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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F16K
管理番号 1012385
異議申立番号 異議1998-74450  
総通号数 10 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-09-07 
確定日 2000-01-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2731840号「水栓」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2731840号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 [1]手続きの経緯
本件特許第2731840号発明は、平成5年4月13日に特許出願され、平成9年12月26日にその特許の設定登録がなされ、その後、同10年9月7日付で株式会社ケーブイケーより、特許異議の申立てがなされ、同11年4月12日に取消理由通知がなされ、さらに同11年11月11日に取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年11月11日に訂正請求がなされたものである。
[2]訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
特許権者は、訂正請求書において、本件特許明細書を下記の通りに訂正しようとするものである。
請求項1について、
(あ)特許公報第1頁第1欄第15行の「内周面にー以上の段差を有する」を「内周面にー以上の段差を有し、更に、前記内部部材の端面または該内部部材の外周面に形成された段差部端面と前記外部部材の内周面に形成された段差部端面との間に設けられ、前記間隙を遮断するシール部材を備える」
請求項2について
(い)特許公報第2欄第2〜4行の「請求項1記載の水栓であって、前記内部部材は、該内部部材の通路を流れる流体を制御する弁装置を備えるものである水栓。」を
「請求項1記載の水栓であって、前記外部部材は前記シール部材が接触する前記内周面について二次加工が不要な樹脂材料で形成されている水栓。」
請求項3について
(う)特許公報第2欄第6〜8行の「前記弁装置は、前記内部部材の通路に嵌挿される所定形状のハウジングを有し、該ハウジング内に流体を制御する機能の少なくとも一部を納めたものである水栓。」を「前記内部部材は、該内部部材の通路を流れる流体を制御する弁装置を備えるものである水栓。」
請求項4について
(え)特許公報第2欄第9〜13行の「請求項1ないし3いずれか記載の水栓であって、
前記挿入穴は、前記内部部材が該内部部材の通路に流れる流体を制御する弁装置を備える場合には該弁装置と該弁装置の駆動部とを連絡する連絡口である水栓。」を「請求項3記載の水栓であって、
前記弁装置は、前記内部部材の通路に嵌挿される所定形状のハウジングを有し、該ハウジング内に流体を制御する機能の少なくとも一部を納めたものである水栓。」
請求項5について
(お)特許公報第2欄第14行〜第3欄第3行の「請求項1ないし請求項4いずれか記載の水栓であって、
前記外部部材の内周面と前記内部部材の外周面との間に設けられ、前記間隙を遮断するシール部材を備えた水栓。」を「請求項2ないし請求項4いずれか記載の水栓であって、
前記挿入穴は、前記内部部材が該内部部材の通路に流れる流体を制御する弁装置を備える場合には該弁装置と該弁装置の駆動部とを連絡する連絡口である水栓。」
請求項6について
(か)特許公報第3欄第4〜6行の「請求項1ないし請求項4いずれか記載の水栓であって、
前記内部部材の端面または該内部部材の外周面に形成された段差部端面と前記外部部材の内周面との間に設けられ、前記間隙を遮断するシール部材を備えた水栓。」を削除。
発明の詳細な説明について
(き)明細書段落番号【0007】(特許公報第4欄第9行)の「内周面にー以上の段差を有することを要旨とする。」を、「内周面にー以上の段差を有し、更に、前記内部部材の端面または該内部部材の外周面に形成された段差部端面と前記外部部材の内周面に形成された段差部端面との間に設けられ、前記間隙を遮断するシール部材を備えることを要旨とする。請求項2記載の水栓は、請求項1記載の水栓であって、記外部部材は、前記シール部材が接触する前記内周面について二次加工が不要な樹脂材料で形成されている水栓。」
(く)明細書段落番号【0008】(特許公報第4欄第11行)の「請求項1記載」を「請求項2記載」
(け)明細書段落番号【0009】(同公報第4欄第18行)の「請求項1ないし3」を「請求項2ないし4」
(こ)明細書段落番号【0011】(同公報第4欄第24〜31行)の「請求項1ないし4いずれか記載・・・構成することもできる。」を削除
(さ)明細書段落番号【0012】(同公報第4欄第33行)の「請求項1記載」を「請求項1又は請求項2記載」
(し)明細書段落番号【0012】(同公報第4欄第38〜39行)の「この請求項1記載」を「これら各請求項に記載」
(す)明細書段落番号【0012】(同公報第5欄第18行)の「研削・研磨等」を「内部部材の研削・研磨等」
(せ)明細書段落番号【0012】(同公報第5欄第23行)の「層を有してもよい。」を「層を有してもよい。特に、請求項1記載の水栓では、内部部材を外部部材に嵌挿する際、シール部材はシール部以外の外部部材に接触することがなく、シール部材の位置ずれや損傷を防止する。また、挿入方向への圧着強さを調整することができるので、最適なシール効果を得ることができる。
請求項2記載の水栓では、間隙遮断のためのシール部材が接触する外部部材内周面について二次加工が不要な樹脂材料で外部部材を形成するので、この形成された外部部材の内周面の表面は二次加工無しで滑らかなものとなる。」
(そ)明細書段落番号【0013】(同公報第5欄第24行)の「請求項1記載」を「これら請求項1又は請求項2記載」
(た)明細書段落番号【0014】(同公報第5欄第31行)の「請求項2記載」を「請求項3記載」
(ち)明細書段落番号【015】(同公報第5欄第35行)の「請求項3記載」を「請求項4記載」
(つ)明細書段落番号【0016】(同公報第5欄第38行)の「請求項4記載」を「請求項5記載」
(て)明細書段落番号【0020】及び【0021】(同公報第5欄第44行〜第6欄第3行)の「請求項5記載の水栓は、・・・得ることができる。」を削除
(と)明細書段落番号【0056】(同公報第14欄第39行)の「請求項1記載」を「請求項1又は請求項2記載」
(な)明細書段落番号【0056】(同公報第14欄第44行)の「この請求項1記載」を「これら請求項1又は請求項2記載」
(に)明細書段落番号【0056】(同公報第15欄第2行)の「研削・研磨等」を「内部部材の研削・研磨等」
(ぬ)明細書段落番号【0056】(同公報第15欄第5行)の「大量生産することができる。」を「大量生産することができる。特に、請求項1記載の水栓では、内部部材を外部部材に嵌挿する際、シール部材はシール部以外の外部部材に接触することがなく、シール部材の位置ずれや損傷を防止する。また、内部部材の挿入方向への圧着強さを調整することができるので、シール部材に適した圧着強さを得ることができ、最適なシール効果を得ることができる。
請求項2記載の水栓では、間隙遮断のためのシール部材が接触する外部部材内周面について二次加工が不要な樹脂材料で外部部材を形成するので、この形成された外部部材の内周面の表面は二次加工無しで滑らかなものとなる。よって、樹脂を用いて形成された次加工が不要なことと相まって、内外部材共にシール部材が接触する部分について二次加工が不要となる。」
(ね)明細書段落番号【0057】(同公報第15欄第6行)の「請求項2記載」を「請求項3記載」
(の)明細書段落番号【0058】(同公報第15欄第11行)の「請求項3記載」を「請求項4記載」
(は)明細書段落番号【0059】(同公報第15欄第18行)の「請求項4記載」を「請求項5記載」
(ひ)明細書段落番号【0061】及び【0062】(同公報第15欄第23〜35行)の「請求項5記載の水栓では、・・・得ることができる。」を削除
(2)訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無及び拡張・変更の存否
a.上記訂正事項(あ)は、訂正前の請求項1に記載された総ての構成を備え、この構成に訂正前の請求項6に記載された構成「前記内部部材の端面または該内部部材の外周面に形成された段差部端面と前記外部部材の内周面に形成された段差部端面との間に設けられ、前記間隙を遮断するシール部材を備えること」を付加して限定するものである。そして、この構成については、特許明細書段落番号【0049】の「外側ケーシング50aの段差部端面と混合弁ケーシング62aまたは切換弁66aの段差部端面との間にOリングを設置し、各流路をシールする」、段落番号【0052】の「シール部材F、Gは、内部部材Bの各段差部の端面に設置され、外部部材Aの対応する段差部の端面に押しつけられることにより、流路C、Dを遮断する。」及び第5図に記載されている。したがって、訂正事項(あ)は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。そして、訂正事項(あ)は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
