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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1012196
異議申立番号 異議1998-71070  
総通号数 10 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-08-06 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-03-03 
確定日 1999-10-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第2649611号「半導体基板の熱処理方法」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2649611号の特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2649611号の発明は、平成2年12月14日に出願され、平成9年5月16日に設定登録され、その後、平成10年3月3日に安藤純男より特許異議申立がなされ、平成10年8月6日付けで取消理由通知をし、その指定期間内である平成10年10月13日に訂正請求がなされたが、その訂正請求に対して平成11年4月28日付けで訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内の平成11年7月19日に意見書の提出がなされたものである。
2.訂正の適否の判断
(イ)訂正明細書の請求項1に係る発明
訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、訂正発明という。)は、その特許請求の範囲に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「窒素ガスを流入させながら半導体基板を熱処理炉内へ搬入し、前記熱処理炉を加熱して半導体基板を500℃〜650℃で予備加熱しつつ前記熱処理炉内を減圧し、予備加熱を行った前記熱処理炉内で半導体基板を昇温し、前記熱処理炉内で半導体基板を所要の温度で加熱し、前記熱処理炉を強制冷却して半導体基板を降温することを特徴とする半導体基板の熱処理方法。」
(ロ)訂正の適否
当審が訂正拒絶理由通知において示した刊行物1:特開昭52-17765号公報には、「カプセル内に水分が存在したり、砒素表面が酸化されていると拡散工程でシリコンウェーハー表面に結晶欠陥が発生したり、ウェーハー表面の酸化によるマスキング効果を生じるため真空封入前にカプセル内を真空熱処理することにより酸化物や水分の除去を行う前処理が必要である。」(第3頁右上欄第11-17行)、「砒素表面の酸化物は真空中200℃程度の熱処理で蒸発により除去できるが、この温度ではカプセルやウェーハーの熱処理には不充分であり、・・・砒化シリコン結晶を拡散原料として用いれば、酸化物除去の工程は必要なく、且つウェーハーやアンプルに必要で十分な温度(500〜600℃)の熱処理で水分除去を行っても砒素の蒸発量は無視できるほどであり、」(第3頁右上欄第19行ー同左下欄第19行)、「砒化シリコン結晶(SiAs)0.2gと・・・P形シリコンウェーハー5枚を・・・石英カプセルに挿入し、500℃の温度で30分の真空熱処理した後にカプセルを封止した。このカプセルを均一な温度領域を有する電気炉で、1,000℃の温度で1時間の拡散したところ、シリコンウェーハーの表面は鏡面状態であり、」(第3頁右下欄第11-18行)と記載されている。
したがって、刊行物1にはシリコンウェーハーの酸化防止等のためにシリコンウェーハーを石英カプセル内に搬入し、前記石英カプセルを加熱してシリコンウェーハーを500℃〜600℃で真空予備加熱し、予備加熱を行った前記石英カプセル内でシリコンウェーハーを昇温し、前記石英カプセル内でシリコンウェーハーを1000℃の温度で加熱する熱処理方法が記載されているものと認められる。
同じく刊行物2:特開平1-107517号公報には、酸化防止のために窒素ガスを流入させながらウェハを熱処理炉内に搬入する工程が記載されている。(第7図参照)
同じく刊行物3:特開平2-34913号公報には、熱処理後の半導体ウェハーの降温を速めるために熱処理炉を強制冷却する工程が記載されている。
訂正発明と上記刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の「石英カプセル」はその内部にシリコンウェーハーを挿入し加熱処理するものであるから、訂正発明の「熱処理炉」に相当し、また刊行物1記載の「シリコンウェーハー」は訂正発明の「半導体基板」に相当するから、両者は半導体基板を熱処理炉内へ搬入し、前記熱処理炉を加熱して半導体基板を500℃〜600℃で予備加熱し、予備加熱を行った前記熱処理炉内で半導体基板を昇温し、前記熱処理炉内で半導体基板を所要の温度で加熱することを特徴とする半導体基板の熱処理方法の点で一致し、下記の点で相違する。
(1)訂正発明が窒素ガスを流入させながら半導体基板を熱処理炉内へ搬入しているのに対し、刊行物1記載の発明では、単に半導体基板を熱処理炉内に搬入している点。
(2)訂正発明が予備加熱しつつ減圧しているのに対し、刊行物1記載の発明では真空減圧下で予備加熱している点。
(3)訂正発明が熱処理炉を強制冷却して半導体基板を降温しているのに対し、刊行物1記載の発明では半導体基板をどのように降温しているのか特定されてない点。
そこで、上記相違点について検討する。
相違点(1)について
