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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B41J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B41J
管理番号 1012346
異議申立番号 異議1999-71104  
総通号数 10 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-07-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-03-23 
確定日 2000-02-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2803249号「インクジェット記録装置」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2803249号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第2803249号の発明は、平成1年11月18日に出願され、平成10年7月17日にその特許権の設定の登録がなされ、関恵美子より特許異議の申し立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年9月22日に特許請求の範囲及び発明の詳細な説明について訂正請求がなされた後、訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成11年12月2日に訂正請求書について手続補正書が提出されたものである。
II.訂正の適否についての判断
(1)訂正請求に対する補正の適否について
特許権者は、訂正明細書中の特許請求の範囲の
「【請求項1】搬送される記録紙に対してインクを吐出し記録を行うインク吐出部と、該インク吐出部にインクを供給するインク溜めとを備えたインクジェット記録装置であって、前記インク吐出部と前記インク溜めとを前記記録紙の搬送方向に並設するとともに、前記インク溜めを前記インク吐出部に対し前記記録紙の搬送方向下手側に配置し、前記インク吐出部と前記インク溜めとの間に、前記インク吐出部の下方に位置するとともに前記インク溜めから供給されるインクを毛細管力により前記インク吐出部まで上昇させるスリット板を設け、前記記録紙は前記インク吐出部の上方に位置するインクジェット記録装置。
【請求項2】前記インク溜めから前記インク吐出部に、常温で固体のインクを加熱液化して供給する特許請求の範囲第1項記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】前記インク吐出部と前記インク溜めとを水平方向に配設した特許請求の範囲第1項記載のインクジェット記録装置。」を
「【請求項1】搬送される記録紙に対してインクを吐出し記録を行うインク吐出部と、該インク吐出部に常温で固体のインクを加熱液化して供給するインク溜めとを備えたインクジェット記録装置であって、
前記インク吐出部と前記インク溜めとを前記記録紙の搬送方向に並設するとともに、前記インク溜めを前記インク吐出部に対し前記記録紙の搬送方向下手側に配置し、前記インク吐出部と前記インク溜めとの間に、前記インク吐出部の下方に位置するとともに前記インク溜めから供給されるインクを毛細管力により前記インク吐出部まで上昇させるスリット板を設け、前記記録紙は前記インク吐出部の上方に位置するインクジェット記録装置。」と補正(訂正事項aの補正)すると共に、これに伴い、特許請求の範囲の記載との整合を図るために、訂正明細書の発明の詳細な説明と図面の簡単な説明を補正(訂正事項bの補正、訂正事項cの追加)するものである。
そこで上記補正について検討すると、
上記訂正事項aの補正は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1の「インク」を「常温で個体のインク」と限定すると共に請求項2乃至3を削除するもので、上記訂正明細書の特許請求の範囲の減縮に相当し、また、上記訂正事項bの補正は、上記訂正事項aの補正に伴い、訂正明細書の発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明に相当し、さらに、訂正事項cの追加は、本件発明を特定する事項である「インク溜めを前記インク吐出部に対し記録紙の搬送方向下手側に配置し」という事項を具備していない、第3図に示されるもの(インク溜めを前記インク吐出部に対し記録紙の搬送方向上手側に配置してある)を、本件発明の他の実施例として、発明の詳細な説明および図面の簡単な説明に記載していた誤りを訂正したもので、不明りょうな記載の釈明に相当する。
従って、当該訂正請求に対する補正は、訂正請求書の要旨を変更するものでなく、特許法120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に適合する。
(2)訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである(訂正個所にアンダーラインを付した。)。
▲1▼訂正事項a