b.上記訂正事項(い)は、構成を限定した訂正後の請求項1を引用し、さらに「外部部材は、前記シール部材が接触する前記内周面について二次加工が不要な樹脂材料で形成されている」という構成を付加して限定するものである。そして、この構成については、特許明細書段落番号【0043】の「外側ケーシング50をもPPSにより形成したので・・・内周面を研削・研磨等をする必要がない。」及び段落番号【0056】の「Oリング等のシール部材が接触する部分については研削・研磨等の二次加工を不要とすることができる。」に記載されている。したがって、訂正事項(い)は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。そして、訂正事項(い)は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
c.上記訂正事項(う)は、構成を限定した訂正後の請求項2を引用し、さらに訂正前の請求項2に記載された構成をそのまま備えるものである。したがって、訂正事項(う)は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。そして、訂正事項(う)は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
d.上記訂正事項(え)は、構成を限定した訂正後の請求項3を引用し、さらに訂正前の請求項3に記載された構成をそのまま備えるものである。したがって、訂正事項(え)は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。そして、訂正事項(え)は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
e.上記訂正事項(お)は、構成を限定した訂正後の請求項2ないし請求項4を引用し、さらに訂正前の請求項4に記載された構成をそのまま備えるものである。したがって、訂正事項(お)は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。そして、訂正事項(お)は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
f.上記訂正事項(か)は、上記訂正事項(あ)との整合性をはかるため削除するものである。
g.上記訂正事項(き)乃至(ひ)は、特許請求の範囲の訂正事項(あ)乃至(お)の訂正に伴って発明の詳細な説明の記載を整合させるものであり、明瞭でない記載の釈明に相当し、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(3)独立特許要件の判断
(訂正明細書の請求項1乃至5に係る発明)
訂正明細書の請求項1乃至請求項5に係る発明(以下「本件発明1乃至本件発明5」という。)は、訂正明細書の請求項1乃至請求項5に記載されたとおりの次のものと認める。
【請求項1】 供給された流体を吐水口から吐水する水栓であって、
前記流体が流れ込む入口と前記吐水口に繋がる出口と、該入口と出口を連通する通路とを有し、樹脂を用いて形成された内部部材と、
前記内部部材を挿入する挿入穴と、該挿入穴に連通し、該内部部材を収納する収納空間とを有する外部部材とを備え、
前記内部部材は、外周面に、挿入方向先端に向かって外径が小さくなる一以上の段差を有し、
前記外部部材は、前記収納空間に収納された前記内部部材の外周面と該外部部材の内周面との間に前記内部部材の入口および/または出口と連通する間隙を形成するよう、内周面にー以上の段差を有し、
更に、
前記内部部材の端面または該内部部材の外周面に形成された段差部端面と前記外部部材の内周面に形成された段差部端面との間に設けられ、前記間隙を遮断するシール部材を備えること
を特徴とする水栓。
【請求項2】 請求項1記載の水栓であって、
前記外部部材は、前記シール部材が接触する前記内周面について二次加工が不要な樹脂材料で形成されている水栓。
【請求項3】 請求項2記載の水栓であって、
前記内部部材は、該内部部材の通路を流れる流体を制御する弁装置を備えるものである水栓。
【請求項4】 請求項3記載の水栓であって、
前記弁装置は、前記内部部材の通路に嵌挿される所定形状のハウジングを有し、
該ハウジング内に流体を制御する機能の少なくとも一部を納めたものである水栓。
【請求項5】 請求項2ないし請求項4いずれか記載の水栓であって、
前記挿入穴は、前記内部部材が該内部部材の通路に流れる流体を制御する弁装置を備える場合には該弁装置と該弁装置の駆動部とを連絡する連絡口である水栓。
(引用刊行物及び甲第1号証)
これに対して、当審が通知した取消理由で引用した刊行物1(特開平2-256727号公報)、刊行物2(実願昭62-183362号(実開平1-87384号)のマイクロフィルム)及び刊行物3(WO92/14086号公報及びその訳文として特表平6-505083号公報(以下、「訳文」という。))には、下記の発明が記載されていると認める。
刊行物1
水栓本体に湯室、水室、混合室、シャワー室、バス室を設けてこれらを一軸上に配置し、水栓本体の一端側に前記混合室へ供給する湯と水との混合量を調節する温調ハンドルを配設し、水栓本体の他端側に混合室とシャワー室又はバス室とを選択的に連通させる切換弁の操作ハンドルを配設したことを特徴とするシャワーバス水栓。(特許請求の範囲請求項1)
同図に示す如く、このシャワーバス水栓20にあっては、水栓本体21内に湯室22、水室23、混合室24、シャワー室25及びバス室26を一軸上に左端側からこの順序で配設している。そして、湯室22と水室23との間に、混合室24へ流入する湯と水の量を調節するサーモスタット付きの温度調節弁27が配設されている。この温度調節弁27は、水栓本体21の左端側に取り付けた温調ハンドル28を回動操作してスピンドル29の軸方向位置を変更することにより、湯と水の流量比を変更することができ、混合水の温度を所望する温度に設定することが可能である。
またシャワー室25とバス室26との間には、混合室24において所望する温度に混合された温水を、シャワー室25か又はバス室26のいずれか一方へ供給するための切換弁30が配設されている。切換弁30は、第6図の図(a)乃至図(d)に示す固定されるディスク弁体31と、第7図の図(a)乃至図(d)に示す可動するディスク弁体32とが、密着してホルダー33内に嵌合装着されている。(第3頁右欄上段第1〜20行)
刊行物2
混合水温度調節用機能部分を構成する部品の大部分を、エンジニアリングプラスチック製としたことを特徴とする湯水混合栓。(実用新案登録請求の範囲)
刊行物3
調整ユニットの可動部品は金属またはプラスチックから作ることができ、またピストン・スライドと圧力調整ピストンは入籠(いれこ)になっているので、容易に分解することができる。よって、必要が生じた場合には、該要素の一つを他方から取外すことなく、両方同時に新しい要素と交換することができる。
これに反し、両方の要素を交換する必要がない場合には、ピストン・スライドを調節弁本体から容易に取外すことができる。(訳文第4頁左欄下段第1〜9行)、
弁ハウジング2の他方の開口部4にはインサート30がねじこまれ、インサート3は温度調節ノブ、つまり制御ノブが設けられ、また調節ユニットを収容する。(訳文第5頁右欄下段第15〜18行)、
調節ユニットは2個の相互に同心の部分を含む。一つは、おおまかに言ってサーモスタット素子45と温度調節本体50(図3に示される)とを関連の可動ピン46とともに含む温度感応部分であり、もう一つは、温度調節本体50内に軸方向運動するように収容されるピストン・スライド60(図5に示す)を主に含む温度感応部分である。(訳文第6頁左欄上段第22〜同頁右欄上段第3行)、
ピストン・スライド60の方は、送られる熱水と冷水に生じている圧力差に応答して、回りの温度調節弁本体50に対して軸方向に両方向に移動することができる。(訳文第6頁右欄上段第12〜14行)、
温度調節弁本体50は、ねじ結合することのできる2個の半部51、52を含む中空のスリーブ状本体を含む。スリーブ半部51はねじを切った端フランジ51aを有し、これは、スリーブ半部52の対応する端フランジ52a上のめねじ部に協働する。よって、2個のスリーブ半部51、52は、ピストン・スライドを挿入した後で結合することができる。(訳文第6頁右欄上段第19〜25行)、
また、申立人株式会社ケーブイケーが提出した甲第4号証(特開昭60-14660号公報)には、下記の発明が記載されていると認める。
甲第4号証
