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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1013878
審判番号 審判1998-9079  
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1990-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-06-15 
確定日 2000-05-10 
事件の表示 昭和63年特許願第508828号「記録/再生用磁気ヘッド」拒絶査定に対する審判事件〔(平成1年5月5日国際公開WO89/04037、平成2年6月28日国内公表特許出願公表平2-501962号)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.出願の経過・本件発明
本願は、平成元年6月27日(特許協力条約(PCT)による優先権主張1987年10月27日、フランス国、)の出願であって、平成9年7月7日付けで補正された明細書および図面の記載によれば、その特許請求の範囲の欄の請求項1に係る発明は、その請求項1記載のとおりの下記の磁気ヘッド(以下、「本件第1発明」という。)にある。
「1.コイル(7)と、磁気ヘッドの記録面に対して平行な表面(10)を有する2つの脚部を有するブロック状の磁気回路(1)とを有する磁気ヘッドにおいて、下記(a)および(b)を特徴とする磁気ヘッド:
(a)磁気ヘッドは2つの脚部の間に上記表面(10)に対して直角な中断部を有し、この中断部には非磁性材料の要素(6)が収容され、非磁性材料の要素(6)の上側表面は磁気ヘッドは2つの脚部の上側表面と同じ平面を形成し、
(b)磁気ヘッドはさらに、磁気ヘッドの磁極を形成する磁性材料からなる2つの平らな層(3、3’)を有し、これら2つの平らな層(3、3’)は磁気ヘッドの2つの脚部の上側表面上および非磁性材料の要素(6)の上側表面上に各々堆積されており、2つの平らな層(3、3’)は磁気ヘッドの磁極のエッジによって規定されるギャップ(5)を形成し、各々の平らな層(3、3’)はギャップ(5)の近くでは狭く、脚部の近くでは広くなっている。」
2.刊行物記載発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭58-224420号公報には、アモルファス磁性材料は、磁性材料として優れた特性を有するが、薄帯又は薄膜状としてしか得られないため、磁気ヘッドに作成することが非常に困難であったとする旨の従来の欠点に注目して、「軟磁性膜、特にアモルファス薄膜で磁気ヘッドを製造する方法およびアモルファス薄膜によって構成した磁気ヘッドを提供すること」を目的とし、
「MnーZn多結晶フェライトコア1をたんざく状にし、同コア1がU字状になるように溝加工を行ない、同溝の開口部をガラス2で充てんする。」(2頁左上欄17〜20行)、「コアの開口面4は、十分平坦に研磨を行なう。・・開口面4上にCoーNbを主成分とするアモルファス膜5を高周波スパッタリングにより、例えば30μm程度の厚みになるよう形成する。・・6はエッチングより取り除かれた穴を示し、この穴6は、ガラス2の部分にまで貫通している。・・穴6を充てんすべく、アモルファス膜5の結晶化温度より低い温度で、低融点ガラス7を充てんし、かつアモルファス膜5の上面を被覆(オーバーコート)する。・・コアブロック1を中心線に沿って切断し、その切断面8を十分平坦に研磨し、その研磨面にSiO2をギャップスペーサ9としてスパッタリングにより形成し、再度切り離した左右コアを突き合わせ、低融点ガラス7の再溶融により、左右コアを接着する。」(2頁右上欄2行〜同頁左下欄4行)、とする発明(以下、「刊行物記載発明」という。)が記載され、
第6図には、その上面が、アモルファス膜5と接する面で平坦面で且つその平坦面に連なる両側面でアモルファス膜5の上面と連なる曲面になっていると認められるコア1,1’と、その下面が前記コアの平坦面と接し且つその上面が曲面になっており、エッチング穴6によってギャップの近くでは狭くコア1の近くでは広くなっているアモルファス膜5と、アモルファス膜5の下面と接する面を有するガラス2と、からなる磁気ヘッドに関する発明(以下、「刊行物記載発明」という。)が示されている。
3.対比・判断
本件第1発明と刊行物記載発明とを対比するに、刊行物記載発明の「U字状フェライトコア」、「充てんガラス」は、本件第1発明の「磁気回路」、「非磁性材料の要素」にそれぞれ相当し、刊行物記載発明の「エッチング穴6によってギャップの近くでは狭くコア1の近くでは広くなっているアモルファス膜5」は本件第1発明の「2つの層は磁気ヘッドの磁極のエッジによって規定されるギャップを形成し、各々の層はギャップの近くでは狭く、脚部の近くでは広くなっている」に相当するので、
両者は、「磁気ヘッドの記録面に対して平行な表面を有する2つの脚部を有するブロック状の磁気回路を有する磁気ヘッドにおいて、下記(a)および(b)を特徴とする磁気ヘッド:
(a)磁気ヘッドは2つの脚部の間に上記表面に対して直角な中断部を有し、この中断部には非磁性材料の要素が収容され、非磁性材料の要素の上側表面は磁気ヘッドは2つの脚部の上側表面と同じ平面を形成し、
(b)磁気ヘッドはさらに、磁気ヘッドの磁極を形成する磁性材料からなる2つの層を有し、これら2つの層は磁気ヘッドの2つの脚部の上側表面上および非磁性材料の要素の上側表面上に各々堆積されており、2つの層は磁気ヘッドの磁極のエッジによって規定されるギャップを形成し、各々の層はギャップの近くでは狭く、脚部の近くでは広くなっている。」点で一致し、
▲1▼本件第1発明が「コイル」を有するのに対し、刊行物記載発明はコイルが明記されていない点、
▲2▼本件第1発明が「磁極を形成する磁性材料からなる2つの平らな層を有」するのに対し、刊行物記載発明では「磁極を形成する磁性材料からな」り下面が平らで上面が曲面の「2つの層を有」している点で相違する。
4.判断
(相違点▲1▼について)
磁気ヘッドにおいて、脚部にコイルを設けることは、周知事項である。してみれば、上記相違点▲1▼は、単なる周知事項の適用にすぎないものであるから、当業者が容易に成し得ることである。
(相違点▲2▼について)
テープがコア端部できわめて急にはなれる構成のヘッドは、シュア形ヘッドとして、例えば「テープレコーダ(昭和45年10月5日、発行所:日本放送出版協会、P.82」および「実願昭47-4353号(実開昭48-80518号)のマイクロフイルム」に示されているように周知であり、また、シュア形ヘッドでは問題となる形状効果を少なくするためにテープがコアの端をゆるやかに離れるようなコア形状のヘッドは、例えばハイパボリックヘッドとして周知である。
前記シュア形ヘッドは、テープに接触するヘッドの面が平坦に構成されているものといえる。
そうであれば、テープがコアの端をゆるやかに離れるようなコア形状のヘッドといえる上記刊行物記載発明のヘッドにおいて、テープと対向するアモルファス膜5およびコア1を積層状態のまま周知のシュア形ヘッドのように平坦に構成することは、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。
5.むすび
以上のとおりであるから、本件第1発明は、上記刊行物記載発明および上記周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-10-28 
結審通知日 1999-11-12 
審決日 1999-11-29 
出願番号 特願昭63-508828
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北岡 浩小林 秀美  
特許庁審判長 及川 泰嘉
特許庁審判官 藤井 浩
田良島 潔
発明の名称 記録/再生用磁気ヘッド  
代理人 越場 隆  

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