ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
関連判例 | 平成8年(行ケ)89号審決取消請求事件 |
---|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B |
---|---|
管理番号 | 1013955 |
審判番号 | 審判1987-6389 |
総通号数 | 11 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1982-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1987-04-20 |
確定日 | 2000-01-28 |
事件の表示 | 昭和56年特許願第4090号「磁気光学記憶素子」拒絶査定に対する審判事件(平成4年7月21日出願公告、特公平4-44333)について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
(手続の経緯) 本願は、昭和56年1月14日の出願であって、当審において平成4年7月21日に出願公告がなされたところ、杉崎筆雄、日本鋼管株式会社、大日本インキ化学工業株式会社、帝人株式会社、宮沢大吉、ソニー株式会社、キヤノン株式会社、村山克彦、及び日立マクセル株式会社からそれぞれ特許異議の申立がなされたものである。 (本願発明の要旨) 本願発明の要旨は、上記出願公告後の平成5年4月27日に提出された手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。 「帯状の溝の形成された基板と、該基板の該溝の形成された面の上に形成され、該溝に対応する段差を有する、膜面に垂直な磁化容易軸を有する希土類と遷移金属より成るアモルファス磁性体薄膜と、該磁性体薄膜の上に形成され、該溝に対応する段差を有する反射膜と、該溝の部分或いは該溝を隔てる土手の部分又はその関連する部分により形成されたガイドトラックとを具備し、該磁性体薄膜は該磁性体薄膜表面からの反射光だけでなく該磁性体薄膜を通り抜ける透過光も反射させて利用することでカー効果とファラデー効果を合わせて再生光のカー回転角を高めかつ信号対雑音比を増大するべく充分に薄い事を特徴とする磁気光学記憶素子。」 (引用例) これに対して、特許異議申立人:杉崎筆雄が提示した甲第1号証:特開昭55-67949号公報(以下、引用例1という。)、及び甲第2号証刊行物:東独国特許第98782号公報(以下、引用例2という。)には、それぞれ次の事項が開示されている。 引用例1 (1)「基板(8)に帯状の溝〔トラック(2)及びブランクトラック(10)〕が形成され、前記基板の溝が形成された面上に情報記録膜として光反射及び吸収層(9)を被覆し、前記帯状の溝をガイドトラックとする記録キャリヤ(1)。」 (2)「上記記録キャリヤ(1)において、ブランクトラック部分を磁気-光学材料により被覆すること。」(特に、第4頁左下欄13行〜16行) 引用例2 「構成の機械的安定性を保証するガラス製の被覆層(1)と、該ガラス製の被覆層の上に形成され、MnBiより成る強磁性体の記録層(3)と、該強磁性体の記録層の上に形成された金属反射層(5)とを具備し、該強磁性体の記録層(3)は該強磁性体の記録層表面からの反射光だけでなく該強磁性体の記録層を通り抜ける透過光も該金属反射層(5)によって反射させて利用することで磁気光学読み取りの際の効率レベルを改良した強磁性体の記録媒体。」 (本願発明と引用例記載事項との対比) そこで、本願発明と引用例2に記載されたものとを比較すると、引用例2に記載されたものにおける「ガラス製の被覆層(1)」、「強磁性体の記録層(3)」、「金属反射層(5)」、及び「強磁性体の記録媒体」は、それぞれ本願発明における「基板」、「磁性体薄膜」、「反射膜」、及び「磁気光学記憶素子」に実質的に相当するものであり、また引用例2に記載されたものも、強磁性体の記録層を通り抜ける透過光も利用していることからみて、カー効果とファラデー効果を合わせることにより再生光のカー回転角を高めているものであるから、両者は、 「基板と、該基板の上に形成された磁性体薄膜と、該磁性体薄膜の上に形成された反射膜とを具備し、該磁性体薄膜は該磁性体薄膜表面からの反射光だけでなく該磁性体薄膜を通り抜ける透過光も反射させて利用することでカー効果とファラデー効果を合わせて再生光のカー回転角を高めた磁気光学記憶素子。」 