• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効としない B05C
審判 全部無効 1項3号刊行物記載 無効としない B05C
管理番号 1016005
審判番号 審判1999-35303  
総通号数 12 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-03-19 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-06-15 
確定日 2000-05-12 
事件の表示 上記当事者間の特許第2646195号発明「塗工装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2646195号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)についての出願は、平成6年8月30日に特願平6-243494号として出願され、平成9年5月9日に設定登録がなされ、その後、株式会社ヒラノテクシードより本件発明の特許を無効とする審決を求める審判の請求がなされ、請求書の副本が被請求人である井上金属工業株式会社に送達され、被請求人は、答弁書提出の指定期間内に答弁書及び補正書を提出した。

2.本件発明
本件発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】外周面上に基材搬送路を形成した回転自在なバツキングロールと、該バツキングロールの下半側で該基材搬送路に面して基材搬送路の横断方向へ延びる塗工液溜を送液路と連通させて形成した塗着具と、該塗工液溜から基材搬出側方向へ延設して基材搬送路と対面する計量面を有すると共に該計量面と基材搬送路との間で液溜空間を形成する計量具とを備え、該計量面の始端から終端に行く程に液溜空間の容積を減少させた塗工装置において、前記計量面は基材搬送路の横断方向へ延びる二面を鈍角的に該横断方向で直線状に結合して形成することにより、該直線状に結合した直線箇所で前記液溜空間の容積の減少する割合を急変させたことを特徴とする塗工装置。」

3.請求人の主張
請求人は、甲第1号証として特公平6-223号公報を、甲第2号証として特開昭59-154167号公報を提示し、本件発明の特許は次の理由により無効とされるべきものである旨主張する。
(1)本件発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(2)本件発明は、甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

