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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G03F
管理番号 1012438
異議申立番号 異議1999-71407  
総通号数 10 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-08-18 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-04-15 
確定日 2000-03-08 
異議申立件数
事件の表示 特許第2816091号「デジタル検版装置」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2816091号の特許を維持する。 
理由 1.本件請求項1〜3に係る発明
本件特許第2816091号(平成6年1月31日出願、平成10年8月14日設定登録。)の請求項1〜3に係る発明は、それぞれ、特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
請求項1
「印刷物を構成する各部品を編集、レイアウトして得た編集レイアウトデータをRIP展開することによりビットマップ形式の画像データに変換して出力する製版システムにおいて、電子的に検版作業を行う装置であって、修正前の旧バージョンのRIP展開後の画像データを保存する保存手段、修正後の新バージョンのRIP展開後の画像データと、前記保存手段に保存された旧バージョンのRIP展開後の画像データとを比較することにより、その差異点を検出するデータ比較手段、および前記データ比較手段により検出された差異点を表示する表示手段を備える、デジタル検版装置。」
請求項2
「前記製版システムから出力されるRIP展開後の画像データを低解像度化する低解像度化手段をさらに備え、前記保存手段は、前記低解像度化手段により低解像度化された旧バージョンの画像データを保存し、前記データ比較手段は、前記低解像度化手段により低解像度化された新バージョンの画像データと、前記保存手段に低解像度で保存された旧バージョンの画像データとを比較することにより、その差異点を検出する、請求項1に記載のデジタル検版装置。」
請求項3
「前記製版システムにおいて発生する編集レイアウトデータを低解像度でRIP展開することにより、低解像度のビットマップ形式の画像データを出力する低解像度RIP展開手段をさらに備え、前記保存手段は、前記低解像度RIP展開手段から出力される旧バージョンの画像データを保存し、前記データ比較手段は、前記低解像度RIP展開手段から出力される新バージョンの画像データと、前記保存手段に保存された旧バージョンの画像データとを比較することにより、その差異点を検出する、請求項1に記載のデジタル検版装置。」
2.異議申立ての概要
異議申立人サカタインクス株式会社は、甲第1号証(「カラーグラフィックス研究会」Vol.3,No.5)、甲第2号証(「印刷情報1990」VOL 50 NO.1)、甲第3号証(「カラーグラフィックス研究会」Vol.3、No.9)、甲第4号証(特開昭56-118607号公報)、甲第5号証(特開平5-107726号公報)及び甲第6号証(「クリエイターのための印刷ガイドブック」5)を提出し、請求項1〜3に係る発明は、甲第1〜6号証に基いて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1〜3に係る発明の特許を取り消すべき旨主張している。
また、異議申立人中央無線株式会社は、「ディジタル信号処理ハンドブック」第2章第371頁(以下、「甲第1(2)号証」という。)、「Page」Vol5 No.21(以下、「甲第2(2)号証」という。)、「富士通ジャーナル」Vol 18 No.7(以下、「甲第3(2)号証」という。)を提出し、請求項1〜3に係る発明は、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、請求項1〜3に係る発明の特許を取り消すべき旨主張している。
なお、異議申立人中央無線株式会社は、証拠方法として、株式会社マイクロ・テクニカが発行した「画像処理ボ-ド」(昭和63年4月受入れ)のリーフレット、浜松ホトニクス株式会社が発行した「ビデオフレ-ムメモリC1901MarkII(1986年9月発行)のリーフレット及びAdobe Systems Incorporated のマニュアル(1993年6月発行)を提示したが、異議申立書には当該証拠に係る文献が添付されておらず、異議申立人中央無線株式会社に当該証拠に係る文献の提出を求めたが、当該証拠に係る文献の提出はなされなかった。
2.1 甲第1〜6及び1(2)〜3(2)号証の記載内容
2.1.1 甲第1号証の記載内容
甲第1号証には、第75頁3〜5行目及び第77頁図4.2に、「簡易統合化システムを中心とした仕事の流れを〈図4.2〉に示す、[A]が核となる基本モジュール部分で、最小規模のシステムである、ここのメインの機能は印刷用プリプレスの最終出力である、フィルム/刷版に記録するためのデータを作る」と記載されている。
