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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1013874
審判番号 審判1995-23086  
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-10-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1995-10-23 
確定日 2000-05-31 
事件の表示 平成3年特許願第154894号「輝度信号と色信号分離用パターン適応形ディジタル櫛形フィルタ」拒絶査定に対する審判事件(平成4年10月6日出願公開、特開平4-280595)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明の要旨
本願は、平成3年6月26日(パリ条約による優先権主張1990年6月29日、韓国)の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成7年10月23日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「輝度信号及び色信号出力回路100を備えた、輝度信号と色信号分離用ディジタル櫛形フィルタにおいて、
映像信号入力端子101を通って入力される三個の連続される水平走査ラインの映像信号を各々1H櫛形濾波して第1,第2の1H櫛形データを出力し、2H櫛形濾波して2H櫛形データを出力し1H遅延映像信号を出力する櫛形濾波回路10と、
上記櫛形濾波回路10の出力端に入力端が連結され上記1H櫛形濾波された第1,第2の1H櫛形データを各々低域濾波して上記1H櫛形濾波した各々の二つの水平走査ラインから発生した輝度信号の低域トランジションを検出し絶対値を取って、第1,第2相関度データを出力する相関度データ発生回路20と、
上記櫛形渡波回路10の各出力端に入力端子10〜13が各々連結され選択端子SO,SIに入力される選択データの論理状態により上記第1,第2の1H櫛形データと2H櫛形データ及び遅延映像信号の中一つを選択して出力端子Zで出力するマルチプレクサ30と、
上記相関度データ発生回路20の出力端と上記マルチブレクサ50の選択端子SO,SIに連結され基準データ入力端子102を通って入力される基準データと上記第1,第2相関度データを各々比較して基準データより夫々が小さい時には上記2H櫛形濾波された2H櫛形データを選択させ基準データより夫々が小さくない場合には上記第1,第2の1H櫛形データの中相関度が大きい方へ一つを選択させ非標準信号情報入力端子103を通って入力される非標準信号情報データが論理”1”である時には上記1H遅延映像信号を選択させる2ビットの選択データを出力する櫛形濾波制御回路40と
から成る輝度信号と色信号分離用パターン適応形ディジタル櫛形フィルタ。」
2.引用例の記載
▲1▼これに対して、原査定の拒絶の理由に引用した特開昭59-151592号公報(以下、引用例1という)には、下記の事項が記載されている。「この発明は輝度信号及び色信号分離回路に関し、特にカラーTV(テレビジョン)受像機において輝度信号と搬送色信号とを分離する分離回路に関する。」(第1頁右下欄第1行〜4行)
「本発明は上記の如き従来のものの欠点を除去するためになされたものであって、その目的とするところは隣接水平走査線の映像信号間の相関の有無にかかわらず常に正しいフィルタ作用を行うことができる輝度及び色信号分離回路を提供することにある。
本発明に係る分離回路は、基準となる水平走査線とこれに隣接する前後の所定本の水平走査線との間の映像信号の相関性の有無を検出し、これらの少なくとも一部に相関性が検出されたとき、相関性ある部分について加算及び減算処理をなし、相関性がない場合には基準となる水平走査線の映像信号の低域及び高域成分を夫々導出するようになし、加算処理された信号及び低域成分を基準水平走査線の輝度信号として出力し、減算処理された信号及び高域成分を基準水平走査線の搬送色信号とするようにしたことを特徴とする。」(第2頁左下欄第4行〜20行)
