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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1013925
審判番号 審判1999-2008  
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1990-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-02-16 
確定日 2000-03-10 
事件の表示 昭和63年特許願第245225号「電荷転送装置」拒絶査定に対する審判事件(平成2年3月30日出願公開、特開平2-91954)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本件出願の手続の経緯及び要旨
本件出願は、昭和63年9月29日に出願されたものであって、その発明の要旨は手続補正書の特許請求の範囲(1)、(2)に記載されたとおりであって、その(1)の発明は、特許請求の範囲(1)に記載されたとおりの次のものである。「信号電荷を転送する第1及び第2のレジスタと、該第1及び第2のレジスタから注入された上記信号電荷を電圧に変換する拡散領域を具備する出力部とを有し、
上記第1及び第2のレジスタはそれらの一端で合流し、この合流部に隣接して単一の拡散領域が形成され、
上記合流部は、合流前の上記第1及び第2のレジスタに対して供給される信号電荷転送用のクロックパルスの周波数よりも高い周波数の複数相のクロックパルスが供給される複数ビット分の上記第1及び第2のレジスタを含んでおり、該複数ビット分の上記第1及び第2のレジスタのそれぞれのチャネルのチャネル幅が徐々に狭くなって、上記拡散領域に隣接しており、
上記合流部の転送電極の幅が上記拡散領域に向かって徐々に狭くなっていることを特徴とする電荷電送装置。」(以下、本願発明という)
2.引用例記載の発明
前審の拒絶の理由に引用された特開昭60-98673号公報(以下、引用例1という)には、「本発明は電荷結合素子、特に複数列の電荷転送チャネルを有する電荷結合素子に関する。」(第1頁左下欄第12行〜第12行)と記載され、
「本発明について図面を用いて詳細に説明する。
第4図は、本発明による電荷結合素子(CCD)の一実施例を示し、出力近傍の素子構成を簡略化して模式的に示している。第4図において、51,52はCCDの電荷転送チャネル、53は出力アンプ、54は出力端子、55〜58はCCDの転送チャネル51,52を駆動する第1の相のパルスφ1に接続された転送電極、59〜62は第2の相のパルスφ2に接続された転送電極、70は前記転送チャネル51,52(1,2は誤記)の電荷転送方向前方部に位置し、前記パルスφ1あるいはφ2の2倍の周波数で駆動される電荷転送チャネル、63は転送チャネル51,52と転送チャネル70との接続部に配置された電極、64〜66は転送チャネル70を駆動する第3の相のパルスP1に接続された転送電極、67〜68は第4の相のパルスP2に接続された転送電極、69は転送チャネル70の最終電極64と出力浮遊拡散層との間に位置する出力ゲート電極である。本素子においてはパルスP1,P2は2相駆動のパルスを仮定しており、その周波数はパルスφ1,φ2の2倍の周波数である。」(第3頁左上欄第9行〜右上欄第9行)と記載され、
「このような素子構成のCCDにおいては、出力信号は複数チャネルからの信号電荷が一列の転送チャネルからの信号として出力されるため、元の入力信号の周波数のまま出力されるのみならず、複数チャネルを駆動するパルス(本例ではφ1,φ2)からの出力系への誘導をほとんど受けることなく、各チャネル間での信号のばらつきを大幅に軽減できる特徴がある。」(第3頁右下欄第3行〜第10行)と記載されている。
すなわち、引用例1には、
CCDの転送チャネル51,52と、転送チャネル70の最終電極64と出力浮遊拡散層との間に位置する出力ゲート電極69とを有し、
転送チャネル51,52の電荷転送方向前方部に位置する電荷転送チャネル70とを有し、
電荷転送チャネル70は、パルスφ1あるいはφ2の2倍の周波数で駆動され、転送チャネル70を駆動する第3の相のパルスP1に接続された転送電極64〜66、第4の相のパルスP2に接続された転送電極67〜68を有し、転送チャネル70の最終電極64と出力浮遊拡散層との間に位置する出力ゲート電極69に連続している電荷結合素子
が示されている。
前審の拒絶の理由に引用された特開昭53-84486号公報(以下、引用例2という)には、「信号電荷の転送を行なうチャンネル幅が転送方向に漸次狭くなったチャンネル領域と、このチャンネル領域の狭くなったチャンネル幅と同じ幅の浮遊高導電性不純物拡散層と、この不純物拡散層をソースとした電界効果トランジスタによる信号電荷リセットゲートを備えた電荷結合素子。」(特許請求の範囲)と記載され、
「本方式で重要なことは、CCD本体の出力端において信号電荷の転送チャンネルが漸次細くなっている点であるから、出力制御電極314を台形状にする代りに、第4図に示すようにチャンネル部分の半導体極性と逆極性の不純物高濃度層によってチャンネル幅を規定する所謂チャンネルストッパ不純物層方式では、このチャンネルストッパ層を漏斗状にすればよい。」(第3頁左上欄第7行〜第14行)と記載され、
