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審決分類 審判 全部無効 1項2号公然実施 無効としない A61K
管理番号 1012029
審判番号 審判1997-6321  
総通号数 10 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1985-12-23 
種別 無効の審決 
審判請求日 1997-04-17 
確定日 1999-11-18 
事件の表示 上記当事者間の特許第1721544号発明「医薬組成物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 I.本件特許1721544号は、昭和59年6月7日に出願され、平成4年12月24日に設定登録されたものであって、その発明の要旨は、明細書の記載から見て、その特許請求の範囲に記載されたとおりの、
「日本山人参を有効成分とすることを特徴とする肝機能改善用及び抗脂血症用医薬組成物」(以下、「本件発明」という。)にあるものと認める。
II.これに対して請求人は、甲第2号証(本件特許発明の出願人である高木孝一が代表者であった株式会社アンゼリカ及び株式会社日本山人参研究所が、平成8年5月24日、審判請求人を債務者として福岡地裁に申請した仮処分命令申立書)、甲第3号証(「神の草 日本山人参」、水野修一著、平成6年12月10日株式会社東洋医学舎発行、第90頁及び91頁)、甲第4号証(株式会社アンゼリカの登記簿謄本)、甲第5号証(株式会社日本山人参研究所の登記簿謄本)、甲第6号証(「昭和58年受託研究報告書日本山人参の栽培に関する基礎的研究」宮崎大学農学部志田庄二郎著、昭和59年3月発行)、甲第7号証(農事組合法人日本山人参宮崎農業生産組合の登記簿謄本)、甲第8号証(「薬用人参」薬用日本山人参事業協同組合発行)、甲第9号証(日本健康食品合資会社の登記簿謄本)、第10号証(日本山人参販売合資会社の登記簿謄本)、第11号証(平成8年10年14日付の福岡地方裁判所の決定書“平成8年(ヨ)第358号製造禁止等仮処分命令申立事件”)を提出し、本件発明は、その出願前に公然と実施をされた発明であるから、特許法第29条第1項第2号の規定に該当し、特許受けることができないものであるから、特許法第123条第1項2号の規定により無効とすべきである旨の主張をしている。
III.そこで、本件発明が、その出願前から公然と実施されていたかを、以下に検討する。
甲第2号証には、本件発明の出願人高木孝一が代表者であった株式会社アンゼリカが、「一般消費者向けの『純正日本山人参』を製造し、これを昭和57年から全国の卸、小売店を通じて需要者たる一般消費者に向けて販売していた」旨が記載されており、甲第3号証には、「日本山人参の栽培から製品化まで」のタイトルの下にその製造方法が出願人高木孝一の写真と共に記載されており、また、甲第4号証には、昭和57年7月22日に飛鳥食品会社が設立され、現在、株式会社アンゼリカに商号変更されており、設立当初から本件特許の出願人である高木孝一が代表取締役であったことが記載され、甲第5号証には、株式会社日本山人参研究所の設立当初から本件特許の出願人である高木孝一が代表取締役であったことが記載されている。
つまり、甲第2〜5号証の記載から、本件発明の出願前、本件発明の出願人である高木孝一が、飛鳥食品株式会社を設立し、当該会社によって、『純正日本山人参』なる商品を、製造、販売していたことが認められるものの、日本山人参が肝機能改善及び抗高脂血症用に利用され、またはその作用を有することは示されていない。
甲第6号証には、▲1▼「日本山人参」という作物名が、昭和57年12月、農事組合法人日本山人参農業生産組合によって名付けられたこと、▲2▼日本山人参が「およそ10年前」より薬用植物として栽培されていると言われていること、▲3▼日本山人参宮崎農業生産組合では、健康食品の原料として、また漢方薬の原料を目指して、研究、栽培、増殖普及が図れていること、▲4▼「本研究が農事組合法人日本山人参宮崎農業生産組合の委託を受けて実施された」ものである旨の記載があるものの、日本山人参が肝機能改善及び抗高脂血症用に利用されていたこと又は、その作用を有することを示す記載はない。
甲第7号証は、甲第6号証に記載された農事組合法人日本山人参宮崎農業生産組合の登記簿謄本であって、昭和57年12月23日に設立されたことが示されているものにすぎない。