「かかる構成において、輝度信号選択用スイッチ26の4つの入力端子には、信号(H)として(2H1+H0+H2)/4、信号(I)として(H1+H2)/2、信号(J)として(H1+H0)/2、及び信号H1のLPF18を経たものが供給されていることになる。また、搬送色信号選択用スイッチ27の4つの入力端子には、上から順に(2H-H0-H2)/4、(H1-H2)/2、(H1-H0)/2及び信号H1のBPF21を経たものが供給されていることになる。また、スイッチドライバ28の2入力(E)及び(G)としては、(H1-H2)/2及び(H1-H0)/2の各低域成分が夫々用いられることになる。これら(H1-H2)/2及び(H1-H0)/2なる差信号は、走査線間の相関の有無を検出するためのものであり、(H1-H2)の低域成分(以下L12と称す)が検出されなければ両走査線の信号H1とH2との間には相関性があり、L12が検出されれば相関性なしと判断する。同様に、(H1-H0)の低域成分L10が検出されなければ両走査線信号H1とH0との間には相関性があり、L10が検出されれば相関性なしと判断する。
輝度信号と搬送色信号との分離をなすためには、相関のある信号だけについて加減算処理を行う必要があるから、スイッチドライバ28においては、H1とH2及びH1とH0の相関の有無によりスイッチ26及び27を次のように制御する。
すなわち、L12,L10共に検出されないときにはH1はH2,H0共に相関性を有しているので、Y-OUTが(2H1十H0十H2)/4、C-OUTが(2H1-H0ーH2)/4となるように切換わる。L10のみが検出されたときはH1とH2との相関性があるから、Y-OUTが(H1+H2)/2、C-OUTが(H1-H2)/2となるように制御される。また、L12のみが検出されるとH1とH0とが相関性を有しているので、Y-OUTが(H1+H0)/2、C-OUTが(H1-H0)/2となるように制御され、L12、L10が共に検出されるとH1はH0とH2と相関性を有しないので、Y-OUTがLPF18の出力であるH1の輝度信号、C-OUTがBPF21の出力であるH1の搬送色信号成分となるように制御されるのである。」(第3頁右上欄第1行〜右下欄第4行)
なお、引用例1に、「L12、L10共に検出されないときにはH1はH2,H0と共に沿おう完成を有しているので、Y-OUTが(2H1+H0+H2)/4、C-OUTが(2H1ーH0ーH2)/4となるように変わる。」と記載されているので、本発明の櫛形濾波制御回路の「上記第1,第2相関度データを各々比較して基準データより夫々が小さい時には上記2H櫛形濾波された2H櫛形データを選択する」点は共通である。また、スイッチドライバ28から4(=22)入力を切り替えるスイッチ26,27の切り替え制御をしているのであるから、本発明の「選択端子SO,SIに入力される選択データ」を用いているといえる。
▲2▼特開昭59-198100号(以下引用例2という)には以下の記載がある。
「本発明は、複合映像信号の色信号及び輝度信号を分離する色・輝度分離処理装置に関する。」(第1頁左下欄14行〜15行)
「第3図は、1走査線ずつ遅延した3走査線を用いる従来の櫛形フィルタを示している。第2図と同等の部分には同一の参照番号が付してある。説明のため、これら3本の走査線を夫々0H,1H,2Hと呼ぶ。ここで”H”はテレビの1走査線分の遅延時間を示し、”H”の前の数字は遅延走査線数を示す。従って”0H”は非遅延(実際にはほかの遅延を決定するための基準点)を表わし、”1H”及び”2H”は夫々”0H”出力に対する1走査線分及び2操作線分の遅延時間を表す。第3図では、入力端子INに入力される複合映像信号は3つの経路に分配される。即ちその1つは非遅延で加算器(16)に直接送られ、他の2つは夫々1H及び2H信号を生成するために遅延線(8)及び(14)に印加される。0H信号は加算器(16)により同相の2H信号に加算され、この出力は除算器(18)により1/2にされ0H信号と2H信号との平均がとられる。この0H信号及び2H信号の平均と1H信号とを第2図の櫛型フィルタにおける如く処理することにより色・輝度分離が達成される。この色出力信号は遅延線(8)の1H遅延出力の色情報を表す。
この櫛形フィルタは3走査線の色情報が相互に関連(類似)しているとき第2図の2走査線を利用するものに比べ、色誤差が少ない。とくに垂直方向の色・輝度遅延が軽減される。しかし0H信号及び2H信号の両方が1H信号と大きく異なる場合等、色誤差が却つて大きくなる問題があった。」(第2頁左下欄第7行〜右下欄第13行)
