• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01J
管理番号 1014908
異議申立番号 異議1999-72525  
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-04-16 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-07-01 
確定日 2000-04-03 
異議申立件数
事件の表示 特許第2845183号「ガス放電パネル」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2845183号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第一.手続きの経緯
本件特許(特許第2845183号)の出願は、昭和63年11月30日にした特許出願(特願昭63-304509号)の一部を平成7年10月20日に新たな特許出願としてされたものであり、平成10年10月30日に特許権の設定の登録がされたものである。
その後、平成11年7月1日に特許異議申立人・石津麗より特許異議の申立てがされた。
平成11年11月8日付けで取消しの理由が通知され、平成12年1月31日に意見書が提出された。

第二.本件発明
本件特許の請求項1から請求項3までに係る発明は、願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という)及び図面の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1から請求項3までに記載された下記とおりのものである。
記(特許請求の範囲)
(請求項1)ガス放電空間を介して対向する少なくとも片方が透明な一対の基板上に、維持放電を発生する放電維持電極対と、該放電維持電極対と対向して書込み放電を発生する書込み電極とを備える3電極面放電型のカラー表示用パネル構成において、観察面側に位置する前記透明な一方の基板上に前記放電維持電極対を配設し背面側に位置する前記他方の基板上に、前記放電維持電極対間の放電により発光する蛍光体膜を設けると共に、前記書込み電極を蛍光体膜の下に延在して配設し、かつ前記放電維持電極対を透明導電膜で構成するとともに、透明導電膜の一部にその長手方向に沿った電極引き出し用金属材料層を設け、前記蛍光体膜の発光をそれぞれ放電維持電極対、透明基板を通して観察し得るようにしたことを特徴とするガス放電パネル。
(請求項2)前記電極引き出し用金属材料層は、放電維持電極対の面放電間隙から離れた電極側縁部に設けられていることを特徴とする請求項1記載のガス放電パネル。
(請求項3)前記放電維持電極対を構成する透明導電膜は、相互に近接対向する突起部を有し、その近接対向する突起部により放電維持セルが構成されることを特徴とする請求項1または2記載のガス放電パネル。

第三.特許異議の申立て
一.特許異議の申立ての概要
申立てがされた請求項は、請求項1から請求項3までである。
申立ての理由は、概略、下記1のとおりであり、提出された証拠方法は下記2のとおりである。
記1(申立ての理由)
請求項1から請求項3までに係る発明は、いずれも、甲第1号証から甲第6号証までに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項1から請求項3までに係る特許は特許法第113条第2号の規定に該当し、同法第114条第2項の規定により取り消されるべきである。
記2(証拠方法)
甲第1号証:特公昭62-31775号公報
甲第2号証:特開昭60-253131号公報
甲第3号証:特開昭61-24126号公報
甲第4号証:特開昭48-73066号公報
甲第5号証:特開昭61-176035号公報
甲第6号証:特開昭53-125759号公報
二.特許異議の申立ての検討
1.引用刊行物及び甲号証の記載
当審が通知した取消しの理由に引用した刊行物1(甲第1号証:特公昭62-31775号公報)、刊行物2(甲第4号証:特開昭48-73066号公報)及び刊行物3(甲第6号証:特開昭53-125759号公報)には、それぞれ、請求項1から請求項3までに係る発明に関連する事項として、図とともに下記の記載がある。
