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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08F
管理番号 1012589
異議申立番号 異議1999-71090  
総通号数 10 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-12-12 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-03-23 
確定日 2000-03-08 
異議申立件数
事件の表示 特許第2802663号「新規な線状ブロック共重合体の製造方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2802663号の特許を維持する。 
理由
I.手続の経緯
本件特許第2802663号の発明は、平成2年3月29日に特許出願され、平成10年7月17日にその特許の設定登録がなされ、その後、その特許について、シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエーより特許異議の申立てがなされ、当審において取消理由通知書を送付したところ、その指定期間内である平成11年9月2日付けで特許異議意見書が提出されたものである。

II.本件発明
本件の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という)は、特許明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりものと認める。
「(i)不活性炭化水素溶媒中で有機リチウム化合物を開始剤として、モノアルケニル芳香族化合物と共役ジエン単量体を用いてブロック共重合体を製造するに際し、
少なくとも1個のモノアルケニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと共役ジエンを主体とする重合体ブロックよりなるブロック共重合体を重合し、該ブロック共重合体のゲルパーミエーシヨンクロマトグラフィー(GPC)に於けるピーク分子量が標準ポリスチレン換算で1×104〜50×104であり、且つ、
該ブロック共重合体中の全モノアルケニル芳香族化合物の合計量が10〜90重量%である、リビングポリマーを調製する工程と、引き続き、
(ii)一般式:

[式中、Rは、

を示し、R1及びR2は水素又は炭素数が1〜20のアルキル基又はフェニル基であり、R3は炭素数が2〜20のアルキレン基であり、nは0〜10の整数であり、n数が0の化合物(以下、n0体と略す)含有量が95重量%以上である]
で示されるジエポキシ化合物の単独、若しくは、これらの混合物(同群同志の混合物又は異種群同志の混合物)とを、リビングポリマーのリチウムを基準として、0.1〜1.9当量比の範囲で添加して、カップリング反応を行わせる工程、
とよりなることを特徴とする、新規な線状ブロック共重合体の製造方法。」

III.特許異議申立ての理由および取消理由の概要
特許異議申立人は、証拠として甲第1号証(米国特許第4,304,886号明細書)及びその抄訳文、甲第2号証(国際公開第87/05610号パンフレット)、甲第3号証(米国特許第3,134,745号明細書)及びその抄訳文、甲第4号証(特公昭48-33275号公報)、甲第5号証(特開昭49-23899号公報)を提出し、本件発明は、甲第1号証に記載された発明であり、また、甲第1〜5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号および特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであると主張している。
当審が通知した取消理由の概要は、本件発明は、甲第2、3、5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるというものである。

