に介在させてニードルパンチを施し、ウエブ繊維を糸条と結合させ、さらに合成樹脂によって結合を固定させ、該合成樹脂のキュアリング時にフェルト面に無数のピンホールを形成固定したもので、長さ、幅方向の伸縮が極めて少なく而も高度の通気性を有して表面が柔軟で平滑なものが記載され(第2欄21〜30行の記載参照。)、さらに、下記の点が、図面とともに示されている。 a.糸条2は、ヤーンガイド8,8´によってフェルト幅方向に平行且つ均一に分散され張力が調整される(第3欄第22〜24行)。 b.加熱シリンダー19上に導入されたフェルトイは、加熱シリンダー19上の針23に突き刺され加熱により徐徐にキュアリングされながら、ピンホール24を形成、固定しつつ熱風吹出しロール20に接近する。熱風吹出しロール20の表面に形成された細孔25は加熱シリンダー19上の針と嵌合し、フェルトイは両ローラ19,20によってプレスされて滑面に仕上げられるとともにピンホール24の形状は固定する(第4欄第6〜15行)。 c.糸条2を介在させる場合フェルトイを加熱シリンダー19上に導入するときに糸条2を第3図ロの如く相隣接する2本の針23の間に配置することが望ましい(第4欄第29〜32行)。 3.対比 そこで、本件発明と引用例に記載された発明とを対比すると、本件発明の「不織布」は特に抄紙機用の抄造ベルトに用いられるものであり(明細書第5頁第13〜16行)、引用例に記載された「フェルト」は、本件発明の「不織布」に相当し、引用例においてフェルト進行方向に配列される「多数の糸条」は、平行且つ均一に分散されること、および第6図の図示から、ほぼ共通方向に間隔を置いて延びるように配列されることは明らかであり、本件発明の「複数本の直線ヤーン」に相当し、引用例に記載された「合成樹脂」は、結合したウエブ繊維と糸条とをさらに結合するものであり、各糸条は、ウエブ繊維および合成樹脂により縦方向全長にわたって相互に結合され、前記ウエブ繊維と合成樹脂により包み込まれていることは第1、3、4、6図の図示から明らかであり、さらに、引用例に記載された「ピンホール」は、糸条に対して横方向に片寄って配列され、フェルトを貫通していることは、上記b、cの記載および第2、3、6図の図示から明らかであり、本件発明の「孔隙」に相当する。 したがって、本件発明と引用例に記載された発明とは、「ほぼ共通方向に間隙を置いて延びる複数本の直線ヤーンと、縦方向全長にわたってこれら各ヤーンを相互に結合し且つ少なくとも部分的にこれらヤーンを包み込んでいる部材とを有する不織布において、ヤーンを結合し包み込んでいる部材が、ヤーンに対して横方向に片寄った配列の不織布を貫通する孔隙を有する不織布。」である点で、一致しており、本件発明において、各ヤーンを包み込み結合している部材を「重合体マトリックス」と称している点で、引用例に記載されたものと比べて一応の相違がある。 4.当審の判断 そこで、前記相違点について検討する。 まず、本件発明の「重合体マトリックス」について検討すると、一般に、異なる2以上の部材からなるいわゆる複合材の分野において、一方の部材が、他方の部材を分散させている、すなわち、包み込んでいるとき、分散させている方の部材、すなわち包み込んでいる方の部材が「マトリックス相」あるいは「マトリックス材」と呼ばれ、本件発明でいう、「重合体マトリックス」は、その意味で、各ヤーンを包み込んでいる部材すなわち、マトリックス材が重合体からなる事を意味するものといえる。また、「或いは、発泡体、繊維などをマトリックス材料それ自体の内部に設けることも可能である。」(明細書第23頁第3〜5行)と記載されているように、マトリックス中に繊維を存在させることも可能である。 そして、引用例に記載された合成樹脂は、本件発明の実施例であるポリアミドが例示されているように本件発明でいう重合体であり、ウエブ繊維とともに多数の糸条を包み込んでマトリックスを構成しているといえる。 したがって、引用例に記載された発明も本件発明でいう重合体マトリックスを有するものであり、本件発明は、引用例に記載された発明と実質的に同一であるとするのが相当である。 5.むすび 以上のとおりであるから、本件発明は、引用例に記載された発明と同一のものであり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないので、請求項2ないし4に記載された発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1997-08-25 |
結審通知日 | 1997-09-05 |
審決日 | 1997-09-18 |
出願番号 | 特願昭63-76661 |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(D04H)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松縄 正登 |
特許庁審判長 |
玉城 信一 |
特許庁審判官 |
佐藤 雪枝 熊谷 繁 |
発明の名称 | 不織布及びその製造方法 |
代理人 | 田代 烝治 |