筒状のケージを分割することによって形成された上部ケージおよび下部ケージの分割端部を互いに嵌合可能な段状に形成すると共に、周壁に穿設された流体通過用窓およびこの窓の上下に設けられかつ口径が異なる弁座を前記下部ケージに設け、これら両ケージの分割端面にそれぞれ互いに対向する環状溝を設け、これら環状溝内に前記ケージと異なる熱膨張係数を有する材料で形成された環状シール材を圧挿したことを特徴とするケージ弁。(特許請求の範囲)
(対比・判断)
本件発明1と刊行物1乃至刊行物3及び甲第4号証に記載の発明とを対比すると、刊行物1乃至刊行物3及び甲第4号証に記載の発明は、本件発明1を特定する事項である「内部部材は、外周面に、挿入方向先端に向かって外径が小さくなる一以上の段差を有し、外部部材は、収納空間に収納された前記内部部材の外周面と該外部部材の内周面との間に前記内部部材の入口および/または出口と連通する間隙を形成するよう、内周面にー以上の段差を有し、更に、前記内部部材の端面または該内部部材の外周面に形成された段差部端面と前記外部部材の内周面に形成された段差部端面との間に設けられ、前記間隙を遮断するシール部材を備える」という事項を備えておらず、また、当該事項により本件発明1は、「内部部材の外周面に、挿入方向先端に向かって外径が小さくなる段差を有する形状としたので、外部部材と内部部材との間に間隙を形成することができ、この間隙の一部を流体の通路として用いることができる。また、内部部材を樹脂により形成するので、金属材料に比較して比重が小さく、水栓全体の重量を軽量にすることができ、水栓の取扱いを容易とする。また、内部部材の外周面の表面粗さは、射出成形するときの型の表面の粗さによって決定されるので、型の表面を滑らかにすることにより、形成される内部部材の外周面の表面を滑らかにすることができる。したがって、Oリング等のシール部材が接触する部分について内部部材の研削・研磨等の二次加工を不要とすることができる。さらに、内部部材の形状が簡単な形状とすることができるので、この場合、射出一体成形が容易となり、大量生産することができる。特に、内部部材を外部部材に嵌挿する際、シール部材はシール部以外の外部部材に接触することがなく、シール部材の位置ずれや損傷を防止することができる。また、内部部材の挿入方向への圧着強さを調整することができるので、シール部材に適した圧着強さを得ることができ、最適なシール効果を得ることができる。」という明細書記載の顕著な効果を奏するものである。以上の理由により、本件発明1が刊行物1乃至刊行物3及び甲第4号証に記載の発明を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。
したがって、本件発明1は特許出願の際、独立して特許を受けることができるものである。
次に、本件発明2乃至本件発明5は、本件発明1を更に限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2乃至本件発明5が刊行物1乃至刊行物3及び甲第4号証に記載の発明を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。
したがって、本件発明2乃至本件発明5は特許出願の際、独立して特許を受けることができるものである。
(4)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する同法第126条第2から第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
[3]特許異議の申立てについての判断
(1)申立ての理由の概要
申立人株式会社ケーブイケーは、特許請求の範囲の請求項1、2、4及び5に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、請求項3に係る発明は、甲第1号証乃至甲第3号証に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、請求項6に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第4号証に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、いづれの請求項も特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許を受けることができないものであるから、特許を取り消すべきであると主張している。
(2)判断
申立人株式会社ケーブイケーが提出した甲第1号証乃至甲第3号証は取消理由通知で示した刊行物1乃至刊行物3であるから、本件発明1、本件発明2、本件発明4及び本件発明5は、前記[2](3)で示した理由により、甲第1号証に記載された発明と甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。また、その際に、甲第4号証と組み合わせても同様に当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。そして、本件発明4も、前記[2](3)で示した理由により、甲第1号証に記載された発明乃至甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
したがって、本件発明1乃至本件発明5は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
水栓
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 供給された流体を吐水口から吐水する水栓であって、
前記流体が流れ込む入口と前記吐水口に繋がる出口と、該入口と出口を連通する通路とを有し、樹脂を用いて形成された内部部材と、
前記内部部材を挿入する挿入穴と、該挿入穴に連通し、該内部部材を収納する収納空間とを有する外部部材とを備え、
前記内部部材は、外周面に、挿入方向先端に向かって外径が小さくなる一以上の段差を有し、
前記外部部材は、前記収納空間に収納された前記内部部材の外周面と該外部部材の内周面との間に前記内部部材の入口および/または出口と連通する間隙を形成するよう、内周面に一以上の段差を有し、
更に、
前記内部部材の端面または該内部部材の外周面に形成された段差部端面と前記外部部材の内周面に形成された段差部端面との間に設けられ、前記間隙を遮断するシール部材を備えること
を特徴とする水栓。
【請求項2】 請求項1記載の水栓であって、
前記外部部材は、前記シール部材が接触する前記内周面について二次加工が不要な樹脂材料で形成されている水栓。
【請求項3】 請求項2記載の水栓であって、
前記内部部材は、該内部部材の通路を流れる流体を制御する弁装置を備えるものである水栓。
【請求項4】 請求項3記載の水栓であって、
前記弁装置は、前記内部部材の通路に嵌挿される所定形状のハウジングを有し、該ハウジング内に流体を制御する機能の少なくとも一部を納めたものである水栓。
【請求項5】 請求項2ないし請求項4いずれか記載の水栓であって、
前記挿入穴は、前記内部部材が該内部部材の通路に流れる流体を制御する弁装置を備える場合には該弁装置と該弁装置の駆動部とを連絡する連絡口である水栓。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、水栓に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の水栓としては、湯や水を単独で吐水できることは勿論、湯水を混合して吐水する湯水混合水栓がある。この湯水混合水栓は、そのケーシング内部に湯水の混合比を調整して混合湯水の温度を変更する湯水混合機構や湯水の切換を行なう切換機構を備える。また、湯側および水側の供給配管からこの湯水混合機構に到るまでの湯側通路と水側通路のほか、湯水混合機構から吐水口に向かう混合湯水通路が、ケーシングの内周面を利用して形成されている。
【0003】
ところで、湯水混合水栓は、吐水される混合湯水の温度を変更できることから、快適な水まわりの環境の創造の一貫として急速に普及している。例えば、一般家庭の台所やバスルームは勿論、ホテルのバスルームやデパート,空港等におけるトイレ等に設置されている。
【0004】
そして、湯水混合水栓の形状自体は、その多種多様な設置場所の雰囲気に合わせてたデザインとすることが求められている。このような要求に応えるために、湯水混合水栓の外観は多様な形状のケーシングが用意され、そのケーシングの内部形状に合わせて内部部材についても多種多様な形状が求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらのデザイン化されたケーシングの内周面およびこれに合わせた内部部材の外周面の形状は、湯や水,混合湯水の通路を確保するために複雑な凹凸部を必要とし、一体成形することが困難であるという問題があった。また、複雑な形状となれば、各部の形状および強度に対する品質管理も要求される。この場合、十分な品質を維持すると、部材が複雑になるほど歩留まりが低くなるという問題があった。
【0006】
本発明の水栓は、こうした問題を解決し、高精度で、大量生産に適した水栓とする