「ここで、帯域通過フィルタ(22)及び(24)の出力を受ける加算器(30)について考察する。加算器(30)は、比較器(36)、しきい値発生器(38)及びフィルタ(40)と共働し、0H出力及び1H出力間の色相関関係(色類似度)をチェックする。フィルタ(22)及び(24)の出力はほとんど色情報であり、低周波の輝度情報は含まない。色副搬送波は1走査線毎に位相が反転するので、隣り合う2本の走査線の垂直方向に相互に関連した信号に対して、フィルタ(22)及び(24)の出力を加算すると、両信号が垂直方向で類似しているときには加算器(30)の出力は略0になる。この出力は符号と大きさとを持つ量であるが、今必要なものはこの大きさのみである。この出力が小さいことは0H出力及び1H出力間で垂直方向の色の類似度が大きいことを示し、逆にこの出力が小さいことは垂直方向の色の類似度が小さいことを示す。加算器(30)のこの出力比較器(36)の一方の入力端子に入力される。比較器(36)の他方の入力端子にはしきい値発生器(38).からしきい値が入力される。しきい値は固定されているが可変することもできる。加算器(30)から入力された信号の大きさがしきい値発生器(38)により設定されたしきい値より大きいとき、比較器(36)の出力は低論理レベル”0”から高論理レベル”1”に状態を変える。」(第3頁左下欄第1行〜右下欄第4行)
▲3▼特開昭63-141490号(以下引用例3という)
「本発明は、ベースバンドのビデオ信号をデジタル処理するデジタルテレビジョン受像器に係り、特にビデオ信号を輝度信号(以下Y信号)と色度信号(以下C信号)とに分離する適応型Y/C分離回路に関する。」(第1頁右下欄第18行〜第2頁左上欄第2行)
「上記適応型Y/C分離手段では、垂直方向フィルタと水平方向フィルタとの切り換えをするための絵柄評判が難しく、誤判定により画質劣化が大きな問題点となっていた。
先の特開昭60-134587号広報記載の適応型Y/C分離回路を例にとると、カラーサブキャリア付近の縦縞輝度パターンなどの絵柄情報を処理する際には、微少なノイズ成分によって誤判定を起し、画面上に輝度が変化することによる縦縞が表れたり、クロスカラーが発生したりして目障りな画像として見えるという問題点があった。
本発明は、上記問題点を除去すべく成されたもので、広汎な絵柄に対応可能であり、誤判定をし難い適応型Y/C分離回路を提供することを目的とする。」(第2頁右上欄第11行〜左下欄第5行)
「本発明は、C信号の相関がないところでは統計的にY信号も相関がなくなることが多いという性質を利用する。すなわち2Hの遅延線を用い、位相中心となる画素に対する上下ラインのY信号についての相関度を検出し、相関の強いほうのライン間で垂直方向のY/C分離を行う。次にここで得られるC信号の水平方向について、位相中心画素とその左右のC信号との相関を検出し、相関の強い方の画素間のC信号分離を行ない、この結果得られたC信号をもとのビデオ信号から減じることによりY信号を得ることにより、性能のよい適応型Y/Cブンリ回路を実現するものである。」
▲4▼特開昭64-89885号(以下引用例4という)には以下の記載が認められる。
「[従来の技術]
デジタルテレビジョン受像機として従来、ライン相関を用いたYC分離回路と、フレーム相関を用いたYC分離回路とを並設し、ビデオ信号の画像無いようの動きを検出してう簿記検出信号に応じていずれかのYC分離回路を選択するようにしてYC分離を良好になすようにしたものがある。」(第1頁右下欄第3行〜9行)
「[発明が解決しようとする問題点]
ところで、最近のテレビジョン受像機においては、ビデオテープレコーダやビデオディスクプレーヤからのビデオ信号をも処理するものがある。
このようなテレビジョン放送以外のビデオ信号は、ジッタ成分(時間軸変動)を有したり、また、1フレーム期間が正規の1フレーム期間に比べて所定量だけ長くなっていたりする。そのため、ライン相関及びフレーム相関が小さく、上述のような動き検出信号に応じてYC分離回路を切り換えるようにしても適切なYC分離を行うことができない場合も生じる。
本発明は、以上の点を考慮してなされたもので、到来しているビデオ信号に応じてYC分離方式を適切に選択し得てYC分離を良好に行い、画像を一段と改善することのできるテレビジョン受像機を提供しようとするものである。」(第1頁右下欄第11行〜第2頁左上欄第7行)
「ビデオ信号判別回路9は、アナログ/デジタル変換回路1を介して与えられるビデオ信号がジッタ成分を有するビデオ信号(以下、第一の非標準ビデオ信号と呼ぶ)か否かを検出する第1の非標準ビデオ信号検出回路91と、ビデオ信号か間欠的または連続的に1フレーム期間が正規の1フレーム期間より所定時間だけ長くなっているビデオ信号(以下、第2の非標準ビデオ信号と呼ぶ)か否かを検出する第2の非標準ビデオ信号検出回路92とを備える。