「出力制御電極下のチャンネルに電位傾斜をつけることは単に電荷の逆流を防止するためだけでなく、徐々にテーパをつけるために結果的に信号電荷の転送距離が長くなった出力制御電極下のチャンネル部分で、電位傾斜による信号電荷のドリフトにより速やかに信号電荷を転送させることができ、この部分の転送特性の劣化を防止する働きもする。」(第3頁左下欄第4行〜第11行)と記載されている。
前審の拒絶の理由に引用された特開昭63-204765号公報(以下、引用例3という)には、「第2図は従来の3相駆動電荷結合装置の一例の平面図で、転送チャネルのチャネル幅を狭くした部分の拡大平面図を示している。…この転送チャネル10’のチャネル幅Aは、転送電極12a,12b内で転送チャネル幅Dまで狭められている。」(第1頁右下欄第13行〜第2頁左上欄第1行)と記載されている。
3. 本願発明と引用例記載の発明との対比
3.1 本願発明と引用例1との対比
本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、引用例1の「転送チャネル51,52」は、本願発明の「第1及び第2のレジスタ」に相当し、引用例1の「出力浮遊拡散層」は本願発明の「合流部に隣接して形成された単一の拡散領域」に相当し、引用例1の「転送チャネル70」は転送電極64〜68を有するから、本願発明の「合流部」に相当し、「複数ビット分の上記第1及び第2のレジスタ」にも相当する。そして、引用例1の電荷転送チャネル70は、パルスφ1あるいはφ2の2倍の周波数で駆動されということは、本願発明におけ第1及び第2のレジスタに対して供給される信号電荷転送用のクロックパルスの周波数よりも高い周波数の複数相のクロックパルスが供給されるということに相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
(一致点)
信号電荷を転送する第1及び第2のレジスタと、該第1及び第2のレジスタから注入された上記信号電荷を電圧に変換する拡散領域を具備する出力部とを有し、
上記第1及び第2のレジスタはそれらの一端で合流し、この合流部に隣接して単一の拡散領域が形成され、
上記合流部は、合流前の上記第1及び第2のレジスタに対して供給される信号電荷転送用のクロックパルスの周波数よりも高い周波数の複数相のクロックパルスが供給される複数ビット分の上記第1及び第2のレジスタを含んでいることを特徴とする電荷電送装置。
(相違点)
そして、本願発明と引用例1記載の発明とは次の点で相違している。
▲1▼本願発明では、合流部の「該複数ビット分の上記第1及び第2のレジスタのそれぞれのチャネルのチャネル幅が徐々に狭くなって、上記拡散領域に隣接して」いるのに対して、引用例1のものはチャネル幅は明記されていないが、図から見ると略同じ幅に形成されている点、
▲2▼本願発明では「上記合流部の転送電極の幅が上記拡散領域に向かって徐々に狭くなっている」のに対して、引用例1のものは電極幅は明記されていないが、図から見ると略同じ幅に形成されている点。
(相違点の判断)
(相違点▲1▼について)
引用例2及び引用例3には、複数ビット分の上記第1及び第2のレジスタのそれぞれのチャネルのチャネル幅が徐々に狭くなって、上記拡散層に隣接する構成が示され、この構成は、周辺の容量が増加しないことは自明のことである。
そして、合流部の容量増加を防ぐことは、単一のチャネルでの容量増加を防ぐことと課題が格別に異なるものとは認められない。してみると、合流部の該複数ビット分の上記第1及び第2のレジスタのそれぞれのチャネルのチャネル幅が徐々に狭くなって、上記拡散層に隣接させることは当業者が容易に適用できた事項である。
したがって、相違点▲1▼は格別のことではない。
(相違点▲2▼について)
本願明細書の記載を見ても、合流部の転送電極の幅が上記拡散領域に向かって徐々に狭くなっていることの効果が明示されていない。してみると、引用例1のように同じ幅の電極とするか、徐々に狭くした電極とするかは、CCD素子の状況に応じて、当業者が任意に適応できた事項である。
したがって、相違点▲2▼は格別のことではない。
4. まとめ
相違点▲1▼、▲2▼は格別のことでないので、本願発明は引用例1ないし3記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許請求の範囲(2)に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、上記結論通り審決する。
 
審理終結日 1999-12-17 
結審通知日 2000-01-04 
審決日 2000-01-24 
出願番号 特願昭63-245225
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松田 成正  
特許庁審判長 張谷 雅人
特許庁審判官 橋本 武
岡 和久
発明の名称 電荷転送装置  
代理人 杉浦 正知  

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