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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1013879
審判番号 審判1998-10366  
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-07-06 
確定日 2000-05-30 
事件の表示 平成4年特許願第242253号「メモリカード接地装置」拒絶査定に対する審判事件(平成8年3月27日出願公告、特公平8-31123)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は平成4年9月10日(パリ条約による優先権主張1991年9月11日、アメリカ合衆国)の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成10年8月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「(1)対向した両側および前端および後端を有するモールドされた本体を含むフレームと、前記フレーム中に配置され、取付けられた複数の回路素子および接地導体を有する回路板を含む回路板装置とを含み、電子装置のスロット中に挿入されるICメモリカードとして構成され、このICメモリカードが電子装置のスロット中に挿入されるときICメモリカードの前端に設けられている前方に面したカード接触子が電子装置のスロットの入力方向に向かって突出している電子装置のピン接触子と結合するように構成されているICメモリカードにおいて、前記フレームは、前記本体上に取付けられた前記本体より高いバルク導電率を有し、前記回路板の接地導体に接続されている金属シート部材を具備し、この金属シート部材はカードの前端に設けられている前記カード接触子に関して定められた位置で前記フレームの少なくとも一方の側面に固定され、この金属シート部材はフレーム側面の高さと同じ高さを有し、前記カード接触子が電子装置のピン接触子と結合する前に電子装置の接地端子と結合し、カード接触子が電子装置のピン接触子と接触した後にも接地端子との結合が維持されるように高さの複数倍の長さでカードの挿入方向に沿って延在し、カードの迅速な放電を可能にしていることを特徴とするICメモリカード。」(以下、「本願発明」という。)
2.原査定の理由
これに対し、原査定の拒絶理由である特許異議の決定の理由の概要は、出願公告された明細書の特許請求の範囲に記載された請求項1に係る発明は、特開平3-38394号公報(以下「引用例」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
3.引用例
原査定の拒絶理由である異議の決定に引用された、本願の優先権主張の日前である平成3年2月19日に頒布された特開平3-38394号公報(以下、「引用刊行物」というには、以下の事項が記載されている。
[1](第1頁左下段第5行〜第1頁左下段第17行)
「入出力端子を有し、かつICチップを搭載した回路基板を樹脂スペーサを介して二枚の金属製の表面に印刷面を有する上下パネルで挟み、上下パネルを内蔵した導電部材で電気的に接続してメモリカードを形成し、メモリカードの上下パネルの表面に該上下パネルと電気的に接続された金属面部を設け、メモリカードが接続される機器本体のコネクタにそのコネクタ端子より長く、先端がメモリカードの金属面部に接触する弾性を有する除電端子を設け、メモリカードのコネクタ接続時にコネクタの除電端子の先端をメモリカードの金属面部に圧接させたことを特徴とするメモリカードの静電気除電構造。」
(第3頁左上段20行〜第3頁右上段第8行)
「16は表面に印刷面を有する上パネル6のコネクタ挿入側の両側表面にそれぞれ設けられた長方形状の金属面部である。この金属面部16の形成は、上パネル6の生地表面に金属面部16が設けられる部分を残して塗料により印刷面を設けることにより行うか、上パネル6の生地表面に金属面部16が設けられる部分に導電塗料を塗り、それ以外の部分には印刷塗料を塗ることにより行われる。」
(第3頁右上段第15行〜第3頁右下段第3行目)