特許請求の範囲の
「【請求項1】搬送される記録紙に対してインクを吐出し記録を行うインク吐出部と、該インク吐出部にインクを供給するインク溜めとを備えたインクジェット記録装置であって、前記インク吐出部と前記インク溜めとを前記記録紙の搬送方向に並設するとともに、前記インク溜めを前記インク吐出部に対し前記記録紙の搬送方向下手側に配置したインクジェット記録装置。
【請求項2】前記インク溜めから前記インク吐出部に、常温で固体のインクを加熱液化して供給する特許請求の範囲第1項記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】前記インク吐出部と前記インク溜めとを水平方向に配設した特許請求の範囲第1項記載のインクジェット記録装置。」を、
「【請求項1】搬送される記録紙に対してインクを吐出し記録を行うインク吐出部と、該インク吐出部に常温で固体のインクを加熱液化して供給するインク溜めとを備えたインクジェット記録装置であって、
前記インク吐出部と前記インク溜めとを前記記録紙の搬送方向に並設するとともに、前記インク溜めを前記インク吐出部に対し前記記録紙の搬送方向下手側に配置し、前記インク吐出部と前記インク溜めとの間に、前記インク吐出部の下方に位置するとともに前記インク溜めから供給されるインクを毛細管力により前記インク吐出部まで上昇させるスリット板を設け、前記記録紙は前記インク吐出部の上方に位置するインクジェット記録装置。」と訂正する。
▲2▼訂正事項b
発明の詳細な説明の「本発明のインクジェット記録装置は、搬送される記録紙に対してインクを吐出し記録を行うインク吐出部と、該インク吐出部にインクを供給するインク溜めとを備えたインクジェット記録装置であって、前記インク吐出部と前記インク溜めとを前記記録紙の搬送方向に並設するとともに、前記インク溜めを前記インク吐出部に対し前記記録紙の搬送方向下手側に配置したことを特徴とする。
また、前記インク溜めから前記インク吐出部に、常温で固体のインクを加熱液化して供給することを特徴とする。
また、前記インク吐出部と前記インク溜め部とを水平方向に配設したことを特徴とする。」(特許公報第2頁第3欄第15〜27行)を、
「本発明のインクジェット記録装置は、搬送される記録紙に対してインクを吐出し記録を行うインク吐出部と、該インク吐出部に常温で固体のインクを加熱液化して供給するインク溜めとを備えたインクジェット記録装置であって、前記インク吐出部と前記インク溜めとを前記記録紙の搬送方向に並設するとともに、前記インク溜めを前記インク吐出部に対し前記記録紙の搬送方向下手側に配置し、前記インク吐出部と前記インク溜めとの間に、前記インク吐出部の下方に位置するとともに前記インク溜めから供給されるインクを毛細管力により前記インク吐出部まで上昇させるスリット板を設け、前記記録紙は前記インク吐出部の上方に位置することを特徴とする。」と訂正する。
▲3▼訂正事項c
発明の詳細な説明および図面の簡単な説明の「第3図は本発明の他の実施例を示す」(特許公報第3頁第5欄第16行および第6欄第18行にそれぞれ記載。)を、「第3図は参考例を示す」と訂正する。
(3)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aに関連する記載として、願書に添付した明細書には、「16はインク13をリザーバ11からインク吐出部Aまで毛細管力により引き上げる2スリット板で、複数の薄板がせまい間隙を保って並設されている。」(特許公報第2頁第3欄末行〜第4欄第2行)および「まずヒータ12に電力が供給されてリザーバ11内のインク13が溶融液化する。」(特許公報第2頁第4欄第32〜33行)と記載されている。
そうすると、上記訂正事項aは、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内において特許請求の範囲の「インク」と「インクを供給する」の各構成を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮に該当するものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
また、上記訂正事項b乃至cは、上記(1)で述べたように、いずれも、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでない。
(4)独立特許要件の判断
▲1▼訂正発明
訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、「訂正発明」という。)は、上記II(2)▲1▼の訂正事項aにより訂正された事項により特定されるとおりのものである。
▲2▼引用刊行物
当審が通知した取消理由で引用した刊行物1(特開昭59-162058号公報)には、「第1図に於いて感熱インク8を蓋7を明けて気密容器1に入れる。・・・ヒーター3を図示してない電極により通電して発熱させると感熱インク8の下部は溶融しその一部は発熱素子2に流動する。発熱素子2には貫通孔が明けてあり、溶融加熱インクは流動して貫通孔をふさぎ放熱冷却して固体となる。つぎに一般には複数個の発熱素子2を画像信号に応じて選択的に図示してない電極によりパルス電流を通電して発熱させるとその部分の感熱インクが溶融する。・・・パルス発生機17は電磁ソレノイド13を周期的に通電するためダイヤフラム12を周期的に左右に駆動する。そのため気密容器1内の空気圧は空気弁14の働きで大気圧より高い範囲で周期的に変化する。その空気圧により溶融感熱インクが記録部材9に向って射出され冷却、固化しドットとして記録される。」(第2頁右上欄第9行〜左下欄第10行)と記載され、第1図(A)に画像記録装置の全体構成を示す模型図が記載されている。
