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審決分類 審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 H01S
管理番号 1013745
審判番号 審判1998-13574  
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-08-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-08-31 
確定日 2000-01-25 
事件の表示 平成5年特許願第328725号「青-緑注入形レーザ装置」拒絶査定に対する審判事件(平成7年8月16日出願公告、特公平7-77284)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 (手続の経緯、請求項に係る発明)
本願は、平成5年12月24日の出願(パリ条約による優先権主張日平成4年12月28日)であって、請求項1に係る発明は、出願公告後、平成10年9月30日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの、
「(a)第1導電型の基板と、
(b)前記基板上に形成され、第1導電型のZn1-xMgxSySe1-yからなるクラッド層と、
(c)前記第1導電型クラッド層上に形成され、第1導電型のZnSzSe1-zのガイド層と、
(d)前記第1導電型ガイド層上に形成され、光を発生させる活性領域を構成するZn1-uCduSeの活性層と、
(e)前記活性層上に形成され、前記第1導電型と反対の第2導電型のZnSzSe1-zのガイド層と、
(f)第2導電型のZnSzSe1-zのガイド層上に形成した第2導電型のZn1-xMgxSySe1-yのクラッド層と、
(g)前記第2導電型のクラッド層上に形成した第2導電型の接触層とを具え、
(h)ここにおいて、0≦u≦0.4、0<z≦0.1、0<x≦1及び0.06≦y≦1とし、前記x及びyを、前記クラッド層が前記基板に格子整合するように選択すると共に、
(i)前記各層の厚さが、前記接触層における光の損失を最小にすると共に前記活性層における光の量を最大にするように成長形成されているレーザ装置。」
にあるものと認める。
(先願明細書)
これに対して、原査定の拒絶の理由となった特許異議の決定の理由において引用された、本願の出願の日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願平4-314165号(特開平6-152061号)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、先願明細書という。)には、公開公報の掲載箇所で示すと、
「化合物半導体基板上に積層されたZnMgSSe系化合物半導体から成る第1導電型の第1のクラッド層と、上記第1のクラッド層上に積層されたZnSSe系化合物半導体から成る第1導電型の第1の光導波層と、上記第1の光導波層上に積層されたZnCdSe系化合物半導体から成る活性層と、上記活性層上に積層されたZnSSe系化合物半導体から成る第2導電型の第2の光導波層と、上記第2の光導波層上に積層されたZnMgSSe系化合物半導体から成る第2導電型の第2のクラッド層とを具備する半導体レーザ。」
(特許請求の範囲請求項2)、
「【0018】図1に示すように、この第1実施例による半導体レーザーにおいては、例えばn型不純物としてSiがドープされた(100)面方位のn型GaAs基板1上に、例えばn型不純物としてClがドープされたn型ZnSeバッファ層2、例えばn型不純物としてClがドープされたn型ZnxMg1-xSySe1-yクラッド層3、例えばn型不純物としてClがドープされたn型ZnSpSe1-p光導波層4,例えばアンドープのZn1-zCdzSeの活性層5、例えばp型不純物としてNがドープされたp型ZnSpSe1-p光導波層6及び例えばp型不純物としてNがドープされたp型ZnxMg1-xSySe1-yクラッド層7が順次積層されている。この場合、Zn1-zCdzSeの活性層5はひずみ層である。
【0019】p型ZnxMg1-xSySe1-yクラッド層7の上には、ストライプ状の開口8aを有する例えばポリイミド、SiOx膜、SiNx膜などから成る絶縁膜8が形成されている。そして、この開口8aを通じてp型ZnxMg1-xSySe1-yクラッド層7にp型電極としての例えばAu電極9がコンタクトしている。一方、n型GaAs基板1の裏面にはn型電極としてのIn電極10がコンタクトしている。
【0020】この場合、n型ZnxMg1-xSySe1-yクラッド層3及びp型ZnxMg1-xSySe1-yクラッド層7のZn組成比xは例えば0.97、S組成比yは例えば0.09であり、そのときのバンドギャップEgは約2.87eVである。また、n型ZnSpSe1-p光導波層4及びp型ZnSpSe1-p光導波層6のS組成比pは例えば0.06であり、そのときのバンドギャップEgは約2.82eVである。さらに、Zn1-zCdzSeの活性層5のCd組成比zは例えば0.18であり、そのときのバンドギャップEgは約2.57eVである。」(公報第3頁右欄第27行〜第4頁左欄第9行)、
「【0022】この場合、n型ZnxMg1-xSySe1-yクラッド層3、n型ZnSpSe1-p光導波層4,p型ZnSpSe1-p光導波層6及びp型ZnxMg1-xSySe1-yクラッド層7はGaAsに格子整合するものである。」(公報第4頁左欄第32行〜第36行)と記載されており、先願明細書には、
