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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1014660
異議申立番号 異議1997-76110  
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-03-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1997-12-25 
確定日 2000-01-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第2626209号「電界効果トランジスタの配線構造」の請求項1ないし2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2626209号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 
理由 (1)手続の経緯
本件特許第2626209号発明は、平成2年8月13日に特許出願され、平成9年4月11日にその特許の設定登録がなされ、その後村戸良至より特許異議の申立てがなされ、平成10年6月18日付けで取消理由通知がなされ、平成10年9月7日付けで訂正請求がなされ、平成11年2月19日付けで訂正拒絶理由通知がなされ、更に平成11年6月28日付けで訂正拒絶理由通知がなされたものである。
(2)訂正の適否についての判断
ア.訂正請求に対する補正の適否について
平成10年9月7日付け訂正請求に対する平成11年5月6日付けの補正は、訂正請求に係る特許請求の範囲の請求項1及び2において、ヘテロ接合電界効果トランジスタの構造を「前記ゲート電極全体を前記ソース電極がとり囲むように配置する」点に更に減縮するとともに、発明の詳細な説明における課題を解決するための手段の項の記載を該減縮と整合するように補正するものである。
よって、上記補正は、訂正請求書の要旨を変更するものではなく、特許法第120条の4第3項で準用する特許法第131条第2項の規定に適合するから、以下平成11年5月6日付けで補正された訂正請求書に基いて検討する。
イ.訂正の内容
*訂正事項▲1▼
特許請求の範囲の請求項1及び2における、「2本以上の独立したフィンガー部分」を「2本以上8本以下の独立したフィンガー部分」と、特許請求の範囲の請求項1における「電界効果トランジスタ」及び特許請求の範囲の請求項2における「効果トランジスタ」を「ヘテロ接合電界効果トランジスタ」とそれぞれ訂正する。
*訂正事項▲2▼
特許請求の範囲の請求項1及び2において、「電界効果トランジスタに於いて、」と「前記各ゲートフィンガーに挟まれた」の間に「前記ゲート電極全体を前記ソース電極がとり囲むように配置し、」を挿入する。
*訂正事項▲3▼
特許請求の範囲の請求項2における、「準一素子」を「単一素子」と訂正する。
*訂正事項▲4▼
明細書第5頁第17〜19行及び第6頁第8〜10行の「2本以上の独立したフィンガー部分に分割されて配置されている電界効果トランジスタ」を「2本以上8本以下の独立したフィンガー部分に分割されて配置されているヘテロ接合電界効果トランジスタ」と訂正する。
*訂正事項▲5▼
明細書第5頁第19行及び第6頁第10〜11行の「に於いて、」と「前記各ゲートフィンガー」の間に「前記ゲート電極全体を前記ソース電極がとり囲むように配置し、」を挿入する。
ウ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項▲1▼は、請求項1及び2における、「2本以上の独立したフィンガー部分」を「2本以上8本以下の独立したフィンガー部分」と、「電界効果トランジスタ」を「ヘテロ接合電界効果トランジスタ」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり(明細書第5頁第17行、第6頁第8〜9行、第6頁第17行、第8頁第8〜15行及び第3図参照)、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
上記訂正事項▲2▼は、請求項1及び2におけるヘテロ接合電界効果トランジスタのゲート電極とソース電極の配置を第1図(a)及び(b)の記載に基いて、「ゲート電極全体をソース電極がとり囲むように配置」することに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
上記訂正事項▲3▼は、誤記の訂正を目的としたものである。