さらに、第75頁第12行に、「出力の多様な装置に対応するRIP機能を持つ」と記載されている。
また、第76頁第6〜8行に、「この基本モジュールには、出力装置各種[B]、入力各種[C]、ネットワーク上の作業分散/分業ワークステーンョン[D]、クライアントへの校正出し[E]などがつながる」と記載され、第78頁第22〜23行には、「インポートされるデータフォーマットは、大まかに分けて素材レベル、編集指示入りレベル、PDLレベルになる」と記載され、第78頁第24〜25行には、「素材レベルは文字、図面、画像など、部分的なデータで、レイアウト側からみると部品である」と記載され、第79頁第4〜5行には、「PDLレベルはレイアウト済みのページの完全なデータである」と記載されている。
さらに、対象となる出力については、図4.2(第77頁)に、ラス夕(フィルム、プレート、DDCP),ファイル(DDES,オンライン)が示されている。また、第78頁第6〜7行に、「出力は、ビットマップデータをファイルとして取り出すものとして、DDESのファイルや通信用のファイルなどが有り得る」と記載されている。
また、図4.2(第77頁)には基本モジュールのRIP出力が校正用に出力される点が示され、また、校正の詳細が4.3.5校正[E](第79頁25行〜第80頁第9行)に説明されている。さらに、出力[B]について、第78頁第11〜12行に、「通信用のファイルは圧縮をかけFAX形式にして、オンラインで得意先に校正だしすることを可能とする」と記載され、校正[E]について、第80頁第5行に、「レイアウトのチェックを行うような校正は、発注者のカラーDTPなどにデータを戻す方法がある」と記載されている。
レイアウト済みのDTPの出力ファイル(第79頁5〜7行目)までの入稿データ[C]は、基本モジュール[A]で編集・レイアウト(WYSIWYG、編集機能)およびRIP展開の工程を経て、印刷用プリプレスの最終出力である、フィルム/刷版に記録するためのデータ(第75頁4〜5行目)となり、出力[B](第78頁1〜13行目)されるものとして、フィルム(製版焼き付け用のネガまたはポジフイルム等)、プレート(版)、DDCP、DDESとがある旨記載されている。
また、第76頁第3行〜5行に「高速RIPが核であり、これはまた解像度は可変にすることで、多様なラス夕型出力デバイスに出力できる。今は画面は別として約200dpiのG3FAXから、3000dpiのイメージセツタまでが運用されているので、最低限これらに対応する。」と記載されている。
2.2.2 甲第2号証の記載内容
甲第2号証には、図5(第38〜39頁)にへル・エレクトロニック・プリプレス・システムとその周辺装置が示され、図5中に、文字、図形、画像といった印刷物を構成する各部品を入力する工程、編集レイアウト工程、校正刷りにて正しく各部品が編集・レイアウトされているかを確認し、必要により修正する工程、製版のための最終出力工程がそれぞれ示されている。
2.2.3 甲第3号証の記載内容
甲第3号証の第16頁の図2にポストスクリプトDTPシステムが示され、図2にはワープロソフト、描画ソフト、画像処理ソフトなどを用いて入力された、印刷物を構成する各部品を編集、レイアウトする工程、編集レイアウトデータをポストスクリプトファイル化する工程、ポストスクリプトファイルをRIP展開する事により、ビットマップ形式の画像データに変換する工程が示されている。
2.2.4 甲第4号証の記載内容
甲第4号証には、第2頁左下欄第6行〜第10行に、「フィルム原版(2)中の画像情報を光学センサーで読み取ってデジタル化した画像信号を抽出する。得られた画像信号は1時的に記憶機能(図示せず)に記憶しておく。」と記載され、第2頁左下欄第15行〜第18行に「光学センサーは再反転原版(3)上を走査開始線(9)と走査完了線(10)の間で再び走査し始め、その間の画像情報をデジタル化し、画像信号として抽出する。」と記載され、第2頁左下欄第18行〜第20行に、「この抽出した画像信号は、前回の操作で抽出し、記憶機能に記憶しておいた画像信号と比較され、」と記載され、第2頁右下欄第3行〜第5行に、「不一致であれば、再反転原版(3)上の該当する画像情報の位置に警告マーク(12)を印し、相異点の存在を示す。」と記載されている。
2.2.5 甲第5号証の記載内容
甲第5号証には、第3頁第3欄第42行〜45行に「図において、1は基準となる所望の集積回路パターンの設計データをビットマップ展開する第1のビットマップ展開回路、2はビットマップ展開回路1からのパターン画像を格納するメモリー回路」と記載され、第2頁第2欄第8行〜第9行に「従来は、所望のパターンとなっているかを目視検証するものであった。」旨が記載され、第3頁第4欄第9行〜第11行に「10は所望の集積回路パターンを格納したメモリー回路2とマスク光学画像を格納したメモリー回路9との電気信号を比較する比較演算回路である。」と記載されている。
2.2.6 甲第6号証の記載内容
