• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 発明同一 無効としない H01L
審判 全部無効 2項進歩性 無効としない H01L
管理番号 1013953
審判番号 審判1998-35282  
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1988-12-06 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-06-18 
確定日 1999-12-28 
事件の表示 上記当事者間の特許第2134611号発明「IC検査用ソケット」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.[手続の経緯と本件特許発明]
本件特許第2134611号(以下、「本件特許」という)は、昭和62年5月29日に出願された特願昭62-134470号(以下、「本件出願」という)に係り、平成5年9月7日付で出願公告(特公平5-61781号)された後、平成10年1月30日にその設定登録がされたものであって、その後、本件特許無効の審判が請求されたものである。そして、本件特許に係る発明の要旨は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された、次のとおりのものと認める。
「ICパッケージのリード端子を載置すべき基台を設けたソケット本体と、該ソケット本体に挿着されていて基部と該基部から弾性湾曲部を介して延びている被押動片と該被押動片から分岐して該被押動片とは反対の方向へ延びていて上記基台上に載置されたリード端子を上記弾性湾曲部の有する弾力により上方より上記基台に対して押圧し得る接触片とを有するコンタクトピンと、上記被押動片に当接して上記接触片による上記リード端子の押圧を解除し得る解除手段とを備えたIC検査用ソケット。」(以下、「本件発明」という。)
2.[請求人の提出した証拠方法と主張の概要]
これに対して、請求人が提出した証拠方法は次のとおりである。
甲第1号証:米国特許第4623208号明細書
甲第2号証:特開昭59-50551号公報
甲第3号証:特開昭63-62175号公報
甲第4号証:本件特許に係る、上記特願昭62-134470号の拒絶査定に対する審判事件(審判平7-20536号)についての審決
甲第5号証:本件特許に係る特許出願手続において、平成6年11月16日付で提出された手続補正書
以上の証拠方法をもとに、請求人は、概要次の無効理由(1)、(2)の主張をしている。
無効理由(1)
甲第1、2号証は、いずれも、本件特許に係る出願前に頒布された刊行物であって、本件発明は甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して受けたもので、無効とすべきである。
無効理由(2)
本件発明は、本件出願の出願日前の出願であって、本件出願の出願後に出願公開(甲第3号証はその公開公報)された出願(以下、「先願」という。)の願書に最初に添付した明細書または図面(以下、「先願明細書等」という。)に記載された発明(以下、「先願発明」という)と同一であって、しかも、本件発明の発明者が先願発明の発明者と同一であるとも、また、本件出願の出願時において、本件出願の出願人が先願の出願人と同一であるとも認められないので、本件特許は、特許法第29条の2の規定に違反して受けたことになるから無効とすべきである。
3.[被請求人の提出した証拠と主張の概要]
一方、被請求人は、乙第1号証として、本件特許に係る公告公報である、特公平5-61781号公報を提出すると共に、答弁書において請求人の上記いずれの主張にも理由がない旨の主張をしている。
4.[甲第1〜3号証の記載事項の概要]
▲1▼甲第1号証には、リードレスチップキャリア用のソケットに関する発明が示されており、その詳細として、次の事項が記載されている。
ソケット10は複数のコンタクト36を有し、該コンタクト36は弾力性を有する導電性材料で一体的に形成されており、一般に第7図及び第8図に示す様な断面形状を有している。コンタクト36は、下部にリード38を有し、このリード38はベース部材の孔20を貫通している。また、該コンタクト36の一部を成す曲がったネック40が溝22、26内に嵌合されている。該コンタクト36の一部は、上部ヘッド42を形成し、この上部ヘッド42は斜めの内部エッジ44を有し、第8図に示す様に、内部エッジ44の終端部はあご部46およびプラットホーム48を形成する。
