• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  G09F
管理番号 1012532
異議申立番号 異議1999-72272  
総通号数 10 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-05-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-06-11 
確定日 2000-03-01 
異議申立件数
事件の表示 特許第2835713号「シート及びそのための小出し器パッケージ」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2835713号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1. 本件は、特許第2835713号に関し、【特許請求の範囲】の【請求項1〜4】のうち【請求項1】に係る発明につき、その受けた特許を取り消すべきことを請求して申し立てられた異議申立事件に存する。
2. 本件の手続きの経緯の概要は、以下のとおりである。
1) 出 願 日:昭和63年(1988)5月11日(分割に係る原出願 である特願昭63-504776の出願日、優先権主張 日:1987年6月3日優先権主張国USA)
2) 特 許 日:平成10年10月9日
3) 公報発行日:平成10年12月14日本件特許公報発行
4) 異議の申立:平成11年6月11日特許異議申立人ニチバン株式会社 より、また
:同年同月14日特許異議申立人小松孝彦より、
それぞれ、特許異議申立書を提出
3. 異議申立人の主張
1) 申立人ニチバン株式会社の主張
右申立人ニチバン株式会社は、
イ)甲第1号証 実願昭47-97176号(実開昭49 -54534号) のマイクロフイルム
ロ)甲第2号証 「粘着ハンドブック」昭和60年3月2日・日本粘着テープ 工業会発行、334-336頁
ハ)甲第3号証 実願昭59-56723号(実開昭60-168967号)
のマイクロフイルム
ニ)甲第4号証 実公昭56-25007号公報
ホ)甲第5号証 実公昭53-32669号公報を提出し、
本件請求項1に係る特許発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、少なくとも甲第1号証〜甲第5号証に記載された発明に基づいて、その発明の属する分野における通常の知識を有するものが、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第113条第2号の規定により取消すべきものであると、主張する。
2) 異議申立人小松孝彦の主張
右申立人小松孝彦は、
イ)甲第1号証 実公昭53-32669号公報
ロ)甲第2号証 実願昭55-46640号(実開昭56-146566号) のマイクロフィルム
ハ)甲第3号証 特開昭49-105881号公報
を提出し、
甲第1号証には、要件(7)ポリマー材層が0.0038〜0.0076センチメートルの範囲の厚さを有すること,要件(8)感圧接着剤塗布の第二の端部分が基体へ付着されたときに実質的に透明であること、を除く要件が記載されている。
甲第2号証には要件(4)ポリマー材のうち少なくとも第二の面において第一の端部及び第二の端部分の両方が書き込まれるようになっていること,要件(6)第一の端部分が視覚的に区分できること、及び要件(7)ポリマー材層が0.0038〜0.0076センチメートルの範囲の厚さを有することを除く要件が記載されており、甲第1号証の材料に甲第2号証の材料を置き換えれば実質的に全ての要件が記載されている。
また、甲3号証には、要件(7)ポリマー材層が0.0038〜0.0076センチメートルの範囲の厚さを有すること、及び要件(8)感圧接着剤塗布の第二の端部分が基体へ付着されたときに実質的に透明であることが、記載されており、甲第1号証および甲第3号証は密接に関連する技術分野であり、置換容易性が認められるので、甲第1号証に甲第3号証の材料を置換転用することはきわめて容易である。
従って、本件特許発明は出願前(優先日前)の刊行物から容易に想到しうるものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許されるべきものではないと考える、と主張するものである。
4. 当審の判断
1) 本件【請求項1】に係る発明は以下のとおりである。
