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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  H01L
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1014818
異議申立番号 異議1999-73819  
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-07-21 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-10-12 
確定日 2000-03-29 
異議申立件数
事件の表示 特許第2880892号「半導体装置の製造方法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2880892号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 一.手続の経緯
本件特許第2880892号の発明は、平成5年12月24日に出願され、平成11年1月29日に設定登録され、その後、平成11年10月12日にセイコーエプソン株式会社より特許異議申立がなされ、平成12年2月17日付で取消理由通知をし、その指定期間内である平成12年3月2日に訂正請求がなされたものである。
二.訂正の適否の判断
(イ)訂正の要旨
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1を
「MIS型トランジスタのソース・ドレイン領域及びこれらの少なくとも一方に連設する拡散配線領域をシリコン基板内に設けた半導体装置を製造する方法において、(a)シリコン基板上にゲート絶縁膜及びゲート電極を形成する工程と、(b)上記シリコン基板上の全面に気相成長法により、基板温度700℃以上の温度を用いてシリコン酸化膜を堆積させる工程と、(c)上記シリコン酸化膜をエッチバックして前記ゲート電極の側部に残存させてサイドウオールを形成する工程と、(d)前記ゲート電極上と前記シリコン基板上の酸化膜を除去する工程と、(e)前記ゲート電極及びソース・ドレイン領域上に導体膜を自己整合的に選択形成する工程とをこの順に具備したことを特徴とする半導体の製造方法。」と訂正する。
(2)訂正事項b
段落【0015】を
「【課題を解決するための手段】上記課題を達成するために、本発明に係る半導体装置の製造方法は、MIS型トランジスタのソース・ドレイン領域及びこれらの少なくとも一方に連設する拡散配線領域をシリコン基板内に設けた半導体装置を製造する方法において、(a)シリコン基板上にゲート絶縁膜及びゲート電極を形成する工程と、(b)上記シリコン基板上の全面に気相成長法により、基板温度700℃以上の温度を用いてシリコン酸化膜を堆積させる工程と、(c)上記シリコン酸化膜をエッチバックして前記ゲート電極の側部に残存させてサイドウオールを形成する工程と、(d)前記ゲート電極上と前記シリコン基板上の酸化膜を除去する工程と、(e)前記ゲート電極及びソース・ドレイン領域上に導体膜を自己整合的に選択形成する工程とをこの順に具備したことを特徴とする。ここで、前記工程(b)における気相成長法がシランガスを用いるシラン還元法である場合には、膜成長時の基板温度を約800℃以上とすることが望ましい。」と訂正する。
(ロ)訂正の適否
訂正事項aは特許請求の範囲の減縮に該当し、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内であり、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。また、訂正事項bは不明瞭な記載の釈明に該当し、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内であり、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
上記訂正された特許請求の範囲請求項1に係る発明の独立特許要件について検討すると、当審が通知した取消理由において指摘した不備な点は全て解消されている。したがって、本件特許請求の範囲請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができない発明とすることはできない。
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同第3項で準用する同第126条第2〜4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
三.特許異議申立についての判断
(1)本件発明
特許請求の範囲請求項1〜3に係る発明は下記のとおりである。
「【請求項1】MIS型トランジスタのソース・ドレイン領域及びこれらの少なくとも一方に連設する拡散配線領域をシリコン基板内に設けた半導体装置を製造する方法において、(a)シリコン基板上にゲート絶縁膜及びゲート電極を形成する工程と、(b)上記シリコン基板上の全面に気相成長法により、基板温度700℃以上の温度を用いてシリコン酸化膜を堆積させる工程と、(c)上記シリコン酸化膜をエッチバックして前記ゲート電極の側部に残存させてサイドウオールを形成する工程と、(d)前記ゲート電極上と前記シリコン基板上の酸化膜を除去する工程と、(e)前記ゲート電極及びソース・ドレイン領域上に導体膜を自己整合的に選択形成する工程と、をこの順に具備したことを特徴とする半導体の製造方法。
【請求項2】請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、前記工程(b)における気相成長法がシランガスを用いるシラン還元法であり、前記基板温度を約800℃以上とすることを特徴とする半導体の製造方法。
【請求項3】請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、前記工程(b)における気相成長法が、テトラエトキシシランガスを用いる熱分解法であり、前記基板温度を約800℃以下とすることを特徴とする半導体の製造方法。」
(2)申立の理由の概要