ここで、第1の非標準ビデオ信号は、例えば、ビデオテープレコーダや静電容量式ビデオディスクプレーヤからのビデオ信号が該当する。また、第2の非標準ビデオ信号は、例えば、光学式ビデオディスクプレーヤのスチル再生モード及びスロー再生モードのビデオ信号が該当する。光学式ビデオディスクプレーヤのスチル再生モード及びスロー再生モードは、毎フレーム毎に、または数フレームに1回毎に同一トラックを走査するので、繰返し走査するとき、第2図に示すように、そのトラックの終端に走査位置がきたとき走査位置を半径方向に移動させてそのトラックの開始位置に走査位置をずらせるため、その移動時間だけ1フレーム時間が長くなっており、第2の非標準ビデオ信号となる。」
(第3頁左上欄第14行〜右上欄第18行)
3.対比と相違点
本願の請求項1の発明(以下、前者という)と上記引用例の第4図記載のもの(以下、後者という)を比較すると、両者は、いずれも出力回路、相関度データ発生回路、マルチプレクサ、櫛形フィルタ制御回路を有する輝度信号色信号分離用ディジタル櫛形フィルタとして共通であって、引用例の▲1▼出力回路として「スイッチ26,27に至る2系統の回路」、▲2▼櫛形フィルタとしての「1H DELAY10,11と、加算機24、増幅器20、19の出力とからなる回路」、▲3▼相関データ発生回路としての「LPF29,30」▲4▼マルチプレクサとしての「スイッチ27」、▲5▼櫛形フィルタ制御回路としての「スイッチドライバ28」は、
それぞれ本願の▲1▼「出力回路100」、▲2▼「映像信号入力端子を通って入力される三個の連続される水平走査ラインの映像信号を各々1H櫛形濾波して第1,第2の1H櫛形データを出力し、2H櫛形濾波して2H櫛形データを出力し1H遅延映像信号を出力する櫛形濾波回路10」、▲3▼「上記櫛形濾波回路10の出力端に入力端が連結され上記1H櫛形濾波された第1,第2の1H櫛形データを各々低域濾波して上記1H櫛形濾波した第1,第2相関度データを出力する相関度データ発生回路20」▲4▼「上記櫛形渡波回路10の各出力端に入力端子10〜13が各々連結され選択端子SO,SIに入力される選択データの論理状態により上記第1,第2の1H櫛形データと2H櫛形データ及び遅延映像信号の中一つを選択して出力端子Zで出力するマルチプレクサ30」、▲5▼「相関度データ発生回路20の出力端と上記マルチブレクサ50の選択端子SO,SIに連結され基準データ入力端子102を通って入力される基準データと上記第1,第2相関度データを各々比較して基準データより夫々が小さい時には上記2H櫛形濾波された2H櫛形データを選択させ基準データより夫々が小さくない場合には上記第1,第2の1H櫛形データの中相関度が大きい方へ一つを選択させる櫛形フィルタ制御回路」に対応している。
そうすると、両者は、「輝度信号及び色信号出力回路100を備えた、輝度信号と色信号分離用ディジタル櫛形フィルタにおいて、
映像信号入力端子101を通って入力される三個の連続される水平走査ラインの映像信号を各々1H櫛形濾波して第1,第2の1H櫛形データを出力し、2H櫛形濾波して2H櫛形データを出力し1H遅延映像信号を出力する櫛形濾波回路10と、
上記櫛形渡波回路10の各出力端に入力端子10〜13が各々連結され選択端子SO,SIに入力される選択データの論理状態により上記第1,第2の1H櫛形データと2H櫛形データ及び遅延映像信号の中一つを選択して出力端子Zで出力するマルチプレクサ30と、
から成る輝度信号と色信号分離用パターン適応形ディジタル櫛形フィルタ。」である点で一致するが、しかし以下の点で相違する。
ア)相違点1
前者は、「輝度信号及び色信号出力回路100を備えた、輝度信号と色信号分離用ディジタル櫛形フィルタにおいて、映像信号入力端子101を通って入力される三個の連続される水平走査ラインの映像信号を各々1H櫛形濾波して第1,第2の1H櫛形データを出力し、2H櫛形濾波して2H櫛形データを出力し1H遅延映像信号を出力する櫛形濾波回路10」を有するのに対して、
後者は、輝度信号及び色信号に対して別々の輝度・色信号選択用スイッチが設けられ輝度信号及び色信号が出力されている。
イ)相違点2
本願発明においては、相関度データ発生回路については「櫛形濾波回路10の出力端に入力端が連結され上記1H櫛形濾波された第1,第2の1H櫛形データを各々低域濾波して上記1H櫛形濾波した各々の二つの水平走査ラインから発生した輝度信号の低域トランジションを検出し絶対値を取って、第1,第2相関度データを出力する相関度データ発生回路20」として構成されているが、引用例においては相関度データについてはH1-H0/2、H1+H0/2について相関度を検出する回路LPFが開示されているのみであるで、絶対値を取る点については記載されていない。
