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関連判例 | 平成11年(行ケ)69号審決取消請求事件 |
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審決分類 |
審判 全部無効 発明同一 無効とする。(申立て全部成立) H01R 審判 全部無効 出願日、優先日、請求日 無効とする。(申立て全部成立) H01R 審判 全部無効 特29条特許要件(新規) 無効とする。(申立て全部成立) H01R |
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管理番号 | 1013954 |
審判番号 | 審判1998-35351 |
総通号数 | 11 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-01-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1998-07-29 |
確定日 | 1999-12-16 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第2527673号発明「ICソケット」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第2527673号発明の特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
(当事者の求めた審判) 1.請求の趣旨 特許第2527673号を無効とする、との審決を求める。 2.答弁の趣旨 本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。 (当事者の主張) 1.請求人の主張及び提出した証拠方法 (1) 本件特許出願は、次の▲1▼,▲2▼の理由で、出願の分割の要件を満たしていないために、特許法第44条第1項に規定する新たな特許出願とは認められず、出願日の遡及効が認められないから、本件特許出願の出願日は本件出願の願書を提出した日である平成4年10月20日であり、本件特許発明は、本件出願前に頒布された刊行物特開昭63-299257号公報(甲第1号証)に記載された発明と実質的に同一であり、又は、少なくとも上記刊行物に記載されたものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号、又は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、本件特許は無効とされるべきものである(以下、「請求理由1」という。)。 ▲1▼本件特許発明の構成に欠くことができない事項である「自らの弾力にて自己変位して」及び「自らの弾力にて上記端子支持座へ向け自己変位し」から成る構成の部分が、本件特許出願についての平成7年3月17日付け手続補正書により初めて明細書に加入されたものであり、これら構成は、本件特許出願による分割直前の原特許出願の明細書又は図面、及び本件特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面には記載されていない。 ▲2▼本件特許明細書の段落【0007】に記載される発明の目的、段落【0039】〜【0042】に記載される発明の効果についても、本件特許出願による分割直前の原特許出願の明細書又は図面には記載されておらず、本件特許出願時に初めて明細書に記載されたものである。 (2) 本件特許出願について仮に出願日の遡及効が認められたとしても、本件特許発明は、本件特許出願日前の出願であって本件特許出願後に出願公開された特願昭62-134470号(特開昭63-299257号(前記甲第1号証参照))(以下、「先願特許出願」という。)の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されている発明と実質的に同一であり、特許法第29の2第1項の規定に違反して特許されたものであり、本件特許は無効とされるべきものである(以下、「請求理由2」という。)。 (3) 証拠方法 ▲1▼甲第1号証:特開昭63-299257号公報 ▲2▼甲第2号証:特許第2527673号の特許公報 ▲3▼甲第3号証:特開平2-94374号公報(原特許出願特願昭63-248614号の公開特許公報) ▲4▼甲第4号証:原特許出願特願昭63-248614号の明細書及び図面についてした平成3年4月26日付け手続補正書 ▲5▼甲第5号証:特開平6-20753号公報(本件特許出願の公開特許公報) ▲6▼甲第6号証:本件特許出願特願平4-307557号の明細書についてした平成7年3月17日付け手続補正書 2.