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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B31B |
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管理番号 | 1014671 |
異議申立番号 | 異議1999-70778 |
総通号数 | 11 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-11-14 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-03-03 |
確定日 | 2000-02-28 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2793774号「糊付け装置」の請求項1ないし2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2793774号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件特許第2793774号の発明についての出願は、平成6年4月30日に出願され、平成10年6月19日にその発明について特許の設定登録がなされ、その後、特許異議申立人、岸本能秀より特許異議申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年8月3日に訂正請求がなされ、訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年11月22日に意見書が提出されたものである。 II.訂正の適否 (1)訂正事項 上記訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的として、請求項1を次のとおりに訂正することを求めるものである。 「【請求項1】帯状の連続紙の搬送経路に、同連続紙の設定された区画毎に所定のパターンに糊付けする糊付け機構と、前記連続紙の糊付けされた区画を順次乾燥させる乾燥機構を備えた糊付け装置において、前記糊付け機構を、所定の糊液を収容する収容浴と、外周に前記パターンに対応する凹状パターンを備え前記収容浴上にて回転可能に支持されて下側の一部が同収容浴に浸漬する版ローラと、同版ローラの外周にて回転可能に支持されて同版ローラの外周に圧接し同版ローラとの間を搬送される連続紙を同版ローラとともに挟持する押圧ローラと、前記版ローラの外周に摺接して前記凹状パターンを除く外周面に付着する糊液を除去するドクターブレードと、前記連続紙の搬送停止時において、前記押圧ローラを前記版ローラの外周から離間させた状態で前記版ローラを回転させるアイドリング機構とを有する構成とし、前記乾燥機構を高周波加熱炉で構成し、前記搬送経路にその上流側から第1の糊付け機構、第1の乾燥機構、第2の糊付け機構、第2の乾燥機構の順序で配設すると共に、第1の糊付け機構の上方に第1の乾燥機構を配設し、第2の糊付け機構の上方に第2の乾燥機構を配設し、かつ第1の乾燥機構と第2の乾燥機構を並列に配設し、第1の糊付け機構で前記連続紙の表裏のいずれか一方の面に糊付けし、第2の糊付け機構で前記連続紙の表裏のいずれか他方の面に糊付けすることを特徴とする糊付け機構。」 すなわち、請求項1に 「搬送停止時において、前記押圧ローラを前記版ローラの外周から離間させた状態で前記版ローラを回転させるアイドリング機構とを有する」点、及び 「前記乾燥機構を高周波加熱炉で構成し、前記搬送経路にその上流側から第1の糊付け機構、第1の乾燥機構、第2の糊付け機構、第2の乾燥機構の順序で配設すると共に、第1の糊付け機構の上方に第1の乾燥機構を配設し、第2の糊付け機構の上方に第2の乾燥機構を配設し、かつ第1の乾燥機構と第2の乾燥機構を並列に配設し、第1の糊付け機構で前記連続紙の表裏のいずれか一方の面に糊付けし、第2の糊付け機構で前記連続紙の表裏のいずれか他方の面に糊付けする」点を付加する訂正を求めるものである。 (2)訂正の適否に関する判断 上記の訂正事項に関する構成は、特に、『第1の糊付け機構と第2の糊付け機構を有する』ことにより、連続紙の両面に糊付けするという目的(又は作用効果)を実現しようとする構成を包含していることは明らかである。この点について、特許権者は、平成11年11月22日付特許異議意見書において「両面に糊付けするにしても糊量を一定かつ厚みを一定にするという訂正前の目的の範疇にあることには変わりありません」と主張する。しかしながら、『第1の糊付け機構と第2の糊付け機構を有する』という構成自体が、連続紙の両面に糊付けするという目的を実現するための構成に他ならず、それ以外の目的を実現するものではない。すなわち、上記訂正事項におけるに『第1の糊付け機構と第2の糊付け機構を有する』構成は、「糊量を一定かつ厚みを一定にする」という目的およびこの目的の実現のため構成とは、何の関連もない別個の独立した構成である。 しかも、連続紙の両面に糊付けするという目的は、訂正前の明細書に記載の発明の目的、すなわち、「構成ローラの本数が少なくて小型であり、その上連続紙に糊付けされて付与されるパターンの糊量が一定でかつ一定の厚みとなる糊付け装置を提供する」という目的とは、明らかに異なるものである。 よって、この訂正は実質上特許請求の範囲を変更するものである。 したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。 III.