ことを目的としてなされ、次の構成を採った。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の水栓は、
供給された流体を吐水口から吐水する水栓であって、
前記流体が流れ込む入口と前記吐水口に繋がる出口と、該入口と出口を連通する通路とを有し、樹脂を用いて形成された内部部材と、
前記内部部材を挿入する挿入穴と、該挿入穴に連通し、該内部部材を収納する収納空間とを有する外部部材とを備え、
前記内部部材は、外周面に、挿入方向先端に向かって外径が小さくなる一以上の段差を有し、
前記外部部材は、前記収納空間に収納された前記内部部材の外周面と該外部部材の内周面との間に前記内部部材の入口および/または出口と連通する間隙を形成するよう、内周面に一以上の段差を有し、
更に、
前記内部部材の端面または該内部部材の外周面に形成された段差部端面と前記外部部材の内周面に形成された段差部端面との間に設けられ、前記間隙を遮断するシール部材を備えること
を要旨とする。
請求項2記載の水栓は、
請求項1記載の水栓であって、
前記外部部材は、前記シール部材が接触する前記内周面について二次加工が不要な樹脂材料で形成されている。
【0008】
ここで、請求項2記載の水栓において、前記内部部材は、該内部部材の通路に流れる流体を制御する弁装置を備えた構成とすることもできる。この場合、前記弁装置は、前記内部部材の通路に嵌挿される所定形状のハウジングを有し、該ハウジング内に流体を制御する機能の少なくとも一部を納めた構成とすることもできる。
【0009】
また、請求項2ないし4いずれか記載の水栓において、前記挿入穴は、前記内部部材が該内部部材の通路に流れる流体を制御する弁装置を備える場合には該弁装置と該弁装置の駆動部とを連絡する連絡口とする構成とすることもできる。
【0010】
【0011】
【0012】
【作用】
以上のように構成された請求項1又は請求項2記載の水栓は、樹脂を用いて形成された内部部材を、外周面に挿入方向先端に向かって外径が小さくなる段差を有する形状とし、外部部材もその内周面に段差を有することにより、外部部材と内部部材との間に間隙を形成する。この間隙の一部を流体の通路として用いる。
そして、これら各請求項に記載の水栓では、内部部材を樹脂により形成したことにより、水栓全体の重量を軽量とすることができる。このことにより、水栓の製造場所から使用場所への運搬や水栓の取付工事等の取扱いを容易とする。ここで、内部部材の材料に使用される樹脂は、一般にはエンジニアリングプラスチックといわれ、耐熱,耐じん,耐薬品,耐難燃等に優れているプラスチックである。数値的に示せば、引張強さがおよそ50MPa以上、衝撃強さがおよそ50J/m以上、熱変形温度がおよそ100℃以上のプラスチックである(プラスチック成形加工用語辞典)。例えば、ポリアミド(PA),ポリカーボネート(PC),ポリアセタール(POM),変性ポリフェニレンエーテル(PPE),ポリエステル等のいわゆる汎用エンジニアリングプラスチックや、ポリフェニレンスルフイド(PPS),ポリアリレート(PAR),ポリエーテルイミド(PEI),ポリスルホン(PSF),ポリエーテルスルホン(PES),ポリエーテルケトン(PEK),ポリエーテルエーテルケトン(PEEK),ポリイミド(PI),ポリアミドイミド(PAI),ふつ素樹脂,液晶プラスチック,耐衝撃性および耐薬品性に優れる熱硬化性樹脂等のいわゆるスーパーエンジニアリングプラスチツクを用いることが可能である。また、これらの樹脂にガラス繊維を加えたものや、二種あるいは三種以上を混合した樹脂で形成することも可能である。
また、内部部材を樹脂により形成する場合には、内部部材の外周面の表面粗さは、射出成形するときの型の表面の粗さによって決定されるので、型の表面を滑らかにすることにより、形成される内部部材の外周面の表面を滑らかにすることも容易となる。したがって、Oリング等のシール部材が接触する部分について内部部材の研削・研磨等の二次加工を不要とする。
内部部材を樹脂により形成する場合には、単一の樹脂によって成形されたものに限られず、異なる樹脂による二層以上として形成されてもよく、あるいは、外周面または内周面に異なる樹脂による層を有してもよい。
特に、請求項1記載の水栓では、内部部材を外部部材に嵌挿する際、シール部材はシール部以外の外部部材に接触することがなく、シール部材の位置ずれや損傷を防止する。また、挿入方向への圧着強さを調整することができるので、最適なシール効果を得ることができる。
請求項2記載の水栓では、間隙遮断のためのシール部材が接触する外部部材内周面について二次加工が不要な樹脂材料で外部部材を形成するので、この形成された外部部材の内周面の表面は二次加工無しで滑らかなものとなる。
【0013】
また、これら請求項1又は請求項2記載の水栓は、水,湯,混合湯水,石鹸水,薬剤水,ムース,アルコール,食塩水などの流体に対して一般的に使用される状態でのすべての水栓を含む。さらに、水栓内部に弁装置を備えたものに限られず、弁装置がないもの、例えば、水栓本体に弁装置がなくシャワーヘッド内に止水弁を備える場合等をも含む。
【0014】
請求項3記載の水栓は、弁装置が内部部材に有する通路に流れる流体に対して流体の流れの停止,切り換え,2種以上の流体の混合,混合割合の調節,流速の調節等の制御をする。
【0015】
請求項4記載の水栓は、弁装置を所定形状のハウジングに収納することで、水栓の組み付けを容易とし、弁装置に不良が生じた場合の対応を容易とする。
【0016】
請求項5記載の水栓は、挿入穴を、弁装置の操作部の連絡口とすることにより、外部部材に設ける穴を少なくし、外部部材の強度を維持する。
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【実施例】
以上説明した本発明の構成・作用を一層明らかにするために、以下本発明の好適な一実施例としての湯水混合水栓について説明する。
【0023】
図1は本発明の一実施例に係る湯水混合水栓の平面図である。この湯水混合水栓は、本体10と、図示しない水道管に接続される給水脚金具20と、図示しない給湯機からの配管に接続される給湯脚金具40とを備えている。本体10は、外側ケーシング50内に主要な機能部品を収納しており、その両端には、温度調節ハンドル80および切換ハンドル160とを備えている。
【0024】
図2は、給水脚金具20の構造を示す図1のI-I線断面図である。給水脚金具20は、止水弁30を組み込んだハウジング22と、後述する外側ケーシング50の水入り口51に接続される接続金具24と、接続金具24とハウジング22とを接続・固定する締め具28とを備えている。接続金具24は、一端の出口29で、外側ケーシング50の水入り口51に嵌合され、その先端において後述する外側ケーシング50内に形成される水流路140と導通する。他端には、螺刻部を有し、螺刻部と締め具28を螺合することで、ハウジング22に接続・固定される。ハウジング22の他端には、入り口21が形成され、入り口21外周には水道管に螺合するよう螺刻部が設けられている。なお、接続金具24とハウジング22との間には樹脂製のパッキン26が装着されており、液密になるようシールされている。
【0025】
ハウジング22に組み込まれた止水弁30は、ハウジング22に液密に締結されたキャップ34と、キャップ34とハウジング22にガイドされた弁体32と、ストレーナ38とを有する。弁体32は、ハウジング22とのガイド部35と、端部36とを有しており、ガイド部35には通水時に水の通路となる開口部37が設けられている。ガイド部35は、ハウジング22と噛み合っており、弁体32を回転させることにより、弁体32が軸方向にスライドする構成となっている。したがって、弁体32を回転させて端部36とハウジング22に形成された弁座23とを着脱させることにより、止水または通水する。通水時には、端部36と弁座23との隙間から流入した水は、開口部37を通り、ストレーナ38によりゴミを除去した後、出口29を通って本体10に流れ込む。
【0026】
給湯脚金具40は、給水脚金具20と同一の構成を備え、図示しない給湯管に接続されており、湯を後述する湯流路130(図3参照)に導入する。この給湯脚金具40の構成については、その説明を省略する。
【0027】
図3は、図1のII-I1線断面図である。本体10の外側ケーシング50は、本願発明における外部部材に該当し、同図に示すように、この外側ケーシング50内に収納された混合弁ケーシング62と、同じく外側ケーシング50内に収納された切換弁ケーシング66と、混合弁ケーシング62内に収納された混合弁カートリッジ70と、切換弁ケーシング66内に収納された切換弁カートリッジ150と、カラン出口170と、シャワー出口180とを備えている。また、外側ケーシング50には、給水脚金具20に接続された水入り口51と、給湯脚金具40に接続された湯入り口52と、カラン出口170と、シャワー出口180とが形成されている。外側ケーシング50の内周面には、両開端部から内部に向けて段差部54a,54b,54c,56a,56b,56c,56dが形成されている。
【0028】