被請求人の主張 (1)本件特許出願は、分割出願の要件を満たしており、出願日の遡及効が認められるものである。本件特許発明は、本件特許出願後に頒布された甲第1号証が存在するからといって、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反して特許されたものには該当しない。 (2)「リード端子LをICパッケージPと一緒に取り除けば、接触片33dは弾性湾曲部33cの有する弾力によって基台11の上面に直接当接することとなる。」との請求人の主張は、甲第1号証の何処にもその旨記載がされておらず、失当である。上面に直接当接するか否かは弾性湾曲部33cをどのように設計するか、換言すると、弾性湾曲部を形成しているバネをどのように用いるか(プリロード無しとするかプリロード有りとするか)に依存するものであって、全ての場合に当然そうなるものではないからである。 甲第1号証に記載されたものとほぼ同一の構成のものについて計測を行った結果、一方のサンプルについてプリロードが掛かっているといえるが、他方のサンプルについてはプリロードが掛かっていない。プリロード無しとするかプリロード有りとするかはばね材としてのコンタクトピンの設計条件に依存するものであって、全ての場合に当然にそうなるものではない。 (手続の経緯・本件発明の要旨) 本件特許第2527673号は、平成4年10月20に、昭和63年特許願第248614号(出願日:昭和63年9月30日)を原出願と表示して「特許法第44条第1項の規定による特許出願」と特記して、出願され、平成8年6月14日に特許権の設定の登録がなされたものである。 そして、本件特許発明の要旨は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。「【請求項1】IC搭載部に搭載されたICパッケージの端子部材の下面を支持する端子支持座を備え、該端子支持座に支持された端子部材の上面に自らの弾力にて自己変位して加圧接触すべく配置されたコンタクトを備えたICソケットにおいて、該コンタクトは自らの弾力にて上記端子支持座へ向け自己変位しその接触片部を該端子支持座に当接して弾力を蓄えた状態に設置され、更に該接触片部は上記端子支持座に支持された端子部材の厚みに相当する弾力を蓄えて上記弾力との和を以って上記端子部材の上面に加圧接触する構成としたことを特徴とするICソケット。」 (本件特許出願の出願日) 原特許出願の願書に最初に添付した明細書及び図面を検討すると、「コンタクト4」について、(イ)「又上記コンタクト4は第3図、第7図に示すようにソケット本体1に植込された固定端7の下方へ延ばされソケット本体下方へ突出された雄端子5を有し、固定端7の上方へ連設された湾曲バネ片6を有する。該湾曲バネ片6は前方(ICパッケージ2側)へ向け突出され、該湾曲バネ片6の上端に接触片部8を連設する。該接触片部8は上記湾曲バネ片6の突出側(前方)へ突出され、その先端に下向きの接触用突起9を形成している。」(甲第3号証第2頁右下欄第7〜15行参照)、(ロ)「第3図乃至第5図は上記コンタクト4が片面接触形である場合を示し、上記接触片部8の接触用突起9が端子支持座16に支持された端子部材の先端部上面に第7図矢印W3で示すように斜め上方より加圧接触している。」(甲第3号証第3頁左上欄第19行〜同頁右上欄第3行参照)、(ハ)「第3図乃至第5図に示す実施例においてはその接触用突起9を上記端子支持座16の表面に当接し、又第6図に示す実施例においては接片22に当接し夫々弾力を蓄えた状態、所謂プリロードをかけた状態に置かれる。」(甲第3号証第3頁左下欄第13〜17行参照)と記載されている。 これらのことから、原出願の願書に最初に添付した明細書には、本件特許発明の構成要件である「自らの弾力にて自己変位して」及び「自らの弾力にて上記端子支持座へ向け自己変位し」から成る構成に相当する構成が記載されているものと認められる。そして、原出願の願書に最初に添付した明細書の前記引用記載(イ)(ロ)(ハ)は、本件特許出願の願書を提出した日以前にした原出願の明細書についての平成3年4月26日付け手続補正によっても削除されていない。 