刊行物1(甲第1号証)
(ア)「この発明は、AC駆動型のガス放電表示パネル、さらに詳細にはパネル要素の積層構造に蛍光体を組合せて表示色の変換を可能にしたガス放電表示パネルに関するものである。」(第1頁1欄17行から20行まで)
(イ)「第2図はこの発明の1実施例を示す断面図と平面図であるが・・・この図において、第2のガラス基板2上には前記Y電極群4(第1図)に相当する主Y電極群1i(iは正の整数)の各電極に隣接して平行な補助Y電極2iが配列されている。該主電極1iと補助Y電極2iとにはそれぞれ前記X電極3と該主Y電極1iとの交点で定まる主放電セル群に隣接して電極膨大部1iaと2iaが設けられ、これら両電極膨大部間に補助放電セルが形成される。・・・一方、第1のガラス基板1上の誘電体層5表面には前記補助放電セルを定める両Y電極に対向して蛍光体31が形成されている。」(第2頁3欄4行から26行まで)
(ウ)「第2図と第3図の関連において、例えば時間t0でX電極3aと主Y電極11とを選択して情報が書き込まれたとする。すると、X電極3aには書込み電圧パルスVXWが、また主Y電極11には維持電圧パルスVYA1が加わるので、これら両電極の交点における主放電セルにはそれらパルスが合成電圧として加わることにより、最初の放電スポットが生じる。次の時間t1において、補助Y電極21に維持電圧パルスVYB1が加わると、このとき前記主Y電極11が接地電位なので、これら両Y電極間の補助放電セルには前記放電スポットの種火効果により、放電スポットが発生する。」(第2頁3欄27行から4欄2行まで)
(エ)「前記補助放電セルにおける放電スポットの紫外線等によって、当該セル上の蛍光体31は発光することとなる。」(第2頁4欄8行から10行まで)
(オ)「この発明を例えば多色表示用のAC駆動型ガス放電表示パネルに適用してきわめて有利である。」(第2頁4欄23行から25行まで)
刊行物2(甲第4号証)
(カ)「本発明は表示装置に関し特にガス放電による面放電型表示装置に関する。」(第1頁右下欄2行から3行まで)
(キ)「第1図は本発明による面放電型表示装置の一構成例の断面図である。第1図において第1基板1の上に電極対X1-Y1、X2-Y2、X3-Y3、X4-Y4・・・が平行に配置され、前記電極対は全体が誘電体層2でおおわれて、不活性ガスを充填した放電ガス空間3に対面している。放電ガス空間3の上方には第1基板と平行に蛍光体4があり、該蛍光体4の中に制御用のZ電極5が配置され、これらの蛍光体4とZ電極5は第1基板1に対向する第2基板8の内側に支持されている。各電極対の間に電圧を印加することにより例えば6で示すような経路で放電が発生し、このとき発生する放電光は7の方向またはその逆方向から観察することができる。」(第2頁左上欄2行から15行まで)
(ク)「グロー放電6が発生したときの放電光、例えば紫外線、により励起されるホトルミネツセンスの効果により蛍光体4が発光し、明るさを増すと共に必要により表示色の変換をすることができる。」(第2頁左上欄16行から19行まで)
(ケ)「このとき発生する放電光は7の方向またはその逆方向から観察することができる。」(第2頁左上欄13行から15行まで)
(コ)「すなわちZ電極に電圧を印加しないときはガスによる放電発光のみが観察されるのに対し、Z電極に電圧を印加したときは放電ガスの発光色と蛍光体の発する色の混合した色を観察することができる。」(第2頁左下欄7行から11行まで)
(サ)「第4図の実施例はZ電極がZ1、Z2、Z3・・・に分割され、各々別の電圧を印加することができる構造になっている」(第2頁右下欄9行から11行まで)
(シ)「Z電極の電圧を適当に制御することにより、Z電極にそってライン毎の輝度変調を行なうことができる。」(第2頁右下欄13行から15行まで)
刊行物3(甲第6号証)
(ス)「本発明は面放電型プラズマディスプレイパネルの電極構造の改良に係り、とくに対となる電極の近接端面間に集中する大きな放電電流によって電極境界部に近い誘電体層および保護層が絶縁破壊現象を起こすのを防止するようにした新しい電極構造に関するものである。」(第1頁左下欄18行から右下欄3行まで)