「n型GaAs基板上に積層されたn型ZnxMg1-xSySe1-yの第1クラッド層と、第1クラッド層上に積層されたn型ZnSpSe1-pの第1光導波層と、第1光導波層上に積層されたアンドープのZn1-zCdzSe活性層と、活性層上に積層されたp型ZnSpSe1-pの第2光導波層と、第2光導波層上に積層されたp型ZnxMg1-xSySe1-yの第2クラッド層とを具備し、xは0.97、yは0.09、pは0.06、zは0.18であり、n型ZnxMg1-xSySe1-yクラッド層、n型ZnSpSe1-p光導波層,p型ZnSpSe1-p光導波層及びp型ZnxMg1-xSySe1-yクラッド層はGaAs基板に格子整合するものである半導体レーザ。」
の発明(以下、先願発明という。)が記載されている。
(対比)
本願の請求項1に係る発明(以下、単に本願発明という。)と先願発明とを対比すると、
先願発明における「n型GaAs基板」、「n型ZnxMg1-xSySe1-yの第1クラッド層」、「n型ZnSpSe1-pの第1光導波層」、「アンドープのZn1-zCdzSe活性層」、「p型ZnSpSe1-pの第2光導波層」、「p型ZnxMg1-xSySe1-yの第2クラッド層」及び「半導体レーザ」は、本願発明における「第1導電型の基板」、「第1導電型のZn1-xMgxSySe1-yからなるクラッド層」、「第1導電型のZnSzSe1-zのガイド層」、「Zn1-uCduSeの活性層」、「第1導電型と反対の第2導電型のZnSzSe1-zのガイド層」、「第2導電型のZn1-xMgxSySe1-yのクラッド層」及び「レーザ装置」に各々相当し、活性層が「光を発生させる活性領域を構成する」ことは自明であり、また、先願発明の各成分の組成比を規定した数値(先願発明のxは本願発明の1-xに相当し、以下同様に、先願発明のy、p及びzは、本願発明のy、z及びuに相当する。)のx=0.97、y=0.09、p=0.06、z=0.18は、本願発明の「0≦u≦0.4、0<z≦0.1、0<x≦1、0.06≦y≦1」に含まれるものであり、さらに、先願発明の、「n型ZnxMg1-xSySe1-yクラッド層、n型ZnSpSe1-p光導波層,p型ZnSpSe1-p光導波層及びp型ZnxMg1-xSySe1-yクラッド層はGaAs基板に格子整合する」との記載から、先願発明においても、x及びyの数値は、クラッド層が基板に格子整合するように選択されているものと認められるから、両者は、
「(a)第1導電型の基板と、
(b)前記基板上に形成され、第1導電型のZn1-xMgxSySe1-yからなるクラッド層と、
(c)前記第1導電型クラッド層上に形成され、第1導電型のZnSzSe1-zのガイド層と、
(d)前記第1導電型ガイド層上に形成され、光を発生させる活性領域を構成するZn1-uCduSeの活性層と、
(e)前記活性層上に形成され、前記第1導電型と反対の第2導電型のZnSzSe1-zのガイド層と、
(f)第2導電型のZnSzSe1-zのガイド層上に形成した第2導電型のZn1-xMgxSySe1-yのクラッド層と、
(h)ここにおいて、0≦u≦0.4、0<z≦0.1、0<x≦1及び0.06≦y≦1とし、前記x及びyを、前記クラッド層が前記基板に格子整合するように選択されているレーザ装置。」
である点で一致しており、
1.本願発明は、(g)前記第2導電型のクラッド層上に形成した第2導電型の接触層を具えているのに対し、先願発明は接触層を具えていない点、
2.本願発明は、(i)前記各層の厚さが、前記接触層における光の損失を最小にすると共に前記活性層における光の量を最大にするように成長形成されているのに対し、先願発明は、これらの点は明示されていない点、
で一応相違している。
(当審の判断)
上記相違点について検討する。
・相違点1について
クラッド層としてZnMgSSeを使用したレーザ装置において、クラッド層と電極との間に接触層として、クラッドと同じ導電型のZnSeを設けることは、本願出願前周知であり(ELECTRONICS LETTERS 10th September 1992 Vol.28 No.19 第1798頁、信学技報Vol.92 No.381 1992年12月17日、第35頁〜第36頁参照)、また、SCH構造のレーザ装置においてもクラッド層と同じ導電型のZnSe接触層を設けることも知られている(Appl.Phys.Lett.Vol.59 No.11 9 September 1991 第1272頁参照)から、この相違点は単なる設計上の微差にすぎない。そして、その奏する作用効果も、接触層を設けたことによる効果以上のものではない。
・相違点2について
レーザ装置を設計する際に、活性層における光量が最大となる光強度分布にするように、各層の厚さを設定することは当然の考慮事項であり、また、そのように設定すれば、接触層に達する光量がきわめて小さくなり、接触層における光の損失を最小に抑えることができることは自明である。
したがって、相違点2は、レーザ装置を設計する際に、当然考慮すべき事項を記載したものにすぎず、先願発明においても、明示の記載はないが、同様の設計思想の基に、各層の厚さが成長形成されているものと認める。
(むすび)
したがって、本願発明は、先願発明と実質的に同一の発明であり、しかも、本願発明の発明者が上記先願発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、本願発明は、特許法第29条の2第1項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-07-26 
結審通知日 1999-08-10 
審決日 1999-08-24 
出願番号 特願平5-328725
審決分類 P 1 8・ 16- Z (H01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩崎 孝治原 光明門田 かづよ  
特許庁審判長 豊岡 静男
特許庁審判官 青山 待子
横林 秀治郎
発明の名称 青-緑注入形レーザ装置  
代理人 杉村 暁秀  
代理人 杉村 純子  
代理人 梅本 政夫  
代理人 高見 和明  
代理人 徳永 博  
代理人 杉村 興作  

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