そして、本件出願の願書に最初に添付した明細書には、「【0014】 又上記コンタクト4は図3、図7に示すようにソケット本体1に植込された固定端7の下方へ延ばされソケット本体下方へ突出された雄端子5を有し、固定端7の上方へ連設された湾曲バネ片6を有する。該湾曲バネ片6は前方(ICパッケージ2側)へ向け突出され、該湾曲バネ片6の上端に接触片部8を連設する。該接触片部8は上記湾曲バネ片6の突出側(前方)へ突出され、その先端に下向きの接触用突起9を形成している。」、「【0021】図3乃至5図は上記コンタクト4が片面接触形である場合を示し、上記接触片部8の接触用突起9が端子支持座16に支持された端子部材の先端部上面に図7矢印W3で示すように斜め上方より加圧接触している。」、「【0025】上記コンタクト4は上記IC搭載部14の対向する辺に沿い並設され、該コンタクト4の接触片部8は上記端子支持座16の外側方に形成した開口部17内へ収容され、図3乃至図5に示す実施例においてはその接触用突起9を上記端子支持座16の表面に当接し、又図6に示す実施例においては接片22に当接し夫々弾力を蓄えた状態、所謂プリロードをかけた状態に置かれる。」と記載されており、本件特許出願の願書に最初に添付した明細書にも、本件特許発明の構成要件である「自らの弾力にて自己変位して」及び「自らの弾力にて上記端子支持座へ向け自己変位し」から成る構成に相当する構成が記載されているものと認められる。 また、本件特許明細書の段落【0007】に記載される発明の目的、段落【0039】〜【0042】に記載される発明の効果が、それぞれ、原特許出願の明細書において【発明が解決しようとする問題点】として、又は【発明の効果】として明示の記載がないとしても、これら段落に記載される事項は、原特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面並びに本件特許出願による分割直前の原特許出願の明細書又は図面に記載された事項から十分認識し得るものである。 したがって、本件特許出願は、原出願の一部を新たな特許出願としたものと認められ、原出願の出願日である昭和63年9月30日に出願されたものとみなすことができる。 (請求理由1について) 本件特許は、前述のとおり原特許出願の出願日である昭和63年9月30日に出願されたものと認められる。 これに対して、請求人が提出した甲第1号証は本件出願後の昭和63年12月6日に頒布されたものであるから、甲第1号証の存在を理由として、本件特許を特許法第29条第1項第3号又は同法同条第2項の規定に違反して特許されたものであるとすることはできない。 したがって、請求人が主張する請求理由1は採用できない。 (請求理由2について) 1.先願特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「先願明細書等」という。)に記載された発明 先願明細書等には、 「本発明は、ICの検査測定に用いるIC検査用ソケットに関する。」(甲第1号証第1頁下左欄第17〜18行参照)、「如何に高密度のICパッケージの場合でもリード端子の変形や損傷を生ぜしめることのないIC検査用ソケットを提供することを目的とする。」(甲第1号証第2頁上左欄第15〜18行参照)、「ICパッケージのリード端子を載置すべき基台を有するソケット本体と、ソケット本体に挿着されていて基台上に載置されたリード端子を上側から自己の有する弾力で押圧し得る接触片を形成したコンタクトピンとを備えている。(甲第1号証第2頁上左欄第20行〜同頁上右欄第5行参照)、「10は中央部にICパッケージPを載置するための矩形の基台11を突出形成しているソケット本体」(甲第1号証第2頁上右欄第11〜13行参照)、「30,31,32は後述するように基部の形状が異なる類似形状の三種のコンタクトピン、33は三種のコンタクトピン30,31,32の総称、33aはソケット本体10のスリット12に配置されるコンタクトピンのベース、33bはベース33aの一端から延伸して第4図上で左旋方向に弾力を生ぜしめる弾性湾曲部33cを介してベース33aの他端方向に延びていて解除体20の切欠部23に進入して押動部22を上方に押圧している被押動片、33dは被押動片33bの途中から反対方向に延びていてリード端子Lを押圧する方向に弾力を有する接触片であって、これらは各コンタクトピン30,31,32に共通の形状である。」(甲第1号証第2頁下右欄第3〜16行参照)、「解除体20は突部21とソケット本体10のフック16aとの係合を解除て降下し、接触片33dはリード端子Lの押圧を解除する方向に回動され基台11から離れる。」