ウ)相違点3
ライン相関の相関度データを基準データと比較する点、及び非標準信号信号について処理する点は引用例に示されていない。
4.相違点の判断
ア)相違点1について
本願発明の実施例(本願の第3図)においてはその出力回路が遅延回路104とBPF108からなる回路が示されているが、特許請求の範囲には単に「輝度信号及び色信号出力回路100を備えた」とあるのみで、これらを規定する記載はない。
そして引用例においても輝度選択スイッチヘの入力として増幅器23の出力としての2H1+H0+H2/4、増幅器16の出力としてのH1+H2/2、増幅器16の出力としてのH1+H0/2、LPF18への出力としてH1が入力されているのであるが、これらは櫛形フィルタの出力といえ、色信号選択スイッチについても同様である。即ち、1HDELAY回路から構成される櫛形フィルタは輝度信号、色信号に対して共通しており、その出力が別々の2経路になっているにすぎないといえる。
請求人は、審判請求書において、「引用例においては輝度信号及び色信号に対する帯域の選択が異なって実施され」と主張するが、前示の通り引用例の第4図の構成を以て、別々のフィルタにになっているとはいえず、実質的に、引用例のものと本願の請求項の発明は相違するとはいえない。
イ)相違点2について
引用例3においては請求人も認めるとおり、本願発明の第2図と同様な回路が記載されている(審判請求書第5頁第5行)。即ち、櫛形フィルタの出力をLPFと絶対値回路回路から構成される相関判定回路に入力して、相関の強い方のライン間で垂直方向のY/C分離を行っている(引用例3の第2頁左下欄第12行)。そして引用例3のものも前示の通りYC分離を行うものであり、引用例1との組み合わせを妨げる理由もないものといえる。
ウ)相違点3について
イ)基準データとの比較について
・引用例1には、「(H1ーH2)の低域成分(以下L12と称す)が検出されなければ両走査線の信号H1とH2との間には相関性があり、L12が検出されれば相関性なしと判断する。」(引用例の第3頁右上欄第16行〜第19行)と記載されている。これはL12の検出に関する記載であるが、L12は色信号であるから、その大小を比較していると考えるべきものである。そうすると、比較の基準値を前提にこの記載を解すべきものである。
・更に、引用例2には
「しかし0H信号及び2H信号の両方が1H信号と大きく異なる場合等、色誤差がかえって大きくなるという問題があった。」(引用例2の第2頁右下欄第11〜13行)、
「本発明は、1走査線分ずつ遅延した複数の走査線信号を出力する手段と、色搬送波信号を相殺するために上記複数の走査線信号の内少なくとも1対の信号を処理する演算手段と、該演算手段の出力を所定のレベルと比較する比較手段と、ノッチフィルタとしての第1モード及び少なくとも1つの方の櫛形フィルタとしての第2モードで動作可能なフィルタ手段と、上記比較手段の出力に応じてフィルタ手段のフィルタモード選択を行う制御手段とを備えた色・輝度分離処理手段を提供するものである。」(同第3頁左上欄第1行〜第11行)
「ここで、帯域通過フィルタ(22)及び(24)の出力を受ける加算器(30)について考察する。加算器(30)は、比較器(36)、しきい値発生器(38)及びフィルタ(40)と共働し、0H出力及び1H出力間の色相関関係(色類似度)をチェックする。フィルタ(22)及び(24)の出力はほとんど色情報であり、低周波の輝度情報は含まない。色副搬送波は1走査線毎に位相が反転するので、隣り合う2本の走査線の垂直方向に相互に関連した信号に対して、フィルタ(22)及び(24)の出力を加算すると、両信号が垂直方向で類似しているときには加算器(30)の出力は略0になる。この出力は符号と大きさとを持つ量であるが、今必要なものはこの大きさのみである。この出力が小さいことは0H出力及び1H出力間で垂直方向の色の類似度が大きいことを示し、逆にこの出力が小さいことは垂直方向の色の類似度が小さいことを示す。加算器(30)のこの出力比較器(36)の一方の入力端子に入力される。比較器(36)の他方の入力端子にはしきい値発生器(38)からしきい値が入力される。しきい値は固定されているが可変することもできる。加算器(30)から入力された信号の大きさがしきい値発生器(38)により設定されたしきい値より大きいとき、比較器(36)の出力は低論理レベル”0”から高論理レベル”1”に状態を変える。」(第3頁左下欄第1行〜右下欄第4行)と記載されていることが認められる。