(セ)「対となる電極7aと7bは・・・比較的高比抵抗を有するネサ膜(SnO2)または抵抗用ガラスペーストを所定のパターンに形成した後、その最離端部分に金(Au)ペースト等よりなる低比抵抗金属層8a、8bを具備させた」(第2頁右上欄4行から8行まで)
(ソ)「なおカバーガラス2の裏面・・・に蛍光体を塗布して表示色を蛍光体の発光に変換する場合にも・・・利用価値が大である」(第2頁左下欄14行から18行まで)
(タ)「蛍光体を併用することにより良質で安価な面放電型プラズマデイスプレイパネルを提供する」(第2頁右下欄4行から6行まで)
甲第2号証、甲第3号証及び甲第5号証には、それぞれ、請求項1から請求項3までに係る発明に関連する事項として、図とともに下記の記載がある。
甲第2号証
(チ)「この発明は、高精細度気体放電型画像表示パネルに関わる」(第1頁右下欄9行から10行まで)
(ツ)「上記パネルの最大の欠点は蛍光体の発光を蛍光体を通して見るため発光効率が著しく低下するということである。」(第2頁右上欄5行から7行まで)
(テ)第1図を参照して、「前面基板(ガラス)FGには、陰極母線DCBと陰極DCが配設され、セルシートCSをはさんで背面基板の上には、表示陽極母線DABと表示陽極DA、補助(走査)陽極SAが配設され、DAとDCで構成される表示セルの背面基板側には、図示されていないが、DA以外のところを絶縁物でおおって蛍光体Phを付着させている。・・・補助陽極と陰極間で起きた種放電をCSとRG間に作ったスリットSLを通して、表示セルに導く。・・・このパネルの動作は、通常の1行同時駆動の動作の他に、パルスメモリ-動作も可能である。」(第2頁右下欄12行から第3頁左上欄5行まで)
(ト)第1図を参照すると、「表示陽極母線DABが蛍光体Phの下に延在して配設されていること」が見てとれる。
(ナ)「前面基板に陰極を配設しているので、発光蛍光体が反射型になるので、透過型構成のパネルに比し負グローセルにおいても効率が1.3〜3倍程度高くなる。」(第4頁左上欄18行から右上欄1行まで)
甲第3号証
(ニ)「この発明は、ガス放電型表示パネルの発光効率の改善およびその他の画像表示パネルの構成に関するものである。」(第1頁右下欄7行から9行まで)
(ヌ)第1図を参照して、「背面板RG上に、陰極母線CBを印刷焼成し、その上に陰極部Cを除いて下記材料から成る白ガラスWGを印刷焼成し、その上に蛍光体Phを塗布する。前面版FGには、陽極母線DABを印刷し、その上に、同じく下記材料から成る白土手WBを印刷、焼成する。・・・このようにすると、放電で生じた紫外線は、蛍光体で可視光に変換された後、蛍光体の背面へ出た光は、背後の白ガラスWGで反射され前面に放出される。蛍光体の前面から出た光は、拡散光であるから、前方へ無指向性に発散する。そのまま前面板をつきぬける光は、有効な成分となる。」(第2頁左下欄9行から右上欄5行まで)
(ネ)第1図を参照すると、「陰極母線CBが蛍光体Phの下に延在して配設されていること」が見てとれる。
甲第5号証
(ノ)「本発明はプラズマディスプレイパネルの構造に関し、特に大容量プラズマディスプレイパネルの特性改善に関するものである。」(第1頁右下欄6行から8行まで)
(ハ)「第1図において、1は第一の基板(前面基板)であり、2は第二の基板(後面基板)である。3は第一の基板1の内面上に互いに平行に形成した透明電極であり、通常SnO2電極として形成される。5は第2図において示した様に、透明電極3の長さ方向にわたって、その一部分と接続するように、透明電極3と平行に例えば印刷法により形成された光を吸収する色、たとえば黒色の金属電極である。」(第2頁右上欄12行から20行まで)
(ヒ)「一方、後面基板2の内面上には、・・・電極4を互いに平行に形成し、・・・しかる後、前面基板1側の透明電極3と後面基板2側の電極4とが互いに直交するように前面基板1と後面基板2とを相対向させ、所定の放電ギャップを保って気密封止し、内部に放電可能なガスを封入する事によって本発明によるプラズマディスプレイパネルを得る事ができる。」(第3頁右上欄5行から18行まで)
