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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H05K
管理番号 1012636
異議申立番号 異議1999-73924  
総通号数 10 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-10-18 
確定日 2000-03-27 
異議申立件数
事件の表示 特許第2884432号「電波吸収体」の請求項2ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2884432号の請求項第2項ないし第4項に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第2884432号に係る発明についての出願は、平成2年6月26日の出願であって、平成11年2月12日にその発明について特許の設定登録がなされた後、その特許について、特許異議の申立てがなされたものである。
2.特許異議の申立てについて
ア.本件発明
本件特許第2884432号の特許請求の範囲の請求項1乃至4に係る発明は、特許明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された事項によって特定されるとおりのものである。
イ.申立ての理由の概要
(1)申立人壺井宏佑は、「本件請求項2〜4に記載の発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づけば、当業者であれば容易に為し得た発明といわざるを得ず、而して特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものと確信する。」旨主張する。
(2)証拠方法
(a)甲第1号証:特開昭58-92540号公報(以下、「引用例1」という。)
引用例1には、静電気障害を防止し得る導電性発泡成形体及びその製造方法に関し、「本発明は、熱可塑性樹脂予備発泡粒子を金型内で発泡させて得られる発泡成形体において、該発泡体は予備発泡粒子が相互に発泡、融着して形成された多数の粒子状体から構成され、該粒子状体の相互融着面の・・・一部に導電層が形成されていることを特徴とする導電性発泡成形体を要旨とする。更に本発明は少なくとも表面の一部に導電層を成層してなる熱可塑性樹脂予備発泡粒子を、・・・金型に充填し、加熱発泡させて型通りの成型体を得ることを特徴とする導電性発泡成形体の製造方法を要旨とする。」(2頁6行乃至17行)、「本発明の導電性発泡成型体は・・・第4図に示す如く、粒子状体の相互融着面に導電層の形成されない部分5を一部含んだものであってもよい。即ち、全く導電層の形成されていない粒子状体が一部混在していたとしても、・・・切断面を全体として見た時、導電層がどこかで連なり三次元的編み目構造を形成したものであれば、切断面が導電性を有することとなり、本発明の所期の目的を達することになる。」(2頁左下欄13行乃至右下欄5行)、「表面に全く導電層の成層されていない熱可塑性樹脂予備発泡粒子を、前記した表面の一部又は全部に導電層を成層してなる熱可塑性樹脂予備発泡粒子に混在させて成型に供することにより本発明の導電性発泡成型体を製造することも可能である。その場合、表面に全く導電層の成層されていない熱可塑性樹脂予備発泡粒子の割合が多くなり過ぎると得られる成型体の表面抵抗値が高くなるので注意を要する。一般には、表面に全く導電層の成層されていない熱可塑性樹脂予備発泡粒子の割合は、成型に使用される予備発泡粒子の2/3以下、好ましくは1/2以下である。但し、得られる成型体の表面抵抗値は108Ω・cm以下であることが好ましい。」(3頁左上欄10行乃至右上欄3行)との記載がある。
(b)甲第2号証:特開昭58-101137号公報(以下、「引用例2」という。)
引用例2には、導電性スチレン系樹脂粒子およびその製造法に関し、「導電性スチレン系樹脂粒子は、表皮層に導電性フイラーが含有されており、上記粒子の内部には含有されない。上記表皮層はスチレン系樹脂と導電性フイラーの混合された複合材である。」(2頁14行乃至18行)との記載がある。
3.対比・判断
ア.本件請求項2に係る発明について
請求項2に係る発明と引用例1及び引用例2記載のものとを対比すると、引用例1及び引用例2には、有機重合体からなる非導電性発泡粒子の表面にカーボンブラツク又はグラフアイトの少なくともいずれか1種の導電性粉末を付着させた導電性発泡粒子と前記導電性粉末を付着させない非導電性発泡粒子とを混合し、これらの粒子相互間を接合一体化した電波吸収体について記載されていないし、上記電波吸収体について示唆するところもない。
すなわち、引用例1記載のものは、上記した記載から明らかなように、熱可塑性樹脂予備発泡粒子を金型内で発泡させて得られる発泡成形体であって、該発泡体は予備発泡粒子が相互に発泡、融着して形成された多数の粒子状体から構成され、該粒子状体の相互融着面の一部に導電層が形成されている導電性発泡成形体であって、切断面を全体として見た時、導電層がどこかで連なり三次元的編み目構造を形成したものである(第4図参照)のに対し、本件請求項2に係る発明のものは、非導電性発泡粒子の表面に導電性粉末を付着させた導電性発泡粒子と前記導電性粉末を付着させない非導電性発泡粒子とを混合し、これらの粒子相互間を接合一体化した電波吸収体であって、引用例1記載のものように、予備発泡粒子が相互に発泡、融着して形成された多数の粒子状体から構成されるものではない。
さらに、引用例1には、上記したように、「表面に全く導電層の成層されていない熱可塑性樹脂予備発泡粒子の割合が多くなり過ぎると得られる成型体の表面抵抗値が高くなるので注意を要する。一般には、表面に全く導電層の成層されていない熱可塑性樹脂予備発泡粒子の割合は、成型に使用される予備発泡粒子の2/3以下、好ましくは1/2以下である。但し、得られる成型体の表面抵抗値は109Ω・cm以下であることが好ましい。」(3頁左上欄15行乃至右上欄3行、上記表面抵抗値の数値が不明のため上記のように109Ω・cmと認定した。)との記載があるように、成型体の表面抵抗値が高くならないようにすること、すなわち導電率を相応に高くすることが開示されており、そして、一般に、静電気による事故防止策の一つとして105〜108Ω・cm程度の導電性とすること、また帯電防止を目的とした半導体包装材料についてその表面抵抗率を109Ω・cm以下とすることが知られている。してみれば、引用例1には、電波吸収体について示唆されておらず、静電気障害を防止しうる導電性発泡成型体を電波吸収体とすることは、当業者が容易に想到することができるものとはいえない。
イ.本件請求項3に係る発明について
請求項3に係る発明は、上記請求項1又は請求項2に係る発明をさらに限定したものであって、上記請求項2に係る発明についての判断と同様の理由により、上記引用例1乃至引用例2に記載に発明に基づいていて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ.本件請求項4に係る発明について
請求項4に係る発明は、上記請求項1、請求項2又は請求項3に係る発明をさらに限定したものであって、上記請求項2又は請求項3に係る発明についての判断と同様の理由により、上記引用例1乃至引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては本件請求項2乃至4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項2乃至4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-03-07 
出願番号 特願平2-165722
審決分類 P 1 652・ 121- Y (H05K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 青木 俊明  
特許庁審判長 玉城 信一
特許庁審判官 大島 祥吾
井口 嘉和
登録日 1999-02-12 
登録番号 特許第2884432号(P2884432)
権利者 横浜ゴム株式会社
発明の名称 電波吸収体  
代理人 小川 信一  
代理人 野口 賢照  
代理人 斎下 和彦  

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