一方、混合弁ケーシング62は、図示するように外部部材たる外側ケーシング50に収納されており、本願発明における内部部材に該当する。そして、この混合弁ケーシング62の外周面には、外側ケーシング50の内周面とでシールするための○リング用の凸部63と、凸部63と挿入端との間に段差部64とが形成されている。凸部63と外側ケーシング50の内周面とには若干のクリアランスが設けられており、Oリング191aによりシールされている。また、段差部64での外周半径の大きい側の外周面と外側ケーシング50の段差部54aでの内径の小さい側の内周面とにも若干のクリアランスが設けられており、Oリング191bによりシールされている。したがって、混合弁ケーシング62の凸部63と外側ケーシング50の段差部54aとにより環状の空間が形成され、ここが、湯流路130として用いられる。また、混合弁ケーシング62の挿入端の外周面と外側ケーシング50の段差部54bでの内径の小さい側の内周面とにも若干のクリアランスが設けられており、同じく○リング191cによりシールされている。したがって、混合弁ケーシング62の段差部64と外側ケーシング50の段差部54bとの間にも環状の空間が形成され、ここが、水流路142として用いられる。
【0029】
また、同様に切換弁ケーシング66も、図示するように外部部材たる外側ケーシング50に収納されており、本願発明における内部部材に該当する。そして、この切換弁ケーシング66の外周面には、凸部67と、段差部68a,68bとが形成されており、凸部67と外側ケーシング50の段差部56aとによりシャワー出口180への混合湯水の流路184、段差部68aと外側ケーシング50の段差部56bとにより水流路140、段差部68bと外側ケーシング50の段差部56cとによりカラン出口170への混合湯水の流路174とが形成されている。ここでも、各流路を遮断するため、各段差部および挿入端の外周にはOリング196a,196b,196c,196dが設けられている。
【0030】
外側ケーシング50には、水流路140と水流路142とが連通するように通路58が形成されている。また、外側ケーシング50には、カラン出口170への混合湯水の流路174とカラン出口170が連通するように通路176が形成されている。
【0031】
水入り口51から水流路140に流入した水は、通路58と水流路142を通って混合弁カートリッジ70に流れ込み、湯は、湯入り口52から流入し、湯流路130を通って混合弁カートリッジ70に流れ込む。そして、混合弁カートリッジ70において湯水が混合され、混合湯水が切換弁カートリッジ150を経て、カラン出口170またはシャワー出口180から流出する。なお、混合弁カートリッジ70および切換弁カートリッジ150の構造については、後で詳しく説明する。
【0032】
外側ケーシング50,混合弁ケーシング62および切換弁ケーシング66は、エンジニアリングプラスチックの一種であるポリフェニレンスルフィド(PPS)により形成されている。実施例の外側ケーシング50等に用いたPPSは、耐熱性・耐熱水性および耐圧性が特に優れたプラスチックである。実施例では、外側ケーシング50等をPPSにより形成したが、PPS以外のプラスチックであっても性能的に優れたプラスチックであれば使用できることは勿論である。例えば、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリェーテルスルフォン(PES)、ポリスルフォン(PSF)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルイミド(PEI)等も使用可能である。
【0033】
次に、混合弁ケーシング62内に収納される混合弁カートリッジ70について説明する。混合弁カートリッジ70は、流体を制御する弁装置であり、湯水を混合する感温ばね室90と、バイアスばね室100と、スライド室120とを備えている。混合弁カートリッジ70には、混合弁ケーシング62とにより湯流路134が形成されると共に、この湯流路134からバイアスばね室100への湯の通路である湯側ポート138を有する湯側弁座136が形成されている。この湯流路134は、混合弁ケーシング62に形成された孔133を介して湯流路130と連通している。同様に、混合弁カートリッジ70には、混合弁ケーシング62とにより水流路144が形成されると共に、この水流路144から感温ばね室90への水の通路である水側ポート148を有する水側弁座146が形成されている。この水流路144は、混合弁ケーシング62に形成された孔143を介して水流路142と連通している。
【0034】
湯側弁座136と水側弁座146との間には、湯側弁座136および水側弁座146と着脱する可動弁体110が摺動自在に嵌合されている。この可動弁体110は、感温ばね室90に収納された感温ばね92のばね力をばね受け94を介して受けると共に、バイアスばね室100に収納されたバイアスばね102のばね力を受け、これらのばね力の釣合により、その位置が定まる。また、この可動弁体110には、バイアスばね室100と感温ばね室90とを連通する連通孔111が形成されている。
【0035】
よって、湯流路134に流入した湯は、可動弁体110と湯側弁座136との間の湯側ポート138を通過してバイアスばね室100に流入し、その後連通孔111を通過して感温ばね室90内に流入する。一方、水流路144に流入した水は、可動弁体110と水側弁座146との間の水側ポート148を通過して感温ばね室90内に流入する。このため、この感温ばね室90内において湯水が混合され、その混合比は、可動弁体110とその両側の弁座との間の間隙の比で定まる。混合弁カートリッジ70の感温ばね室90において混合された湯水は、後述の切換弁カートリッジ150を経て流路174または流路184に流入し、カラン出口170またはシャワー出口180から吐水される。
【0036】
感温ばね92は、温度に応じて弾性係数が変化する金属によって形成されている。温度に応じて弾性係数が変化する金属材料としては、ニッケル・チタン合金からなる形状記憶合金(SMA)の範疇に属する合金が知られている。このSMAが温度に応じて弾性係数を変化させることにより、感温ばね92のばね定数が温度に応じて変化する。一方、バイアスばね102は温度に関して一定のばね定数を有する通常のばね材料により形成されている。
【0037】
スライド室120には、バイアスばね102のばね受け122が軸方向変位自在、かつ回転不能に混合弁カートリッジ70の内側にスプライン嵌合されており、ばね受け122の内ねじには、温度調節ハンドル80に固定されたウォーム124が噛み合っている。したがって、温度調節ハンドル80を回転させることにより、ウォーム124が回転し、ばね受け122が軸方向にスライドして、バイアスばね102の付勢量が変化する。この結果、感温ばね92とバイアスばね102との釣合が崩れて可動弁体110は新たな釣合の位置まで変位し、可動弁体110とその両側の弁座との間の新たな間隙の比となるよう湯水の混合比が変化して、混合湯水の温度が変わる。
【0038】
温度調節ハンドル80によりバイアスばね102の付勢量を調節することにより出湯温度を設定した後は、次に説明するように感温ばね92とバイアスばね102により出湯温度が調節される。
【0039】
出湯開始後、混合湯水が設定温度となり、給湯機からの給湯温度,水道水温または流量等の条件が定常状態にある時には、可動弁体110は、感温ばね室90内の混合湯水の温度により発生する感温ばね92のばね力とバイアスばね102のばね力との釣合により位置が決定され、静止している。この状態から、給湯機からの給湯温度、水道水温または流量等の条件が外乱により変動し、混合湯水の温度が設定温度より高くなると、感温ばね92は、この温度変化に応じてばね定数を大きい側に変化させ、ばね力を増大させる。このことにより、感温ばね92のばね力とバイアスばね102のばね力との釣合が崩れ、感温ばね92は、バイアスばね102の予荷重を増加させ、可動弁体110を図3左方に変位させる。この可動弁体110の変位に従って、湯の割合が減少し、混合湯水の温度が低下する。反対に、混合湯水の温度が設定温度より低くなると、感温ばね92は、この温度変化に応じてばね定数を小さな側へ変化させ、そのばね力を減少させる。このことにより、感温ばね92のばね力とバイアスばね102のばね力との釣合が崩れ、バイアスばね102が感温ばね92の付勢力に抗して可動弁体110を図3右方に変位させる。この可動弁体110の変位に従って、水の割合が減少し、混合湯水の温度が上昇する。こうした感温ばね92の作用により混合湯水の温度は設定温度に保持される。
【0040】
