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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C23C
管理番号 1012476
異議申立番号 異議1999-74464  
総通号数 10 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-02-03 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-12-02 
確定日 2000-03-13 
異議申立件数
事件の表示 特許第2898515号「モザイクターゲット」の請求項1及び2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2898515号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 
理由 1.本件発明
特許第2898515号(平成5年7月15日出願、平成11年3月12日設定登録)の請求項1及び2に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2.特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人高橋喜美夫は、証拠として、甲第1号証(特開平1-290765号公報)、甲第2号証(特開昭63-235459号公報)及び甲第3号証(特開平1-263271号公報)を提出して、本件の請求項1及び2に係る発明の特許は、上記甲第1号証乃至甲第3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、取り消されるべきものであると主張している。
3.証拠の記載内容
特許異議申立人が提出した上記甲第1号証乃至甲第3号証には、それぞれ次の事項が記載されている。
(1)甲第1号証
(イ)「基板上に、2種以上のターゲット片を各ターゲット片ごとに分割して複合的に配列してなるスパッタリングターゲットにおいて、前記ターゲット片の構成材料の1種もしくは混合物を構成材料とする薄板が、前記基板とターゲット片との間に介在されてなることを特徴とする、スパッタリングターゲット」(第1頁左欄)
(ロ)「上記のような複合ターゲットとしては、複数個の楔形のターゲット片を交互に組合わせて円板状にしたターゲット、あるいは、たんざく状のターゲット片を交互に配列して長方形の板状にしたターゲット本体が知られている。・・・第3図に示すように、複合ターゲット10は、2種類のターゲット片12、13が交互にモザイク状に寄せ集められて円板状に一体化されている。」(第2頁上段左欄)
(ハ)「しかしながら、上記のような従来の複合ターゲットにおいては、使用期間の経過とともに各ターゲット片2および3との間に隙間が生じることがある。・・・そのためスパッタリングの際には、このようにして形成された隙間から基板である銅製バッキングプレートがターゲット片金属と同時にスパッタされるという問題が生じる。このような現象が生じると安定した組成比の薄膜を形成することは困難となり、超LSIの製品の品質にも悪影響を与えることになる」(第2頁上段右欄第9行乃至下段左欄第2行)
(ニ)「複合ターゲット片と基板との間にターゲット片の構成材料からなる薄板を介在させるようにしたので、このスパッタリングターゲットを用いて得られる堆積膜は汚染のない品質のすぐれたものとなる。また、長期間に亙って安定的なスパッタリングが可能となり、ターゲットの使用効率ならびに信頼性を向上させる上においてもすぐれた効果を有している」(第3頁下段左欄)
(ホ)「この例においては、図示のようにスパッタリングターゲット1の平面形状が長方形からなり、この長方形構造は、Moターゲット片2とTaターゲット片3とが交互に配置するように構成され、」(第3頁上段右欄第8行乃至第12行)
(2)甲第2号証
(イ)「(1)高純度チタンシリサイドの小片を拡散接合によって接合し高純度チタンシリサイド板とすることを特徴とする高純度チタンシリサイド板の製造方法。
(2)拡散接合をホットプレス(HP)あるいは熱間静水圧プレス(HIP)により行う特許請求の範囲第1項に記載の高純度チタンシリサイド板の製造方法。
(3)高純度チタンシリサイドの小片の接合面どうしを密着させ、・・・ホットプレスを行う特許請求の範囲第1項または第2項に記載の高純度チタンシリサイド板の製造方法。」(第1頁)
(ロ)「高純度チタンシリサイド板はスパッタリング用ターゲット材として超LSI用の電極材、配線材の製造において使用される。」(第2頁上段左欄)
(ハ)「従来のチタンシリサイド合金粉末を原料とし、雰囲気焼結法により製造したチタンシリサイド板に含有する不純物を表1に示す。従って、このようなチタンシリサイド板を用いて製造したデバイス中には多くの不純物が存在し、デバイスとしての充分な特性を得ることができない。」(第2頁上段右欄第20行乃至下段左欄第6行)
(ニ)「高純度チタンシリサイドの小片を原料として用いることによって、大型の高純度チタンシリサイド板を得ることができることを見出だし本発明を完成するに至った。」(第2頁下段左欄第19行乃至下段右欄第2行)
(ホ)「ホットプレスの際の温度は800℃以上融点未満、圧力は200kg/cm2以上であれば良いが、」(第3頁上段右欄)
(3)甲第3号証
