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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H01C 審判 全部申し立て 出願日、優先日、請求日 H01C |
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管理番号 | 1014740 |
異議申立番号 | 異議1998-70246 |
総通号数 | 11 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1992-06-11 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-01-22 |
確定日 | 2000-04-06 |
異議申立件数 | 2 |
事件の表示 | 特許第2633721号「面実装用ネットワーク型電子部品」の特許について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2633721号の特許を取り消す。 |
理由 |
I.手続きの経緯 本件特許第2633721号発明は、平成2年10月29日に特許出願され、原審において平成7年5月9日付けで拒絶理由通知がなされ、それに対して平成7年8月8日付けで意見書と手続補正書が提出されたが、平成7年9月22日付けで拒絶査定がなされ、審判請求された後、平成7年12月15日付けで手続補正書が提出され、平成9年4月25日にその特許の設定登録がなされ、その後、藤仲次、本田辰夫より特許異議の申立てがなされ、当審において取消理由通知がなされ、それに対して意見書の提出がされたものである。 II.本件発明 (1)要旨変更についての判断 平成7年12月15日付けで提出した手続補正書は、出願当初の明細書の特許請求の範囲の 「基板上に、端子部を含むコモン電極用導体パターンと複数個の端子部を含む個別電極用導体パターンが形成され、コモン電極導体パターンと各個別電極パターン間に抵抗膜層及びもしくは誘電体膜層が形成され、各導体パターンの端子部が露出して、前記基板の相対する二辺の辺縁にそれぞれ一定間隔をおいて配置されるネットワーク型電子部品において、 前記コモン電極導体パターンは、内部導体パターンで共通に接続される少なくとも2個の端子部を備え、これら端子部を互いに前記二辺の逆の端部から等距離の位置に配置してなることを特徴とするネットワーク型電子部品。」を 平成7年8月8日付け手続補正書で、 「基板上に、端子部を含むコモン電極用導体パターンと複数個の端子部を含む個別電極用導体パターンが形成され、コモン電極導体パターンと各個別電極パターン間に抵抗膜層及び/又は誘電体膜層が形成され、各導体パターンの端子部が露出して、前記基板の相対する二辺の辺縁にそれぞれ一定間隔をおいて配置される面実装用ネットワーク型電子部品において、 前記コモン電極導体パターンは、内部導体パターンで共通に接続される少なくとも2個の端子部を備え、これら端子部を互いに前記二辺の逆の端部から等距離の位置に配置してなることを特徴とする面実装用ネットワーク型電子部品。」と補正したものを更に、 「基板上に、端子部を含むコモン電極用導体パターンと複数個の端子部を含む個別電極用導体パターンが形成され、コモン電極用導体パターンと各個別電極用導体パターン間に抵抗膜層及び/又は誘電体膜層が電気的に接続され、各導体パターンの端子部が露出して、前記基板の相対する二辺の辺縁にそれぞれ等間隔をおいて配置される面実装用ネットワーク型電子部品において、 前記基板は四隅に角部を有し、前記コモン電極用導体パターンは、少なくとも2個の端子部と、この端子部を共通に接続する導体パターン部とを有し、これら端子部を互いに前記二辺の逆の端部から等距離の位置に配置してなることを特徴とする面実装用ネットワーク型電子部品。」と補正しようとするものである。 ここで、問題となるのは、特許請求の範囲において、基板の形状を「基板は四隅に角部を有し」と限定し、その技術的意義として発明の詳細な説明の欄に「角部を画像認識して容易に自動実装できる」という効果を付加した点にある。 