『 可撓性のポリマー材料の単一の細長い層と前記ポリマー材料の層の一方の面である第一の面においてその長手方向の一方の端部分である第二の端部分に設けた位置変え可能な感圧接着剤のコーテイングとを有しており、前記ポリマー材料の層の両方の面である第一の面及び第二の面において前記第二の端部分に対して長手方向の反対の端部分である第一の端部分には前記接着剤がなく、且つ、前記ポリマー材料の層の少なくとも第二の面において第一の端部分及び第二の端部分の両方が書き込まれるようになっている、文書の部分をマーク付
けするためのシートにおいて、
前記第一の端部分が視覚的に区別でき、前記ポリマー材料の層が0.0038から0.0076センチメートルの範囲の厚さを有し、且つ、前記感圧接着剤を塗布された第二の端部分が基体へ付着されたときに実質的に透明であることを特徴とする文書の部分をマーク付けするためのシート。』
2) これに対して、異議申立人ニチバン株式会社の提出した各刊行物の記載の概略は、以下のとおりである。
イ) 第1刊行物(甲第1号証)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
a. 「覚え書きを記入する白紙部(1)に連続して、接着剤付きの透明フィルム(2)がある。…………………………はさみ込まれた部分が透明であるので文字を隠すことなくそのままの状態で使用出来、不必要となった場合覚え書きを記入する白紙部(1)をもって紙面を損なうことなく取り去ることができる。……………………………………………情報分類、情報検索などの時間的損失をなくし、貴重なる書物の紙面を損なうことがないという極めて著しく実用的な効果がある。」(明細書第2頁第13行〜第4頁第1行目)
ロ) 第2刊行物(甲第2号証)には、以下の事項が、図面とともに記載されている。
a. アセテートフイルム粘着テープのフイルム厚が、0.040mmであること(第335頁表2)、
b. 「マット加工したものは、テープの背面に鉛筆、ボールペン、油性サインペンできれいな文字がかける。」(第336頁第7行〜8行目、図1)
ハ) 第3刊行物(甲第3号証)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
a. 「その本紙葉を損傷しない程度の粘着力で、また、繰返しての本紙葉面への添着が可能な粘着部(1)を一面側に有することを特徴とする本紙葉に添着自在のしおりである。」(明細書第2頁第8行〜12行目)
b. 「実施例におけるしおり本体(2)は本紙葉の文字が透視可能な合成樹脂製簿片によつて横成されている。このように、しおり本体(2)を透視可能な材質で構成すれば、添着した際に、そのしおりによつて本紙葉の文字の判読が阻害されないと云う利点がある。」(同第2頁第14行〜20行目)
ニ) 第4刊行物(甲第4号証)には、以下の事項が、図面とともに記載されている。
a. 「この考案は、語学等の学習に好適な学習用テープに関するものである。」
(公報第1頁第1欄19〜20行目)
b. 「図において、1は紙あるいは軟質塩化ビニルフイルム等のような可撓性を有する不透明材料で構成されたテープてあつて、その裏面一側縁に沿って否乾性タイプの粘着剤2を塗布しており、従来公知の粘着テープの場合と同様に巻芯等に巻装して必要長さだけ巻戻して切断できるようになっている。そしてこのテープは接着剤を塗布した部分を透明材料で形成し、他の残りの部分を不透明材料で形成するものであつて、行間に充分なゆとりがない場合でも上方の行を隠してしまうことがない。」(公報第1頁第1欄第36行〜第2欄第9行目)
ホ) 第5刊行物(甲第5号証)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
a. 「図示例に於て、付箋紙1は所定幅及び長さを有し、裏面の一端部に粘着性の糊を塗布して粘着面11、該粘着面11と対称な表面の多端部に赤、青、紫等適当な着色面12を形成しており、」(公報第1頁第2欄3行〜6行目)
b. 「付箋紙1表面へ語字を記入した後、粘着面11近傍を撮み台紙2から剥雛するもので、」(公報第1頁第2欄29行〜30行目)
3) 同じく異議申立人小松孝彦の提出した各刊行物の記載の概要は、以下のとおりである。
イ) 第5刊行物(甲第1号証):本刊行物は、前記異議申立人ニチバン株式会社の提出した前掲甲第5号証刊行物と同じものであるので繰り返さない。
ロ) 第6刊行物(甲第2号証)には、以下の事項が、図面とともに記載されている。
a. 「離着脱自在の接着面(2)をもつしおり(1)で、」(明細書第1頁15行〜16行目)
b. 「接着剤を塗布しない部分を設けることによって、」(明細書第2頁17行〜18行目)
ハ) 第7刊行物(甲第3号証)には、以下の事項が、図面とともに記載されている。
a. 「大部分滑らかな露出表面を有する透明なポリエチレンテレフタレート層および大部分艶消し露出表面を有する透明な共ポリエステル層からなる一体的に熱固定した二軸配向せる複合フイルムおよび該大部分滑らかな露出表面を均一に被覆する粘稠な感圧性接着剤層を組合わせて含むことを特徴とする、寸法安定で、強力で、強靱で、耐水性であり、筆記に適する表面を有し、かつ基体に適用時に透明である、感圧性接着剤テープ。」{公報第1頁特許請求の範囲の欄第(3)項}