上記訂正事項▲4▼及び▲5▼は、請求項1及び2が訂正されたことに伴い特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るためのための訂正であり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、明りょうでない記載の釈明を目的としたものである。
エ.独立特許要件の判断
(本件発明)
訂正明細書の本件発明は、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。
「ドレイン電極、ゲート電極、ソース電極の3端子を有し、単一素子中で該ゲート電極が2本以上8本以下の独立したフィンガー部分に分割されて配置されているヘテロ接合電界効果トランジスタに於いて、前記ゲート電極全体を前記ソース電極がとり囲むように配置し、前記各ゲートフィンガーに挟まれた前記ソース電極及び前記ドレイン電極をそれぞれ電気的導通をとるために前記各ゲートフィンガー電極上以外でかつ前記各ゲートフィンガーからの引出し電極上以外の部分で前記ドレイン電極の配線金属が少なくとも前記ソース電極の一部を跨ぎ、前記ソース電極に接触することなくエアブリッヂ配線にてドレイン電極の電気的導通をとることを特徴とするヘテロ接合電界効果トランジスタの配線構造。」(以下訂正本件第1発明という。)
「ドレイン電極、ゲート電極、ソース電極の3端子を有し、単一素子中で該ゲート電極が2本以上8本以下の独立したフィンガー部分に分割されて配置されているヘテロ接合電界効果トランジスタに於いて、前記ゲート電極全体を前記ソース電極がとり囲むように配置し、前記各ゲートフィンガーに挟まれた前記ソース電極及び前記ドレイン電極をそれぞれ電気的導通をとるために前記各ゲートフィンガー電極上以外でかつ前記各ゲートフィンガーからの引出し電極上以外の部分で前記ソース電極の配線金属が少なくとも前記ドレイン電極の一部を跨ぎ、前記ドレイン電極に接触することなくエアブリッヂ配線にてソース電極の電気的導通をとることを特徴とするヘテロ接合電界効果トランジスタの配線構造。」(以下訂正本件第2発明という。)
(引用例)
訂正明細書の本件第1及び第2発明に対して、当審が平成11年6月28日付けの訂正拒絶理由で引用したInternational Electron Devices Meeting 1978 第133頁〜第135頁(以下、「引用例1」という。)には、GaAs MESFETに関する技術が図1、2と共に開示されている。そして同引用例1の第133頁左欄「要約」の第8行〜第14行には「この論文では、各々のゲートが27ミクロンのゲート幅とサブミクロンのゲート長を持つ平行に配置された28のゲートからなり、4つのゲートパッドと2つのドレインパッドを有する2セルの750ミクロンデバイスについて述べる。このデバイスは過剰なゲートソース容量を避けるために、ソース上ドレイン交差構造のエアブリッジを用いて作られている。」と記載されている。また同引用例1の第133頁右欄「デバイスの詳細」の第1行〜第15行には「図1はトランジスタのSEM写真を示す。・・・。デバイスのボンディングには、2本のゲート及び2本のドレインワイアーと4本のソースワイアー及び発振防止のためのセル間のジャンパーワイアーが必要である。・・・。図2は、ソース上ドレイン交差構造のエアブリッジについての拡大SEM写真を示す。」と記載されている。
次に引用した、特開昭53-77183号公報(以下、「引用例2」という。)には、GaAsFETのゲート電極について開示されており、同公報第2頁左上欄第18行〜右上欄第3行には、「しかしながらこのFETを大電力用にするにはゲート幅1を大にしなければならず、第6図の形状で単に幅1を大にすると非常に細長いものになり、しかもゲ一ト電極の抵抗が増大してしまう。これを避けるには第7図に示すように並列構造にすることが考えられる。」と記載されている。更に第7図から単一素子中でゲート電極が6本の独立したフィンガー部分に分割されて配置された構成が認められる。
次に引用した、IEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES,VOL.36 NO.3 MARCH 1989 第461頁〜第473頁(以下、「引用例3」という。)には、HEMT’s(ヘテロ接合電界効果トランジスタ)の特性について記載されており、その第468頁第34行〜第42行には、「エアブリッヂ-ソース(Fig.16(a))とエアブリッヂ-ドレイン(Fig.16(b))構造は表面側のプロセスで完成するように形成される。エアブリッヂ構造が同じ長さと幅を有する従来の中央給電ゲートデバイスにおけるもの[10]に比較して、4倍のファクターで実効的にゲート抵抗を減少できるように適用された。2つの異なるブリッヂ構造が、ショートチャネルデバイスの動作上でのゲート電極と寄生容量の効果を調査するために作成された。」と記載されている。更にFig.16(a)、(b)から、単一素子中でゲート電極が4本の独立したフィンガー部分に分割されて配置された構成が認められる。