そこで、この点につき検討すると、 たしかに、本件出願当初の図面には、基板の四隅が角部になっている点が記載されているが、本件出願当初の明細書には、本件発明の目的として、「この発明は、上記問題点に着目してなされたものであって、搭載方向が、正逆いずれでも、誤配線を生じないネットワーク型電子部品を提供することを目的としている。」(明細書第3頁第4〜7行目)との記載があり、 また、基板に関する記載としては、 その実施例に関して、 「この実施例ネットワーク抵抗器1は、アルミナセラミック等の基体2の相対する長辺部2a、2bに、複数の端子部3-1、3-2、…、3-10が等間隔で設けられている。このうち、端子部3-5と3-10は基体2の互いに逆の端部2c、2dから等間隔の位置に配置されるコモン用電極の端子部であり、内部で導体パターン4で共通に連結されている。」(明細書第4頁第10〜17行目)との記載があり、 また、その発明の効果に関して、 「この発明によれば、コモン端子部を基板の端部から互いに逆方向に等距離の位置に2つのコモン端子部を設けているので、ネットワークの配置方向を気にすることなく、実装することができる。 また、電子部品を実装する場合に、角度がずれていても、従来の場合、180°の修正が必要であるが、本願発明においては、90°以内ということになり、非常に扱いが便利となる。」(明細書第9頁第3〜10行目)との記載があるのみであり、基板の四隅を角部とすること及びその技術的意義については何ら記載されていなかったものである。 したがって、図面において、基板の四隅に角部を有する点が記載されているからといって、それは基板の輪郭を正確に表しているのではなく、単に基板の所在を表しているにすぎないものであり、基板の四隅に角部を有するようにして、角部を画像認識して容易に自動実装できるようにしたという技術的思想までは記載されているとはいえず、また、出願当初の明細書及び当該図面の記載からそのような技術的思想が当業者にとって自明な事項ともいえない。 したがって、基板の形状を「基板は四隅に角部を有し」と限定し、その技術的意義として発明の詳細な説明の欄に「角部を画像認識して容易に自動実装できる」という効果を付加することは、本件出願当初の明細書の要旨を変更するものである。 よって、本件出願は、特許法第40条の規定により、上記基板の形状を限定する補正をした、平成7年12月15日にされたものとみなす。 (2)本件発明の構成 本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。 「基板上に、端子部を含むコモン電極用導体パターンと複数個の端子部を含む個別電極用導体パターンが形成され、コモン電極用導体パターンと各個別電極用導体パターン間に抵抗膜層及び/又は誘電体膜層が電気的に接続され、各導体パターンの端子部が露出して、前記基板の相対する二辺の辺縁にそれぞれ等間隔をおいて配置される面実装用ネットワーク型電子部品において、 前記基板は四隅に角部を有し、前記コモン電極用導体パターンは、少なくとも2個の端子部と、この端子部を共通に接続する導体パターン部とを有し、これら端子部を互いに前記二辺の逆の端部から等距離の位置に配置してなることを特徴とする面実装用ネットワーク型電子部品。」 III.引用刊行物記載の発明 先の取消理由通知において引用した刊行物4(特開平4-165603号公報)(以下、「第1引用例」という。)及び刊行物2(実願昭63-80778号(実開平2-2896号)のマイクロフィルム)(以下、「第2引用例」という。)には、それぞれ次のような技術的事項が記載されている。 (第1引用例) 「基板上に、端子部を含むコモン電極用導体パターンと複数個の端子部を含む個別電極用導体パターンが形成され、コモン電極導体パターンと各個別電極パターン間に抵抗膜層及びもしくは誘電体膜層が形成され、各導体パターンの端子部が露出して、前記基板の相対する二辺の辺縁にそれぞれ一定間隔をおいて配置されるネットワーク型電子部品において、 前記コモン電極導体パターンは、内部導体パターンで共通に接続される少なくとも2個の端子部を備え、これら端子部を互いに前記二辺の逆の端部から等距離の位置に配置してなることを特徴とするネットワーク型電子部品。」