IV.判断
本件発明は、「不活性炭化水素溶媒中で有機リチウム化合物を開始剤として重合した、少なくとも1個のモノアルケニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと共役ジエンを主体とする重合体ブロックよりなる、ゲルパーミエーシヨンクロマトグラフィー(GPC)に於けるピーク分子量が標準ポリスチレン換算で1×104〜50×104であるブロック共重合体であるリビングポリマー」(以下「本件のリビングポリマー」という)を、請求項1に記載された特定のジエポキシ化合物(以下「本件のジエポキシ化合物」という)をカップリング剤としてカップリング反応を行わせる点を構成要件として具備するものである(以下この構成要件を「本件発明の構成要件」という)。そして、本件のリビングポリマーの分子量の特定により、最終的に得られる線状ブロック共重合体の機械的強度と加工性が共に良好であるという効果が得られ(本件特許公報第4頁第7欄第16-22行参照)、また、本件のジエポキシ化合物の採用により、カップリング効率の制御を可能とし、かつ、最終的に得られる線状ブロック共重合体が色調等の点で優れたものとなるという効果が得られるものである(本件特許公報、第2頁第3欄第31-35行、第2頁第4欄第48行〜第3頁第5欄第8行参照)。
これに対して、甲第1号証には、アルカジエンモノマーとモノアルケニル置換芳香族モノマーとのブロックコポリマーであるリビングリチウム金属末端ポリマーをカップリング剤でカップリング反応させることが記載されているが、カップリング剤として、本件のジエポキシ化合物を使用する点についての記載、またはそれを示唆する記載はない。特許異議申立人は、特許異議申立書において、甲第1号証にカップリング剤として記載された「”EPIKOTE”F828」は、ビスフェノール-Fのジグリシジルエーテルであるから、本件のジエポキシ化合物に相当する旨主張し、後に提出した回答書において、「”EPIKOTE”F828」なる記載は、「”EPIKOTE”828」の誤記であり、「”EPIKOTE”828」は、ビスフェノール-Aのジグリシジルエーテルであるから、本件のジエポキシ化合物に相当する旨主張している。しかし、「”EPIKOTE”F828」なる記載が「”EPIKOTE”828」の誤記であることが、甲第1号証の記載から当然に理解できるものとは認められないから、「”EPIKOTE”F828」については、その化学構造が不明であり、したがって、これが本件のジエポキシ化合物に相当するということができない。
甲第2号証には、「不活性炭化水素溶媒中で有機リチウム化合物を開始剤として重合した、少なくとも1個のモノアルケニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと共役ジエンを主体とする重合体ブロックよりなるブロック共重合体であるリビングポリマー」を、特定のジエポキシ化合物をカップリング剤としてカップリング反応させることが記載されているが、本件のジエポキシ化合物をカップリング剤とすることについての記載、またはそれを示唆する記載がない。
甲第3号証には、炭化水素重合体をジエポキシ化合物をカップリング剤としてカップリング反応させることが記載されており、カップリング剤として、本件のジエポキシ化合物に相当するものが記載されている。しかし、甲第3号証において、具体的に、本件のジエポキシ化合物を使用してカップリング反応させた炭化水素重合体の分子量は、2000であり(第6欄の実施例2参照)、ゲルパーミエーシヨンクロマトグラフィー(GPC)に於けるピーク分子量が標準ポリスチレン換算で1×104〜50×104であるといった、高分子量の重合体に対して、本件のジエポキシ化合物が、カップリング剤として有効であることは記載されていない。
甲第4号証には、α-メチルスチレンと本件のジエポキシ化合物に相当する化合物を共重合することが記載されているが、本件のジエポキシ化合物を重合体のカップリング剤として使用することについての記載はなされていない。
甲第5号証には、リビングポリマーに、本件のジエポキシ化合物に相当する化合物を反応させることが記載されているが、該リビングポリマーの分子量は、通常500〜5000程度である旨記載されており(甲第5号証の第2頁左上欄第13-17行参照)、ゲルパーミエーシヨンクロマトグラフィー(GPC)に於けるピーク分子量が標準ポリスチレン換算で1×104〜50×104であるといった、高分子量の重合体に対して、本件のジエポキシ化合物が、カップリング剤として有効であることは、甲第5号証に記載されていない。
以上、述べたとおりであるから、甲第1〜5号証には、本件のジエポキシ化合物が、高分子量の本件のリビングポリマーのカップリング剤として有効であることについての記載はなく、また、そのことを示唆する記載があるものとも認められない。
したがって、上記した本件の構成要件を具備する本件発明は、甲第1号証に記載された発明であるとも、また、甲第1〜5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められない。

V.むすび
したがって、特許異議の申立ての理由および証拠によっては、本件の請求項1に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件の請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-02-01 
出願番号 特願平2-78716
審決分類 P 1 651・ 113- Y (C08F)
P 1 651・ 121- Y (C08F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 一色 由美子  
特許庁審判長 三浦 均
特許庁審判官 中島 次一
石井 あき子
登録日 1998-07-17 
登録番号 特許第2802663号(P2802663)
権利者 日本エラストマー株式会社
発明の名称 新規な線状ブロック共重合体の製造方法  
代理人 武井 英夫  
代理人 鳴井 義夫  
代理人 伏見 直哉  
代理人 清水 猛  
代理人 伊藤 穣  
代理人 田中 夏夫  
代理人 川口 義雄  

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