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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H02M
管理番号 1012629
異議申立番号 異議1999-72360  
総通号数 10 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-09-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-06-15 
確定日 2000-03-13 
異議申立件数
事件の表示 特許第2839089号「電圧制御装置」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2839089号の特許を維持する。 
理由 1.本件発明
特許第2839089号(平成9年2月19日出願、平成10年10月16日設定登録。)の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「トランスの出力電圧を測定して、予め設定した基準電圧になるように前記トランスに複数箇所設けたタップを切り換えて出力電圧を制御する電圧制御装置において、トランスの出力電圧が前記基準電圧よりも高い場合には、一定時間毎に前記トランスのタップを段階的に切り換え、トランスの出力電圧を徐々に降下させて基準電圧に達するよう制御すると共に、トランスの出力電圧が前記基準電圧よりも低い場合には、瞬時に前記トランスのタップを段階的に切り換え、トランスの出力電圧を瞬時に上昇させて基準電圧に達するよう制御することを特徴とする電圧制御装置。」
2.申立ての理由の概要
申立人 マシイネンファブリーク・ラインハウゼン・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング は、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証(ドイツ国特許第19528827号明細書)乃至甲第2号証(特公昭52-13299号公報)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第113条第1項第2号の規定により取り消すべきものであると主張している。
3.申立人提出の刊行物記載の発明
(1)甲第1号証について
甲第1号証には、該甲第1号証に添付された翻訳文によると、以下の事項が記載されているものと認められる。
「この発明は、電圧実測値を測定し、予め設定された電圧目標値と比較し、この比較から調整のずれを求め、所定の切替遅延の後に調整のずれが所定の感度より大きい時に調整指令を発生してモータ駆動機構に出力する、モータ駆動機構により操作される負荷時タップ切換器の調整方法に関する。」(以下、この記載を「記載A」という。)、
「電圧実測値を測定し、電圧目標値と比較し、一定の切換遅延の後に調整を開始するこの周知の方法の主要な欠点は、対称的な調整しかできない点にある。
この調整器の予備設定可能な感度は電圧実測値が目標値から上下に一様にずれる場合に当てはまる。調整器の調整指令は、この調整のずれの符号に無関係に発せられる。
しかし、負荷時タップ切換器の多くの運転者にとって、特に電力供給企業にとって、電圧の上又は下へのずれは全く異なった評価をされる。多くの場合、例えば低電圧はある範囲で未だ受け入れられるか、あるいは回路網が過負荷の場合、甘受する必要もあるが、僅かな、あるいは本当に僅かな過電圧でも、例えば認可支払いを避けるため、必ず無くする必要がある。一方の過電圧と、他方の低電圧の異なった制御技術上の評価は、周知の方法を用いて行えない。必要とあらば、僅かな過電圧でも防止するため、これ等周知の方法では、非常に高い感度と短い切換遅延を予め選択できるが、これは電圧の上下へのほんの僅かなずれでも負荷時タップ切換器の操作は一様に多く行うことになり、負荷時タップ切換器の寿命を短くし、全体として望ましくない。
この発明の課題は、調整のずれの符号に応じてこのずれを異なった制御技術的に評価することができるか、あるいは他のように定式化する冒頭の述べた種類の方法を提供することにある。つまり、電圧の目標値以下になった場合、この電圧の目標値以上の場合以外の制御特性を行う方法を提示すべきである。