次に引用した、「ガリウムヒ素」生駒俊昭他2名著 丸善株式会社昭和63年1月30日発行第139頁及び第146頁(以下、「引用例4」という。)の図4・11及び図4・21には、低雑音FETの代表的デバイスパターン及び高出力GaAsFETのパターンの一例が示されている。更に図4・11及び図4・21からゲート電極全体をソース電極がとり囲むように配置された構成が認められる。
次に引用した、「超格子ヘテロ構造デバイス」榊裕之編著 株式会社工業調査会1988年9月10日発行第344頁及び第347頁(以下、「引用例5」という。)の写真9.2及び写真9.3には、T型ゲート構造HEMTの平面パターン及びマルチ・チャネル構造高出力HEMTの平面パターンが示されている。
(対比・判断)
[訂正本件第1発明について]
訂正本件第1発明と引用例1の発明とを対比すると、両者は「ドレイン電極、ゲート電極、ソース電極の3端子を有し、単一素子中で該ゲート電極が2本以上の独立したフィンガー部分に分割されて配置されている電界効果トランジスタに於いて、前記各ゲートフィンガーに挟まれた前記ソース電極及び前記ドレイン電極をそれぞれ電気的導通をとるために前記各ゲートフィンガー電極上以外でかつ前記各ゲートフィンガーからの引出し電極上以外の部分で前記ドレイン電極の配線金属が少なくとも前記ソース電極の一部を跨ぎ、前記ソース電極に接触することなくエアブリッヂ配線にてドレイン電極の電気的導通をとる電界効果トランジスタの配線構造」の点で一致し、次の点で相違している。
(a)訂正本件第1発明ではゲート電極が2本以上8本以下の独立したフィンガー部分に分割されているのに対し、引用例1の発明ではゲート電極が8本を越える28本の独立したフィンガー部分に分割されている点。
(b)訂正本件第1発明では電界効果トランジスタがヘテロ接合電界効果トランジスタであるのに対し、引用例1の発明ではMESFETである点。
(c)訂正本件第1発明ではトランジスタのゲート電極とソース電極の配置を「ゲート電極全体をソース電極がとり囲むように配置」しているのに対し、引用例1の発明では図1から明らかなようにMESFETのドレイン電極とソース電極の配置を「ドレイン電極全体をソース電極がとり囲むように配置」している点。
<相違点(a)について>
引用例2、3にゲート電極が6本或いは4本の独立したフィンガー部分に分割された構造が開示されておりまた8本以下とした点に臨界的意義が認められない。しかも引用例2における「しかしながらこのFETを大電力用にするにはゲート幅lを大にしなければならず、第6図の形状で単に幅lを大にすると非常に細長いものになり、しかもゲ一ト電極の抵抗が増大してしまう。これを避けるには第7図に示すように並列構造にすることが考えられる。」との記載に照らせば、ゲート電極を2本以上8本以下の独立したフィンガー部分に分割する点は当業者が適宜なし得たものと認められる。
<相違点(b)について>
引用例4、5に見るように電極レイアウトのような基板内部の構造と直接関係しない技術であるMESFETで用いられるπ形や櫛形のゲート構造がそのままヘテロ接合電界効果トランジスタに用いられることは周知の技術であるから、MESFETのゲート構造をヘテロ接合電界効果トランジスタのゲート構造に適用することは当業者が格別の創意工夫をすることなくなし得たものと認められる。
<相違点(c)について>
引用例4の図4・11及び図4・21には、ゲート電極全体をソース電極がとり囲むように配置された構成が認められしかもドレイン電極とゲート電極が対向して配置される場合にソース電極の引出方向は、ゲート電極側とドレイン電極側のいづれか一方に配置されることになるから、引用例1の発明におけるドレイン電極全体をソース電極がとり囲むように配置してソース電極をドレイン電極側に引出すのに代えて、ゲート電極全体をソース電極がとり囲むように配置してソース電極をゲート電極側に引出すことは当業者が格別の創意工夫をすることなくなし得たものと認められる。
[訂正本件第2発明について]