甲第6号証には、第88頁左欄第4行〜20行に「このようにRIPの原理は簡単ですが、それを実現するための装置はかなり大がかりなものとなります。その主要な理由のひとつは、原稿を1枚の大きな画像に展開するためには、相当に大きなメモリを必要とするからです。…300dpi程度の…ポストスクリプトプリンタでも、…2MB程度のビットマップメモリを持つのが普通です。…3000dipもあるイメージセッタになると、単純計算でもざっとその100倍程度のメモリが必要ということになります(実際の各社のRIPではたくさんのメモリを使わなくて済むようないろいろの工夫がなされています)。」と記載されている。
2.2.7 甲第1(2)号証の記載内容
甲第1(2)号証には、371頁に外観検査への応用として「キャリブレーション部では相関処理で検査パターンと設計パターンとの位置ずれや線幅ずれを求めている(原理b)。そしてずれ量を設計パターン発生部にフィードバックして正確に位置合わせされた設計パタ-ンを得ている。」と記載されている。
2.2.8 甲第2(2)号証の記載内容
甲第2(2)号証には、低解像度化に関する技術が記載されており、スクリプトマスター2はワークステーションを使ったソフトRIPと、クロマコムで入力した高精細画像を低解像画像に間引いてMacに送り、レイアウト完成後に高解像度画像に差し替えるOPI機能を持ち、出力はクロマコムに限られる旨記載されている。
2.2.9 甲第3(2)号証の記載内容
甲第3(2)号証には、図5(表示と出力の近似の方法)において、二つのデータを比較してフイードバックする旨記載されている。
3.本件請求項1〜3に係る発明と甲第1〜6及び1(2)〜3(2)号証との対比、判断
3.1 本件請求項1に係る発明と甲第1〜6及び1(2)〜3(2)号証との対比、判断
本件請求項1に係る発明の特徴的構成である「修正前の旧バージョンのRIP展開後の画像データを保存する保存」及び「修正後の新バージョンのRIP展開後の画像データと、前記保存手段に保存された旧バージョンのRIP展開後の画像データとを比較することにより、その差異点を検出するデータ比較」する構成のうち、「修正後の新バージョンのRIP展開後の画像データと、前記保存手段に保存された旧バージョンのRIP展開後の画像データとを比較することにより、その差異点を検出するデータ比較」することについては、甲第5号証にのみ記載され、甲第1〜4、6及び1(2)〜3(2)号証に記載及び当該記載を示唆する記載もない。
また、甲第5号証は実体製品の画像検査を対象としているため、理想画像の存在を前提としており、請求項1に係る発明が属する、理想画像が存在しない検版装置の分野に、甲第5号証の手段を適用することが容易であるとする根拠がない。
付言すると、甲第4及び1(2)号証に記載された発明は、光電読取方式の検版装置にとどまり、本件特許明細書[0011]段落記載の従来技術程度のものにすぎず、また、異議申立人中央無線株式会社は、証拠方法として提示した、株式会社マイクロ・テクニカが発行した「画像処理ボ-ド」(昭和63年4月受入れ)のリーフレット、浜松ホトニクス株式会社が発行した「ビデオフレ-ムメモリC1901MarkII(1986年9月発行)のリーフレット及びAdobe Systems Incorporated のマニュアル(1993年6月発行)並びに異議申立人中央無線株式会社が異議申立書で指摘した特許第2503613号について、異議申立人中央無線株式会社が異議申立書で主張する事項を考慮しても、本件請求項1に係る発明が、当業者が容易に発明できたものとすることができない。
さらに、本件請求項1に係る発明は、上記特徴的構成を有することにより、熟練を要さずに正確な検版が可能であり、各バージョンの製版用フィルムなどの作成や保存が不要であるとともに、製版フィルムなどを作成しない製版プロセス中でも使用できるという、上記各甲号証のいずれにもない作用効果を有するものであるから、本件請求項1に係る発明は、甲第1〜6及び1(2)〜3(2)号証に基いて容易に発明できたものであるとすることができない。
3.2 本件請求項2、3に係る発明と甲第1〜6及び1(2)〜3(2)号証との対比、判断
本件請求項1にさらに構成要件を付加した請求項2及び3については、本件請求項1について検討した上記2.1と同様に、甲第1〜6及び1(2)〜3(2)号証に基いて容易に発明できたものであるとすることができない。
4.むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1〜3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-02-18 
出願番号 特願平6-9352
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G03F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山鹿 勇次郎  
特許庁審判長 高橋 美実
特許庁審判官 辻 徹二
森 正幸
登録日 1998-08-14 
登録番号 特許第2816091号(P2816091)
権利者 大日本スクリーン製造株式会社
発明の名称 デジタル検版装置  
代理人 小林 泰  
代理人 秋元 芳雄  
代理人 有田 貴弘  
代理人 吉竹 英俊  
代理人 嶋本 久寿弥太  
代理人 社本 一夫  
代理人 吉田 茂明  

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