この課題は、この発明により、請求項1による方法によって解決されている。」(同「記載B」という。)、
「この発明の方法の主要な利点は、正と負の調整のずれに対して別々に、調整器の異なった切換遅延と異なった感度を予め与えることができ、これ等を不揮発的に記憶できる点にある。調整のずれがどんな符号を持っているか、および電圧ステップの数に関して、絶対的に見て調整のずれがどんな大きさであるに応じて、不揮発的記憶器からこの配置にとって重要な切換遅延と感度の値を呼び出し、他の制御の基礎にしている点にある。
従って、調整のずれが正の場合、負の場合とは異なった調整が可能である。さらに、例えば1電圧ステップを有する調整のずれでは、幾分大きい絶対的な調整のずれ、例えば2又は3電圧ステップを有するずれの場合とは異なった調整が可能である。定式化「異なった調整」は、この場合、調整の感度、つまりその時の応答しきい値や、切換遅延、つまり本来の調整過程の開始までの時間が異なった値を有することを意味する。
この可変性により、この発明による方法は、制御特性を各運転者の要請や注文に個別に合わせることを可能にし、互いに対立する判定基準、つまり、できる限り正確な調整、少ない切換による負荷時タップ切換器のできる限り寿命、を最適にするように、調整器の判定基準を選択させる。」(同、「記載C」という。)
「先ず、図1に示すこの発明の第1の方法を詳細に説明する。
調整器の不揮発性記憶器には、切換遅延Tと感度Eの個別値が、電圧ステップの数nに関して、正や負の調整のずれと、調整のずれの異なった絶対値に対してマトリックス状に保管されている。
すべての値を並べると、以下のマトリックスになる。
(以下、甲第1号証の第3頁に記載されたマトリックス表示の、文字の部分が日本語に翻訳したものが記載されている。)」(同、「記載D」という。)
(2)甲第2号証について
甲第2号証には、図面と共に、以下の事項が記載されている。
「変圧器のタップに接続したサイリスタを選択的に導通させることによって線路電圧を調整するように構成したサイリスタ自動電圧調整装置において、軌道時限と通常時限との2つのタップ切替時限を設定するタップ切替時限設定回路を設け、起動時には比較的短い時限の前記起動時限で前記サイリスタの導通によるタップ切替を行い、起動から所定時間経過した後には前記起動時限よりも長い時限の通常時限で前記サイリスタの導通によるタップ切替を行うよう構成したことを特徴とするサイリスタ自動電圧調整装置。」(第1頁第1欄第17行乃至第27行、特許請求の範囲)
「第1図はサイリスタ自動電圧調整装置の主回路部分を示すものであって、交流入力端子(INPUT)の次段に単巻変圧器T1が設けられ、この単巻変圧器T1のタップに直列変圧器Tsが接続されている。また線路に並列に励磁用の並列変圧器Ttが接続され、この変圧器Ttの2次側に3つのタップが設けられ、ここに5つのサイリスタTH1,TH2,TH3,TH4,TH5が接続され、選択された2つのサイリスタを通して直列変圧器Tsの1次側の巻線に電圧を加え、直列変圧器Tsの2次側に誘起した電圧によって線路電圧の昇降をなして調整した電力を出力端子(OUTPUT)から得るように構成されている。」(第1頁第1欄34行乃至第2欄10行)
「今、出力端子(OUTPUT)に接続されている負荷の電流が増大し、線路電圧が降下したとすれば、検出回路2にてこの降下を検出し、タップを切替えるべき信号をトランジスタTR1のベースに与える。即ちトランジスタTR1をオフにするような信号を与える。〜(省略)〜そして所定の電圧になったらば検出回路2からトランジスタTR1をオンにするような信号が加えられコンデンサC1が短絡され、UJT発振器からパルスが発生しなくなる。」(第2頁第3欄17行乃至43行)
「今、100%負荷状態で即ちサイリスタTH1,TH3のタップ回路の状態で停電し、所定時間後に50%負荷程度の軽負荷で送電が開始されたとする。送電が開始すれば、配電路に接続されたトランスと整流器を介して第6図のバイアスラインに直流電圧が供給される。それと同時に軽負荷となって線路の電圧が高すぎるので検出回路2からタップを切替えることを命令する信号が送出され、トランジスタTR1がオフとなる。〜(省略)〜上述の如く構成することによって、停電時に重負荷で起動時に軽負荷であったとしても速い時間に出力電圧を正常状態とすることが出来、回路に異常電圧が加わっている時間を短くすることが出来る。」(第3頁第5欄22行乃至第6欄33行;以下、「記載E」という。)