次に訂正本件第2発明と引用例1の発明とを対比すると、両者は「ドレイン電極、ゲート電極、ソース電極の3端子を有し、単一素子中で該ゲート電極が2本以上の独立したフィンガー部分に分割されて配置されている電界効果トランジスタに於いて、前記各ゲートフィンガーに挟まれた前記ソース電極及び前記ドレイン電極をそれぞれ電気的導通をとるために前記各ゲートフィンガー電極上以外でかつ前記各ゲートフィンガーからの引出し電極上以外の部分で一方の電極の配線金属が少なくとも他方の電極の一部を跨ぎ、他方の電極に接触することなくエアブリッヂ配線にて一方の電極の電気的導通をとる電界効果トランジスタの配線構造」の点で一致し、次の点で相違している。
(d)訂正本件第2発明ではゲート電極が2本以上8本以下の独立したフィンガー部分に分割されているのに対し、引用例1の発明ではゲート電極が8本を越える28本の独立したフィンガー部分に分割されている点。
(e)訂正本件第2発明では電界効果トランジスタがヘテロ接合電界効果トランジスタであるのに対し引用例1の発明ではMESFETである点。
(f)訂正本件第2発明ではヘテロ接合電界効果トランジスタのゲート電極とソース電極の配置を「ゲート電極全体をソース電極がとり囲むように配置」しているのに対し、引用例1の発明では図1から明らかなようにMESFETのドレイン電極とソース電極の配置を「ドレイン電極全体をソース電極がとり囲むように配置」している点。
(g)訂正本件第2発明では一方の電極がソース電極、他方の電極がドレイン電極であり、即ちソース電極の配線金属が少なくともドレイン電極の一部を跨ぎ、ドレイン電極に接触することなくエアブリッヂ配線にてソース電極の電気的導通をとるのに対し、引用例1の発明では図1から明らかなように一方の電極がドレイン電極、他方の電極がソース電極であり、即ちMESFETのドレイン電極の配線金属が少なくともソース電極の一部を跨ぎ、ソース電極に接触することなくエアブリッヂ配線にてドレイン電極の電気的導通をとる点。
<相違点(d)〜(f)について>
相違点(d)〜(f)は、前記相違点(a)〜(c)と同様のものであるから、上記相違点(a)〜(c)について検討したと同様の理由により当業者が適宜なし得たものと認められる。
<相違点(g)について>
引用例3には、ソース・ドレイン電極の配線金属が交差するに当たり、ソース電極の配線金属がドレイン電極の一部を跨ぎ、ドレイン電極に接触することなくエアブリッヂ配線にてソース電極の電気的導通をとるようにするエアブリッヂ-ソース(Fig.16(a))とソース電極の配線金属がドレイン電極の一部を跨ぎ、ドレイン電極に接触することなくエアブリッヂ配線にてソース電極の電気的導通をとるエアブリッヂ-ドレイン(Fig.16(b))の両方の例が開示されている。
そして引用例1にあるようにドレイン電極の配線金属が少なくともソース電極の一部を跨ぎ、ソース電極に接触することなくエアブリッヂ配線にてドレイン電極の電気的導通をとるエアブリッヂ-ドレインに代えて、エアブリッヂ-ソースを採用してソース電極の配線金属が少なくともドレイン電極の一部を跨ぎ、ドレイン電極に接触することなくエアブリッヂ配線にてソース電極の電気的導通をとるようにすることは当業者が格別の創意工夫をすることなくなし得たものと認められる。
したがって、訂正後の本件請求項1及び2に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明である
よって、上記訂正の請求は、特許法第120条の4第3項で準用する特許法第126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
なお平成11年6月28日付けで上記と同趣旨の訂正拒絶理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、請求人からは何らの応答もないものである。
(3)特許異議の申立てについての判断
ア.申立ての理由の概要
申立人は、甲第1号証としてInternational Electron Devices Meeting 1978 第133頁〜第135頁(「引用例1」に相当)を提示して請求項1に係る発明(本件第1発明という)は、甲第1号証に記載された発明であって本件第1発明に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであり、また請求項2に係る発明(本件第2発明という)は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって本件第2発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、特許を取り消すべきものと主張している。
イ.特許明細書の本件発明