b. 「本発明の艶消し表面の、二軸配向せる熱固定複合フイルムは約0.3ないし3.0ミル(7.5ないし75ミクロン)の厚みに変化しうるし、そして好ましくは約0.5ないし2.0ミル(約10ないし50ミクロン)である。
感圧接着テープを、ポリエチレンテレフタレート露出表面に適当な接着剤を被覆することにより本発明の艶消し表面複合物から製造する。」(公報第4頁上段右欄8行〜16行目)
4) 対比・判断
(1) ところで、上記にみられるとおり、右何れの刊行物の記載も、本件【請求項1】に係る発明の一部に関する事項を包括するに留まり、本件【請求項1】に係る発明の特徴的部分とも言うべき、
「可撓性のポリマー材料の単一の細長い層の第一の面の端部分である第二の端部分に感圧接着剤コーテイングを有し、長手方向の反対の端部分である第一の端部分には前記接着剤がなく、前記第一の端部分が視覚的に区別でき、(る)」という構成部分は、上記何れの刊行物にも記載がなく、これを包括する限りではない。
したがって、本件【請求項1】に係る発明は、上掲第1〜第7の各刊行物の何れかに記載された発明であると解することはできない。
また、本件【請求項1】に係る発明は、上記何れの刊行物の記載も包括しない本件【請求項1】に係る発明の特徴的構成部分を含む本件【請求項1】に係る発明の構成要件により、明細書に記載されたとおりの特有の効用を収めているものである。
それ故、本件【請求項1】に係る発明は、上掲第1〜第7の各刊行物それぞれに開示された単独の発明に基づいて当業者が容易に想到することが出来たものとすることも、相当でない(詳細は、後述)。
(2) 次に、上記各刊行物に記載された発明を組み合わせ勘案することにより当業者において、本件【請求項1】に係る発明を容易に想到することが出来たか否かにつき、各異議申立人の主張との関連において分析審案することとする。
[申立人ニチバン株式会社の主張に対する審案]
一. まず、第1刊行物の記載のシート(フイルム)は、白紙部、透明フイルム部、接着剤の三つの部分よりなり、ために、本件【請求項1】に係る発明が標榜する「単一のポリマー材料の層」を、包括しないことは明らかである。
むろん、本刊行物に記載のシートの素材、厚み、透明シート部の第2の面たる表面部に書き込み可能である等に関しては、一切言及の限りではない。
二. つぎに、第2刊行物に記載された技術事項は、テープの厚みが、0.004cmであることと、テープの粗面加工面が書き込み可能であることの披瀝に留まる。
したがって、その余の構成部分を対比するまでもなく、上記第1刊行物に記載の技術事項に、第2刊行物に記載された技術を組み合わせても、本件【請求項1】に係る発明を創設できず、それ故これ等に基づいて当業者が容易に想到し得た限りではないことは明らかである。
よって、この点において、申立人ニチバン株式会社の申立理由における前段の主張は、相当でない。
三. また、第3刊行物に記載の技術は、単に繰り返し添着できる透明なしおりであるに留まり、上面が書き込み可能であること、素材がポリマー材料であること、下面の第一端部分に感圧接着剤が存しないこと、該接着剤の存しない第一端部分を視覚的に区分できること等については、一切開示がなくこれ等を欠如するものである。
四. 更に、第4刊行物に記載の技術は学習用テープであって、単に、「塗布された端部分が基体へ付着されたときに実質的に透明であること」という本件【請求項1】の発明の一部を共通にするに留まり、その余の構成部分は一切包括しないばかりか、供用目的と態様を別異にするものである。
五. そして更に、第5刊行物に記載のものは、従来周知の付箋紙そのものであり、本件権利者が、夙に課題の存する従来例として開示した類のものというべきであり、本件【請求項1】に係る発明の特徴的構成部分を全く充足しないものというべきである。
故に、上記第1,第2の各刊行物に記載の発明に上記第3〜第5の各刊行物に記載された技術事項を組み合わせ勘案しても、本件【請求項1】に係る発明を創設するに至るものではなく、ために、これ等の刊行物に記載の発明に基づいて当業者が容易に想到することが出来たものとすることも相当でない。
したがって、申立人ニチバン株式会社の申立理由の後段の主張も亦、採用することができない。
[申立人小松孝彦の主張に対する審案]
右申立人の提出した第5刊行物(甲第1号証)の記載は、既に披瀝した{前掲3)のイ)参照}。