4.対比・判断
本件発明と甲第1号証、甲第2号証に記載のものとを対比すると、該甲第1,2号証には、少なくとも本件発明の、「トランスの出力電圧と基準電圧との差が大きい場合(過電圧の場合)でも、(負荷機器の電源電圧が急激に変化することにより)負荷機器に悪影響を及ぼしたり、ユーザに不信がられたりすることがない電圧制御装置を提供する」という課題(目的;本件発明に係る特許公報第1頁コラム2第12行-第2頁コラム3第15行参照。)、及びその課題を解決する手段として「トランスの出力電圧が基準電圧よりも高い場合には、一定時間毎にトランスのタップを段階的に切り換え、トランスの出力電圧を徐々に降下させて基準電圧に達するように制御すると共に、トランスの出力電圧が(前記)基準電圧よりも低い場合には、瞬時に前記トランスのタップを段階的に切り換え、トランスの出力電圧を瞬時に上昇させて基準電圧に達するよう制御する」という構成を備えた点が記載も示唆もされていない。
そして、本件発明は、上記構成を備えることにより、その明細書に記載されたとおりの「トランスの出力電圧と基準電圧との差が大きい場合でも、負荷機器に悪影響を及ぼしたり、ユーザに不信がられることがないよう極めてて自然に出力電圧を基準電圧に制御することができる」という格別の作用効果を奏するものと認められる。
以下、この点についてさらに詳述する。
まず、甲第1号証について検討する。その記載A及びBによれば、当業者(負荷時タップ切換器の多くの運転者、特に電力供給企業)においては、低電圧(電圧の下へのずれ)はある範囲で受け入れられる(甘受される)が、過電圧(電圧の上へのずれ)は、必ず無くす必要がある(受け入れられない)という、過電圧と低電圧とでは異なった評価をされる旨が記載され、このような評価は、従来周知の技術においても、また、当然該甲第1号証の発明においても同様にされているものと解される。そして、従来周知の方法では、電圧の上下へのずれ(正負のずれ)に対して対称的な調整方法がなされ、このような対称的な方法では、僅かな過電圧の場合にもこれを必ず無くす必要があるとの評価のもとに、非常に高い感度と短い切換遅延を選択してこの過電圧を速やかに解消しようとするのであるが、(対称的な調整であるが故に)同時に僅かな低電圧側へのずれに対しても同じ高い感度と短い切換遅延を選択して負荷時タップ切換器の操作をすることとなるので、負荷時タップ切換器の操作は一様に多く行うことになって、該負荷時タップ切換器の寿命を短くし、全体として望ましくないという問題点があった旨が記載され、該甲第1号証の発明は、この問題点を、電圧の目標値以下になった場合(即ち、ずれの符号が-の場合)に、(従来の対称的な調整方法とは異なって)目標値以上の場合とは異なった(非対称的な)方法を提示することにより解決することにある旨が記載されていると解される。
{ここで、上記甲第1号証における、過電圧(又は電圧の上へのずれ、符号+)が、本件発明の「トランスの出力電圧が基準電圧よりも高い場合」に、低電圧(又は電圧の下へのずれ、符号-)が、本件発明の「トランスの出力電圧が(前記)基準電圧よりも低い場合」に相当することは明らかである。また、上記記載Bにおける、周知方法の主な欠点である「対称的な調整」とは、該甲第1号証全体の記載からみて、調整のずれの符号にかかわらず(±の符号に対して)、例えば、ずれの程度の絶対値が大きい場合にはより長い切換遅延が、小さい場合にはより短い切換遅延が設定される(この場合、作動遅延は調整のずれに比例する。逆にずれの程度の絶対値が大きい場合にはより短い切換遅延を、小さい場合にはより長い切換遅延を設定することも可能である。その場合、作動遅延は調整のずれに逆比例する。)等、感度E及び切換遅延Tを、個別の調整のずれの程度の絶対値(大きさ)に対して、同じ値に設定することをもって、「(調整のずれの符号に関して)対称的な調整」と称しているものと解される。}