である点において一致し、本願発明は、次の各点において引用例2に記載されたものと相違する。 相違点 (1)本願発明においては、基板に帯状の溝が形成され、該基板上に形成された磁性体薄膜及び該磁性体薄膜上に形成された反射膜は、該溝に対応する段差を有し、該溝の部分或いは該溝を隔てる土手の部分又はその関連する部分によりガイドトラックを形成しているのに対して、引用例2に記載されたものには、そのようなガイドトラックが形成されていない点。 (2)本願発明は、磁性体薄膜として、膜面に垂直な磁化容易軸を有する希土類と遷移金属のアモルファス磁性体薄膜を用い、該磁性体薄膜の膜厚を、該磁性体薄膜の表面からの反射光だけでなく該磁性体薄膜を通り抜ける透過光も反射させて利用することでカー効果とファラデー効果を合わせて再生光のカー回転角を高めかつ信号対雑音比を増大すべく充分に薄くしているのに対して、引用例2に記載されたものは、磁性体薄膜として、MnBiからなる磁性体薄膜を用い、該磁性体薄膜の膜厚の一例として250Åのものが記載されているが、この膜厚が「充分に薄い」か否かは必ずしも明確でない点。 (当審の判断) 以下、上記各相違点について検討する。 相違点(1)について レーザー光により情報の記録又は再生を行なう記憶素子において、基板に帯状の溝を形成してサーボ用のガイドトラックを設けることは、従来から周知の事項であり(例えば、特開昭54-130102号公報、特開昭54-130103号公報、特開昭52-10102号公報、及び上記引用例1参照)、ガイドトラックの機能は、情報記録膜が磁気光学効果を利用する磁性体薄膜であるか、又はレーザー光により溶融してピットを形成する金属薄膜であるかの違いによって本質的に異なるところがない。 また、基板上に形成された帯状の溝からなるガイドトラックに、情報記録膜として磁気-光学材料を被覆することも、上記引用例1に記載されているとおり公知の事項である。 してみれば、上記相違点(1)は、上記周知の事項及び公知の事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。 相違点(2)について 磁性体薄膜として、膜面に垂直な磁化容易軸を有する希土類と遷移金属のアモルファス磁性体薄膜は、従来から周知であり、またこの周知の磁性体薄膜がMnBiからなる磁性体薄膜に代えて用いられていることも、従来から周知の事項である。(いずれの事項も、特開昭52-31703号公報、特開昭49-60643号公報等参照) また、上記引用例2に「積層の屈折率及び厚さは、磁性体薄膜からの情報を磁気光学的に読み取るとき、その効率が最大となるように選択される」(特許請求の範囲第2項)と記載されていることからみて、磁性体薄膜の膜厚を、カー効果とファラデー効果を合わせた再生光のカー回転角を高め、かつ信号対雑音比が増大するような最適な膜厚に設定することは、当然考慮される設計的事項に過ぎないことである。 してみれば、上記相違点(2)は、上記周知の事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願発明を全体的にみても、上記引用例1及び引用例2に記載された事項、並びに上記周知の事項から当業者が当然予測できる範囲を超える格別の作用・効果を見出すことができない。 (むすび) 以上のとおりであって、本願発明は、上記引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1996-03-08 |
結審通知日 | 1996-03-19 |
審決日 | 1996-04-03 |
出願番号 | 特願昭56-4090 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G11B)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 河口 雅英、西川 一、小要 昌久 |
特許庁審判長 |
臼田 保伸 |
特許庁審判官 |
犬飼 宏 萩原 義則 |
発明の名称 | 磁気光学記憶素子 |
代理人 | 船山 武 |
代理人 | 木下 雅晴 |
代理人 | 川口 義雄 |
代理人 | 杉山 毅至 |