申立人セイコーエプソン株式会社は、甲第1号証(特開平4-226022号公報)、甲第2号証(特公平5-37334号公報)、甲第3号証(特開昭63-197373号公報)、甲第4号証(特開平1-286467号公報)、甲第5号証(特開平3-229427号公報)、甲第6号証(特開平5-190535号公報)、甲第7号証(特開平1-243471号公報)、甲第8号証(「LSIハンドブック」昭和59年11月30日株式会社オーム社発行 第401及び402頁)、甲第9号証(特開平4-93027号公報)、甲第10号証(特開昭63-181434号公報)、甲第11号証(特開平2-146776号公報)、甲第12号証(特開平3-25967号公報)、甲第13号証(特開平3-80545号公報)、甲第14号証(特開平4-177728号公報)及び甲第15号証(特開平4-226038号公報)を提示し、特許請求の範囲請求項1に係る発明は甲第1号証記載の発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、また、特許請求の範囲請求項1〜3に係る発明は甲第1号証、甲第2号証または甲第3号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、さらに、本件特許明細書は特許法第36条第4項の規定を満たしていないので、本件は特許を受けることができない旨主張する。
(3)判断
申立人セイコーエプソン株式会社提示の甲第1号証には、ポリシリコンの熱酸化により形成したサイドウオールを用いて自己整合的に金属シリサイドを形成することが、同様に提示された甲第2号証には、CVD法で形成したシリコン酸化膜を850〜950℃で熱処理し、これを異方性エッチングしてゲート電極にサイドウオールを形成し、露出した基板上の酸化膜を除去し、ゲート電極上及びソース・ドレイン領域上に自己整合的に導体膜を形成することが、同様に提示された甲第3号証には、Moゲートを用いた場合、ソース・ドレインコンタクト用のチタンシリサイドを形成する際に残ったチタンを除去するとその下のMoも除去されるのを防止するためにMoゲート上にシリコン酸化膜を形成しておくようにしたこと及びゲートサイドウオールとしてHTOで形成したシリコン酸化膜をエッチングして形成することが記載されており、同様に提示された甲第4号証〜甲第7号証には、サイドウオール形成のためのシリコン酸化膜の堆積温度を700℃以上とすることが記載されており、同様に提示された甲第8号証には、シリサイド層をゲート電極上及びソース・ドレイン領域上に自己整合的に形成することが記載されており、同様に提示された甲第9号証〜甲第15号証には、HTOが700〜860℃の温度でCVDシリコン酸化膜を堆積させるものであることが記載されている。
しかしながら、上記甲第1号証記載の発明におけるサイドウオール96,98はポリシリコン48を熱酸化して形成したものであって、本件特許請求の範囲請求項1に係る発明のサイドウオールのように基板温度700℃以上の温度で気相成長したシリコン酸化膜をエッチバックして形成したものではないから、甲第1号証記載の発明は本件特許請求の範囲請求項1に係る発明と同一とはいえない。
また、上記甲第2号証を除く甲各号証には、本件特許請求の範囲請求項1に係る発明の「(d)ゲート電極上及びシリコン基板上の酸化膜を除去する工程」は記載はおろか示唆もされていない。本件発明は上記構成の採用により、基板温度700℃以上の温度で気相成長したシリコン酸化膜をエッチバックして形成したサイドウオールであるため、ゲート電極上及びシリコン基板上の酸化膜を除去する工程においてサイドウオールがエッチングされて絶縁不良が発生するという問題が生じないという著しい効果を奏することができる。甲第2号証には確かに「ゲート電極上及びシリコン基板上の酸化膜を除去する工程」が記載されているが、甲第2号証記載の発明はゲート電極上及びシリコン基板上の酸化膜をエッチング除去する際にサイドウオールもエッチングされるのを防止するために、CVD法で形成したシリコン酸化膜を850〜950℃で熱処理するものであり、上記のようなシリコン酸化膜を上記甲第4号証〜甲第7号証記載の堆積温度700℃以上の温度で形成されるシリコン酸化膜に替えるべき理由はない。よって、本件特許請求の範囲請求項1に係る発明が甲第1〜15号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたともいえない。本件特許請求の範囲請求項2及び3に係る発明についても上記と同様の理由により甲第1〜15号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたともいえない。
特許法第36条第4項違反については、通常気相成長法は基板温度として400℃程度の温度を用いるのであるから、約400℃の基板温度で形成したCVD酸化膜について問題点を提示することに何ら問題はない。また、図5の説明において従来例としてあげられているのは、【0004】〜【0013】に示されている従来例であることは明らかである。なお、本件発明の課題及び効果は当業者に十分に理解できるものである。よって、本件明細書等に特許法第36条第4項違反はない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては本件特許請求の範囲請求項1〜3に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許請求の範囲請求項1〜3に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-03-08 
出願番号 特願平5-327199
審決分類 P 1 651・ 531- YA (H01L)
P 1 651・ 121- YA (H01L)
P 1 651・ 113- YA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岡 和久  
特許庁審判長 今野 朗
特許庁審判官 小田 裕
橋本 武
登録日 1999-01-29 
登録番号 特許第2880892号(P2880892)
権利者 日本電気株式会社
発明の名称 半導体装置の製造方法  
代理人 河合 信明  
代理人 布施 行夫  
代理人 井上 一  
代理人 福田 修一  
代理人 京本 直樹  
代理人 大渕 美千栄  

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