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審判番号(事件番号) データベース 権利
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無効200480218 審決 特許
無効2007800196 審決 特許
無効2009800179 審決 特許
審判199721765 審決 特許

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審決分類 審判 審判種別コード:11 1項3号刊行物記載  A61K
管理番号 1013957
審判番号 審判1992-23900  
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1983-11-10 
種別 無効の審決 
審判請求日 1992-12-15 
確定日 2000-02-18 
事件の表示 上記当事者間の特許第1652163号発明「インターフエロン」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第1652163号発明の特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 I.本件特許第1652163号(以下、本件特許という)は、昭和54年11月22日(優先権主張1978年11月24日、1979年7月31日、及び1979年9月21日、アメリカ合衆国)に出願した特願昭54-15083号の一部を昭和58年2月25日に新たな特許出願として出願され、昭和63年7月29日に出願公告(特公昭63-38330号)された後、平成4年3月30日に設定登録がなされたものであって、本件特許発明の要旨は、出願公告された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲に記載されたとおりの
「ウシ細胞MDBKの場合、比活性0.9×108〜4.0×108単位/mgタンパク質を有し、ヒト細胞系AG1732の場合、比活性2×106〜4.0×108単位/mgタンパク質を有し、分子量約16000±1000〜約21000±1000であり、アミノ糖分が1分子当たり1残基未満であり、順相および(または)逆相高速液体クロマトグラフィーにおいて単一のピークを示すとともに、ドデシル硫酸ナトリウムーポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で単一バンドを示す均質タンパク質であるヒト白血球インタフェロンを含有し、ドデシル硫酸ナトリウムおよび非インタフェロン活性タンパク質來雑物を実質的に含まないことを特徴とする、ヒト白血球インタフェロン感受性疾患治療用医薬組成物。」
にあるものと認める。
II.これに対して、請求人の提出した上記特許出願の優先権主張日前アメリカ合衆国において頒布された刊行物であることが明らかな甲第3号証(エル・エス・リン等「第78回アメリカ微生物学会年会講演要旨集」第S202講演、ネバタ州、ラスベガス(1978年))には、
▲1▼「ヒト白血球インターフェロン(HuLeIF)調製物は分子の大きさが相違する二つの群(poPulations)からなり、ドデシル硫酸ナトリウム/ポリアクリルアミドゲル(SDS/PAGE)中で電気泳動すると、21,000ダルトン(d)と15,000dに抗ウイルス活性のピークを伴って移動する。」(翻訳文第1頁下から第11行〜6行)、
▲2▼「HuLeIF調製物(『PIF』と言う。)は、ケー・カンテル(K.Cantell)氏から供給されたものであり(比活性約106インターフェロン単位/mg蛋白質)、SDS/PAGEで測定すると分子量約67,000dと分子量約25,000dの二つの主たる蛋白質來雑物を含有する。」(同第1頁下から第6行〜第2行)
▲3▼「PIF調製物を過沃素酸ナトリウム緩衝剤により穏やかに酸化した後、50%エチレングリコールで希釈し、沈澱蛋白質を遠心分離して除去した。凍結乾燥して上清液を濃縮し、(水性媒体を加えて)元の体積とし、セファクリルS-200クロマトグラフィーカラムに掛け、燐酸緩衝剤で溶出させた。蛋白質/活性プロフィル(溶出曲線)により、過沃素酸酸化により25,000dの來雑物蛋白質が選択的に沈澱する一方、分子量排除カラムにより、67,000dの來雑物が低分子量のインターフェロン蛋白質から効率的に分離し、比活性約3×108単位/mg蛋白質のインターフェロン調製物を得たことが判明した。次いで、このインターフェロン調製物を二次元ゲル電気泳動により分析すると、純粋なインターフェロンが得られたことを示す。」(同第1頁第末行〜第2頁第末行)