刊行物2には酸化防止のために窒素ガスを流入させながらウエハを熱処理炉内に搬入する工程が記載されているから、刊行物1記載の発明において、酸化防止の観点から、熱処理炉内に半導体基板を搬入する際に、刊行物2のように窒素ガスを流入させながら行うことは当業者にとって容易なことである。
なお、意見書で窒素ガスを流入させながら半導体基板を熱処理炉内に搬入すると、熱処理炉の内面に付着している水分を揮発・除去する効果があると主張しているが、特許明細書中にはこのような効果の記載はなく、また自明の効果とも認められないので、上記主張は採用できない。
相違点(2)について
訂正発明が予備加熱しつつ減圧するのは半導体基板の水分を離脱させるためであり、刊行物1記載の発明も真空減圧下で予備加熱するのはウェーハーの水分除去を目的とするためであるから、刊行物1記載の発明の真空減圧下で予備加熱することに代えて、予備加熱しつつ減圧することは当業者が適宜行う設計変更にすぎない。
相違点(3)について
半導体基板の熱処理後に降温工程を設けることは当然のことであり、また刊行物3には降温を速めるために、熱処理炉を強制冷却することが記載されているから、刊行物1記載の熱処理方法において、半導体基板の降温を速めるために、刊行物3に記載されている熱処理炉を強制冷却する工程を採用することに格別の困難性は認められない。
したがって、訂正発明は刊行物1〜3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法第120条の4第3項で準用する同第126条第4項の規定に違反するので、当該訂正は認められない。
3.特許異議申立についての判断
(イ)本件請求項1に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項によって特定されるとおりのものである。
「半導体基板を熱処理炉内へ搬入し、前記熱処理炉を加熱して半導体基板を500℃〜650℃で予備加熱しつつ前記熱処理炉内を減圧し、予備加熱を行った前記熱処理炉内で半導体基板を昇温し、前記熱処理炉内で半導体基板を所要の温度で加熱し、前記熱処理炉を強制冷却して半導体基板を降温することを特徴とする半導体基板の熱処理方法。」
(ロ)対比・判断
当審が通知した取消理由に引用した刊行物1には、シリコンウェーハーを石英カプセル内に搬入し、前記石英カプセルを加熱してシリコンウェーハーを500℃〜600℃で真空予備加熱し、予備加熱を行った前記石英カプセル内でシリコンウェーハーを1000℃の温度で加熱する熱処理方法が記載されているものと認められる。
本件発明と上記刊行物1記載の発明とを対比すると、上記刊行物1記載の「石英カプセル」はその内部にシリコンウェーハーを収容し加熱処理するものであるから、本件発明の「熱処理炉」に相当し、また刊行物1記載の「シリコンウェーハー」は本件発明の「半導体基板」に相当するから、両者は半導体基板を熱処理炉内へ搬入し、前記熱処理炉を加熱して半導体基板を500℃〜600℃で予備加熱し、予備加熱を行った前記熱処理炉内で半導体基板を昇温し、前記熱処理炉内で半導体基板を所要の温度で加熱することを特徴とする半導体基板の熱処理方法の点で一致し、下記の点で相違する。
(1)本件発明が予備加熱しつつ減圧しているのに対し、刊行物1記載の発明では真空減圧下で予備加熱している点。
(2)本件発明が熱処理炉を強制冷却して半導体基板を降温しているのに対し、刊行物1記載の発明では半導体基板をどのように降温しているのか特定されてない点。
そこで、上記相違点について検討する。
相違点(1)について
本件発明が予備加熱しつつ減圧するのは半導体基板の表面の水分を離脱させるためであり、刊行物1記載の発明も真空減圧下で予備加熱するのはウェーハーの水分を除去するためであるから、刊行物1記載の発明の真空減圧下で予備加熱することに代えて、予備加熱しつつ減圧することは当業者が適宜行う設計変更にすぎない。
相違点(2)について
半導体基板の熱処理後に降温工程を設けることは当然のことであり、また刊行物3には降温を速めるために熱処理炉を強制冷却することが記載されているから、刊行物1記載の熱処理方法において半導体基板の降温を速めるために、刊行物3に記載されている熱処理炉を強制冷却する工程を採用することに格別の困難性は認められない。
(ハ)むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1に係る発明は、上記刊行物1及び3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、本件請求項1に係る発明の特許は特許法第29条第2項に違反してなされたものである。
したがって、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第113条第1項第2号に該当するので、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-08-17 
出願番号 特願平2-410812
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (H01L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 宮澤 尚之  
特許庁審判長 今野 朗
特許庁審判官 橋本 武
小田 裕
登録日 1997-05-16 
登録番号 特許第2649611号(P2649611)
権利者 大日本スクリーン製造株式会社
発明の名称 半導体基板の熱処理方法  

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