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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1015839
審判番号 審判1998-14202  
総通号数 12 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-04-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-09-17 
確定日 2000-05-29 
事件の表示 平成4年特許願第68060号「チオカルバミン酸S-アルキルエステル系プラスチックレンズ」拒絶査定に対する審判事件〔平成5年4月16日出願公開、特開平5-93801、平成8年3月27日出願公告、特公平8-30762、発明の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、昭和59年3月23日に出願された特願昭59-54548号の出願を原出願とする分割出願(特願平4-68060号)であって、原審において、出願公告(特公平8-30762号)後に改めて通知された理由により拒絶査定されたものである。
2.本願発明の要旨
本願発明の要旨は、出願公告後、平成9年4月28日付け及び平成12年3月21日付けの各手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。
「置換基を有しない脂肪族ポリイソシアナート化合物、または塩素原子で置換されていてもよい芳香族ポリイソシアナート化合物と、メルカプト基を有する化合物を-NCO基/-SH基=0.5〜3.0モル比の割合で反応させて得られる屈折率ND20℃が1.55から1.64のものである眼鏡用チオカルバミン酸S-アルキルエステル系プラスチックレンズ。」
3.原査定の理由
本願に対する原査定の理由は、本願発明は、本願出願前頒布された刊行物1(特開昭58-127914号公報)、同刊行物2(米国特許第3310533号明細書)及び同刊行物3(米国特許第3356650号明細書)に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
4.判断
以下、刊行物1〜3の記載事項と対比し、本願発明の進歩性の有無を検討する。
刊行物1には、「有機重合体よりなる眼科装置において、前記重合体がペルフルオロオキシアルキレン単位の主鎖、数平均分子量約500と15000の間、および重合体を形成する少なくとも1種の反応性基を有するテレキーリックペルフルオロポリエーテル単量体から製造されたことを特徴とする、眼科装置。」(特許請求の範囲第1項)についての発明が記載され、該発明の眼科装置は、具体的には「コンタクトレンズ」を指向するものであること(3頁左下欄)、「従来のポリメタクリル酸メチル、シリコーンゴム、およびヒドロゲルからのコンタクトレンズは、それぞれに欠点を有していたところ、これら欠点を有さないコンタクトレンズを提供すること」をその発明の目的とすること(4頁左上欄7行〜左下欄3行)、該発明のコンタクトレンズは「機械的に強じんであるがたわみ性であり、涙の成分の吸収に対して抵抗性であり、しかも酸素を高度に透過する」特徴を有するものであること(4頁左下欄)、がそれぞれ記載され、その好ましいテレキーリックペルフルオロポリエーテル単量体として式

(式中、Qは重合して重合体を形成し得る基または共反応体と反応して重合体を形成し得る基、Wは連結基、かつZは-WQまたはフッ素であり、反応性基QとしてH2=C(R)-、H2C=C(R)COO-・・-NCO、・・・)で表されるものが記載され、さらに一層好ましいテレキーリックペルフルオロポリエーテル単量体として式



で表されるものが記載され、さらに「Q1及びZがイソシアネート基-NCOである場合、本発明の装置の製造に使用できる重合体はヒドロキシル、アミノ、チオールおよびカルボキシル基当量約2500まで、好ましくは約200〜1250までを有するポリオール、ポリアミン、ポリチオール・・との反応によって製造できる」(13頁左下欄12〜19行)と記載されていて、ポリイソシアネートとポリチオールとを反応させること、すなわち、ポリチオウレタン構造を有するものを製造することも記載されていると認められる。
しかしながら、刊行物1に記載されている重合体は、あくまで、テレキーリックペルフルオロポリエーテルの単位を構成成分として有することを必須とするものであって、本願発明の「置換基を有しない脂肪族ポリイソシアネート化合物、または塩素原子で置換されていてもよい芳香族ポリイソシアネート化合物と、メルカプト基を有する化合物とを反応させて得られるポリチオウレタン樹脂」は全く記載されておらず、また、得られた樹脂の屈折率についても、個々の重合体で測定された値が記載されているが、1.55〜1.64といった高い数値は記載されておらず、コンタクトレンズ用として記載され、屈折率を下げる元素として知られているフッ素原子を必須元素として有していることからも、さほど高い数値のものを意図しているとも認められない。
刊行物2には、ポリウレタン類の製造と題し、有機ポリイソシアネートと少なくとも2個活性水素原子を含有する有機化合物とを、NCO対活性水素の割合が約0.7〜1.3の範囲で反応させ、反応物が粘性のために通常の混合が困難になったとき、室温まで冷却し、固体粉末の状態で流動点以下に加熱して反応を続けることを特徴とする熱可塑性ポリウレタンの製造法が記載され、活性水素を有する基として、-OH、-NH2、-NH-、-COOH、-SHが例示されている。
しかし、該-SH基を有する化合物を用いた具体例は全く記載されておらず、ましてチオウレタン樹脂を光学レンズとして用いることは示唆すらされていない。
刊行物3には、やはり熱可塑性ポリウレタンについて記載され、該熱可塑性ポリウレタンは、(1)有機ポリイソシアネートと(2)エステル基を有さず、その1つは只2つの活性水素を有し、他の1つは少なくとも3つの活性水素を有する化合物の混合物とを、該少なくとも3つの活性水素を有する化合物の割合が全活性水素化合物の0.01〜20モル%であり、該混合物の平均分子量が500未満である条件下に反応させることにより得られるものであり、該活性水素を有する基として、-OH、-NH2、-NH-、-COOH、-SHが記載されている。
しかし、該-SH基を有する化合物を用いた場合の具体的記載は全くなく、ましてチオウレタン樹脂を光学レンズとして用いることは何も記載されていない。
以上、刊行物1〜3には、本願発明で特定するチオウレタン結合を有する熱可塑性樹脂を眼鏡用レンズとして用いることは全く記載がなく、かかる構成を示唆する記載も全く見出せない。
一方本願発明は、上記認定したとおりの構成を採用し、これにより、明細書に記載されているとおりの、強じんで、無色透明で、耐衝撃性に優れ、切削性、研磨性が良好な眼鏡用レンズを提供するという優れた効果を奏するものと認められる。
5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明が刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2000-04-07 
出願番号 特願平4-68060
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 池田 正人橋本 栄和寺坂 真貴子  
特許庁審判長 柿崎 良男
特許庁審判官 小島 隆
關 政立
発明の名称 チオカルバミン酸S-アルキルエステル系プラスチックレンズ  
代理人 川上 宣男  
代理人 葛和 清司  

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