と記載されている。
上記▲3▼において得られたインターフェロン(以下、本件特許の特許請求の範囲における記載と同じ表記のインタフェロンと記す。)は、原料として▲2▼の記載からヒト白血球インタフェロンであるPIF(比活性約106インタフェロン単位/mg蛋白質)を用いて、精製方法として▲3▼に記載された過沃素酸酸化により25,000dの交雑蛋白質を沈澱させ、分子量排除カラムにより、67,000dの來雑物を分離した、二次元ゲル電気泳動による分析で純粋であることを示した、比活性約3×108単位/mg蛋白質であり、更に▲1▼の記載より、インタフェロン活性をもつものであることから、この分子量が21,000d又は15,000dであること、及び上記精製法ではドデシル硫酸ナトリウムを使用しないことから、これを含まないことは明らかである。そうすると、比活性が3×108単位/mgタンパク質を有し、分子量が21,000d又は15,000dであり、一般に二次元ゲル電気泳動の分析精度はSDS-PAGEより優れているものと認められるから、二次元ゲル電気泳動による分析で純粋である以上、SDS-PAGEで単バンドを示すヒト白血球インタフェロンが記載されているものと認められる。
III.本件特許発明と甲第3号証に記載の発明と比較検討すると、ヒト白血球インタフェロンにおいて、比活性、分子量、SDS-PAGEで単一バンドを示すこと及びドデシル硫酸ナトリウムを含まないことで両者は一致し、本件特許発明はさらにヒト白血球インタフェロンが、アミノ糖分が1分子当たり1残基未満であること、順相および(または)逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)において単一のピークを示すこと、均質タンパク質であること、非インタフェロン活性タンパク質來雑物を実質的に含まないこと及びヒト白血球インタフェロン感受性疾患治療用医薬組成物と限定しているのに対して、甲第3号証にはこれらの点について明記されていないので、これらの点において一応相違するものと認められる。
IV.そこで、これらの点を以下に検討する。
まず、本件特許発明における「均質タンパク質」について検討する。
本件特許明細書には、「均質タンパク質」の明確な定義は記載されていないが、
i.上記文献のいくつかはマウスまたは人のインタフェロンを均質に精製したと述べているが、タンパク質の均質性の古典的証明が与えられておらず、あるいは記載されている純粋といわれる化合物の性質は記載されていない。(第30頁下から第5〜末行)
ii. この新規方法により得られる均質な人の白血球のインタフェロンの種の各々は、前述のHPLCカラム上の鋭いピークと、2-メルカプトエタノールの存在下のドデシル硫酸ナトリウム(NaDodS04)ポリアクリルアミドゲル電気泳動上の単一の狭い帯とを示した。(第40頁第5〜10行)
iii. 本発明の1つの面である精製された均質なインタフェロン類は、従来用いられた粗製の製剤と同じ方法で投与量を調整して望むレベルのインタフェロン単位を与えるようにして使用することができる。個々の種はそのまま使用することができ、或いはこのような種の2種以上の混合物を使用することもできる。このような混合物は単離した種を望むように混合することによって得ることができ、或いはインタフェロンの幾つかの種が存在するが、非インタフェロンの活性なタンパク質が存在しないところで精製を停止し、組成物が均質なインタフェロンタンパク質の混合物であるようにすることによって、得ることができる。(第41頁第8行〜第42頁第4行)
iv. インタフェロンの産生の誘導、インタフェロンの初期濃度およびゲル濾過を含むインタフェロンの分別はこの分野でよく知られた方法を用いて達成することができる。不純な状態のインタフェロンタンパク質の水溶液を精製するこれらの操作は本発明の一部ではない。(第43頁第1〜6行)
v. 表3〜表6にはインタフェロンの種α1〜γ5までの比活性、分子量、アミノ酸分析結果等のデータ
が記載されている。これらの記載からみると、本件特許発明における均質タンパク質とは、特許請求の範囲に記載されているHPLCにおいて単一のピークを示すとともに、SDS-PAGEで単一バンドを示すヒト白血球インタフェロンとして純粋なタンパク質であって、純粋タンパク質には少なくとも分子種α1〜γ5のいずれか又はそれらの混合物を包含するものと認められる。