「上記のように構成されたメモリカードの静電気除電構造においては、メモリカード1をコネクタ20に接続する場合、コネクタ20に設けられた除電端子25はコネクタ端子21より長いために、まずメモリカード1の入出力端子3と接続されているソケット15の雌型端子15bがコネクタ20のコネクタ端子21と接触する以前に除電端子25の湾曲した先端部25aがメモリカード1の上パネル6のコネクタ挿入側の両側に設けられた金属面部16に圧接し、その圧接状態を維持して、次にコネクタ20のコネクタ端子21とメモリカード1のソケット15の雌型端子15bが接続される。従って、コネクタ20の除電端子25がメモリカード1の金属面部16に圧接したときメモリカード1に発生した静電気が金属面部16から除電端子25に流れ、除電端子25が接続されている機器本体のフレームアースヘと流れて除電が行われる。このとき、コネクタ20の除電端子25は弾性を有し、先端部25aが湾曲しているから金属面部16に対して充分な圧接カが得られ、メモリカード1の金属面部16は相対的に移動する除電端子25が接続し続けることができる広い面積を有しているから除電端子25と金属面部16は広い接触面積を得ることができ、接触抵抗は200Ω以下であり、充分な静電気耐圧が得られる。従って、メモリカード1に発生した静電気を金属面部16及び除電端子25を介して除電した場合に確実な除電が行え、しかも充分な静電気耐圧を有するためメモリカード1及び機器本体の静電気による破壊を防止することができる。」
(第3頁右下第4行〜第3頁右下第10行目)
「上述した実施例ではメモリカード1の上パネル6に金属面部16を設けているが、下パネル7に金属面部16を設けてもよく、更にはメモリカード1の側部に金属面部16を設けてもよいことは勿論であり、これに対応して金属面部16と接触する除電端子25の取付位置を適宜に変えることはいうまでもない。」
(第3頁右下段第16行〜第4頁左上段第1行目)
「メモリカードのコネクタ接続時にメモリカードの入出力端子がコネクタ端子と接触する以前にコネクタの除電端子の先端をメモリカードの金属面部に圧接させ、充分な圧接力と接触面積を得ることができるようにした」
上記記載及び図面の記載を参照すると、引用刊行物には、
「メモリカードの静電気除電構造であって、対向した両側および前端および後端を有するモールドされたメモリカード本体(1)と、前記メモリーカード本体中(1)に配置され、取付けられた複数の回路素子および接地導体を有する回路板を含む回路基板(2)(本願発明の「回路板装置」に対応する。)とを含み、電子装置のコネクタ(20)(本願発明の「スロット」に対応する。)中に挿入されるメモリカードとして構成され、このメモリカードが電子装置のコネクタ中に挿入されるときメモリカードの前端に設けられている前方に面したソケット(15)(本願発明の「カード接触子」に対応する。)が電子装置のコネクタ(20)の入り口方向に向かって、突出している電子装置のコネクタ端子(21)(本願発明の「ピン接触子」と対応する。)と結合するように構成されているメモリカード本体(1)において、
前記メモリカード本体(1)は、本体より高いバルク導電率を有し、導電部材(8)(本願発明の「回路板の接地導体」に対応する。)に接続されている金属面部(16)を具備し、この金属面部(16)はカードの前端に設けられている前記ソケット(15)(本願発明の「カード接触子」に対応する。)に関して定められた位置で前記メモリカード本体(1)の上面に設けられ、前記ソケット(15)が電子装置のコネクタ端子(21)と結合する前に電子装置の除電端子(25)(本願発明の「接地端子」に対応する。)と結合し、ソケット(15)が電子装置のコネクタ端子(21)と接触した後にも除電端子(25)との結合が維持されるように、高さの複数倍の長さでカードの挿入方向に沿って延在し、カードの迅速な放電を可能にした発明(以下「引用発明」という。)」が記載されているものと認められる。 更に、メモリカード1の側部に金属面部を設けてよいことも記載されている。
4.対比・判断
そこで本願発明と引用発明とを比較する。
(1)本願発明と引用発明とは、
「メモリカードの静電気除電構造であって、対向した両側および前端および後端を有するモールドされたメモリカード本体と、前記メモリーカード本体中に配置され、取付けられた複数の回路素子および接地導体を有する回路板を含む回路板装置とを含み、電子装置のスロット中に挿入されるメモリカードとして構成され、このメモリカードが電子装置のスロットに挿入されるときメモリカードの前端に設けられている前方に面したカード接触子が電子装置のスロットの入り口方向に向かって、突出している電子装置のピン接触子と結合するように構成されているメモリカード本体において、