▲3▼対比・判断
訂正発明と上記引用刊行物に記載された発明とを対比すると、上記引用刊行物には、訂正発明を特定する事項である「前記インク吐出部と前記インク溜めとの間に、前記インク吐出部の下方に位置するとともに前記インク溜めから供給されるインクを毛細管力により前記インク吐出部まで上昇させるスリット板を設け、前記記録紙は前記インク吐出部の上方に位置する」点が記載されておらず、また、その示唆もない。
そして、訂正発明は、この点を備えることにより、明細書に記載された作用効果を奏するものと認められるから、訂正発明が上記引用刊行物に記載された発明と同一といえないばかりでなく、上記引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
したがって、訂正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明とすることができない。
尚、異議申し立ての理由については後述する。
▲4▼むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2乃至4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
III.特許異議申し立てについての判断
(1)申立の理由の概要
異議申立人関恵美子は、証拠として、甲第1号証(特開昭59-162058号公報=上記引用刊行物)、および参考資料として特開昭63-118260号公報を提出し、本件請求項1乃至3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であるか、または、同号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、同法第29条第1項または同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである旨主張している。
(2)判断
甲第1号証は、上記II.(4)▲2▼の引用刊行物であり、また、上記参考資料には、インク供給部に毛細管力のあるものを用いることが記載されているものの、結局、甲第1号証および参考資料のいずれにも、上記II.(4)▲3▼「対比・判断」で示した「特定する事項」については記載も示唆もなく、この主張についての判断も該「対比・判断」で示したとおりである。
ゆえに、特許異議申立人の主張は採用できない。
IV.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申し立ての理由及び証拠方法によっては、本件請求項1に係る発明の特許を取り消すことができない。
また、他に本件請求項1に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
インクジェット記録装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される記録紙に対してインクを吐出し記録を行うインク吐出部と、該インク吐出部に常温で固体のインクを加熱液化して供給するインク溜めとを備えたインクジェット記録装置であって、
前記インク吐出部と前記インク溜めとを前記記録紙の搬送方向に並設するとともに、前記インク溜めを前記インク吐出部に対し前記記録紙の搬送方向下手側に配置し、前記インク吐出部と前記インク溜めとの間に、前記インク吐出部の下方に位置するとともに前記インク溜めから供給されるインクを毛細管力により前記インク吐出部まで上昇させるスリット板を設け、前記記録紙は前記インク吐出部の上方に位置するインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【発明の属する技術分野】
本発明は常温で固体のインク(ホットメルトインク)を溶融し、液体状態でインク滴を飛翔させ記録紙上にインク像を形成するインクジェット方式の記録装置に関し、更に詳しくは同装置に用いられるインクジェットヘッドに関する。
【従来の技術】
一般に、ホットメルトインクを用いたインクジェット記録装置によれば、紙種対応性が高く、休止時のインク蒸発による目詰まりの発生が無い装置が実現できるというメリットを有する。そして従来、この種の装置に用いられるインクジェットヘッドは、搬送される記録紙に対してインクを吐出するインク吐出部と、このインク吐出部に、ホットメルトインクを加熱液化して供給するインクリザーバとを有しており、インクリザーバを前記インク吐出部に対し記録紙より遠ざける方向に配した構造となっていた。(USP4631557,USP4636803等)
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術のインクジェットヘッドの構造では、加熱液化したインクが冷たい記録紙に付着すると同時に熱を奪われ、液体から固体に相対化してしまうため、インクが充分に記録紙に浸透できず、その結果記録紙に付着したインクが容易に記録紙から剥がれてしまい安定した印字結果が得られないという問題点を有していた。