また、比活性とは精製されたタンパク質mg当たりのインタフェロンの抗ウイルス活性を表わすものである。これは比活性の数値が大きいほど不純物であるタンパク質が存在する割合が小さいことを意味し、すなわち、ヒト白血球インタフェロンの純度が高いことを意味するものである。
そうすると、甲第3号証に記載されているヒト白血球インタフェロンは、二次元ゲル電気泳動で純粋であると示されていること、つまり、タンパク質として電荷及びサイズにおいて均質であって、比活性が3×108単位/mgタンパク質の比活性をもつ以上、本件特許発明のインタフェロンと同程度の純度であるといえるものである。
したがって、甲第3号証におけるインタフェロンは均質タンパク質といえるものである。
次に、アミノ糖分が1分子当たり1残基未満であることについて検討する。
甲第3号証にはインタフェロンにおけるアミノ糖分について何等記載されていないが、これはアミノ糖分についての分析がされていないことが示されているのであって、分析がされていないことのみでは、本件特許発明におけるインタフェロンとの物質の異同の根拠となるものではないし、本件特許のインタフェロンは上述のように均質タンパク質であるといえることを考慮すると、これをもって、両者のインタフェロンが異なるとはいえない。
そして、順相および(または)逆相高速液体クロマトグラフイーにおいて単一のピークを示すことについては、上記に述べたように甲第3号証のインタフェロンは本件特許発明と同程度に均質なタンパク質であると認められるので、当然にHPLCでは単一のピークを示すものと認められる。
また、非インタフェロン活性タンパク質來雑物を実質的に含まないことについて検討する。
二次元ゲル電気泳動でインタフェロンタンパク質が電荷とサイズにおいて純粋であること示され、比活性が3×108単位/タンパク質である以上、本件特許発明と同じくインタフェロンを除く他の非インタフェロン活性タンパク質來雑物が含まれないことは明らかである。
更に、ヒト白血球インタフェロン感受性疾患治療用医薬組成物について検討する。
インタフェロンの比活性を検定することは、ウイルス名は記載されていないが、抗ウイルス活性を検定しているものであることが明らかである以上、抗ウイルス活性というインタフェロン感受性疾患に対する効果が具体的データをもって明記されている。
したがって、甲第3号証には、ヒト白血球インタフェロン感受性疾患治療用という用途が実質的に記載されているものと認められる。
以上の結果、甲第3号証には、複数のインタフェロン分子種に分離することは記載されておらず、得られたヒト白血球インタフェロンが、本件明細書に記載されている分子種α1〜γ5に相当するか否かはわからないが、上記したとおり、比活性、分子量などの本件特許発明の限定を満足するヒト白血球インタフェロンが記載されているものと認められる。
したがって、本件特許発明は、甲第3号証にはヒト白血球インタフェロンは記載されているものである。
V. なお、被請求人は、乙第1号証(TheInter-feron System,Springer-Verlag,Wien-New York,1979,178-181頁)、乙第2号証(Dr.Peter Lengyelの宣誓口供書)、乙第8号証(レンジェルの宣誓供述書)、乙第9号証(スチュアート、“The Inter-feron System”(第2版、1981年)、179頁)、乙第10号証(フィーニイ博士の宣誓供述書)、乙第11号証(アンフィンゼン教授の宣誓供述書)及び乙第12号証(ルビンシュタインの宣誓供述書)を提出して、
(イ)甲第3号証は、過沃素酸塩酸化の条件(過沃素酸ナトリウムのモル濃度、処理時間についての記載等)、ゲルクロマトグラフィーの条件、セファクリルS200の使用についての詳細(たとえば、カラムサイズ、溶出緩衝液もしくは溶媒、流速等)ならびに比活性の測定に使用された生物学的検定法およびタンパク質検定法に関する科学的に詳細な記述に欠けているものであり、文章を支持するデータが全く示されていないから、そこに記載されているインタフェロンが見掛け上の均質性を有するものと結論し得ないこと、及び、
(ロ)甲第3号証に記載されているヒト白血球インタフェロンは変性されたものであって、天然のものでない
と主張しているが、以下の理由でこの主張は採用できない。
(イ)について