(フ)「黒色金属電極5はこの問題を解決する為に形成されるものであり、例えば60μm幅で透明電極と30μmの幅でコンタクトさせる事により全体の抵抗を1KΩ以下にする事が可能となり・・・また、この黒色金属電極を形成する他の効果は、透明電極の切れを修復できる点にある。」(第2頁左下欄17行から右下欄6行まで)
2.対比・判断
(1)請求項1に係る発明
請求項1に係る発明と甲第1号証から甲第6号証までに記載された発明とを対比する。
請求項1に係る発明の下記の構成(以下「構成A」という)は、甲第1号証から甲第6号証までのいずれにも記載されておらず、また、甲第1号証から甲第6号証までに記載された事項を組み合わせることにより導き出すこともできない。
記(構成A)
「観察面側に位置する前記透明な一方の基板上に前記放電維持電極対を配設し背面側に位置する前記他方の基板上に、前記放電維持電極対間の放電により発光する蛍光体膜を設けると共に、前記書込み電極を蛍光体膜の下に延在して配設し」
そして、請求項1に係る発明は、上記構成Aを備えることにより、「蛍光体膜の励起によるカラー発光を該蛍光体膜中を通さずに、対向側(視覚側)のそれぞれ透明な放電維持電極対、基板を通して直接観察するので、発光効率及び輝度が向上し、鮮明なカラー表示が可能となり、」(特許明細書 段落[0015])との効果を得、特に、「書込み電極を蛍光体膜の下に延在して配設し」により「さらに書込み電極は発光通路にないので発光効率及び輝度が向上し、鮮明なカラー表示が実現できる。」(同 段落[0010])、「しかも書込み電極15は蛍光体膜の下にあってカラー表示光を全く遮らないので、図2に示す従来のガス放電パネルよりも高い輝度及び鮮明度を得ることができる。」(同 段落[0014])との効果を得るものである。
したがって、請求項1に係る発明は、甲第1号証から甲第6号証までに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、とすることはできない。
以下、引用刊行物及び甲号証の記載について検討する。
請求項1
請求項1に係る発明は、「観察面側に位置する前記透明な一方の基板上に前記放電維持電極対を配設し背面側に位置する前記他方の基板上に、前記放電維持電極対間の放電により発光する蛍光体膜を設ける」(上記構成(A))により、「蛍光体膜の励起によるカラー発光を該蛍光体膜中を通さずに、対向側(視覚側)のそれぞれ透明な放電維持電極対、基板を通して直接観察するので、発光効率及び輝度が向上し、鮮明なカラー表示が可能となり、」(特許明細書 段落[0015])との効果を得るものである。
また、「観察面側に位置する前記透明な一方の基板上に前記放電維持電極対を配設し背面側に位置する前記他方の基板上に、前記放電維持電極対間の放電により発光する蛍光体膜を設ける」としたときには、書込み電極の位置によっては輝度が低下することから、さらに「書込み電極を蛍光体膜の下に延在して配設し」(上記構成(A))により、「さらに書込み電極は発光通路にないので発光効率及び輝度が向上し、鮮明なカラー表示が実現できる。」(同 段落[0010])、「しかも書込み電極15は蛍光体膜の下にあってカラー表示光を全く遮らないので、図2に示す従来のガス放電パネルよりも高い輝度及び鮮明度を得ることができる。」(同 段落[0014])との効果を得るものである。これは、すなわち、「高い輝度及び鮮明度を得るために表示光を遮らない位置に書込み電極を配設する」との考えによるものである。
刊行物1(甲第1号証)
刊行物1には、請求項1に係る発明の「ガス放電空間を介して対向する少なくとも片方が透明な一対の基板上に、維持放電を発生する放電維持電極対と、放電維持電極対と対向して書込み放電を発生する書込み電極とを備える3電極面放電型のカラー表示用パネル」(以下、単に「本件3電極面放電型」という)は記載されているものの、請求項1に係る発明の「観察面側に位置する透明な一方の基板上に放電維持電極対を配設し、背面側に位置する他方の基板上に放電維持電極対間の放電により発光する蛍光体膜を設ける」、「書込み電極を蛍光体膜の下に延在して配設し」及び「放電維持電極対を透明導電膜で構成するとともに、透明導電膜の一部にその長手方向に沿った電極引き出し用金属材料層を設け」については、いずれも記載がない。