4.各甲号証に記載された発明
(1)甲第1号証には、
A.「(12)はバッキングロールであって、このバッキングロール(12)が回転することによりウエブ(F)を支持しながら、ウエブ(F)をリップコータ型塗工装置(10)の前面から後面に送行させるものである。
(14)は塗工液を噴射するノズルヘッドであって、バッキングロール(12)の下方に配されている。
(16)はノズルヘッド(14)のヘッド本体(16)であって、バッキングロール(12)と略同じ幅を有し、上部にドクタ-エッジ(18)が設けられている。このドクターエッジ(18)は、縦断面円弧型に形成されたコンマ型ドクタ-エッジ(18)である。バッキングロール(12)とドクターエッジ(18)のとの間隙をウエブ(F)が送行する。ヘッド本体(16)の前面(16a)はフラットな面に形成されている。この前面(16a)に塗工液の噴出口(20)が開口している。」(公報第3頁左欄第26行〜第3頁左欄第39行)
B.「第1液溜め室(26)の上部には流出路(28)が幅方向に第1液溜め室(26)と連続して形成されている。この流出路(28)は、垂直に上方に伸びて、ドクタ-エッジ(18)の前部とノズルヘッド(14)前端部との間に出口(28a)が設けられている。そして、この出口(28a)の幅方向の長さによりウエブ(F)の塗工幅が決定される。そのため、蓋体(22)の幅方向の長さを変化させるとウエブ(F)の塗工幅が変化する。
(30)は液溜め壁であって、蓋体(22)と略同じ幅を有し、蓋体(22)の前面の上部にボルト(31)により着脱自在に取付けられている。この液溜め壁(30)の上端とバッキングロール(12)の下周面との間には、ウエブ(F)の走行用の間隙が残されている。
(32)は第2液溜め室であって、ドクタ-エッジ(18)の前面、蓋体(22)の上面、液溜め壁(30)の後面によって形成された空間と、この空間の両側面をノズルヘッド(14)の上面とバッキングロール(12)の下周面との間に配された隔壁(34)によって閉塞することにより形成されている。」(公報第3頁左欄第46行〜第3頁右欄第13行)
C.「ドクターエッジ(18)はコンマ型であるため、ドクターエッジ(18)の刃先に接近するほど第2液溜め室(32)の容積が次第に小さくなっており」(公報第4頁左欄第42〜44行)
と記載されている。
そして、上記記載A〜C、第1図乃至第3図及びその説明文を参照すれば、甲第1号証には次の発明が記載されているものと認められる。
「外周面上にウエブ搬送路を形成した回転自在なバッキングロール(12)と、該バッキングロール(12)の下半側で該ウエブ搬送路に面してウエブ搬送路の横断方向へ延びる第2液溜め室(32)を流出路(28)と連通させて形成したノズルヘッド(14)と、該第2液溜め室(32)からウエブ搬出側方向へ延設してウエブ搬送路と対面する前面を有すると共に該計量面とウエブ搬送路との間で第2液溜め室(32)を形成するドクタ-エッジ(18)とを備え、ドクターエッジ(18)前面は縦断面円弧型に形成され、ドクターエッジ(18)前面の始端から終端に行く程に第2液溜め室(32)の容積を減少させた塗工装置」
(2)甲第2号証には、
D.「積層媒体を矢印Aの方向でバツクアツプロール2を経て走る帯状材料1上に配量するための第1図に図示した装置は帯状材料1の全幅にわたって延びているスリツトノズル21を備えている。このスリツトノズル21は分配管22、幅が調節可能な縦長に形成された予備配量間隙23、この予備間隙23に接続されていてかつドクタベツド3として形成された配量舌片および同様にこの予備配量間隙23に続いている逆流止め舌片24とから成る。配量舌片と逆流止め舌片は配量室25を形成している。スリツトノズル21の帯状材料走入口における逆流舌片により空気境界層の浸入が阻止される。
ドクタベツド3は平坦な滑動面4を備えた当接条片26を備えており、この当接条片にドクタ条片6が当接し、かつこれに沿って滑動案内される。ドクタ条片6は積層された帯状材料1に対して押付けられる鋭角な縁部を持つ輪郭縁部8を備えた端面7を有している。ドクタベツド3とドクタ条片6との間の加圧ホース9の様式の加圧手段によりドクタ条片6は積層されるべき帯状材料1に対して可変に微細に押付けられる。
ドクタ条片6はドクタベツド3の滑動面4と当接条片26に沿つて選択可能な限度で自由に摺動可能である。」(公報第3頁左下欄第16行〜第4頁左上欄第2行)
E.「ドクタ条片6の端面7は輪郭縁部8から出発して凸状に或いは凹状に彎曲されている」(公報第4頁左上欄第17〜18行)
F.「ドクタベツド3とドクタ条片6の始端側の面27との間には、加圧ホース28の様式の封隙作用を行う弾性的な他の加圧手段が設けられており、この加圧手段は一方ではドクタベツド3とドクタ条片6相互を封隙するのに、他方では圧力増大によって達せられるドクタ条片6の安定した位置を固定するのに使用される。」(公報第4頁左下欄第7〜13行)
と記載されている。
そして、上記記載D〜F、第1図乃至第3図及びその説明文を参照すれば、甲第2号証には次のa)、b)、c)を備えた「塗工装置」が記載されているものと認められる。
a)外周面上に帯状材料搬送路を形成した回転自在なバツクアツプロール2と、該バツクアツプロール2の下半側で該帯状材料搬送路に面して帯状材料搬送路の横断方向へ延びる配量室25を予備配量間隙23と連通させて形成したスリツトノズル21。
b)該配量室25から帯状材料搬出側方向へ延設して帯状材料搬送路と対面する上面を有するドクタベツド3と、ドクタベツド3に対して摺動可能で帯状材料搬送路と対面する端面7を有するドクタ条片6と、ドクタベツド3とドクタ条片6との間に介装され、帯状材料搬送路と対面する上端面を有する加圧ホース28。
c)ドクタベツド3の上面、加圧ホース28上端面及びドクタ条片6の端面7は、帯状材料搬送路との間で配量室25を形成し、ドクタベツド3の上面、加圧ホース28上端面及びドクタ条片6の端面7は、その始端から終端に行く程に配量室25の容積を減少させる。