切換弁ケーシング66内に収納された切換弁カートリッジ150も、流体を制御する弁装置であり、混合湯水の吐水・止水の切換および吐水量の調整を行なうための切換弁152をハウジング153内に回動自在に収納して備える。また、その外周には、混合湯水を流路174に流入させるための環状の流路172と同じく混合湯水を流路184に流入させるための環状の流路182とを備える。そして、内側ケーシング60に切換弁カートリッジ150が水密に収納されることで、この流路172と流路174とは、切換弁ケーシング66に形成された孔173を介して連通する。同様に、流路182と流路184とは、切換弁ケーシング66に形成された孔183を介して連通する。この切換弁152には、感温ばね室90において混合された湯水が切換弁152の端面から流入する流入室154が形成されており、この流入室154を覆うよう、切換弁152には弁体155が取り付けられている。一方、ハウジング153には、流入室154と流路172とを連通する湯水通過孔156と、流入室154と流路182とを連通する湯水通過孔157とが穿孔されている。この湯水通過孔156および157は、切換弁152の回転により弁体155を介してその開口面積を変化させる。また、切換弁152は切換ハンドル160に固定されており、切換ハンドル160を回転させることにより、切換弁152が回転する。
【0041】
よって、切換ハンドル160を介して切換弁152を回転させて、切換弁152の弁体155により湯水通過孔156を開口することで、その開口面積に応じた吐水量の混合湯水が、流路172,切換弁ケーシング66の孔173,流路174を経てカラン出口170から吐水される。また、弁体155により湯水通過孔157を開口することで、その開口面積に応じた吐水量の混合湯水が、流路182,切換弁ケーシング66の孔183,流路184を経てシャワー出口180から吐水される。弁体155により湯水通過孔156および157のいずれをも開口しないことで止水する。したがって、上記した切換弁カートリッジ150により、カラン出口170からの混合湯水の吐水・止水、シャワー出口180からの混合湯水の吐水・止水の切替および吐水量の調整がなされる。
【0042】
以上説明した実施例の湯水混合水栓によれば、混合弁ケーシング62および切換弁ケーシング66を挿入方向に向かって外径が段階的に小さくなる形状としたので、一体射出成形により形成することが容易となり、大量生産に適した形状とすることができる。また、混合弁ケーシング62および切換弁ケーシング66を挿入方向に向かって外形が段階的に小さくなる形状とすることにより、混合弁ケーシング62または切換弁ケーシング66を外側ケーシング50に挿入する際に、シール部材が横ずれする距離を小さくすることができる。例えば、混合弁カートリッジ70の挿入端に設置される○リング191cは、外側ケーシング50の奥深い位置に設けられるが、外側ケーシング50の段差部54bから数ミリ外側ケーシング50の内周面に接触しながら横ずれするだけでよい。したがって、シール部材の損傷を軽減することができる。
【0043】
混合弁ケーシング62および切換弁ケーシング66をPPSで形成したので、湯水混合水栓全体の重量が軽くなり、湯水混合水栓の運搬や取付工事時に容易に取り扱うことができる。さらに、外側ケーシング50をもPPSにより形成したので、湯水混合水栓全体の重量を軽くすることができる。また、混合弁ケーシング62および切換弁ケーシング66をPPSにより形成したので、滑らかな表面とすることができ、外周面を研削・研磨等する工程を設ける必要がなく、短時間で組み立てることができる。さらに、外側ケーシング50をもPPSにより形成したので、内周面を研削・研磨等をする必要がない。
【0044】
本実施例では、外側ケーシング50をPPSにより形成したが、金属材料を用いて形成する構成、例えば、鋳型形成する構成、金属パイプにより形成する構成であってもかまわない。また、混合湯水の温度制御にSMAによる感温ばね92を用いる構成としたが、ワックスエレメントを用いる構成も差し支えない。もとより、感温素子による温度制御を行なわない構成であってもかまわない。また、本実施例では、カランとシャワーとの選択により吐水する構成としたが、カランのみの吐水またはシャワーのみの吐水とする構成であってもかまわない。
【0045】
また、外側ケーシング50の外観形状を円筒形としたが多角柱形や楕円柱形も好適である。内部部材である混合弁ケーシング62および切換弁ケーシング66の外観形状も円形である必要はなく、多角形や楕円であっても差し支えない。さらに、混合弁カートリッジ70および切換弁カートリッジ150を他の水栓でも適合するカートリッジ形式のものを用いたので、混合弁ケーシング62および切換弁ケーシング66の内周面の内径は一定であるが、内周面に凹凸部を設けた構成であってもかまわない。
【0046】
次に本発明の第2の実施例について図4を用いて説明する。図4は第2実施例の湯水混合水栓の断面図である。第2実施例の湯水混合水栓は、第1実施例の湯水混合水栓における外側ケーシング50と混合弁ケーシング62とにより形成される各流路の構成および外側ケーシング50と切換弁ケーシング66とにより形成される各流路の構成が異なる点を除き、同一の構成を備える。したがって、第2実施例の湯水混合水栓の外側ケーシング50aと混合弁ケーシング62aおよび切換弁ケーシング66aとについて以下に説明し、その他第1実施例と同一構成部分(混合弁カートリッジ70および切換弁カートリッジ150等)についての説明は省略する。
【0047】
外側ケーシング50aは、第1の実施例の外側ケーシング50と同様、本願発明における外部部材に該当し、その内周面には、開端部から内部に向けて段差部55a,55b,55c,57a,57b,57cが形成されている。混合弁ケーシング62aは、第1の実施例の混合弁ケーシング62と同様、本願発明における内部部材に該当し、その外周面には、Oリング用の凸部63aと、段差部65a,65bとが形成されている。段差部65aは、段差部65aの段差の左右(図4中の左右)において、大きい方(図4中段差部65aの左側)の外径は、外側ケーシング50の段差部55aでの大きい方の内径より数ミリ小さく、小さい方の内径より数ミリ大きく形成され、段差部65aの小さい方(図中段差部65aの右側)の外径は、外側ケーシング50の段差部55aの小さい方の内径より数ミリ小さく形成されている。したがって、混合弁ケーシング62aの段差部65aの端面と外側ケーシング50aの段差部55aの端面とが係合することにより、段差部65aの左右(図4中の左右)に環状の空間を形成するので、ここを、湯流路130aと水流路142aとして用いることができる。また、混合弁ケーシング62aの段差部65aの端面にはOリング設置用の溝が形成されており、ここに設置されたOリング192bが、外側ケーシング50aと混合弁ケーシング62aとが螺合することにより外側ケーシング50aの段差部55aの端面に圧着され、流路130aと流路142aとをシールする。また、混合弁ケーシング62aの段差部65bの端面にもOリング用の溝が形成されており、設置された○リング192cが、外側ケーシング50aの段差部55bの端面に圧着されることにより、流路142aをシールする。
【0048】
切換弁ケーシング66aは、第1の実施例の切換弁ケーシング66と同様、本願発明における内部部材に該当し、その外周面には、混合弁ケーシング62aの外周面に形成された段差部65aと同様な形状の段差部69aと69bとが形成されている。この段差部69aと69bが、外側ケーシング50aの段差部57aと57bにそれぞれ係合することにより、段差部69aと69bの左右(図4中の左右)に環状の空間を形成する。これにより、シャワー出口180への混合湯水の流路184a,水流路140aおよびカラン出口170への混合湯水の流路174aが形成される。各流路は各段差部端面に設置されたOリング197b,197c,197dによりシールされる。
【0049】
以上説明した第2実施例の湯水混合水栓によれば、外側ケーシング50aの段差部端面と混合弁ケーシング62aまたは切換弁ケーシング66aの段差部端面との間にOリングを設置し、各流路をシールするので、Oリングに加わる荷重を調節することができ、シールカを強くすることができる。したがって、液密性を高くすることができる。また、段差部端面に設置されたOリングは、混合弁ケーシング62aを外側ケーシング50aに挿着する際、外側ケーシング50aの内周面と接触することがないので、Oリングの接触による損傷を防止することができる。なお、その他の効果については第1実施例と同一である。
【0050】
次に第1実施例および第2実施例における外側ケーシング50,50aと混合弁ケーシング62,62aまたは切換弁ケーシング66,66aとの組み合わせによる流路の形成方法、および、流路のシール方法について説明する。図5は外部部材Aと内部部材Bとによる流路C,Dの形成および流路のシールを示した模式図である。同図に示した外部部材Aは、実施例での外側ケーシング50,50aを模式したものであり、内部部材Bは、実施例での混合弁ケーシング62,62aまたは切換弁ケーシング66,66aを模式したものである。
【0051】
図5(a)では、内部部材Bには、その外周面に外部部材Aへの挿入方向に向かって段階的に外径が小さくなる段差部が設けられており、外部部材Aには、その内周面に内部部材Bの外周面の段差に応じて段差が設けられている。この内部部材Bの段差と外部部材Aの段差を組み合わせることにより流路C,Dが形成される。シール部材E,F,Gは、各段差部における外部部材Aの内周面と内部部材Bの外周面との間に設置され、流路C,Dを遮断する。第1実施例の外側ケーシング50と混合弁ケーシング62または切換弁ケーシング66との組み合わせがこの方法による流路の形成・シールである。