これによると、引用例2には適切なYC分離を目的として、相関度を判別するためにしきい値と比較し、比較手段の出力に応じて第1図ないし第3図で示されるフィルタを選択する技術が記載されている。
そうすると、0H信号及び2H信号の両方が1H信号と大きく異なる場合等、色誤差がかえって大きくなるという問題は、YC分離の技術において広知の技術的課題であって、引用例2で示される基準データと比較する技術を引用例1に応用することは容易であるといわざるを得ない。
▲2▼また、原査定において周知例としてあげられた特開昭64-89885号(以下引用例4という)には、以下の記載がある。
「ビデオ信号判別回路9は、アナログ/デジタル変換回路1を介して与えられるビデオ信号がジッタ成分を有するビデオ信号(以下、第一の非標準ビデオ信号と呼ぶ)か否かを検出する第1の非標準ビデオ信号検出回路91と、ビデオ信号か間欠的または連続的に1フレーム期間が正規の1フレーム期間より所定時間だけ長くなっているビデオ信号(以下、第2の非標準ビデオ信号と呼ぶ)か否かを検出する第2の非標準ビデオ信号検出回路92とを備える。
ここで、第1の非標準ビデオ信号は、例えば、ビデオテープレコーダや静電容量式ビデオディスクプレーヤからのビデオ信号が該当する。また、第2の非標準ビデオ信号は、例えば、光学式ビデオディスクプレーヤのスチル再生モード及びスロー再生モードのビデオ信号が該当する。光学式ビデオディスクプレーヤのスチル再生モード及びスロー再生モードは、毎フレーム毎に、または数フレームに1回毎に同一トラックを走査するので、繰返し走査するとき、第2図に示すように、そのトラックの終端に走査位置がきたとき走査位置を半径方向に移動させてそのトラックの開始位置に走査位置をずらせるため、その移動時間だけ1フレーム時間が長くなっており、第2の非標準ビデオ信号となる。」(第3頁左上欄第14行〜右上欄第18行)
この記載によれば、この周知例はテレビジョン受像器に関するもので、非標準のビデオ信号を含む種種の入力ビデオ信号に対してビデオ信号判別回路を以て入力信号を判別して、以て最適なYC分離を行うものであるといえる。
そうすると、YC分離を行う引用例1のものにおいて種種のビデオ信号を入力するように引用例4の技術的思想を組み合わせることは容易であるといわざるを得ない。そして組み合わせた結果最適なYC分離を行う点も共通しているので、その作用効果も顕著なものといえない。
なお、請求人は「本願発明と引用例との差異について述べると、本願発明では垂直エッジ部の検出において、図3に示される相関度データ発生回路20の2つのLPF22,24によって輝度の低域成分(低域トランジション)を検出し、これを用いるようにすることによって色信号やノイズ成分による干渉を排除して正確な信号を得ることができます。これに対して、引用例▲2▼の構成では、第4図のBPF22,24,26の使用によって、輝度高域部、カラー成分を含むようにフィルタリングされます。したがいまして上記本願発明の構成(低域成分の検出)によって得られる効果は得られないと思考します。」と主張(審判請求書第5頁第12行〜第20行)するので、検討する。本願発明においては第1、2増幅器の出力はそれぞれVH-V/2、VH-VHH/2であるから、輝度信号ではなく、色信号の低域トランジションを検出しているといえる。そして、引用例2においても、加算器30,32,34の出力は主として色信号から見た相関度を加算によって計算しているのであって(本願発明の実施例のように色信号を減算によって計算していない点で異なるが)、これをLPFに入力しているのであるから、実質的に本願発明と変わるところはない。
4.むすび
したがって、本願の請求項1の発明は、上記引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-11-30 
結審通知日 1999-12-14 
審決日 1999-12-20 
出願番号 特願平3-154894
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関谷 隆一宮本 智子  
特許庁審判長 水谷 好男
特許庁審判官 小林 秀美
小池 正彦
発明の名称 輝度信号と色信号分離用パターン適応形ディジタル櫛形フィルタ  
代理人 伊東 忠彦  

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