請求人が提出した甲第25号証(ウィリアム・イー・スチュアート二世博士による宣誓供述書)には
「13. 私は、日本国、岡山にある株式会社林原生物科学研究所と利害関係を有しない。
18. 1978年、純粋にして均質な形態のヒト白血球インタフェロンを取得すべく、私と私の同僚は、過沃素酸塩処理による炭水化物部分の除去と篩クロマトグラフィーを含む別の精製スキームを考案した。この精製スキームは、ラスベガスでの1978年アメリカ微生物学会年会の講演要旨S202及び1978年のハーグでの第4回国際ウィルス学会議の講演要旨W2/2に記載したように、それぞれ最終比活性が約109単位/mg蛋白質の2種類の純粋にして均質な形態のヒト白血球インタフェロンに到達した。
19. 過沃素酸塩処理にための特定の条件は、それ以前、『プロシーディング・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・ユー・エス・エー』、第74巻、第4,200乃至4,204頁(1977年)に報告されていた。すなわち、カリ・カンテル博士から供与された比活性約106単位/mg蛋白質の部分精製ヒト白血球インタフェロン調製物(P-IF)を0.02Mメタ過沃素酸ナトリウムで処理し、0.1M酢酸ナトリウム緩衝液を調合し、氷酢酸でpH4.5に調製した。P-IFを等容量のこの過沃素酸緩衝液で希釈し、反応期間中、暗所にて4℃に保った後、50%(v/v)エチレングリコール溶液により1:10に希釈して反応を停止させた。次いで、反応混合物を遠心分離して精製した沈澱物を除去し、上清液を0.03M NH4HCO3緩衝液(PH7.6)に対して透析し、凍結乾燥し、燐酸緩衝化した生理食塩水に溶解し、セファクリルS-200カラムによりクロマトグラフし、抗ウイルス活性を伴なう二つの主たるピーク画分を別々に採取した。これら画分は、ヒト細胞及びウシ細胞に対して比活性約3×108単位/mg蛋白質を有する、純粋にして均質な形態のヒト白血球インタフェロンを含んでいた。この人白血球インターフェロン形態は、二次元SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動において約15,000ダルトン及び約21,000ダルトンの分子量に相当する単一スポットを示し、前者は炭水化物部分を欠失している可能性が高かった。
20. 私と私の同僚は、P-IFを過沃素酸塩処理すると、遠心分離により除去可能な綿状沈澱を起こし、上清液にインタフェロン活性が残ることを初めて見出した。沈澱した蛋白質は、蛋白質性交雑物のみからなり、これは、篩クロマトグラフィーに際して、ヒト白血球インタフェロン中に溶出することが判明していた。したがって、過沃素酸塩処理によりそれらを除去することは、(過沃素酸塩処理し、遠心分離した後の)清澄化された調製物中のそれ以外の夾雑蛋白質がより高分子量域(約67,000ダルトン)にあったことから、篩クロマトグラフィーによるP-IFの精製を著しく容易ならしめた。
このことは、「蛋白質及び活性プロフィルは、過沃素酸塩酸化が25,000ダルトンの來雑蛋白質を選択的に沈澱させる一方、篩カラムクロマトグラフィーが低分子のインターフェロン蛋白質から67,000ダルトンの來雑物を効率的に分離し、比活性約3×108単位/mg蛋白質のインタフェロン調製物を与えたことを明らかにした」と述べられているように、ラスベガス講演要旨により明確に裏付けられている。
23.・・・・私の知識と経験によれば、過沃素酸塩を極めて温和な条件、例えば、低温、低濃度、暗所及び短時間用いれば、最も可能性ある作用部位は、一般に、糖蛋白質の炭水化物側鎖ということになり、一方、感受性あるアミノ酸側鎖は例えば、さらに長時間反応させるなど、より苛酷な条件下でのみ攻撃を受ける。
温和は処理は、すでに沈澱した夾雑蛋白質にのみ作用したのであるから、私達が単離した純粋にして均質な形態のヒト白血球インタフェロンに過沃素酸塩が少しでも作用したと確信をもって言うことはできない。処理時間が長くなると、明らかに、インタフェロン活性が低下する。したがって、上記条件下では、ヒト白血球インタフェロンは変性しなかったと考えられる。精製のため短時間処理したことにより、もし、なんらかの活性が失われたとしても、ほとんどないに等しい程度であれば、斯かる温和な酸化がヒト白血球インタフェロンをなんらかの意味で「変性した」とか、ヒト白血球インタフェロンに悪影響を及ぼしたとする証左があるということには絶対にならない。」