ソケット10を動作させるには、上部部材50を第7図に示す様な位置まで、該ベース部材12に向けて押し下げる。それによって、アバットメント64は、コンタクト36のプラットホーム48に接触し、第7図の矢印51で示す方向に下方に押し下げる。この結果、コンタクト36のネック40のまわりにモーメントが発生し、該モーメントによって、上部ヘッド42は外側へ移動し、集積回路キャリア62が中央閉口部60内に挿入された時に、集積回路キャリア62をベース部材12の台状右部材24上に保持することになる。次に、上部部材50を解放すると、コンタクト36が柔軟性を有する材料によって形成されているので、該コンタクトのプラットホーム48が上部部材50をベース部材12から上方に押し上げることになる。
これによって、コンタクト36のあご部46は、第8図の矢印75で示す様に、集積回路キャリア62の端子パッドへ圧接される。(第2欄第27行〜第3欄第1行参照)
▲2▼甲第2号証には、集積回路素子テスト用のソケットに関し、次の事項が記載されている。
該テスト用ソケットにおいては、IC素子22のリード26がソケットベース10の上面に載置されること。(Fig4、5及び第3頁右下欄第5行の記載参照)
そしてこのソケットベース10の上面に載置されたリード26に対するコンタクト36の接触態様について、「コンタクト38はリード26上をスライドするので、リード26上の酸化皮膜は除去される。クランプ30に形成した開口34はフレアー状に形成してあるので、コンタクト38とリード26との係合時にコンタクト38は屈曲可能である。」(第3頁右下欄第9〜13行)と記載している。
▲3▼甲第3号証は、先願明細書及び図面が掲載されたものであって、先願発明として、半導体集積回路(ICチップ)テスト用のソケットに関して、次のA〜Dの構成を備える第1実施例に関するものと、押動の態様を異にする第2実施例に関するものとが示されている。
<第1実施例>
A ICチップ2のリード3′(リード端子に相当する)を載置すべき基台を設けたソケット本体37と、
B 該ソケット本体37に挿着されていて、固定端部30(基部に相当する)と該固定端部から弾性のある直立部32を介して延びている接触子中間部40の上方部分(被押動片に相当する)と、該上方部分から分岐して該上方部分とは反対の方向へ、弾性のある折曲部38を介して延びていて上記基台上に載置されたリード3′を、上方より上記基台に対して押圧し得る押圧部39(接触片に相当する)とを有する接触子34(コンタクトピンに相当する)と、
C 上記接触子中間部40の上方部分に当接して上記接触片による上記リード3′の押圧を解除し得るスライドカバー51(下記Dにおけるスプリング55と共に、解除手段を構成する)とを備えるものであって、
D 「スライドカバー51に加えていた下方への押圧力を除くと、スプリング55と接触子34とが元の原形状態へ弾性的に復元しようとし、この復元力によってカバー51が上方へ押し戻される」ようにしたもの。
(第2図及び第3頁左上欄第5行〜同頁左下欄第15行参照)
<第2実施例>
ソケット本体37上面に凸部が形成されており、接触子34をトリガ部36付きとすると共に、固定端部30上部を十分に折曲させた円弧部3′としたものであって、リード端子の押圧は側方より行うようにしたこと以外は、第1実施例と共通する構造をもつもの。(第3図及び第4頁左上欄第8行〜同頁右上欄下から2行目参照)
5.[当審の判断]
無効理由(1)について
イ 発明の対比
本件発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証に記載されている「集積回路キャリア」は本件発明の「ICパッケージ」に、以下同様に、「ベース部材12」は「基台」に、「ネック40」は「弾性湾曲部」に、「プラットホーム48」は「被押動片」に、「あご部46」は「接触片」に、「コンタクト36」は「コンタクトピン」に、それぞれ相当しており、集積回路キャリアの端子パッドと、ICパッケージのリード端子とは、いずれも「電極部材」である点においては共通している。
したがって、本件発明と甲第1号証記載の発明との一致点と相違点とは、次のとおりである。
(一致点)IC検査用ソケットにおいて、ICパッケージを載置すべき基台を設けたソケット本体と、該ソケット本体に挿着されていて基部と該基部から弾性湾曲部を介して延びている被押動片と該被押動片とは反対の方向へ延びていて上記基台上に載置されたICパッケージの電極部材を上記弾性湾曲部の有する弾力により押圧し得る接触片とを有するコンタクトピンと、上記被押動片に当接して上記接触片による上記電極部材の押圧を解除し得る解除手段とを備えた点。
