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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 G02B |
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管理番号 | 1014898 |
異議申立番号 | 異議1999-74896 |
総通号数 | 11 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1991-09-05 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-12-28 |
確定日 | 2000-04-03 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2911932号「光導波体接続」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2911932号の特許請求の範囲第1項ないし第8項に記載された発明についての特許を維持する。 |
理由 |
1.本件発明 本件特許第2911932号の請求項1〜8に係る発明(平成1年4月28日出願、平成11年4月9日設定登録、以下「本件発明1〜8」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜8に記載された事項により特定される下記のとおりのものである。 「【請求項1】 モノモード光ファイバからなる光導波体と、0.15以上の開口数を有し、モノモード光ファイバと異なった屈折率プロファイルを有する光導波体とを接続する方法において、 前記2つの光導波体のコアを整列させてそれら光導波体の端部を融着し、 それに続いてドーパントを前記0.15以上の関口数を有する光導波体のコアから移動させるために光導波体間の融着された結合部分を加熱し、 この融着に続く加熱ステップは融着された接合の領域において2つの光導波体におけるモードスポットサイズ間の整合がほぼ達成されるのに十分な時間にわたって行われることを特徴とする光導波体の接続方法。 【請求項2】 前記加熱ステップは30秒以下の時間にわたって行われる請求項1記載の方法。 【請求項3】 剛料された結合部分を前記加熱ステップ中少なくとも1400℃で加熱する請求頂1または2記載の方法。 【請求項4】 前記加熱ステップは伝搬損失が最小に達するまで行われる請求項1乃至3のいずれか1記載の方法。 【請求項5】 前記加熱ステップは、光導波体が突き合わせ接触してまだ融着されないときに生じる伝搬損失よりも伝搬損失が1デシベル以上減少されるまで行われる請求項1乃至4いずれか1記載の方法。 【請求項6】 さらに前記加熱ステップ中伝搬損失を監視する請求項1乃至5のいずれか1記載の方法。 【請求項7】 前記加熱ステップが10秒以上の時間にわたって行われる請求項1乃至6のいずれか1記載の方法。 【請求項8】 前記0.15以上の開口数を有する光導波体の開口数は0.15乃至0,3の範囲にある請求項1乃至7のいずれか1記載の方法。」 2.異議申立ての理由の概要 特許異議申立人 日本電信電話株式会社は、証拠として甲第1号証(特開昭57一24906号公報)、甲第2号証(特開昭61-117508号公報)、甲第3号証(0,V.Mazurin,M.V,Streltsina,and T.P.Shvaikoshvaikovskaya著「handbook of glass data Part E」、ELSEVIER社、平成5年、第117頁及び第816頁)、甲第4号証(「Physics and Chemistry of Glasses」,Vol.19、NO.3(1978年6月発行)、第41-42頁.)、甲第5号証(「Zeitschrift fur Physikalische Chemie neue Folge」,Bd. 128(1981年発行),第 205‐212頁)、及び甲第6号証(「ELECTRONICS LETTERs」,Vol.24,NO.1(1988年1月),第8‐10 頁.)を提出し、本件発明1〜8の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、特許を取り消すべき旨主張している。 3.異議申立人が提出した甲各号証記載の発明 甲第1号証(特開昭57一24906号公報)の第2頁左下欄第8行〜第9行には、 「その目的は屈折率差、すなわちファイバコアへのドーパント濃度の異なるファイバを融着する場合、その屈折率差の変化を緩やかにすることによって、低損失接続を行うことにある。」と記載されている。 更に、その第2頁左上欄第19行〜右上欄第8行には、 「第4図より、加熱により屈折率が小さくなることがわかる。この屈折率の減少はドーパントの拡散によるが、この効果を考慮すると、第3図に示すファイバと電極の位置関係において放電を開始した場合、コアの屈折率の高い光ファイバ6はコアの屈折率の低い光ファイバより強く加熱されるので、コアの屈折率の高い光ファイバ6の接続点近傍の屈折率が小さくなり、コアの屈折率の高い光ファイバ6の接続点近傍とコアの屈折率の低い光ファイバとの屈折率差が小さくなる。」と記載されている。 更に、その第1頁右欄第15行目〜第18行目には、 「コアの屈折率の異なる2本のファイバを接続する場合に、コアの屈折率の高いファイバを、コアの屈折率の低いファイバより強く加熱して接続することにより、接続点近傍における屈折率変化を緩やかにして、低損失な接続を可能とする利点がある。」と記載されている。 甲第2号証(特開昭61一117508号公報)の第1頁左欄第8行〜第10行には、 「端面が融着して接合した状態で、さらにその接合部分の付近を加熱すること」が記載されている。 更に、その第2頁左上欄第8行〜第11行には、 「これまで、光ファイバの融着接続にあたっては、主に2つの方法が用いられてきた。その一方は、光ファイバのコアの軸を調心して融着接続する方法である。」と記載されている。 更に、その第2頁右上欄第16行〜第17行には、 「コアの軸ずれを調心することなく低損失な融着接続を行うこと」が記載されている。 更に、その第2頁右下欄第3行〜第6行には、 「本発明では、まず、接続点を長時間加熱し、第4図(B)に示すように、ドーパントをクラッド2の領域まで熱拡散させ、コア3の半径をaからa’にまで拡大する。」