また、甲第8号証には、前記飛鳥食品株式会社及び日本健康食品合資会社が薬用日本山人蔘事業協同組合の組合員であること、日本山人参は、前記飛鳥食品株式会社の工場に出荷され、そこで健康食品に加工され、日本健康食品合資会社と日本美健合資会社により市販されていることが記載されており、甲第9号証には、日本健康食品合資会社が昭和57年11月25日に設立され、その目的が、1.山人参健康食品生産加工並びに製造、2.山人参健康食品の販売、3.前各号に付帯する一切の業務であること、甲第10号証には、日本山人参販売合資会社が昭和58年8月8日に設立され、その目的が、1.健康食品、日本山人参の販売、2.上記に付帯する一切の事業であることが記載されている。
つまり、甲第8〜10号証には、健康食品としての日本山人参を、本件特許の出願前に、製造、販売していたことを示唆するものであるが、肝機能改善及び抗高脂血症の薬効を有することは記載されていない。
また、甲第11号証には、本件発明の出願人である高木孝一が、本出願前である昭和57年7月に飛鳥食品株式会社を設立し、日本山人参の根部分を使用した健康食品を製造し、販売していたことについて記載されているものの、その健康食品が、「肝機能改善及び抗高脂血脂症」に薬効を有することは記載されていない。
結局、甲第2〜11号証の記載から、本件特許の本出願前に、日本山人参を健康食品として製造、販売していたと言えるとしても、その日本山人参が肝機能改善及び抗高脂血症の作用を有することを示す記載はないし、該作用の発揮を目的にしたものを製造、販売していたと認めるに足りる事実は見い出せない。
これに対して、本件発明は、肝の脂肪蓄積、生体内の過酸化脂質の蓄積の予防等の薬理効果を明らかにして、肝機能改善及び抗高脂血症用医薬組成物としたものである。この点について、請求人は、日本山人参を使用して調剤した健康食品及び医薬組成物は、同一の作用効果を示すから、本件発明と同一の発明であると主張するが、これは、肝機能改善及び抗高脂血症用という用途に適用したときに同一の作用効果を示すというに止まり、前記甲第2〜11号証には、日本山人参に使用した健康食品を肝機能改善及び抗高脂血症用に適用したことは示されていない。してみると、前記健康食品を前記用途、すなわち、肝機能改善及び抗高脂血症用に適用した場合を前提として、本件発明の医薬組成物を、前記健康食品と同一であるという請求人の主張は採用できない。
したがって、請求人の提示した上記証拠のすべてを組み合わせても、本件発明がその出願前に公然と実施されたものとすることにはできないから、特許法第29条第1項第2号の規定に該当するとはいえない。
なお、請求人は、平成10年5月18日付けの審判請求理由補充書を提出し、「本件特許発明は、その出願前からいわゆる公知公用並びに刊行物に記載された発明であるから特許法第29条第1項の規定に該当し、また、それらから当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に該当する。」と主張する。
しかしながら、該理由補充書に添付された甲第11号証には、健康食品を肝機能改善又は抗高脂血症用に適用することを示す記載はなく、また、甲第12号証及び甲第13号証については、その頒布日が明らかでなく、その記載内容が本件特許の出願前に公知であったと認めることができない。よって、該理由補充書の提出によっても、本件特許発明が特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反するとはいえず、前記判断を変更するものではない。
IV.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によって、本件特許を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1998-06-08 
結審通知日 1998-06-23 
審決日 1998-06-10 
出願番号 特願昭59-117957
審決分類 P 1 112・ 112- Y (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田村 明照主代 静義  
特許庁審判長 加藤 孔一
特許庁審判官 鶴見 秀紀
谷口 浩行
登録日 1992-12-24 
登録番号 特許第1721544号(P1721544)
発明の名称 医薬組成物  
代理人 伊藤 真  
代理人 平田 義則  
代理人 児玉 喜博  

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