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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B29C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B29C
管理番号 1012422
異議申立番号 異議1999-72223  
総通号数 10 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-06-13 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-06-09 
確定日 2000-04-03 
異議申立件数
事件の表示 特許第2833980号「易裂性フィルム及びこの製造方法」の請求項1,2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2833980号の請求項1,2の係る特許を維持する。 
理由 1.本件発明
本件特許第2833980号(平成5年11月29日出願、平成10年10月2日設定登録。)の請求項1及び請求項2に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】ナイロン6(Ny6)を55〜85重量部及びメタキシリレンアジパミド(MXD6)を15〜45重量部含有する(但し、Ny6+MXD6=100重量部)と共に、両者の270℃、剪断速度102 sec-1での溶融粘度の比(ηMXD6/ηNy6)が0.2〜10.0であり、かつMD方向(フィルムの移動方向)及びTD方向(フィルムの幅方向)共に2.8倍以上の倍率で延伸された易裂性フィルム。
【請求項2】ナイロン6(Ny6)を55〜85重量部及びメタキシリレンアジパミド(MXD6)を15〜45重量部含有する(但し、Ny6+MXD6=100重量部)と共に、両者の270℃、剪断速度102 sec-1での溶融粘度の比(ηMXD6/ηNy6)が0.2〜10.0である原料を混合し、混合物を溶融押し出しした後、冷却した原反フィルムをMD方向(フィルムの移動方向)及びTD方向(フイルムの幅方向)共に2.8倍以上の倍率で延伸することを特徴とする易裂性フィルムの製造方法。」
2.申立ての理由の概要
特許異議申立人東洋紡績株式会社は、証拠として甲第1号証(特開昭51一29193号公報)及び甲第2号証(特許第2833970号掲載公報)を提出し、本件請求項1及び請求項2に係る発明は、甲第1号証の刊行物に記載された発明と同一であるか、あるいは、甲第1号証の刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許は特許法第29条第1項第3号の規定あるいは特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、本件特許を取り消すべきである旨主張している。
3.甲各号証の記載事項
甲第1号証の刊行物には、二軸延伸ポリアミドフイルムの製造法の発明が開示されており、その特許請求の範囲には「脂肪族ポリアミド80〜5重量%、およびメタキシリレンジアミンと、もしくはメタキシリレンジアミンおよび全量の30%以下のパラキシリレンジアミンを含む混合キシリレンジアミンと、炭素数6〜10のα,ω一脂肪族ジカルボン酸の1種以上と、から得られる構成単位を分子鎖中に少なくとも70モル%以上含有する重合体20〜95重量%とを含有する混合重合体を膜状で押出して未延伸フイルムを得、次いでフイルム材料の2次転移点温度以上でかつフイルム材料の融点-10℃以下の温度で2〜6倍延伸し、しかる後上記延伸方向とほぼ直角方向に2〜6倍延伸することを特徴とする二軸延伸ポリアミドフイルムの製造法。」と記載されており、「脂肪族ポリアミドとしてはナイロン6・・・・・などの単独重合体」が使用されること(第3欄第21〜23行)、「メタキシリレン基を含有するポリアミドとしては・・・・・ポリメタキシリレンアジパミドのような単独重合体」が使用されること(第3欄第31〜35行)が、記載されている。また、「これら各成分の分子量は、これら混合物を溶融して押出した時均一な膜面が保たれる程度に高い溶融粘性を与えるように設定しなければならないが・・・・・通常は相対粘度で1.8〜4.0を示す範囲が望ましい」こと(第4欄第4〜8行)、「脂肪族ポリアミドとメタキシリレン基を含有するポリアミドとの混合割合は全量に対し脂肪族ポリアミドが80〜5重量%である。・・・・・柔軟さを十分保持し低温での耐衝撃性を維持するには脂肪族ポリアミドが50(重量)%以上であるのが好適である」こと(第4欄第9〜20行)、「逐次二軸延伸はフラットダイを用いて作成された未延伸フイルムを周速の異なる2つのロール間でフイルムを縦方向に延伸しついでフイルムの両端をクリップでつかみ一段目の延伸方向と直角な横方向に延伸する方法が通常用いられる」こと(第4欄第39〜43行)、「延伸倍率は2〜6倍、好ましくは2.5〜4倍である」こと(第5欄25〜26行)、が記載されている。さらに、実施例1(第1表を含む)には、「脂肪族ポリアミドとして、ηrelが3.66のポリε一カプロラクタムと、メタキシリレン基を含有するポリアミドとして、メタキシリレンアジパミド含量が99%(ηrelが2.23)のポリアミド」を使用し、これらを80%:20%、75%:25%、70%:30%、60%:40
%」の重量比率で混合して溶融押出しし、この未延伸フィルムを二軸延伸(延伸倍率は1段、2段共に3.5倍、または1段3.8倍、2段4.0倍)したフィルムおよび製造方法が記載されている。