本発明の目的は、上記問題点を解決して印字後のインクの剥がれを防ぎ、安定した印字結果が得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
本発明のインクジェット記録装置は、搬送される記録紙に対してインクを吐出し記録を行うインク吐出部と、該インク吐出部に常温で固体のインクを加熱液化して供給するインク溜めとを備えたインクジェット記録装置であって、前記インク吐出部と前記インク溜めとを前記記録紙の搬送方向に並設するとともに、前記インク溜めを前記インク吐出部に対し前記記録紙の搬送方向下手側に配置し、前記インク吐出部と前記インク溜めとの間に、前記インク吐出部の下方に位置するとともに前記インク溜めから供給されるインクを毛細管力により前記インク吐出部まで上昇させるスリット板を設け、前記記録紙は前記インク吐出部の上方に位置することを特徴とする。
【実施例】
次に実施例に基づいて詳細に説明する。
第1図は本発明の一実施例を示すインクジェットヘッドの断面図である。同図において記録紙1は送りローラ2と押えローラ3に挟持され図中矢印イ方向に搬送される。4はテンションローラで、ヘッド上で記録紙1がたるまぬように記録紙1に張力を与えている。ガイド軸6に案内され第1図紙面に垂直な方向に移動可能なキャリッジ5上にヘッドの国体10が搭載されている。図において、匡体10の左方上部にはインク吐出部Aが設けられており、右方にはインクリザーバ(以下、リザーバという)11が形成されている。尚、本実施例では匡体10がリザーバ11を兼ねた構造となっている。リザーバ11は、底面からヒータ12により加熱され、内部のインク13を液体状態に保つ。14はインク補充用開口部のキャップである。記録紙1はキャップ14に接しないように1〜2mmのギャップを保ってキャップ14の真上を通過する。
インク吐出部Aはヘッド最上部に設けられ、第2図にも示すように、複数のノズル19aを有するノズル形成基板19とインクを吐出させる圧電変換器18とを備えている。圧電変換器18は、ベース17を介して匡体10に固定されている。また、インク吐出部Aの上面には保護板20が設けられている。16はインク13をリザーバ11からインク吐出部Aまで毛細管力により引き上げる2スリット板で、複数の薄板がせまい間隔を保って並設されている。スリット板16の最下部にはフィルタ15が設けられ、インク13のゴミ等を除去する。
第2図は第1図に示したインク吐出部Aの周辺の詳細構成図を示す。片持ち梁状の圧電変換器18は、PZTよりなる、片面にAu薄層の電極を有する圧電材層18aと、PZTと熱膨張係数がほぼ等しい合金であるインバー薄層よりなる金属層18bとからなる多層構造を成し、やはりPZTと熱膨張係数がほぼ等しいセラミック部材からなるベース17に接合されている。絶縁材であるベース17は電気接続される電極パターン17aが上面に施されている。そして、圧電変換器18の電極を外部の駆動回路に接続するために、前記電極パターン17aと、この電極パターン17aに対向して対応する配線パターンを有するフレキシブル基板31とがそれぞれ導通をとりながら接合されている。各圧電変換器18とも共通電位に保つための電極は、上述の面と反対側にある金属18bの面にスペーサ22を接合する際に電気接続されて配線される。一方、Niの電鋳加工により作成された、複数のノズル19aを有するノズル形成基板19はスペーサ22により圧電変換器18と所定の間隙を保ってこれと接合されている。
20は上記のノズル形成基板19、圧電変換器18、フレキシブル基板31等インク吐出部を構成する各部材を保護する保護板で、その係止部20aを匡体10の被係止部10aに係止させて固定される。なお、保護板20はその上面1端部20bをクリーニング時の掃き出し用に切り欠いてある。スリット板16は、インクをインク吐出部Aまで毛細管力により引き上げるためにベース17内に入り込み圧電変換器18の直下まで達している。
次に動作について説明する。印刷動作開始時は第1図において、まずヒータ12に電力が供給されてリザーバ11内のインク13が溶融液化する。本実施例の場合、ワックスを主成分とした固体インクが用いられ、吐出特性との関係から所望の粘度を有する100℃ないし200℃の所定温度に保持される。こうして液化したインク13はフィルタ15を通り、スリット板16の毛細管力により圧電変換器18まで上昇する。次に、隣接する圧電変換器18間の毛細管力、さらには圧電変換器18とノズル形成基板19との毛細管力によりインク13はインク吐出部A内に充填される。また、毛細管力は、第1図において、インク13がフィルタ15位まで減少しても、充分インク吐出部Aまでインクを引き上げられるよう各間隙が設定されている。こうして毛細管力により引き上げられ、保持されたインクは、複数のノズル19aいずれにおいても一定の負圧となる。この負圧により、ノズル19aからのインクのあふれ出しが無くなる。また、ノズル形成基板19上のインクが、この負圧で引き込まれるため、ノズル形成基板19上にインクが溜るのが防止される。よって、吐出インクの飛行曲がりが防げ、安定した吐出が確保される。