(相違点)検査用のICパッケージの電極部材とその押圧態様に関して、本件発明においては、当該電極部材がリード端子であって、「上方より基台に対して」押圧するものであるのに対し、甲第1号証記載のものでは、電極部材がリードレスの端子パッドとして形成されており、ICパッケージ自体の側方より押圧するようにしたものである点。
ロ 相違点の検討
この相違点について検討すると、甲第2号証には、上記のとおり、ソケットベース(基台に相当する)の上面に載置されたリード端子の上方からソケットベース上面に対して、コンタクト(接触片)によって押圧するようにした素子検査用のソケットの構成が記載されている。
しかし、甲第1号証に記載されているのは、リードレスのチップを検査対象とするものであって、甲第2号証に記載された上記の構成を、検査対象を異にする甲第1号証記載のソケットに採用すべき理由や動機付けを示唆したものはない。同様に、甲第2号証に記載されたリード36の形状として、基本構成が全く相違する甲第1号証記載のソケットにおけるコンタクト36の形状を採用することにも無理がある。
そうすると、いずれにしても上記相違点で指摘した本件発明の構成が、甲第2号証の記載に基づいて、当業者であれば容易に想到できるとはいえない。
そして、上記相違点に係る構成を備えた本件発明は、特許明細書記載のとおり、「接触が確実で、リード端子が折曲する虞がなく、変形しているリード端子を実装時に矯正することができ」、「しかもコンタクトピンの被押動片が解除体の弾発部材としても作用するから、部品点数が少なく且つ迅速な装置の組立が可能である」という、甲第1、2号証のいずれの記載からも想到しがたい格別の作用効果を奏するものである。
したがって、本件発明が、甲第1、2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
無効理由(2)について
本件発明と、上記4.の▲3▼で指摘した第1実施例に係る発明とを対比すると、この第1実施例に係る発明では、本件発明における「基部から弾性湾曲部を介して延びている」被押動片の構成も、「該被押動片から分岐して該被押動片とは反対の方向へ延びて」いる接触片の構成も備えておらず、しかも、本件発明にはない「スプリング55」を必須の構成部材とするものである点において、両発明は構成が全く相違している。しかも、かかる構成の相違に起因して、本件発明の「コンタクトピンの被押動片が解除体の弾発部材部材としても作用するから、部品点数が少なく且つ迅速な装置の組立が可能である」という作用効果は、上記第1実施例に係る発明では全く期待できないものであるから、これら二つの発明が同一のものとはいえない。
また、本件発明と、上記4.の▲3▼で指摘した第2実施例に係る発明とを対比すると、この第2実施例に係る発明では、本件発明における「基台上に載置されたリード端子」を「上方より上記基台に対して押圧し得る」接触片の構成を備えておらず、しかも、第1実施例に係るものと同様に「スプリング55」を必須の構成部材とするもので、やはり、本件発明の上記作用効果は期待できないものであるから、これら二つの発明を同一のものとすることもできない。
なお、甲第3号証の第8図等には、前記コンタクトが、それ自体の弾性のみによって前方変位する従来例が示されているが、かかる従来技術の構成を、上記の各先願発明と恣意的に組み合わせるべき合理的理由はなく、上記従来例の開示をもって、上記判断が左右されるものではない。
6.[むすび]
以上のとおりであるから、本件特許については、請求人が主張する理由及びその提出した証拠方法によっては、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1998-12-11 
結審通知日 1998-12-22 
審決日 1998-12-25 
出願番号 特願昭62-134470
審決分類 P 1 112・ 121- Y (H01L)
P 1 112・ 161- Y (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 真田 秀男  
特許庁審判長 酒井 雅英
特許庁審判官 神崎 潔
鳥居 稔
登録日 1998-01-30 
登録番号 特許第2134611号(P2134611)
発明の名称 IC検査用ソケット  
代理人 伊藤 高英  
代理人 中畑 孝  
代理人 山本 光太郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