ということが記載されている。 甲第3号証(0.V.Mazurin,M.V.Streltsina,and T.P.Shvaikoshvaikovskaya著「handbook of glass data Part E」、ELSEVIER社、平成5年、第117頁及び第816頁)には、ガラス転移温度(融解温度)が不純物(Pb)の濃度の増加に伴って低下することが示されている。 更に、そのFig.117の上部には、「ガラス転移温度」を和訳とする標題が記載されている。 更にまた、Fig.117の横軸には”Mol% PbO''と、縦軸には”tg,℃”と記載されている。 そして更に、その第816頁第40行の記載は、Fig.117が1983年発行の刊行物に掲載されていたものであることを示している。 甲第4号証(「Physics and Chemistry of Glasses」,Vol.19,NO.3(1978年6月発行 ),第41‐42頁)には、ガラスの融解温度が不純物(Ge,B又はP)の濃度の増加 に伴って低下することが記載されている。 そのFigure.1の図面の説明には、「P205‐SiO2、B203‐Si02及びGe02‐Si02二成分ガラスの組成の関数としての溶融温度」と記載されている。 そして更に、横軸及び縦軸には、それぞれ「P205組成(モル%)」及び「温度(℃)」と記載されている。 甲第5号証(「Zeitschrift fur Physikalische Chemie Neue Folge」,Bd.128(1981年発行),第205‐212頁)には、溶融Si02中の不純物(Pb)の拡散係数が不純物濃度の増加とともに大きくなることが記載さている。 そのFig.3 の図面の説明には「Si02組成比の関数としての 850℃における溶融PbO‐Si02中のPbの拡散係数」と記載されている。 そして更に、横軸及び縦軸には、それぞれ‘‘Xsio2”及び ”logDpbと記載され、Fig.3は、溶融Si02中の不純物(Pb)の拡散係数が不純物濃度の増加とともに大きくなることを示している。 甲第6号証(「ELECTRONICS LETTERS」,Vol.24,NO.1(1988年1月),第8‐10 頁)には、軟化したコアはそのサイズが拡大することが記載されている。 更にまた、ファイバの軟化によりコアの不純物分布が広がることも記載されている。 更に、その第8頁右欄第25行〜第28行には、 「コアのドーパント分布が、弱く融解したシングルモードファイバで測定された。その結果は、以前に提案したモデルとは異なり、融解の間に、コアのピーク屈折率は減少しコアサイズが増加することを示している。」と記載されている。 更に、そのFig.2の図面の説明には、 「Fig.2 融解したファイバ・ペアの一方の中心から計った動径距離の関数としてのGe02の測定されたモル濃度。コアとクラッドの間の比屈折率差は濃度に比例する。試料のパラメータと測定結果はTable lに示す。」と記載されている。 更にまたFig.2の横軸及び縦軸にはそれぞれ「動径距離」及び「Ge02モル分率」と記載されている。 そして、そのTable1の下欄には、 4.本件発明1〜8と甲各号証記載の発明との対比・判断 本件発明1〜8の「融着に続く加熱ステップは融着された接合の領域において2つの光導波体におけるモードスポットサイズ間の整合がほぼ達成されるのに十分な時間にわたって行われる」ことは、甲各号証の何れにも記載も示唆もされておらず、当業者に周知又は自明の事項でもない。 そして、本件発明1〜8は、「融着に続く加熱ステップは融着された接合の領域において2つの光導波体におけるモードスポットサイズ間の整合がほぼ達成されるのに十分な時間にわたって行われる」ことにより、”モノモード光ファイバからなる光導波体と、0.15以上の開口数を有し、モノモード光ファイバと異なった屈折率プロファイルを有する光導波体”との融着された接合において生じる損失を最小限にすることができるという作用効果を呈するものである。 なお、異議申立人は「甲第1号証には、本件特許発明に係る光導波体の接続方法が接続対象とする光ファイバの接続構造である<モノモードファイバからなる第1の光導波体と0.15以上の開口数を有しモノモード光ファイバと異なった屈折率プロファイルを有する第2の光導波体とを、第2の光導波体のコアからドーパントを移動させて、両者のモードスポットサイズ間の整合がほぼ達成するように接続した構造>に相当するものが記載されている。」と主張している。 ところが、甲第1号証には、「コアの屈折率の異なる2本のファイバを接続する」ことは記載されているが、本件発明1〜8の「モードスポットサイズ間の整合を達成する」ことは記載も示唆もされていない。 してみると、異議申立人の上記主張は当を得ないものである。 したがって、本件発明1〜8は、甲各号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとすることができないから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとすることができない。 5.むすび 以上のとおり、異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1〜8についての特許を取り消すことができない。 また、他に本件発明1〜8についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2000-03-13 |
出願番号 | 特願平1-505581 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(G02B)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 大渕 統正 |
特許庁審判長 |
豊岡 静男 |
特許庁審判官 |
稲積 義登 東森 秀朋 |
登録日 | 1999-04-09 |
登録番号 | 特許第2911932号(P2911932) |
権利者 | ブリテイッシュ・テレコミュニケーションズ・パブリック・リミテッド・カンパニー |
発明の名称 | 光導波体接続 |
代理人 | 花輪 義男 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 村松 貞男 |
代理人 | 橋本 良郎 |
代理人 | 澤井 敬史 |