(甲第1号証第3頁上右欄第3〜6行参照)、「その位置でICパッケージPをガイド突起15に沿って基台11上に載置し、解除体20への押圧を解除してやれば、コンタクトピン33はその弾性湾曲部33cの弾力のために被押動片33bが押動部22を上方へ押し上げて解除体20の突起21をフック16aと再び係合せしめると共に接触辺33dもリード端子Lを押圧する方向に回動してICパッケージPのリード端子Lの上部を押圧することによりICパッケージPを係止せしめる。」(甲第1号証第3頁上右欄第10〜19行参照)、「ICパッケージPをソケット本体2から取り外すには解除体20を押圧してやればよく、上記のようにコンタクトピン33の接触片33dが弾性湾曲部33cの弾性に抗して回動してリード端子Lから離れて押圧を解除するので、容易に取り外し、交換することができる。」(甲第1号証第3頁下左欄第6〜11行参照)、「IC検査用ソケットにおいては、基台11上に載置したICパッケージPのリード端子Lをコンタクトピン33等の接触片33dが上から押圧する構造であるから接触が確実で、リード端子Lが折曲する虞れがなく、」(甲第1号証第3頁下左欄第19行〜同頁下右欄第3行参照)、「コンタクトピン33の被押動片33bが解除体20の弾発部材としても作用するから、」(甲第1号証第3頁下右欄第12〜13行参照)との記載があるものと認める。 そして、特に、「基台上に載置されたリード端子を上側から自己の有する弾力で押圧し得る接触片を形成したコンタクトピン」(甲第1号証第2頁上右欄第2〜5行参照)、「コンタクトピン33はその弾性湾曲部33cの弾力のために被押動片33bが押動部22を上方へ押し上げて解除体20の突起21をフック16aと再び係合せしめると共に接触辺33dもリード端子Lを押圧する方向に回動してICパッケージPのリード端子Lの上部を押圧する」(甲第1号証第3頁上右欄第12〜18行参照)等の記載は、コンタクトピン33は自らの弾力にて基台11上面に向け自己変位して接触片33dがリード端子の上面に加圧接触することを示していることは明らかである。 また、先願明細書等において、【問題点を解決するための手段及び作用】の項目に「リード端子は……コンタクトピンとの接触も確実になされ得る。」(甲第1号証第2頁上右欄第5〜8行参照)と記載され、【実施例】の項目において「基台11上に載置したICパッケージPのリード端子Lをコンタクトピン33等の接触片33dが上から押圧する構造であるから接触が確実で、」(甲第1号証第3頁下左欄第19行〜同頁下右欄第2行参照)、「変形しているリード端子を実装時に矯正することができ」(甲第1号証第3頁下右欄第3〜4行参照)と記載され、【発明の効果】の項目に「確実に挿着できると共に、変形しているリード端子を実装時に矯正することもできる」(甲第1号証第3頁下右欄第18〜20行参照)と記載されているように、先願明細書等に記載されるIC検査用ソケットにおいては、接触片33dと基台11との間にリード端子Lを確実に挟み付ける力が、また、変形したリード端子Lを矯正できる程度の押圧力が、コンタクトピンの自らの弾力によって生じていることは、明らかである。そして、弾性部材の弾力を利用する挟持手段にあっては確実な挟持力を得るために被挟持物を挟持していない状態で弾性部材に弾力を蓄えるように構成することは、例えば洗濯ばさみ等にもみられるように、本件特許の出願前よりきわめて普通に採用されていることである。また、一方、先願明細書等に記載されるようなIC検査用ソケットにおいて、コンタクトピン33によってリード端子を挟み付ける力は、前記押圧力にも相当するものであるが、基台11の高さ、コンタクトピン33の接触片33dの高さ、リード端子Lの寸法等、各部分の寸法等に依存するものであり、このような寸法には製作誤差や組み付け誤差が不可避的に生じるものであることは技術常識である。そして、このような誤差が生じた場合にも、リード端子Lを確実に挟み付けあるいは変形したリード端子を矯正する程度の押圧力を生じさせるためには、接触子33dが基台11を直接押圧するように弾力を蓄えた状態で設置させることが有利であることは、当業者にとって自明の事項である。 このように、挟持手段の弾性部材に予め弾力を蓄えることがきわめて普通に採用されていること、IC検査用ソケットにおいて製作誤差や組み付け誤差を考慮したとき、コンタクトピンに予め弾力を蓄えるように構成することが有利であることが自明であることを考慮すると、先願明細書等に記載された発明において、コンタクトピン33は、自らの弾力にて、予め接触子33dが基台11上面に当接して弾力を蓄えた状態に設置されていることは自明なことである。