同じく、請求人の提出した甲第26号証(ダブリュ・イー・スチュアート二世ら『プロシーディング・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・ユー・エス・工一』、第74巻、第10号、第4,200乃至4,204頁(1977年))には、
「 過沃素酸塩処理メタ過沃素酸ナトリウム(0.02M)を0.1M酢酸ナトリウム緩衝液中に調合し、氷酢酸により最終pHを4.5に調製した。
この試薬をフォイルにくるんだ瓶中で4℃に保存したところ、数週間に亙って同一の結果を与えた。
インタフェロン試料を等容量の過沃素酸塩緩衝液で希釈し、特定の時間、4℃に保った後、0.1mlずつとり、50%(v/v)エチレングリコール溶液で1:10に希釈して反応を停止させた。」
と記載されている。
そして、甲第25号証の宣誓供述書は、テキサス州の公証人Dan Orosed SR.が証明しており、信用できるものと認められる。
そうすると、甲第3号証に記載されているヒト白血球インタフェロンの分子量、比活性及び二次元ゲル電気泳動で純粋であることを示したことは客観的事実と認められるし、甲第3号証にはヒト白血球インタフェロンの精製方法が詳細に記載されていないが、公知文献である甲第26号証に記載されている方法で精製されたヒト白血球インタフェロンであることが認められる。そして、甲第25号証の第19項の供述でのゲルクロマトグラフィーの条件、セファクリルS200の使用条件をみると、本件特許の出願前の技術水準からみて、特殊なものとは認められない。また、比活性の検定に使用された生物学的検定法およびタンパク質検定法についても、甲第3号証の原料であるP-IF、生成物を初めとして、インタフェロンの調製物については比活性を表示することが通常であるから、これらが詳細に記載されてないことをもって、甲第3号証における比活性が3×108単位/mgタンパク質のヒト白血球インタフェロンが得られていないとはいえない。
したがって、乙第2号証及び乙第8号証の宣誓供述内容はインタフェロンの精製方法及び比活性のアッセイの方法の詳細が記載されていないことを根拠に比活性が3×108単位/mgが得られていないというものであるから、上述したように、これによって、甲第3号証に記載されているインタフェロンが得られなかったとはいえない。
(ロ)について
乙第1号証、乙第2号証、乙第8〜12号証には、インタフェロンは過沃素酸塩酸化によって、なんらかの化学的修飾されたインタフェロンが得られている旨の記載又は宣誓供述があるが、インタフェロンが過沃素酸塩で化学的修飾つまり、変性されているとすれば、乙第8号証の供述のようにインタフェロンの活性が低下、すなわち、比活性が低下するものである。しかし、甲第3号証のインタフェロンは、比活性は3×108単位/mgであり、しかも、二次元ゲル電気泳動で純粋であることが示されているのであるから、変性されたインタフェロンであるとは認められない。
たとえ、過沃素酸塩酸化で変性を受けていたとしても、本件特許の特許請求の範囲には変性されたインタフェロンを除くことは記載されていないし、明細書にも、変性されていないインタフェロンのみに限定されているものと解することができる記載はない。
したがって、前記被請求人の主張(イ)及び(ロ)は採用できない。
VI.以上のとおりであるから、本件特許発明は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものであり、同法第123条第1項第1号に該当する。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1996-09-10 
結審通知日 1996-09-24 
審決日 1996-09-27 
出願番号 特願昭58-29632
審決分類 P 1 11・ 113- Z (A61K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐伯 とも子山川 サツキ前田 憲彦  
特許庁審判長 加藤 孔一
特許庁審判官 宮本 和子
小川 慶子
登録日 1992-03-30 
登録番号 特許第1652163号(P1652163)
発明の名称 インターフェロン  
代理人 歌門 章二  
代理人 木川 幸治  
代理人 安江 邦治  
代理人 浅村 皓  
代理人 浅村 肇  

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