また、甲第2号証の公報の第5欄第1行〜6行には、宇部興産(株)製のナイロン6であるUBEナイロン1023FD(商品名)は、数平均分子量が23000、相対粘度ηr が3.6であり、三菱ガス化学(株)製のポリメタキシリレンアジパミド(メタキシリレンアジパミドはポリメタキシリレンアジパミドの誤記と認定)であるMXナイロン6007(商品名)は、数平均分子量が25000、相対粘度ηr が2.7であることが、記載されている。
4.対比・判断
本件請求項1に係る発明と甲第1号証の刊行物に記載された発明とを対比すると、後者の「ポリε一カプロラクタム」は前者の「ナイロン6」であり、後者の延伸時の「1段」および「2段」は、前者の「MD方向(フィルムの移動方向)」および「TD方向(フィルムの幅方向)」に該当するから、両者は、ナイロン6(Ny6)を80〜60重量部およびポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)を20〜40重量部含有し(但し、Ny6+MXD6=100重量部)、MD方向(フィルムの移動方向)およびTD方向(フイルムの幅方向)共に2.8倍以上の倍率で延伸されたポリアミドフィルムである点で一致し、
1.前者は、Ny6とMXD6の270℃、剪断速度102 sec-1での溶融粘度の比(ηMXD6/ηNy6)が0.2〜10.0であるのに対し、後者は、上記の溶融粘度の比が示されていない点、
2.前者は、易裂性フィルムであるのに対し、後者は、易裂性が示されていない点、
で相違する。
上記の相違点についてさらに検討する。
相違点1について、本件明細書の実施例1の記載によれば、Ny6として使用したものは、宇部興産(株)製のナイロン6であるUBEナイロン1022FD(商品名)であって、その数平均分子量は22000であり、270℃、剪断速度102 sec-1での溶融粘度ηNy6は7100poiseであり、また、MXD6として使用したものは、三菱ガス化学(株)製のポリメタキシリレンアジパミドであるMXナイロン6007(商品名)であって、その数平均分子量は25000であり、270℃、剪断速度102 sec-1での溶融粘度ηMXD6は6000poiseである(したがって、両樹脂の270℃、剪断速度102 sec-1での溶融粘度の比ηMXD6/ηNy6は0.85である。)ところ、甲第2号証によれば、UBEナイロン1023FD(商品名)は、数平均分子量が23000、相対粘度ηr が3.6であり、MXナイロン6007(商品名)は、数平均分子量が25000、相対粘度ηr が2.7であって、UBEナイロン1022FD(商品名)とUBEナイロン1023FD(商品名)とは、数平均分子量からみて近似した物性を持つものと推測はされるが、このことから甲第1号証のηrelが3.66のポリε一カプロラクタムの270℃、剪断速度102 sec-1での溶融粘度を推定することはできない。また、本件明細書の実施例1及び甲第2号証に記載のMXナイロン6007(商品名)と甲第1号証の実施例1のポリメタキシリレンアジパミドとは、それぞれの相対粘度が2.7と2.23であって相違しているので、甲第1号証の実施例1のポリメタキシリレンアジパミドの270℃、剪断速度102 sec-1での溶融粘度を推定することはできない。したがって、後者のNy6とMXD6の270℃、剪断速度102 sec-1での溶融粘度の比(ηMXD6/ηNy6)は、不明である。
そして本件請求項1に係る発明は、優れた易裂性と直線カット性を有すると共に充分な強度も備えているという、優れた効果を奏すると認めることができる。
それゆえ、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証の刊行物に記載された発明と同一であるとはいえないし、また、甲第1号証の刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められない。
つぎに、本件請求項2に係る発明と甲第1号証の刊行物に記載された発明とを対比すると、本件請求項2に係る発明は、本件請求項1に係る発明の構成要件に「原料を混合し、混合物を溶融押し出しする」要件が付加された方法の発明であるから、本件請求項1に係る発明に対して記載した理由と同じ理由により、本件請求項2に係る発明は、甲第1号証の刊行物に記載された発明と同一であるとはいえないし、また、甲第1号証の刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められない。
5.むすび
したがって、特許異議申立ての理由および証拠によっては、本件請求項1及び請求項2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び請求項2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-03-02 
出願番号 特願平5-297955
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B29C)
P 1 651・ 113- Y (B29C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 綿谷 晶廣  
特許庁審判長 石橋 和美
特許庁審判官 蔵野 雅昭
喜納 稔
登録日 1998-10-02 
登録番号 特許第2833980号(P2833980)
権利者 出光石油化学株式会社
発明の名称 易裂性フィルム及びこの製造方法  
代理人 中山 寛二  
代理人 小谷 悦司  
代理人 石崎 剛  
代理人 木下 実三  
代理人 植木 久一  

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