「このターゲットユニットは、銅またはステンレス等からなる長方形のバッキングプレート10の表面に、長方形板状のターゲット11を固定してなるものである。このターゲット11は、長方形板状の内周側保持部材12の外周に略同肉厚のスパッタすべき物質からなるエロージョン部材13を拡散接合やロウ付け等により一体接合し、さらにこのエロージョン部材13の外周に沿って四角い枠状の外周側保持部材14を一体接合してなるものであり、」(第2頁下段左欄)
4.当審の判断
(i)請求項1に係る発明について
上記甲第1号証には、「超LSI製品を製造するためのスパッタリングターゲット」に関し、「Moターゲット片2とTaターゲット片3とが交互に配置するように構成されたスパッタリングターゲット」が記載され、またターゲット片がモザイク状に寄せ集められた「ターゲット」の構造についても例示されているから、「Ta、Moの異種材料ピースから構成される超LSI製品製造用モザイクターゲット」が記載されていると云える。
そこで、本件発明と上記甲第1号証に記載の発明(以下、「引用例発明」という)とを対比すると、引用例発明の超LSI製品製造用は本件発明の「半導体デバイス製造用」に相当するから、両者は「隣り合う異種材料ピースの突き合わせ部をピース材料の融点以下の温度で固相接合する」か否かの点で相違している。
次に、この相違点について検討する。
本件発明は、特許明細書の【発明が解決しようとする課題】(第3欄)等の記載から明らかな如く、従来の接合手段であるボンディングの場合には、モザイクターゲットの突き合わせ部の隙間に起因する異常放電やパーティクルの発生という課題があるため、これを解決するために「隣り合う異種材料ピースの突き合わせ部をピース材料の融点以下の温度で固相接合する」という接合手段を採用した点に特徴を有するものである。
これに対し、特許異議申立人が提出した上記甲第1号証には、上述したとおりの引用例発明に加え、モザイクターゲットの隙間の発生という本件発明のものと共通する課題が記載されているが、その解決手段については「ターゲット片を構成する材料からなる薄板を基板とターゲット片との間に介在させること」と記載されているだけであり、本件発明の上記「固相接合」については一切記載されていない。
また、上記甲第2号証には、「固相接合」に関する記載はあるが、この固相接合は、高純度チタンシリサイドの「小片」から大型の「板」を製造するために利用されているものであり、本件発明の「異種材料ピースから構成されるモザイクターゲット」や上記課題と何ら関連性がないから、この証拠をもって、上記相違点が当業者にとって容易に想到することができたとする根拠とはできない。
特許異議申立人は、この証拠に記載の内容と本件発明とを対比して、両者は「複数のピースから構成される半導体デバイス製造用モザイクターゲット」の点で一致し、しかも複数のピースを固相接合しているから、複数のピースを異種材料とするか否かで相違するだけであり、この点は当業者が容易に想到することができたものであると主張している。
しかしながら、この証拠に記載された内容は、上述したとおり、チタンシリサイドという単一材料の「板」の製造法に関するものであり、そこには、原料粉末から焼結で製造する従来法に替えて、高純度チタンシリサイドの「小片」から大型の単一材料の「板」を製造するために固相接合を利用した製造法が記載されているだけであり、この「小片」を異種材料とする何らの根拠も見当たらないから、特許異議申立人の上記主張は採用することができない。
さらに、上記甲第3号証には、「エロージョン部材13を拡散接合やロウ付け等により一体接合し、」と記載され、従来法の「ボンディング」と同種の「ロウ付け」と並列記載されていることからみても、単なる周知の接合手段が例示されている程度のものであり、この証拠にも、本件発明の「異種材料ピースから構成されるモザイクターゲット」や上記課題について一切記載されていない。
してみると、上記甲第1号証乃至甲第3号証には、「固相接合」を採用させるだけの動機付けとなる記載又は示唆すら見当たらないから、本件請求項1に係る発明は、上記甲第1号証乃至甲第3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(ii)請求項2に係る発明について
この発明は、請求項1に係る発明をさらに限定するものであるから、請求項1に係る発明について述べたとおりの理由により、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

5.むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件請求項1及び2に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び2に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-02-18 
出願番号 特願平5-196712
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C23C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 城所 宏  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 唐戸 光雄
能美 知康
登録日 1999-03-12 
登録番号 特許第2898515号(P2898515)
権利者 株式会社ジャパンエナジー
発明の名称 モザイクターゲット  

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