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審決分類 審判 査定不服 発明同一 取り消して特許、登録 A61K
管理番号 1014104
審判番号 審判1998-7704  
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1988-07-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-05-14 
確定日 2000-04-10 
事件の表示 昭和61年特許願第315209号「メ-クアツプ化粧料」拒絶査定に対する審判事件〔昭和63年 7月11日出願公開、特開昭63-166819、平成 7年10月 4日出願公告、特公平 7- 91174、特許請求に係る発明の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.本願発明
本願は、昭和61年12月27日の出願であって、その発明の要旨は、出願公告後の平成8年9月17日付け手続補正書によって補正された明細書の記載からみて、
「平均の厚味が0.1μm〜2μm、下記で定義する平均の大きさが1μm〜100μmで、屈折率が1.35〜1.44の合成薄片状金属酸化物(但し、アシルオキシ基を有することを特徴とする金属化合物の液体または有機溶媒溶液を平滑面上に塗布し、該塗膜を水または水蒸気により加水分解し、該加水分解された金属化合物薄膜を剥離し、金属酸化物薄片となすべく焼成して製造された薄片状物質は除く)を配合してなるメークアップ化粧料。ここで平均の大きさとは、100個の薄片についての(薄片の最長さしわたし径+最短さしわたし径)/2の平均値をいう。」
にあるものと認められる。
なお、特許請求の範囲には「…平均の大きさとは、100個の薄片についての(薄片の最長さしわたし径+最短さしわたし径/2の平均値をいう。」と記載されているが、平均値を求めるには最長と最短さしわたし径の合計を1/2とするものであり、発明の詳細な説明にも(薄片の最長さしわたし径+最短さしわたし径)/2と記載されているから、最短さしわたし径と/の間に「)」の脱字と認め、本願発明の要旨を上記のように認定した。

2.原査定の概要
これに対して、原査定の拒絶の理由である特許異議の決定の理由の概要は、本願発明は、本願の出願前に出願され、その出願後に公開された特願昭60-142243号(特開昭62-3003号公報)の願書に最初に添付した明細書(以下、先願明細書という。)に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないというものである。

3.引用先願明細書の記載事項
そこで、先願明細書の記載を検討する。
先願明細書には次の事項が記載されている。
ア、本発明に係る…酸化ケイ素…などの鱗片状の無機酸化物を従来化粧料に使用されている雲母あるいはセリサイトなどと同じくアスペクト比を10〜200に調製して、化粧料として種々の化粧品に使用すれば、天然の雲母などと比較して不純物が極端に少なく均質であることから皮膚に対する安全性が向上し、かつ厚さが天然物と比較して薄いため使用感および伸びが良好で、化粧落ちが少なく素肌の美しさを損なうことのない透明感のある化粧品組成物が得られる。(5頁左下〜右下欄)
イ、水ガラスを陽イオン交換樹脂で脱アルカリして得られた、粒径12mμの酸化ケイ素コロイドを種々の濃度で含む酸化ケイ素コロイド溶液10kgを凍結時間を変化させて凍結させ、次いで凍結乾燥を行って、鱗片状の含水酸化ケイ素を得、これを600℃で3時間焼成し透明でかつ厚さ0.1〜2.0μmの鱗片状の酸化ケイ素を得た旨が実施例1及び表1(実施例1-1〜1-9及び1-13)に示されている。
ウ、…厚みと片の最長長さとの比(アスペクト比)が5以上である…鱗片状の無機酸化物または含水無機酸化物。(特許請求の範囲第2項)
以上の記載事項からみると、先願明細書には、合成された鱗片状の酸化ケイ素をアスペクト比を10〜200に調製して、化粧料として種々の化粧品に使用すること、厚さ0.1〜2.0μmの鱗片状の酸化ケイ素を得たことが記載され、そして、ここでいう化粧品とは「使用感および伸びが良好で、化粧落ちが少なく素肌の美しさを損なうことのない透明感のある化粧品組成物」、すなわち、メークアップ化粧料を意味しているものと認められるので、上記物性をもつ合成鱗片状の酸化ケイ素を配合したメークアップ化粧料が記載されているものと認められる。

4.対比・判断
本願発明と先願明細書に記載の発明と対比する。
先願明細書の酸化ケイ素は、アスペクト比(厚みと片の最長長さとの比)が10〜200の範囲内であり、化粧料用の粉体として針状の形状のものは通常用いられないから、ほぼ円形と仮定すると、その粒径は1〜400μmと算定される。また、メークアップ化粧料に用いられる粉体の粒径は一般に100μm以下であることから、平均の大きさは1μm〜100μmの範囲内であるといえる。また、厚さが0.1μm〜2μmであるものは、当然平均の厚み(100個の薄片についての平均値)は0.1〜2μmである。そして、粉体の形状を表わす用語では鱗片状と薄片状と同意語である。
そうすると、両者は、平均の厚みが0.1μm〜2μm、平均の大きさが1μm〜100μmの範囲内の合成薄片状金属酸化物である酸化ケイ素を配合してなるメークアップ化粧料である点で一致し、前者は金属酸化物の屈折率を限定しているのに対して、後者はこれについて明示されていない点で相違する。
そこで、この相違点を検討する。
請求人は、先願明細書の実施例1の酸化ケイ素について追試結果を示した実験証明書を添付して平成12年1月28日付け上申書を提出した。
実験証明書の概要は次のとおりである。
実験方法
実験例1
ポリエチレン製容器に市販の酸化ケイ素コロイド(商品名シリカドール20A、日本化学工業(株)製)120gを入れた後、容器を液体窒素中に浸漬して酸化ケイ素コロイドを30秒で凍結させた。次いで、真空乾燥器にて凍結物を72時間乾燥して含水酸化ケイ素を得た。次いで、磁製ルツボに含水酸化ケイ素3gを入れた後、ルツボを電気炉に入れ、昇温速度10℃/分で600℃まで昇温し、そのまま3時間保持して焼成した後、徐冷して鱗片状酸化ケイ素を得た。
実験例2
酸化ケイ素コロイド(商品名シリカドール20A)に代えて市販の酸化ケイ素(商品名シリカドール20G、日本化学工業(株)製)を用いた以外は、実験例1と同様の方法で鱗片状酸化ケイ素を得た。
結果

鱗片状酸化ケイ素の屈折率を液浸法Becke線観察により調べた。

この実験証明書によると、先願明細書に記載されている鱗片状酸化ケイ素の屈折率は1.47〜1.48であるから、本願発明における屈折率1.35〜1.44とは実験操作上の誤差を考慮しても明らかに異なっている。

5.したがって、本願発明は、先願明細書に記載されたものではない。
また、他に拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する
 
審決日 2000-03-07 
出願番号 特願昭61-315209
審決分類 P 1 8・ 161- WY (A61K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 河野 直樹池田 正人  
特許庁審判長 加藤 孔一
特許庁審判官 宮本 和子
内藤 伸一
発明の名称 メ-クアツプ化粧料  
代理人 諸石 光▲煕▼  
代理人 久保山 隆  

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