特許異議申立についての判断 (1)請求項1および2に係る発明 上記のように上記訂正は認められないものであるから、特許第2793774号の請求項1および2に係る発明は、特許明細書および図面の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1および2に記載された次の事項によって特定されるとおりのものである。 「【請求項1】帯状の連続紙の搬送経路に、同連続紙の設定された区画毎に所定のパターンに糊付けする糊付け機構と、前記連続紙の糊付けされた区画を順次乾燥させる乾燥機構を備えた糊付け装置において、前記糊付け機構を、所定の糊液を収容する収容浴と、外周に前記パターンに対応する凹状パターンを備え前記収容浴上にて回転可能に支持されて下側の一部が同収容浴に浸漬する版ローラと、同版ローラの外周にて回転可能に支持されて同版ローラの外周に圧接し同版ローラとの間を搬送される連続紙を同版ローラとともに挟持する押圧ローラと、前記版ローラの外周に摺接して前記凹状パターンを除く外周面に付着する糊液を除去するドクターブレードとを有する構成としたことを特徴とする糊付け機構。 【請求項2】請求項1に記載の糊付け装置において、前記糊付け機構が前記版ローラの回転速度を制御して同版ローラの回転速度を前記連続紙の搬送速度と同期させる制御手段を備えていることを特徴とする糊付け装置。」 (2)引用例の記載 これに対して、当審が通知した取消理由に引用した特公平3-27274号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には下記の事項が記載されている。 ▲1▼「第4図中12は機台で、該機台12上に接着剤槽13を設け、該槽13は塗布ロール収納部14と接着剤供給部15が波立防止壁16によって部分的に仕切られていて、該供給部15には蓋17が設けられている。蓋17を開けて接着剤供給部15に液状の接着剤を供給し、波立防止壁16の下を通して塗布ロール収納部14に接着剤を供給する。又接着剤槽13には接着剤を加温する為のヒータを取付けてある。塗布ロール18が接着剤層13の塗布ロール収納部14内に上部一部を出して回転自在に取付けられていて、該ロール18上部に先端を接してドクターナイフ19が設けられている。又、押圧ロール20及び冷却ロール21が機台12上に止金22に依って固定されたロール支持用の2本の支柱23に依って支持されている。 第5図には塗布ロール18が示されており、該ロール18は円周方向及び長手方向に接着剤溜り溝24,25を設けてある。接着剤溜り溝24は製袋用シート1の袋側部に該当する部分の接着剤塗布用のものであり、接着剤溜り溝25は製袋用シート1の袋底部に該当する部分の接着剤塗布用のものである。溜り溝24,25は単なる凹形の一体の溝でも良いがこれらに限られるものではなく、×印の溝を連ねたものでも、正方形の溝を連ねたものでも良く、塗布部分に接着剤を満遍無く塗布出来る形状を有していれば良い。又、長手方向に沿った接着剤溜り溝25は、製袋用シート1(以下シートという)の袋底部該当部の境界部7に該当する部分の塗布を行う部分の溝をより深くした2カ所の深溝部26と、その他の部分である浅溝部27からなっている。 浅溝部27の深さとしては好ましくは40〜60μであり、深溝部26の深さとしては好ましくは90〜110μである。又、深溝部26の幅としては10〜20mmが好ましい。塗布ロール18の材質としては一般的なグラビア印刷に用いられてるグラビアロールと同じもので良い。」(第2頁左欄第41行〜右欄第34行、なお、第4,5図参照) また、当審が通知した取消理由に引用した特開昭51-118563号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には下記の事項が記載されている。 ▲2▼「粘着剤貯留槽(31)からローラ(32)を介して粘着剤(104)が塗着された転着ローラ(33)とドラム(23)によりフラップ(101)が挟まれつつ移動する際に、ローラ(33)上の粘着剤(104)が接着面(103)に転着塗布される(第3図C)。」 (第2頁右上欄第7〜12行) ▲3▼「第1の乾燥手段(5)を構成する電熱ヒータ内蔵の熱風発生機または赤外線ランプ等の多数の乾燥機(53)(54)(55)(56)によって非粘着剤(105)と粘着剤(104)が適度に乾燥される。」 (第2頁左下欄第12〜15行) ▲4▼「この間に第2の乾燥手段(7)の熱風発生機または赤外線ランプ等の乾燥機(87)(88)で粘着剤(104)が適度に乾燥される。」 (第3頁左上欄第16〜18行) また、当審が通知した取消理由に引用した特開平2-172745号公報(以下、「引用刊行物3」という。)には下記の事項が記載されている。 ▲5▼「本発明においては、印刷ユニットそれぞれでの給紙速度がニップローラによって一定速として設けられている条件下で、給紙初期時にニップローラパルス信号とシリンダーパルス信号とを見当制御部が受け、この見当制御部に設定入力されたシリンダー径と前記シリンダーパルス信号とによってグラビアシリンダーの周面速度を判定し、前記ニップローラパルス信号に基づきながら、ニップローラの周面速度とグラビアシリンダーの周面速度とを同速となるように制御する。」(第4頁右上欄第17行〜左下欄第6行) (3)対比・判断 (i)請求項1に係る発明について ここで、本願の請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)と、上記引用刊行物1に記載の発明(以下、「引用発明1」という。)を対比する。 第4図を参酌すれば、上記▲1▼の「製袋用シート」はシート供給装置9から帯状ウエブとして供給されるものであるから本件発明1の「帯状の連続紙」に相当し、上記▲1▼の塗布ロール18によって搬送経路上の製袋用シートに糊付けしていることが明確なので、「帯状の連続紙の搬送経路に」「糊付け機構」を備えていることが記載されている。