5.対比・判断
そこで、本件発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、後者における「ウエブ」、「バッキングロール(12)」、「第2液溜め室(32)」、「流出路(28)」、「ノズルヘッド(14)」、「前面」、「ドクターエッジ(18)」は、各々前者における「基材」、「バツキングロール」、「塗工液溜」、「送液路」、「塗着具」、「計量面」、「計量具」に相当するものであるから、両者は、
「外周面上に基材搬送路を形成した回転自在なバツキングロールと、該バツキングロールの下半側で該基材搬送路に面して基材搬送路の横断方向へ延びる塗工液溜を送液路と連通させて形成した塗着具と、該塗工液溜から基材搬出側方向へ延設して基材搬送路と対面する計量面を有すると共に該計量面と基材搬送路との間で液溜空間を形成する計量具とを備え、該計量面の始端から終端に行く程に液溜空間の容積を減少させた塗工装置」
の点で一致するものの、計量面に関し、前者が「基材搬送路の横断方向へ延びる二面を鈍角的に該横断方向で直線状に結合して形成することにより、該直線状に結合した直線箇所で前記液溜空間の容積の減少する割合を急変させた」構成としているのに対し、後者では、「縦断面円弧型に形成されている」点で相違している。
本件発明と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、後者における「帯状材料」、「バツクアツプロール2」、「配量室25」、「予備配量間隙23」、「スリツトノズル21」は、各々前者における「基材」、「バツキングロール」、「塗工液溜」、「送液路」、「塗着具」に相当している。また、甲第2号証に記載された発明において、ドクタベツド3の上面、加圧ホース28上端面及びドクタ条片6の端面7は、その始端から終端に行く程に配量室25の容積を減少させており、帯状材料1と対面するドクタベツド3の上面、加圧ホース28上端面及びドクタ条片6の端面7の部分にて、所望厚みの積層媒体が帯状材料1に塗工されることから、後者における「ドクタベツド3の上面、加圧ホース28上端面及びドクタ条片6の端面7」、「ドクタベツド3、加圧ホース28、ドクタ条片6」は、各々前者における「計量面」、「塗工液溜から基材搬出側方向へ延設して基材搬送路と対面する計量面を有すると共に該計量面と基材搬送路との間で液溜空間を形成する計量具」に相当するものと認められる。
したがって、両者は、
「外周面上に基材搬送路を形成した回転自在なバツキングロールと、該バツキングロールの下半側で該基材搬送路に面して基材搬送路の横断方向へ延びる塗工液溜を送液路と連通させて形成した塗着具と、該塗工液溜から基材搬出側方向へ延設して基材搬送路と対面する計量面を有すると共に該計量面と基材搬送路との間で液溜空間を形成する計量具とを備え、該計量面の始端から終端に行く程に液溜空間の容積を減少させた塗工装置」
の点で一致するものの、
計量面に関し、前者が「基材搬送路の横断方向へ延びる二面を鈍角的に該横断方向で直線状に結合して形成することにより、該直線状に結合した直線箇所で前記液溜空間の容積の減少する割合を急変させた」構成としているのに対し、後者では、「ドクタベツド3の上面、加圧ホース28上端面及びドクタ条片6の端面7により形成されている」点で相違している。
なお、請求人は、審判請求書において「甲第2号証におけるいわゆる計量面の形状を検討すると、参考図2に示すように、ドクタベッド3の上面から加圧ホース9の上面一部を経てドクタ条片6の端面7に至っている。・・・すなわち、この形状は、構成要件Gにおける「計量面は搬送路の横断方向へ延びる二面を鈍角的に横断方向で直線状に結合した」ものになっており、液溜空間(配量室25)の容積の減少する割合を急変させているのと同じである。」(審判請求書第8頁第20行〜第9頁第2行)と主張している。
しかしながら、甲第2号証に記載された発明においては、計量面が、ドクタベツド3の上面、加圧ホース28上端面及びドクタ条片6の端面7の三つの面により形成されており、計量面が二面から形成されているとはいえないこと、また、ドクタ条片6はドクタベツド3に対して自由に摺動可能に設けられており、計量面を形成する上記の三つの面は互いに結合されているとはいえないことから、甲第2号証に記載された「ドクタベツド3の上面、加圧ホース28上端面及びドクタ条片6の端面7」が「基材搬送路の横断方向へ延びる二面を鈍角的に該横断方向で直線状に結合して形成」したものであるとする請求人の主張は採用できない。
以上のように、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明は、何れも、本件発明の構成に欠くことのできない事項である「計量面は基材搬送路の横断方向へ延びる二面を鈍角的に該横断方向で直線状に結合して形成することにより、該直線状に結合した直線箇所で前記液溜空間の容積の減少する割合を急変させた」構成を備えていない。
そして、本件発明は、上記の構成を具備することにより、「計量面は、基材搬送路の横断方向へ延びる二面を鈍角的に該横断方向で直線状に結合した直線箇所で液溜空間の容積の減少する割合を急変させてあるため、基材にかかる塗工液の圧力をこの直線箇所で急変させることができる。基材の搬送に伴つて生じる塗工液の同伴流を旋回流として戻す旋回位置は、塗工液中に粘度差があつても、この直線結合した直線箇所又はこの直線箇所の近傍となる。従つて、旋回位置における塗工液の速度は、幅方向一直線上で均一となり、塗工液の粒子の分散状態を幅方向で急変させることもない。その結果、計量面は、微細な粒子を含む分散系の塗工液を用いても、濃淡の筋模様がない均質で良好な塗工層を得ることができる。」(段落【0007】)等の明細書に記載された作用効果を期待できるものである。
したがって、本件発明は上記甲第2号証に記載された発明と同一の発明とすることはできず、また、上記甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

6.むすび
したがって、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件発明の特許を無効とすることはできない。
よって、結論の通り審決する。
 
審理終結日 2000-02-10 
結審通知日 2000-03-28 
審決日 2000-03-07 
出願番号 特願平6-243494
審決分類 P 1 112・ 121- Y (B05C)
P 1 112・ 113- Y (B05C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 増田 亮子  
特許庁審判長 藤田 豊比古
特許庁審判官 関谷 一夫
清田 栄章
登録日 1997-05-09 
登録番号 特許第2646195号(P2646195)
発明の名称 塗工装置  
代理人 後藤 文夫  
代理人 中村 哲士  
代理人 蔦田 正人  
代理人 内田 敏彦  
代理人 富田 克幸  
代理人 蔦田 璋子  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