そして、上記記載Cにおける「この発明による方法は、制御特性を各運転者の要請や注文に個別に合わせることを可能にし、互いに対立する判定基準、つまり、できる限り正確な調整、少ない切換による負荷時タップ切換器のできる限り寿命、を最適にするように調整器の制御判定基準を選択させる。」との記載を勘案すると、甲第1号証の発明の課題は、確かに負荷時タップ切換器等の機器に悪影響を及ぼすことのない電圧制御装置を提供することにあるのではあるが、それは、本件発明のような例えば106Vから一気に100Vまで低下するような、トランスの出力電圧が基準電圧よりも高い場合(過電圧の場合)の急激な変化による悪影響をなくするという課題ではなく、むしろこのような過電圧の場合の速やかな(急激な、瞬時の、一気の)低下は必要であるとした上で、(ある範囲では受け入れられる)低電圧でのずれを解消する場合の急激な変化(上昇)による悪影響(即ち、負荷時タップ切換器の寿命が短くなるという悪影響)をなくすという課題であって、該甲第1号証ではその課題を、低電圧での感度Eと切換遅延Tの値を、過電圧での感度Eと切換遅延Tの値(高い感度と短い切換遅延)とは異なる値を選択するという非対称的な調整手段を採ることにより解決する方向を示すものである。そして、甲第1号証のような電圧調整器において、高い感度と短い切換遅延が選択された場合には、直ちに(即ち、瞬時を含む短い時間で)調整が開始されることによってより正確な調整ができる反面、負荷時タップ切換器の操作回数が多くなってその寿命が短くなり、逆に、低い感度と長い切換遅延が選択された場合には、負荷時タップ切換器の操作をより少なくしてその寿命を長くできる反面、正確な調整が犠牲にされるという互いに相反する作用効果を持つことは当業者において技術常識であることを考慮すると、該甲第1号証の発明が、より正確な調整と負荷時タップ切換器のできる限り長い寿命という課題を上記のような方向で解決することは、取りも直さず、低電圧の場合の感度Eと切換遅延Tとして、(過電圧の場合に比べて)より低い感度Eとより長い切換遅延Tを選択することを示唆するものに他ならない。
結局、甲第1号証の発明にあっては、本件発明のような、トランスの出力電圧と基準電圧との差が大きい過電圧の場合でも、負荷機器に調整時の電源電圧の急激な変化による悪影響を及ぼすことのない電圧制御装置を提供するという課題は提示されておらず、正確な調整と負荷時タップ切換器のできる限りの(長い)寿命という対立する判定基準を最適にするという課題を解決する手段として、電圧制御における非対称的な制御手段であって、過電圧の場合(トランスの出力電圧が基準電圧よりも高い場合)の制御手段としては従来と同様(相対的に)高い感度と短い切換遅延を選択し、低電圧の場合(トランスの出力電圧が基準電圧よりも低い場合)の制御手段として、(相対的に)低い感度と長い切換遅延を選択する手段が示唆されているにとどまるものと言わざるを得ない。
そして、甲第1号証に記載のものが示唆する上記のような電圧制御の手段は、本件発明に則して表現すれば「トランスの出力電圧が基準電圧よりも高い場合(過電圧の場合)には、速やかに(瞬時に)タップを段階的に切り換え、トランスの出力電圧が前記基準電圧よりも低い場合(低電圧の場合)には、一定時間毎に前記トランスのタップを段階的に切り換え、トランスの出力電圧を徐々に上昇させて基準電圧に達するように制御する」ものとなるのであって、明らかに本件発明の手段とは逆(正反対)であり、このように甲第1号証には、本件発明とは逆の電圧制御の手段が示唆されているものと解される以上は、たとえ該甲第1号証に電圧制御について非対称的な制御を行う旨が開示され、また、切換遅延について値0、即ち瞬時の切換の選択が可能である旨が開示されているとしても、該甲第1号証に本件請求項1に記載された発明の課題及び電圧制御手段の構成が記載も示唆もされていないことは勿論、該甲第1号証記載のものに基づいて、当業者が本件請求項1にかかる発明を容易に想到することができたものとすることもできない。
つぎに、甲第2号証について検討すると、その記載Eに「〜上述の如く構成することによって、停電時に重負荷で起動時に軽負荷であったとしても速い時間に出力電圧を正常状態とすることが出来、回路に異常電圧が加わっている時間を短くすることが出来る。」と記載されているように、該甲第2号証の発明の課題は、トランスの出力電圧が基準電圧よりも高い(過電圧の)場合に、その過電圧が加わっている時間が長くなることによる悪影響をなくすというものであって、本件発明のような「トランスの出力電圧と基準電圧との差が大きい過電圧の場合でも、負荷機器に調整時の電源電圧の急激な変化による悪影響を及ぼすことのない電圧制御装置を提供する」という課題とは異なり(逆であり)、例えばその記載Eに示された解決手段も、本件発明に則していえば「トランスの出力電圧が(前記)基準電圧よりも高い場合には、できる限り速やかに(瞬時に)前記トランスのタップを段階的に切り換え、トランスの出力電圧を瞬時に上昇させて基準電圧に達するよう制御する」手段が示されているものであって、前記の甲第1号証と同じく本件発明とは逆の解決手段が示されているものである。