次に、第2図においてフレキシブル基板31を介して圧電変換器18の両側に形成された圧電材層18aと金属層18bとの間に電圧を印加する。すると、圧電材層18aが収縮し、金属層18bは収縮しないため、曲げモーメントが生じ圧電変換器18の先端は厚さ方向(図面下方向)に変位する。次にこの電圧を解除すると、圧電変換器18の弾性的な復元力により発生する圧力で、ノズル形成基板19のノズル19aからインクが吐出する。この動作をキャリッジ5の移動及び記録紙1の搬送と共に印刷信号に応じて繰り返すことにより所望の記録を得ることができる。
そして本実施例では、記録終了後、記録紙1はリザーバ11の直上を通過し、リザーバ11より輻射熱を受けて暖められる。これにより、記録紙1に付着したインクが固まるのが遅れ、インクは記録紙1に浸透して高い密着力が得られる。
第3図は参考例を示す断面図で、リザーバ11を記録紙1に対して記録部手前に配し、予め記録紙1を暖めるようにして同様の効果をもたらしたものである。
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、インク吐出部とインク溜めとを記録紙の搬送方向に並設するとともに、インク溜めをインク吐出部に対して記録紙の搬送方向下手側に配置したことにより、常温で固体のインクを用いた場合はインクを加熱供給するインク溜めが記録紙の搬送方向下手側に記録紙に熱を伝えることができるため、記録後のインクが記録紙に強い密着力で付着し、剥がれのない安定した記録結果が得られる。
また、インク溜めをインク吐出部に対して記録紙の搬送方向下手側に配置したことにより、記録紙の取り出し開口部側にインク溜めを配置できる、即ち開閉部に近い側にインク溜めを配置できるため、インクの補給がし易い構成を採ることが可能になる。
更に、インク吐出部とインク溜めとを水平方向に配設した場合は、インク吐出部とインク溜めとの水頭差を小さくでき、インク吐出部からのインクのぼた落ちを容易に防止できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例を示すインクジェットヘッドの断面図。
第2図は第1図に示すインクジェットヘッドの部分詳細構成図。
第3図は参考例を示すインクジェットヘッドの断面図。
1…記録紙
11…リザーバ
13…インク
18…圧電変換器
19…ノズル形成基板
A…インク吐出部
 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。
▲1▼訂正事項a
特許請求の範囲を、
「【請求項1】搬送される記録紙に対してインクを吐出し記録を行うインク吐出部と、該インク吐出部に常温で固体のインクを加熱液化して供給するインク溜めとを備えたインクジェット記録装置であって、
前記インク吐出部と前記インク溜めとを前記記録紙の搬送方向に並設するとともに、前記インク溜めを前記インク吐出部に対し前記記録紙の搬送方向下手側に配置し、前記インク吐出部と前記インク溜めとの間に、前記インク吐出部の下方に位置するとともに前記インク溜めから供給されるインクを毛細管力により前記インク吐出部まで上昇させるスリット板を設け、前記記録紙は前記インク吐出部の上方に位置するインクジェット記録装置。」と訂正する。
▲2▼訂正事項b
発明の詳細な説明の「本発明のインクジェット記録装置は、・・・したことを特徴とする。」(特許公報第2頁第3欄第15〜27行)を、
「本発明のインクジェット記録装置は、搬送される記録しに対してインクを吐出し記録を行うインク吐出部と、該インク吐出部に常温で固体のインクを加熱液化して供給するインク溜めとを備えたインクジェット記録装置であって、前記インク吐出部と前記インク溜めとを前記記録紙の搬送方向に並設するとともに、前記インク溜めを前記インク吐出部に対し前記記録紙の搬送方向下手側に配置し、前記インク吐出部と前記インク溜めとの間に、前記インク吐出部の下方に位置するとともに前記インク溜めから供給されるインクを毛細管力により前記インク吐出部まで上昇させるスリット板を設け、前記記録紙は前記インク吐出部の上方に位置することを特徴とする。」と訂正する。
▲3▼訂正事項c
発明の詳細な説明および図面の簡単な説明の「第3図は本発明の他の実施例を示す」(特許公報第3頁第5欄第16行および第6欄第18行にそれぞれ記載。)を、「第3図は参考例を示す」と訂正する。
異議決定日 1999-12-10 
出願番号 特願平1-300182
審決分類 P 1 651・ 113- YA (B41J)
P 1 651・ 121- YA (B41J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤本 義仁  
特許庁審判長 小澤 和英
特許庁審判官 番場 得造
伊波 猛
登録日 1998-07-17 
登録番号 特許第2803249号(P2803249)
権利者 セイコーエプソン株式会社
発明の名称 インクジェット記録装置  
代理人 黒瀬 雅志  
代理人 岡田 淳平  
代理人 永井 浩之  
代理人 岡田 淳平  
代理人 永井 浩之  
代理人 黒瀬 雅志  
代理人 佐藤 一雄  
代理人 佐藤 一雄  

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