【0052】
図5(b)では、内部部材Bには、その外周面に外部部材Aへの挿入方向に向かって段階的に外径が小さくなる段差部が設けられており、外部部材Aには、その内周面に内部部材Bの外周面の段差間の長さに合わせて段差が設けられている。この内部部材Bの段差と外部部材Aの段差を組み合わせることによりにより流路C,Dが形成される。シール部材F,Gは、内部部材Bの各段差部の端面に設置され、外部部材Aの対応する段差部の端面に押しつけられることにより、流路C,Dを遮断する。第2実施例の外側ケーシング50aと混合弁ケーシング62aまたは切換弁ケーシング66aとの組み合わせがこの方法による流路の形成・シールである。
【0053】
図5(c)では、内部部材Bには、その外周面に外部部材Aへの挿入方向に向かって段階的に外径が小さくなる段差部が設けられており、外部部材Aには、その内周面に内部部材Bの外周面の段差部に接地する凸部が設けられている。この内部部材Bの段差と外部部材Aの凸部を組み合わせることによりにより流路C,Dが形成される。シール部材F,Gは、各段差部における内部部材Bの外周面と外部部材Aの凸部との間に設置され、流路C,Dを遮断する。また、図5(d)では、内部部材Bは一段の段差部を有するのみで、外部部材に長さの等しい複数の凸部を設けることにより、流路C,Dを形成する。シール部材F,Gは、外部部材Aの凸部と内部部材Bと外周面の間に設置され、流路C,Dを遮断する。
【0054】
以上説明した外部部材Aと内部部材Bとの組み合わせによる流路の形成方法および流路のシール方法は、単一の流路の形成方法および流路のシール方法により水栓を形成する必要はなく、複数の形成方法およびシール方法を用いて使用しても好適なことは勿論である。
【0055】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、例えば、外側ケーシング50が金属材料により形成された構成など、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1又は請求項2記載の水栓では、内部部材の外周面に、
挿入方向先端に向かって外径が小さくなる段差を有する形状としたので、外部部材と内部部材との間に間隙を形成することができ、この間隙の一部を流体の通路として用いることができる。
また、これら請求項1又は請求項2記載の水栓では、内部部材を樹脂により形成するので、金属材料に比較して比重が小さく、水栓全体の重量を軽量にすることができ、水栓の取扱いを容易とする。また、内部部材の外周面の表面粗さは、射出成形するときの型の表面の粗さによって決定されるので、型の表面を滑らかにすることにより、形成される内部部材の外周面の表面を滑らかにすることができる。したがって、Oリング等のシール部材が接触する部分について内部部材の研削・研磨等の二次加工を不要とすることができる。さらに、内部部材の形状が簡単な形状とすることができるので、この場合、射出一体成形が容易となり、大量生産することができる。
特に、請求項1記載の水栓では、内部部材を外部部材に嵌挿する際、シール部材はシール部以外の外部部材に接触することがなく、シール部材の位置ずれや損傷を防止することができる。また、内部部材の挿入方向への圧着強さを調整することができるので、シール部材に適した圧着強さを得ることができ、最適なシール効果を得ることができる。
請求項2記載の水栓では、間隙遮断のためのシール部材が接触する外部部材内周面について二次加工が不要な樹脂材料で外部部材を形成するので、この形成された外部部材の内周面の表面は二次加工無しで滑らかなものとなる。よって、樹脂を用いて形成された内部部材で二次加工が不要なことと相まって、内外部材共にシール部材が接触する部分について二次加工が不要となる。
【0057】
請求項3記載の水栓では、弁装置を備えたので、内部部材に有する通路に流れる流体に対して、流体の流れの停止,切り換え,2種以上の流体の混合,混合割合の調節,流速の調節等の種々の制御をすることができる。
【0058】
請求項4記載の水栓では、弁装置を所定形状のハウジングに収納したものを用いたので、弁装置の組立を水栓の組立と別に行なうことができる。また、水栓に弁装置を組み付ける場合にも部品数を少なくすることができるので、水栓の組み付けを容易とすることができる。さらに、弁装置に不良が生じた場合でも弁装置を容易に交換することができる。
【0059】
請求項5記載の水栓では、挿入穴を、弁装置の操作部の連絡口に兼用するので、外部部材に設ける穴を少なくすることができ、この結果、外部部材の強度を維持することができる。
【0060】
【0061】
【0062】
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施例である湯水混合水栓の外観平面図である。
【図2】
第1実施例の湯水混合水栓の給水脚金具20を含む断面図である。
【図3】
第1実施例の湯水混合水栓の本体断面図である。
【図4】
第2実施例の湯水混合水栓の本体断面図である。
【図5】
第1実施例および第2実施例における外部部材Aと内部部材Bとによる流路C,Dの形成および流路のシールを示した模式図である。
【符号の説明】
10…本体
20…給水脚金具
21…入り口
22…ハウジング
23…弁座
24…接続金具
26…パッキン
28…締め具
29…出口
30…止水弁
32…弁体
34…キャップ
35…ガイド部
36…端部
37…開口部
38…ストレーナ
40…給湯脚金具
50,50a…外側ケーシング
51…水入り口
52…湯入.り口
54a,54b,54c…段差部
55a,55b,55c…段差部
56a,56b,56c,56d…段差部
57a,57b,57c…段差部
58…通路
59a,59b…螺刻部
62,62a…混合弁ケーシング
63,63a…凸部
63c…螺刻部
64…段差部
65a,65b…段差部
66,66a…切換弁ケーシング
67,67a…凸部
67c…螺刻部
68a,68b…段差部
69a,69b,69c…段差部
70…混合弁カートリッジ
80…温度調節ハンドル
90…感温ばね室
100…バイアスばね室
110…可動弁体
111…連通孔
120…スライド室
124…ウォーム
130,130a…湯流路
133…孔
134…湯流路
136…湯側弁座
138…湯側ポート
140,140a…水流路
142,142a…水流路
143…孔
144…水流路
146…水側弁座
148…水側ポート
150…切換弁カートリッジ150
152…切換弁
153…ハウジング
154…流入室
155…弁体
156…湯水通過孔
157…湯水通過孔
160…切換ハンドル160
170…カラン出口
172…流路
173…孔
174,174a…流路
176…通路
180…シャワー出口
182…流路
183…孔
184,184a…流路
191a,191b,191c…Oリング
196a,196b,196c,196d…Oリング
 
訂正の要旨 本件特許第2731840号発明の明細書を、下記(あ)〜(ひ)のとおり訂正する。
(あ)特許請求の範囲の請求項1の記載を、特許請求の範囲の減縮を目的として、下記のとおり訂正する。
特許公報第1頁第1欄第15行の「内周面にー以上の段差を有する」を
「内周面にー以上の段差を有し、更に、前記内部部材の端面または該内部部材の外周面に形成された段差部端面と前記外部部材の内周面に形成された段差部端面との間に設けられ、前記間隙を遮断するシール部材を備える」
(い)特許請求の範囲の請求項2の記載を、特許請求の範囲の減縮を目的として、下記のとおり訂正する。
特許公報第2欄第2〜4行の「請求項1記載の水栓であって、前記内部部材は、該内部部材の通路を流れる流体を制御する弁装置を備えるものである水栓。」を
「請求項1記載の水栓であって、前記外部部材は、前記シール部材が接触する前記内周面について二次加工が不要な樹脂材料で形成されている水栓。」
(う)特許請求の範囲の請求項3の記載を、特許請求の範囲の減縮を目的として、下記のとおり訂正する。
特許公報第2欄第6〜8行の「前記弁装置は、前記内部部材の通路に嵌挿される所定形状のハウジングを有し、該ハウジング内に流体を制御する機能の少なくとも一部を納めたものである水栓。」を
「前記内部部材は、該内部部材の通路を流れる流体を制御する弁装置を備えるものである水栓。」
(え)特許請求の範囲の請求項4の記載を、特許請求の範囲の減縮を目的として、下記のとおり訂正する。
特許公報第2欄第9〜13行の「請求項1ないし3いずれか記載の水栓であって、前記挿入穴は、前記内部部材が該内部部材の通路に流れる流体を制御する弁装置を備える場合には該弁装置と該弁装置の駆動部とを連絡する連絡口である水栓。」を
「請求項3記載の水栓であって、前記弁装置は、前記内部部材の通路に嵌挿される所定形状のハウジングを有し、該ハウジング内に流体を制御する機能の少なくとも一部を納めたものである水栓。」