特許明細書の本件発明は、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。
「ドレイン電極、ゲート電極、ソース電極の3端子を有し、単一素子中で該ゲート電極が2本以上の独立したフィンガー部分に分割されて配置されている電界効果トランジスタに於いて、前記各ゲートフィンガーに挟まれた前記ソース電極及び前記ドレイン電極をそれぞれ電気的導通をとるために前記各ゲートフィンガー電極上以外でかつ前記各ゲートフィンガーからの引出し電極上以外の部分で前記ドレイン電極の配線金属が少なくとも前記ソース電極の一部を跨ぎ、前記ソース電極に接触することなくエアブリッヂ配線にてドレイン電極の電気的導通をとることを特徴とする電界効果トランジスタの配線構造。」(以下本件第1発明という。)
「ドレイン電極、ゲート電極、ソース電極の3端子を有し、単一素子(「準一素子」とあるは「単一素子」の誤記と認定した)中で該ゲート電極が2本以上の独立したフィンガー部分に分割されて配置されている電界効果トランジスタに於いて、前記各ゲートフィンガーに挟まれた前記ソース電極及び前記ドレイン電極をそれぞれ電気的導通をとるために前記各ゲートフィンガー電極上以外でかつ前記ゲートフィンガーからの引出し電極上以外の部分で前記ソース電極の配線金属が少なくとも前記ドレイン電極の一部を跨ぎ、前記ドレイン電極に接触することなくエアブリッヂ配線にてソース電極の電気的導通をとることを特徴とする電界効果(「効果」とあるは「電界効果」の誤記と認定した。)トランジスタの配線構造。」(以下本件第2発明という。)
ウ.甲第1号証記載の発明
甲第1号証は、引用例1と同一のものであり、(2)エ.独立特許要件の判断(引用例)の項に記載の発明が記載されている。
エ.対比・判断
特許明細書の本件第1発明と甲第1号証記載の発明とを対比すると甲第1号証には、本件第1発明の構成が全て記載されている。
また特許明細書の本件第2発明と甲第1号証記載の発明とを対比すると、本件第2発明と甲第1号証記載の発明とは(2)エ.独立特許要件の判断(対比・判断)の項で指摘した相違点(g)の点で相違しているが、ソース・ドレイン電極の配線金属が交差するに当たり、ソース電極の配線金属がドレイン電極の一部を跨ぎ、ドレイン電極に接触することなくエアブリッヂ配線にてソース電極の電気的導通をとるようにするエアブリッヂ-ソース構造及びソース電極の配線金属がドレイン電極の一部を跨ぎ、ドレイン電極に接触することなくエアブリッヂ配線にてソース電極の電気的導通をとるエアブリッヂ-ドレイン構造はいづれも当業者にとって周知なものであるから(例えばIEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES,VOL.36 NO.3 MARCH 1989 第461頁〜第473頁におけるFig.16(a)(b)参照)、引用例1にあるようにドレイン電極の配線金属が少なくともソース電極の一部を跨ぎ、ソース電極に接触することなくエアブリッヂ配線にてドレイン電極の電気的導通をとるエアブリッヂ-ドレインに代えて、エアブリッヂ-ソースを採用してソース電極の配線金属が少なくともドレイン電極の一部を跨ぎ、ドレイン電極に接触することなくエアブリッヂ配線にてソース電極の電気的導通をとるようにすることは当業者が格別の創意工夫をすることなくなし得たものと認められる。
オ.結び
以上のとおりであるから、本件第1発明に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、また本件第2発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、本件発明についての特許は特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-12-10 
出願番号 特願平2-213891
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (H01L)
P 1 651・ 113- ZB (H01L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 河合 章  
特許庁審判長 内野 春喜
特許庁審判官 松本 悟
関根 恒也
登録日 1997-04-11 
登録番号 特許第2626209号(P2626209)
権利者 日本電気株式会社
発明の名称 電界効果トランジスタの配線構造  
代理人 福田 修一  
代理人 河合 信明  
代理人 京本 直樹  

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