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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H01S |
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管理番号 | 1012204 |
異議申立番号 | 異議1998-74793 |
総通号数 | 10 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1992-09-07 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-09-30 |
確定日 | 1999-10-13 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2734209号「光ファイバ増幅器」の請求項1ないし2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2734209号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1、手続きの経緯 本件特許の出願 平成3年1月28日 特許権設定登録 平成10年1月9日 特許異議の申立て(申立人:日本電信電話株式会社) 平成10年9月30日 取消理由通知 平成11年1月27日 2、特許異議申立について (本件発明) 本件請求項1〜2に係る発明は、特許明細書および図面の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜2に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】光学的に従属接続された2本以上のEr添加光ファイバと、このEr添加光ファイバの吸収波長に対応するλ1、λ2(λ1<λ2)の励起光源をそれぞれ少なくとも一個は含む複数個の励起光源と、これらの励起光源から出力される励起光を前記Er添加光ファイバにそれぞれ入射させるための光結合手段と、被増幅信号光を前記Er添加光ファイバに入射させる光信号入力部と、増幅された信号光を前記Er添加光ファイバから取り出すための光出力部とを備え、光信号入力部側の前記Er添加光ファイバは波長λ1の励起光によって励振され、かつ、光信号出力部側の前記Er添加光ファイバは波長λ2の励起光によって励振されるように前記励起光源を配置したことを特徴とする光ファイバ増幅器。」 【請求項2】請求項1記載の光ファイバ増幅器において、各々のEr添加光ファイバ間に光アイソレータを挿入したことを特徴とする光ファイバ増幅器。」 (申立の理由の概要) 特許異議申立人は甲第1号証(ELECTRONICS LETTERS,10th May 1990,Vol.26,No.10,pp.661-662、以下「刊行物1」という。)及び甲第2号証(Appl.Phys.Lett.,57(25),17 December 1990,pp.2635-2637、以下「刊行物2」という。)を提出して、請求項1〜2に係る発明は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから特許は取り消されるべき旨主張している。 (刊行物1及び刊行物2の内容) 刊行物1には、1.5μm帯の光信号入力部と、第1段の前方に1.48μmの励起光源と、第2段の前方と後方とに同じく1.48μmの励起光源が配置され、各励起光源と伝送路とを結合するカプラーとが配置された2段のEDFA(エルビウムドープファイバ光増幅器)と、光信号出力部とを含む光信号伝送のための光増幅システムが記載されている。各段のEDFAの前後には光アイソレータが配置され、両段の間にはASE(自然放出光)を抑制するためのOBPF(光帯域濾波器)が配置されて、全体は雑音源となるASEを抑制し、かつ大きな光出力を得ることを目的とした光増幅システムとなっている。 刊行物2には、光伝送に用いられるEDFAにおいて、0.98μmと1.48μmとの両ポンピング光源の特性を比較検討した研究内容が記載されている。同引用例には、光出力の増大に伴うASEについては、0.98μmのポンピングの場合は比較的に少ないのに対し、1.48μmのポンピングの場合は大きく増大してくることと、飽和出力(利得が急速に落ちてくる限界出力)については、0.98μmのポンピングの場合は早く飽和してしまうのに対し、1.48μmのポンピングの場合は飽和が大きい、ということが明かされ、このことから、0.98μmの励起はプリアンプリファイア(前置増幅器)に適し、これに対し、1.48μmの励起はパワーアンプリファイア(出力増幅器)に適している、ということが述べられている。 (特許法第29条第2項違反について) 本件請求項1〜2に係る発明と刊行物1記載の発明は「光学的に従属接続された2本以上のEr添加光ファイバと、このEr添加光ファイバの吸収波長に対応する波長λ1の励起光源をそれぞれ少なくとも一個は含む複数個の励起光源と、これらの励起光源から出力される励起光を前記Er添加光ファイバにそれぞれ入射させるための光結合手段と、被増幅信号光を前記Er添加光ファイバに入射させる光信号入力部と、増幅された信号光を前記Er添加光ファイバから取り出すための光出力部とを備え、光信号入力部側の前記Er添加光ファイバは波長λ1の励起光によって励振され、かつ、光信号出力部側の前記Er添加光ファイバも波長λ1の励起光によって励振されるように前記励起光源を配置したことを特徴とする光ファイバ増幅器」において一致し、本件請求項1〜2記載の発明が、「光信号入力部側の前記Er添加光ファイバは波長λ1の励起光によって励振され、かつ、光信号出力部側の前記Er添加光ファイバも波長λ1の励起光によって励振される」ものであるのに対し、刊行物1記載の技術内容が、「光信号入力部側の前記Er添加光ファイバは波長λ1の励起光によって励振され、かつ、光信号出力部側の前記Er添加光ファイバは波長λ2(λ1<λ2)の励起光によって励振される」ものであるという点で、両者は相違する。 この相違点について検討すると、上記刊行物2には、光出力の増大に伴うASEについては、0.98μmのポンピングの場合は比較的に少ないのに対し、1.48μmのポンピングの場合は大きく増大してくることと、飽和出力(利得が急速に落ちてくる限界出力)については、0.98μmのポンピングの場合は早く飽和してしまうのに対し、1.48μmのポンピングの場合は飽和が大きい、ということが明かされ、このことから、0.98μmの励起はプリアンプリファイア(前置増幅器)に適し、これに対し、1.48μmの励起はパワーアンプリファイア(出力増幅器)に適している、ということが述べられている。 一般に、複数段の増幅器から成る信号の増幅システムにおいては、最初の段を前置増幅器とし、最後の段を出力増幅器とすることが、従来より慣用されていることであるから、第1引用例記載の光増幅システムは、第1段が前置増幅器であり、第2段が出力増幅器であると見てよい。 このように、第1引用例記載の光増幅システムは、第1段が1.48μmで励起される前置増幅器であり、第2段が1.48μmで励起される出力増幅器であるから、第2引用例記載の考え方に基づいて、第1引用例記載のシステムの、第1段を0.98μmで励起する前置増幅器で置き換えるようにして、本件請求項1〜2記載の発明のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。 (むすび) 以上のとおり、本件請求項1〜2に係る発明は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1〜2に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、本件請求項1〜2に係る特許は、特許法の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める平成7年政令第205号第4条の規定により、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-08-17 |
出願番号 | 特願平3-8180 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Z
(H01S)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 杉山 輝和 |
特許庁審判長 |
小林 邦雄 |
特許庁審判官 |
松田 悠子 左村 義弘 |
登録日 | 1998-01-09 |
登録番号 | 特許第2734209号(P2734209) |
権利者 | 日本電気株式会社 |
発明の名称 | 光ファイバ増幅器 |
代理人 | 澤井 敬史 |