(お)特許請求の範囲の請求項5の記載を、特許請求の範囲の減縮を目的として、下記のとおり訂正する。
特許公報第2欄第14行〜第3欄第3行の「請求項1ないし請求項4いずれか記載の水栓であって、前記外部部材の内周面と前記内部部材の外周面との間に設けられ、前記間隙を遮断するシール部材を備えた水栓。」を
「請求項2ないし請求項4いずれか記載の水栓であって、前記挿入穴は、前記内部部材が該内部部材の通路に流れる流体を制御する弁装置を備える場合には該弁装置と該弁装置の駆動部とを連絡する連絡口である水栓。」
(か)特許請求の範囲の請求項6の記載を、特許請求の範囲の減縮を目的として、下記のとおり訂正する。
特許公報第3欄第4〜6行の「請求項1ないし請求項4いずれか記載の水栓であって、前記内部部材の端面または該内部部材の外周面に形成された段差部端面と前記外部部材の内周面との間に設けられ、前記間隙を遮断するシール部材を備えた水栓。」を削除。
発明の詳細な説明について
(き)明細書段落番号【0007】(特許公報第4欄第9行)の「内周面にー以上の段差を有することを要旨とする。」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、下記のとおり訂正する。
「内周面にー以上の段差を有し、更に、前記内部部材の端面または該内部部材の外周面に形成された段差部端面と前記外部部材の内周面に形成された段差部端面との間に設けられ、前記間隙を遮断するシール部材を備えることを要旨とする。請求項2記載の水栓は、請求項1記載の水栓であって、記外部部材は、前記シール部材が接触する前記内周面について二次加工が不要な樹脂材料で形成されている水栓。」
(く)明細書段落番号【0008】(特許公報第4欄第11行)の「請求項1記載」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、下記のとおり訂正する。
「請求項2記載」
(け)明細書段落番号【0009】(同公報第4欄第18行)の「請求項1ないし3」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、下記のとおり訂正する。
「請求項2ないし4」
(こ)明細書段落番号【0011】(同公報第4欄第24〜31行)の「請求項1ないし4いずれか記載・・・構成することもできる。」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、削除する。
(さ)明細書段落番号【0012】(同公報第4欄第33行)の「請求項1記載」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、下記のとおり訂正する。
「請求項1又は請求項2記載」
(し)明細書段落番号【0012】(同公報第4欄第38〜39行)の「この請求項1記載」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、下記のとおり訂正する。
「これら各請求項に記載」
(す)明細書段落番号【0012】(同公報第5欄第18行)の「研削・研磨等」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、下記のとおり訂正する。
「内部部材の研削・研磨等」
(せ)明細書段落番号【0012】(同公報第5欄第23行)の「層を有してもよい。」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、下記のとおり訂正する。
「層を有してもよい。特に、請求項1記載の水栓では、内部部材を外部部材に嵌挿する際、シール部材はシール部以外の外部部材に接触することがなく、シール部材の位置ずれや損傷を防止する。また、挿入方向への圧着強さを調整することができるので、最適なシール効果を得ることができる。請求項2記載の水栓では、間隙遮断のためのシール部材が接触する外部部材内周面について二次加工が不要な樹脂材料で外部部材を形成するので、この形成された外部部材の内周面の表面は二次加工無しで滑らかなものとなる。」
(そ)明細書段落番号【0013】(同公報第5欄第24行)の「請求項1記載」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、下記のとおり訂正する。
「これら請求項1又は請求項2記載」
(た)明細書段落番号【0014】(同公報第5欄第31行)の「請求項2記載」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、下記のとおり訂正する。
「請求項3記載」
(ち)明細書段落番号【015】(同公報第5欄第35行)の「請求項3記載」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、下記のとおり訂正する。
「請求項4記載」
(つ)明細書段落番号【0016】(同公報第5欄第38行)の「請求項4記載」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、下記のとおり訂正する。
「請求項5記載」
(て)明細書段落番号【0020】及び【0021】(同公報第5欄第44行〜第6欄第3行)の「請求項5記載の水栓は、・・・得ることができる。」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、削除する。
(と)明細書段落番号【0056】(同公報第14欄第39行)の「請求項1記載」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、下記のとおり訂正する。
「請求項1又は請求項2記載」
(な)明細書段落番号【0056】(同公報第14欄第44行)の「この請求項1記載」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、下記のとおり訂正する。
「これら請求項1又は請求項2記載」
(に)明細書段落番号【0056】(同公報第15欄第2行)の「研削・研磨等」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、下記のとおり訂正する。
「内部部材の研削・研磨等」
(ぬ)明細書段落番号【0056】(同公報第15欄第5行)の「大量生産することができる。」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、下記のとおり訂正する。
「大量生産することができる。特に、請求項1記載の水栓では、内部部材を外部部材に嵌挿する際、シール部材はシール部以外の外部部材に接触することがなく、シール部材の位置ずれや損傷を防止する。また、内部部材の挿入方向への圧着強さを調整することができるので、シール部材に適した圧着強さを得ることができ、最適なシール効果を得ることができる。
請求項2記載の水栓では、間隙遮断のためのシール部材が接触する外部部材内周面について二次加工が不要な樹脂材料で外部部材を形成するので、この形成された外部部材の内周面の表面は二次加工無しで滑らかなものとなる。よって、樹脂を用いて形成された次加工が不要なことと相まって、内外部材共にシール部材が接触する部分について二次加工が不要となる。」
(ね)明細書段落番号【0057】(同公報第15欄第6行)の「請求項2記載」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、下記のとおり訂正する。
「請求項3記載」
(の)明細書段落番号【0058】(同公報第15欄第11行)の「請求項3記載」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、下記のとおり訂正する。
「請求項4記載」
(は)明細書段落番号【0059】(同公報第15欄第18行)の「請求項4記載」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、下記のとおり訂正する。
「請求項5記載」
(ひ)明細書段落番号【0061】及び【0062】(同公報第15欄第23〜35行)の「請求項5記載の水栓では、・・・得ることができる。」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、削除する。
異議決定日 1999-12-13 
出願番号 特願平5-110951
審決分類 P 1 651・ 121- YA (F16K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 八日市谷 正朗阿部 寛  
特許庁審判長 西野 健二
特許庁審判官 山口 直
林 晴男
登録日 1997-12-26 
登録番号 特許第2731840号(P2731840)
権利者 東陶機器株式会社
発明の名称 水栓  
代理人 下出 隆史  
代理人 下出 隆史  
代理人 五十嵐 孝雄  
代理人 五十嵐 孝雄  

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