なお、刊行物1には、請求項1に係る発明の「観察面側に位置する透明な一方の基板上に放電維持電極対を配設し、背面側に位置する他方の基板上に放電維持電極対間の放電により発光する蛍光体膜を設ける」について記載がないことから、「高い輝度及び鮮明度を得るために表示光を遮らない位置にX電極3(書込み電極)を配設する」との考えがあるとは言えない。
つぎに、上記記載されていない事項の一つである「書込み電極を蛍光体膜の下に延在して配設し」の観点から他の引用刊行物及び甲号証を検討する。
刊行物2(甲第4号証)
刊行物2には、「観察面側に位置する透明な一方の基板上に放電電極対を配設し、背面側に位置する他方の基板上に放電電極対間の放電により発光する蛍光体膜を設けた面放電型のカラー表示装置」(上記(カ)(キ)(ク)(ケ))が記載されている。
しかし、その放電電極対は「維持放電を発生する放電維持電極対」ではなく、したがって「本件3電極面放電型」ではない。
また、「背面側に位置する他方の基板上にZ電極を配設する」ことが記載されている(上記(カ))。しかし、このZ電極は、「観察色の選択」又は「ライン毎の輝度変調」を行う電極であって請求項1に係る発明の「書込み電極」のような画素の選択を行う電極ではない(上記(コ)(サ)(シ))。
さらに、刊行物2には、「このとき発生する放電光は7の方向またはその逆方向から観察することができる」(上記(ケ))と記載されている。この記載は、「7の方向」から観察することを示していると同時に、「逆の方向」から観察することも示している。ところで、「逆の方向」から観察する場合には、ガスによる放電発光または蛍光体の発する光はZ電極を通って観察されることからZ電極の存在は輝度の低下を引き起こす原因となることは明らかである。これらから、刊行物2には、観察の方向を問わず、「高い輝度及び鮮明度を得るために表示光を遮らない位置に電極を配設する」との考えはないと言える。よって、Z電極は、「蛍光体12の下に延在して配設される」ものの、「高い輝度及び鮮明度を得るために表示光を遮らない位置にZ電極を配設する」との考えはない。
したがって、刊行物2に記載された表示装置が刊行物1に記載された表示パネルと「面放電型」である点で共通することに着目し、刊行物1に記載された表示パネルに刊行物2の「観察面側に位置する透明な一方の基板上に放電電極対を配設し、背面側に位置する他方の基板上に放電電極対間の放電により発光する蛍光体膜を設ける」を適用しても、請求項1に係る発明の「観察面側に位置する透明な一方の基板上に放電維持電極対を配設し、背面側に位置する他方の基板上に放電維持電極対間の放電により発光する蛍光体膜を設ける」を導くことはできても、上記のとおり、Z電極は「書込み電極」ではなく、また、「高い輝度及び鮮明度を得るために表示光を遮らない位置にX電極(刊行物2においては、Z電極)を配設する」との考えが刊行物1及び刊行物2のいずれにもないことから、請求項1に係る発明の「書込み電極を蛍光体膜の下に延在して配設し」にまで至ることはできない。
刊行物3(甲第6号証)
刊行物3には、「蛍光体を併用する面放電型プラズマディスプレイパネル」が記載され、さらに、「対となる電極7aと7bを比較的高比抵抗を有するネサ膜(SnO2)で形成し、その最離端部分に金(Au)ペースト等よりなる低比抵抗金属層8a、8bを具備させた」ことが記載されている。
しかし、対となる電極(7a、と7b)を形成した基板1が観察側の基板であるとの記載はなく、またカバーガラス2には蛍光体が塗布されるものの請求項1に係る発明の「書込み電極」に相当する電極については記載がない。
したがって、刊行物1に記載された表示パネルに刊行物3に記載された事項を適用しても、請求項1に係る発明の「書込み電極を蛍光体膜の下に延在して配設し」を導くことはできない。
甲第2号証及び甲第3号証
甲第2号証及び甲第3号証のいずれにも、前面板に陰極(又は陽極)を配設し後面板に陽極(又は陰極)を配設するとともに、陽極母線(又は陰極母線)を蛍光体Phの下に延在して配設した気体(又はガス)放電型表示パネルが記載されている。
また、後面板に配設された陽極母線(又は陰極母線)は画素の選択を行なうもので、この点では請求項1に係る発明の「書込み電極」に相当する。