また、甲第2号証には、その発明の前提となる従来技術としても上記の本件発明の課題及び構成は何ら示されていない。
したがって、甲第2号証にも上記本件発明の課題及び構成が記載も示唆もされておらず、該甲第2号証に記載のものに基づいて、当業者が本件請求項1に係る発明を容易に想到することができたものとすることはできない。
さらに、上記甲第1号証と第2号証に記載のものとを組み合わせても本件請求項1に係る発明の課題及び構成を容易に得ることはできず、該甲第1号証及び第2号証に記載のものとに基づいて、当業者が本件請求項1に係る発明を容易に想到することができたものとすることもできない。
5.異議申立人の主張について
ところで、異議申立人は、特許異議申立書において、トランスの出力電圧が基準電圧よりも低い場合の制御技術について、「(本件発明の)トランスの出力電圧が前記基準電圧よりも低い場合には、瞬時に前記トランスのタップを段階的に切り換え、トランスの出力電圧を瞬時に上昇させて基準電圧に達するよう制御する点は、従来技術では行われている制御であり、且つ甲第1号証に記載の従来技術も本件発明と同じ課題を持つから、甲第1号証に記載されていると言える。」(異議申立書第8頁21行-第9頁第1行)、と主張し、また、本件発明と甲第1、2号証に記載された発明との対比に当たり、「両者(本件発明と甲第1号証に記載された発明)は、従来のトランスのタップの切り換えが基準電圧まで一気に行っていた結果、負荷に悪影響を及ぼした問題点を解決するという点で共通する課題を有し、〜(省略)〜甲第1号証の発明でも、トランスの出力電圧が基準電圧よりも高い場合に一定時間毎にタップを切り換え、出力電圧を徐々に降下させる制御技術が明らかに示唆されているといえる。また、甲第2号証にも、〜(省略)〜異常電圧を防止する時限制御が広く知られていることであるから、本件特許発明の一定時間毎にタップを切り換え、出力電圧を徐々に降下させて負荷機器に悪影響を及ぼさないようにすることは、甲第1号証及び甲第2号証の記載から当業者が容易に想到し得るものである。」(同、第10頁第12-25行)と主張しているが、前述のとおり、甲第1号証に記載の従来技術は、トランスの出力電圧が基準電圧よりも高い場合、即ち過電圧の場合には、できるだけ速やかに(瞬時に)そのずれを調整するという点では該甲第1号証の発明と同じであって、ただ制御が対称的な制御であるが故に、「低電圧」時にトランスのタップの切り換えが一気に行っていた結果、負荷機器に悪影響を及ぼした(寿命が短くなる)という問題点を解決するものであるから、本件発明の「過電圧」の場合に制御時の負荷機器の電源電圧の急激な変化をなくす(即ち、過電圧の場合に解決手段としてはトランスの出力電圧を徐々に変化させて基準電圧に達するよう制御する)という課題とは全く異なり(逆であると言える)、また、甲第2号証に記載のものも、前述のとおり本件発明とは逆の課題を有するものであるから、かかる異議申立人の主張は採用できない。
6.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申し立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-02-07 
出願番号 特願平9-52303
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H02M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤井 浩  
特許庁審判長 吉村 宅衛
特許庁審判官 西川 一
岩本 正義
登録日 1998-10-16 
登録番号 特許第2839089号(P2839089)
権利者 河村電器産業株式会社
発明の名称 電圧制御装置  
代理人 鍛冶澤 實  
代理人 江崎 光史  

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