六. 第6刊行物に記載の技術的事項は、本件【請求項1】に係る発明の「単一の細長い層と第一の面の第二の端部分に設けた位置変え可能な感圧接着剤のコーテイングとを有しており、前記層の両方の面である第一の面及び第二の面において前記第二の端部分に対して長手方向の反対の端部分である第一の端部分には前記接着剤がなく、」を包括するところ、本件【請求項1】に係る発明の一部を実現しているふしが見受けられるが、第二の面が書き込み可能にはなっていず、また、右第一の端部分が、視覚的に区分できるようになっていないことも、明らかである。さらに、本刊行物のしおりのシート素材が如何なる物であるか、はたまた、その厚さが如何程であるかは何ら言及の限りではない。
したがって、第6刊行物に開示の発明も、本件【請求項1】に係る発明の特徴的構成部分を欠如していることは明らかである。
七. 他方、第7引用例に記載の発明は、
「可撓性のポリマー材料の細長い層と前記ポリマー材料の層の一方の面である第一の面においてその長手方向の一方の端部分である第二の端部分に設けた感圧接着剤のコーテイングとを有しており、且つ、前記ポリマー材料の層の少なくとも第二の面において第一の端部分及び第二の端部分の両方が書き込まれるようになっている、文書の部分をマーク付けするためのシートにおいて、
前記ポリマー材料の層が0.0010(好ましい方の下限)から0.0075センチメートルの範囲の厚さを有し、且つ、前記感圧接着剤が基体へ付着されたときに実質的に透明である(PTFテープであるところ、概ね透明と目される)シート。」を、実現しているものと捉えられる。
しかしながら、本刊行物に記載のシートは、感圧接着剤を第一の面全面に有しており、のみならずその感圧接着剤は、「位置変え可能な」を包括しているとは解しがたいところである。蓋し、この刊行物に記載のシートは本の修繕等に用いるメンデングテープ等として供用され得るものであって、用いる接着剤は、位置変え可能ではないと捉えられるからである。
さらに、本刊行物に記載の発明のシートでは、「接着剤を有しない部分」が存在しないところ、かかる部分を視覚的に区別できるを包括しないことは明らかである。
最後に、本刊行物に記載のシートは、文書の部分をマーク付けする物でないことも亦明らかに是認されるところである。何故ならば、本刊行物の発明のシートは、家具や壁の被覆等に供用し得るところ、付箋等文書のある部分をマーク付与するものとは概念的に様相を異にしているというべきであるからである。 斯様に、本刊行物に記載の発明は、一見多くの構成部分で本件【請求項1】に係る発明と共通するようにみえながら、仔細に検討すると、本件【請求項1】に係る発明の特徴的部分を具えないことは明らかである。
上記のとおりであるところ、申立人小松孝彦の提出した第5〜第7の各刊行物に記載の発明を如何様に組み合わせようと、本件【請求項1】に係る発明を創設するには至らなかったというべきである。
よって、この点における、本件特許発明は出願前(優先日前)の刊行物(第5〜第7)に記載された発明から容易に想到しうるものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許されるべきものではないとする異議申立人の主張は、採用の限りではない。
5) さらに、前記両異議申立人の提出にかかる全刊行物即ち第1〜第7の各刊行物に記載された発明を総合考量しても、なお本件【請求項1】に係る発明を創設するに至らず、斯く加工構成するにつき、当業者間に予測可能性が存したとする証拠も、徴表も見いだされない。
{さらにまた、申立人小松孝彦の提出した上申書(平成11年7月27日付)において示した参考資料(参考資料1〜6)は、飽くまで、本件発明に関する間接的な技術に関する記載に留まり、当審が職権で顧慮するに値しないものというべきものである。}。
5. 結語
なお、外に本件【請求項1】に係る発明につき、受けた特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-02-04 
出願番号 特願平8-253668
審決分類 P 1 652・ 121- Y (G09F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 関根 恒也松澤 福三郎川名 幹夫  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 藤原 稲治郎
長崎 洋一
登録日 1998-10-09 
登録番号 特許第2835713号(P2835713)
権利者 ミネソタ マイニング アンド マニュファクチュアリング カンパニー
発明の名称 シート及びそのための小出し器パッケージ  
代理人 亀川 義示  
代理人 片山 英二  
代理人 大島 由美子  
代理人 小林 純子  
代理人 庄司 隆  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