更に、先願明細書等の「解除体20は突部21とソケット本体10のフック16aとの係合を解除して降下し、接触辺33dはリード端子Lの押圧を解除する方向に回動され基台11から離れる。」(甲第1号証第3頁上右欄第3〜6行参照)との記載は、基台11にICパッケージを搭載していない状況で解除体20を押し下げたとき、接触片33dがリード端子Lの押圧を解除する方向に回動されて、基台11に当接していた接触片33dが基台11から離れることを、想い起させるものである。 よって、先願明細書等には、 “基台11に搭載されたICパッケージPのリード端子Lの下面を支持する基台上端面を備え、該上端面に支持されたリード端子Lの上面に自らの弾力にて自己変位して加圧接触すべく配置されたコンタクトピン33を備えたソケット本体10において、該コンタクトピン33は自らの弾力にて上記上端面へ向け自己変位しその接触片33dを該上端面に当接して弾力を蓄えた状態に設置され、更に該接触片33dは上記上端面に支持されたリード端子Lの厚みに相当する弾力を蓄えて上記弾力との和を以って上記リード端子Lの上面に加圧接触する構成としたソケット本体10” が記載されているものと認められる。 2.対比・判断 本件特許発明と上記先願明細書等に記載された発明とを対比すると、先願明細書等に記載されたものの“ソケット本体10”、“ICパッケージP”、“基台11”、“リード端子L”、“上端面”、“コンタクトピン33”、“接触片33d”が、それぞれ本件特許発明の「ICソケット」、「ICパッケージ」、「IC搭載部」、「端子部材」、「端子支持座」、「コンタクト」、「接触片部」に相当するから、先願明細書等に記載された発明は本件特許発明の構成を悉く備えるものである。そして、本件特許発明の作用効果は、上記先願明細書等に記載された発明も有するものである。 なお、被請求人は、平成10年12月3日付け上申書において、本件審判請求人の製品のIC検査用ソケットのうち、甲第1号証に記載されたIC検査用ソケットとほぼ同一構成を有する製品2サンプルについて計測した結果、一つのサンプルについてはプリロードが掛かっているものの、もう一つのサンプルについてはプリロードが掛かっていないとして、「プリロード無しとするかプリロード有りとするかはばね材としてのコンタクトピンの設計条件に依存するものであって、全ての場合に当然そうなるものではない。」旨主張するが、先願明細書等に記載された発明とは、先願明細書等に記載された事項及び記載されている事項から技術常識を参酌することにより導き出せる事項から把握される発明をいうものであるから、請求人の特定の製品がプリロードが掛かっていないことを理由として、先願明細書等にはプリロードが掛かっているものは記載されていない、とすることはできない。 したがって、本件特許発明は本件特許の出願前の特許出願であって本件特許出願後に出願公開された先願特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であり、該明細書又は図面に記載された発明の発明者が本件特許発明の発明者と同一の者ではなく、また、本件特許出願の出願時における出願人と先願特許出願の出願人とが同一でもないから、本件特許発明は、特許法第29条の2第1項の規定により特許を受けることができないものである。 (むすび) 以上のとおりであるから、本件特許は、特許法第29条の2第1項の規定に違反して特許されたものであり、同法第123条第1項第2号に該当する。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1999-01-06 |
結審通知日 | 1999-01-19 |
審決日 | 1999-01-22 |
出願番号 | 特願平4-307557 |
審決分類 |
P
1
112・
03-
Z
(H01R)
P 1 112・ 161- Z (H01R) P 1 112・ 1- Z (H01R) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 須原 宏光、新川 圭二 |
特許庁審判長 |
蓑輪 安夫 |
特許庁審判官 |
清水 信行 清田 榮章 |
登録日 | 1996-06-14 |
登録番号 | 特許第2527673号(P2527673) |
発明の名称 | ICソケット |
代理人 | 山本 光太郎 |
代理人 | 伊藤 高英 |
代理人 | 阿部 和夫 |
代理人 | 升永 英俊 |
代理人 | 谷 義一 |