(特許請求の範囲)が図面とともに記載されており、該ネットワーク型電子部品の実装方法に関して、 「この実施例ネットワーク抵抗器1を配線基板8に実装する場合、第2図に示すように、配線回路基板8に設けられる配線パッド9-1、9-2、…、9-10にネットワーク抵抗器1の端子部3-1、3-2、…、3-10が対応するように配置し、各パッドと、端子部をハンダ付けすることになる。」(公報第2頁左下欄第16行目〜右下欄第1行目)(以下、「記載A」という。)との記載がある。 (第2引用例) 電子部品の実装装置が記載されており、その実施例に関して、 「かかる認識作業は、電子部品の一つの角部についてのみ行ってもよいが、XY移動装置50を駆動してカメラ54を移動させることにより、4つの角部についてできるだけ多く行った方が、認識作業に要する時間は長くなるが、より正確に電子部品の位置ずれを検出して実装精度を上げることができる。」(明細書第8頁第20行目〜第9頁第6行目)との記載が図面の記載とともにある。 してみると、上記第2引用例には、 電子部品(本件発明の「基板」に相当する。)に4つの角部(本件発明の「四隅に角部」に相当する。)を設けて、実装精度を上げること、 が記載されているものと認められる。 IV.対比・判断 本件発明(以下、「前者」という。)と第1引用例に記載された発明(以下、「後者」という。)とを対比すると、後者の「コモン電極導体パターン」は前者の「コモン電極用導体パターン」に相当し、以下、「各個別電極パターン」は「各個別電極用導体パターン」に、「一定間隔をおいて」は「等間隔をおいて」に、それぞれ相当する。 また、後者の「記載A」より後者の「ネットワーク型電子部品」は前者の「面実装ネットワーク型電子部品」に相当するものと認められ、 更に、後者の「内部導体パターンで共通に接続される少なくとも2個の端子部を備え」は文言上表現が相違するのみで前者の「少なくとも2個の端子部と、この端子部を共通に接続する導体パターン部とを有し」に相当することが明らかである。 したがって、両者は、 基板上に、端子部を含むコモン電極用導体パターンと複数個の端子部を含む個別電極用導体パターンが形成され、コモン電極用導体パターンと各個別電極用導体パターン間に抵抗膜層及び/又は誘電体膜層が電気的に接続され、各導体パターンの端子部が露出して、前記基板の相対する二辺の辺縁にそれぞれ等間隔をおいて配置される面実装用ネットワーク型電子部品において、 前記コモン電極用導体パターンは、少なくとも2個の端子部と、この端子部を共通に接続する導体パターン部とを有し、これら端子部を互いに前記二辺の逆の端部から等距離の位置に配置してなることを特徴とする面実装用ネットワーク型電子部品、 である点で一致し、次の点において相違する。 前者は、基板の四隅に角部を有しているのに対して、後者は、基板の四隅の形状が明らかでない点。 そこで、上記相違点について検討すると、 上記第2引用例には、基板の四隅に角部を設けて、電子部品の実装精度を上げること、 が記載されているから、上記第1引用例に記載された面実装用ネットワーク型電子部品の自動実装の精度を上げるために、上記第2引用例に記載された技術手段を採用して、本件発明のようにすることは、当業者であれば容易になし得る程度のものと認められ、また、それによる効果も当業者であれば予測することができる範囲内のものと認められる。 V.むすび 以上のとおり、本件発明は上記第1引用例及び第2引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1998-12-04 |
出願番号 | 特願平2-293097 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Z
(H01C)
P 1 651・ 03- Z (H01C) |
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 西山 昇 |
特許庁審判長 |
蓑輪 安夫 |
特許庁審判官 |
本郷 徹 久保田 健 |
登録日 | 1997-04-25 |
登録番号 | 特許第2633721号(P2633721) |
権利者 | ローム 株式会社 |
発明の名称 | 面実装用ネットワーク型電子部品 |
代理人 | 根本 恵司 |
代理人 | 畑川 清泰 |
代理人 | 澁谷 孝 |
代理人 | 宮田 信道 |
代理人 | 三谷 浩 |