さらに、甲第2号証には、「蛍光体の発光を蛍光体を通して見るため発光効率が著しく低下する」(上記(ツ))との課題も認識されている。
しかし、放電は前面板と後面板との間で発生させるものであり、甲第2号証及び甲第3号証に記載された気体(又はガス)放電型表示パネルの型式は「本件3電極面放電型」ではない。
したがって、刊行物1に記載された表示パネルに、刊行物1に記載っされた表示パネルとは型式が異なる甲第2号証又は甲第号3証に記載された事項を直ちに適用することはできない。
甲第5号証
甲第5号証には、「前面基板に通常SnO2の透明電極を互いに平行に形成し、後面基板に透明電極と直交するように電極4を互いに平行に形成したプラズマディスプレイパネル」が記載され、さらに、「透明電極と平行にしかもその一部分と接続するように光を吸収する色の金属電極を形成した」が記載されている。
しかし、放電は前面基板と後面基板との間で発生させるものでその型式は「本件3電極面放電型」ではなく、また、後面基板に電極4は形成されるものの蛍光体については記載がない。
したがって、刊行物1に記載された表示パネルに甲第5号証に記載された事項を適用しても、請求項1に係る発明の「書込み電極を蛍光体膜の下に延在して配設し」を導くことはできない。
以上のように、甲第1号証から甲第6号証までには上記構成Aは記載されておらず、また、甲第1号証から甲第6号証までに記載された事項を組み合わせても上記構成Aを導き出すことはできない。
(2)請求項2に係る発明
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明を引用してさらに限定したものであり、そして、請求項1に係る発明についての判断は上記のとおりである。
したがって、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明についての上記判断の理由と同じ理由により、甲各号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、とすることはできない。
(3)請求項3に係る発明
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明を引用し、または請求項1に係る発明を引用する請求項2に係る発明をさらに引用して、各々請求項1に係る発明をさらに限定したものであり、そして、請求項1に係る発明についての判断は上記のとおりである。
したがって、請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明についての上記判断の理由と同じ理由により、甲各号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、とすることはできない。
三.まとめ
以上、請求項1から請求項3までに係る発明は、いずれも、甲第1号証から甲第6号証までに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、とすることはできない。

第四.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1から請求項3までに係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1から請求項3までに係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定をする。
 
異議決定日 2000-03-13 
出願番号 特願平7-272461
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H01J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小島 寛史橋本 直明  
特許庁審判長 新宮 佳典
特許庁審判官 渡邊 聡
島田 信一
登録日 1998-10-30 
登録番号 特許第2845183号(P2845183)
権利者 富士通株式会社
発明の名称 ガス放電パネル  
代理人 井桁 貞一  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