そして、塗布ロール18が接着剤溜り溝24,25を有することから、「連続紙の設定された区画毎に所定のパターンに糊付けする」ものであることも明らかである。また、上記▲1▼の接着剤槽13は、接着剤を塗布ロールに供給する部材であり、本件発明1の「所定の糊液を収容する収容浴」に相当する。上記▲1▼の接着剤溜り溝24.25が、本件発明1のローラ外周の「凹状パターン」に相当し、糊付けのパターンに対応しているものであることは明らかである。上記▲1▼の「塗布ロール18が接着剤層13の塗布ロール収納部14内に上部一部を出して回転自在に取付けられていて」の記載から、該「塗布ロール18」が本件発明1の「収容浴上にて回転可能に支持されて下側の一部が同収容浴に浸漬する版ローラ」に相当することは明確であり、第4図を参酌すれば上記▲1▼の「押圧ロール20」および「ドクターナイフ19」が、それぞれ、本件発明1の「同版ローラの外周にて回転可能に支持されて同版ローラの外周に圧接し同版ローラとの間を搬送される連続紙を同版ローラとともに挟持する押圧ローラ」および「版ローラの外周に摺接して前記凹状パターンを除く外周面に付着する糊液を除去するドクターブレード」に相当することも明らかである。 したがって、本件発明1と引用発明1は、 「帯状の連続紙の搬送経路に、同連続紙の設定された区画毎に所定のパターンに糊付けする糊付け機構を備えた糊付け装置において、前記糊付け機構を、所定の糊液を収容する収容浴と、外周に前記パターンに対応する凹状パターンを備え前記収容浴上にて回転可能に支持されて下側の一部が同収容浴に浸漬する版ローラと、同版ローラの外周にて回転可能に支持されて同版ローラの外周に圧接し同版ローラとの間を搬送される連続紙を同版ローラとともに挟持する押圧ローラと、前記版ローラの外周に摺接して前記凹状パターンを除く外周面に付着する糊液を除去するドクターブレードとを有する構成としたことを特徴とする糊付け機構。」である点で一致する。 そして、本件発明1が「連続紙の糊付けされた区画を順次乾燥させる乾燥機構」を備えているのに対して、引用発明1はそれを備えていない点で相違している。 上記相違点について検討する。 上記▲2▼の記載より、引用刊行物2に記載の発明(以下「引用発明2」という。)は、引用発明1と同様の糊付け装置の技術分野に属するものであることがわかり、上記▲3▼および▲4▼より、引用発明2は糊付け部を乾燥させる「乾燥装置」を有するものであることがわかる。 したがって、上記相違点は引用発明1の技術分野においても公知の技術であり、当業者が必要に応じて該公知技術を採用し本件発明1の構成とすることに格別の困難性は認められない。 すなわち、請求項1に係る発明は、上記引用刊行物1及び引用刊行物2に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (ii)請求項2に係る発明について 請求項2に係る発明(以下、「本件発明2」という。)は、請求項1に係る発明に対して、糊付け機構が「版ローラの回転速度を制御して同版ローラの回転速度を連続紙の搬送速度と同期させる制御手段」を備えている点をさらに限定したものである。 したがって、本件発明2と引用発明1を対比すると、請求項1に係る発明について検討したときに抽出した相違点(相違点1)以外には、次の点でのみ相違する。 すなわち、本件発明2の糊付け機構が「版ローラの回転速度を制御して同版ローラの回転速度を連続紙の搬送速度と同期させる制御手段」を備えているのに対し、引用発明1はそのような制御装置を備えていない点(相違点2)で両者は相違する。 上記相違点2について検討する。 上記記載▲5▼より、グラビア印刷においてではあるが、上記相違点2に相当する構成は引用刊行物3にも記載されているように公知の技術であるといえる。そして、引用発明1の糊付け装置とグラビア印刷機の構成、機能上の類似性に鑑みれば、グラビア印刷における技術を引用発明1の糊付け装置に適用すること格別の困難性は認められない。さらに、上記▲1▼には「塗布ロール18の材質としては一般的なグラビア印刷に用いられてるグラビアロールと同じもので良い。」と記載されており、引用発明1においてはグラビア印刷の技術を適用することも示唆されているものと認められる。したがって、上記相違点2に係るグラビア印刷における上記公知技術を、上記相違点1に係る公知技術とともに、引用発明1の糊付け装置に適用し、本件発明2の構成とすることに格別の困難性は認められない。 すなわち、請求項2に係る発明は、上記引用刊行物1乃至引用刊行物3に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 IV.むすび 以上のとおり、この出願の請求項1に係る発明および請求項2に係る発明は、ともに、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論の通り審決する。 |
異議決定日 | 2000-01-04 |
出願番号 | 特願平6-114142 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZB
(B31B)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 池田 貴俊 |
特許庁審判長 |
佐藤 雪枝 |
特許庁審判官 |
森林 克郎 鈴木 美知子 |
登録日 | 1998-06-19 |
登録番号 | 特許第2793774号(P2793774) |
権利者 | 株式会社アイチビジネスフォーム 南精機株式会社 |
発明の名称 | 糊付け装置 |
代理人 | 三宅 始 |
代理人 | 佐藤 嘉明 |
代理人 | 浜本 忠 |
代理人 | 高橋 邦彦 |