前記メモリカード本体は、本体より高いバルク導電率を有し、回路板の接地導体に接続されている金属面部を具備し、この金属面部はカードの前端に設けられている前記カード接触子に関して定められた位置で前記メモリカード本体少なくとも一方の面に設けられ、前記カード接触子が電子装置のピン接触子と結合する前に電子装置の接地端子と結合し、カード接触子が電子装置のピン接触子と接触した後にも接地端子との結合が維持されるように、高さの複数倍の長さでカードの挿入方向に沿って延在し、カードの迅速な放電を可能にしていることを特徴とするメモリカード」である点で一致する。
(2)一方、本願発明と引用発明とは、下記の点で相違する。
▲1▼本願発明が、フレーム(16)を有しており、その中に回路板装置が配置されているのに対して、引用発明は、フレームについて明記されておらず、回路基板を含むメモリカード1として完成されたカード全体のみが記載されている点。
▲2▼本願発明が、金属面部として金属シート部材を設けているのに対して、引用発明における金属面部は、上パネル6の生地表面に金属面部16が設けられる部分を残して塗料により印刷面を設けることにより行うか、上パネル6の生地表面に金属面部16が設けられる部分に導電塗料を塗り、それ以外の部分には印刷塗料を塗ることにより形成されている点。
▲3▼本願発明における金属面部は、フレームの少なくとも一方の側面に金属シート部材が固定され、さらに、金属シート部材がフレームの側面の高さと同じ高さを有しているのに対して、引用発明においては、メモリカード1の上面に金属面部16が設けられているが、フレームの高さとの関係に関して明記されていない点。
5.当審の判断
上記各相違点について検討すると、
相違点▲1▼について、
フレームの中に回路基板を配置したICメモリカードは、特開平2-2094号公報、特開平1-288490号公報、実開昭63-161875号公報に示されるように周知であるから、引用発明のメモリーカードをフレームを用いて構成することは、当業者が容易に想到し得たものである。
相違点▲2▼について、
本願発明及び引用発明における金属面部は、高導電領域を形成するためのものである点は両者に共通であるので、本願発明及び引用発明の金属面部の具体的な形成方法において異なるものの、メモリカードに設けられた状態での接地電極としての機能に実質的な差異は認められないので、電極としての機能を果たす金属面部の具体的な構成として、金属シート部材を用いることは、当業者にとって設計的な事項である。
相違点▲3▼について、
引用刊行物には、メモリカードの側部に金属面部を設けてもよいことが記載されているので、上記事項を引用発明に適用して、接地電極としての金属面部をメモリカードの側面に設けるに当たり、単に側面に固定する程度のことは、当業者が容易に想到し得たものである。また、側面に固定する際に、高さを側面の高さと同じにする点は、高導電領域の目的が静電荷の早期の消散にあること、あるいは、静電気の耐圧を向上させる技術的な課題が存在することから、その電極としての面積が大きいほうが性能が良いという技術常識から鑑みて、採りうる最大値の高さに設計するのが理にかなっている。ICメモリカードの厚さの中で最大の高さにすれば、該カードと同じ高さにならざるを得ず、高さが同じ点は当業者にとって設計的な事項である。
なお、本願発明に記載されている「高いバルク導電率」とは、一般的に、物質の導電率が高いことを意味し(例えば、特願平03-129672号公報参照)、金属などの導体の特性を含むものであり、本願発明の実施例における高導電領域70,72となるシート部材の導電性をさしているので、高いバルク導電率という言葉の有無に関わらず、引用発明の金属面部の特性と実質的な差異は認められない。
6.むすび
以上のとおり、本願発明は引用刊行物に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-12-16 
結審通知日 2000-01-04 
審決日 2000-01-07 
出願番号 特願平4-242253
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高松 猛前田 仁  
特許庁審判長 内藤 照雄
特許庁審判官 橋本 正弘
吉見 信明
発明の名称 メモリカード接地装置  
代理人 鈴江 武彦  

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