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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01J
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01J
管理番号 1016121
審判番号 審判1998-11391  
総通号数 12 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1987-08-01 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-07-27 
確定日 2000-06-05 
事件の表示 昭和61年特許願第219852号「X線像増強管の製造方法及びX線像増強管」拒絶査定に対する審判事件〔昭和62年 8月 1日出願公開、特開昭62-176024、平成 7年 8月 2日出願公告、特公平 7- 73031、特許請求の範囲に係る発明の数( 1 )〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第一.手続きの経緯
本願は、昭和61年9月19日(パリ優先権主張 1985年9月20日 オランダ国)の出願である。
原審において平成7年8月2日に出願公告がされたところ、特許異議申立人・株式会社東芝から特許異議の申立てがあり、平成8年11月21日に手続補正書が提出され、平成10年3月9日にその特許異議の申立てについて理由ありとの決定がされ、同日その決定の理由によって拒絶査定された。
その後、平成10年7月27日に審判の請求がされ、平成10年8月26日に手続補正書が提出された。
平成10年8月26日付け手続補正書による補正は、特許法第17条の3の規定に違反してされたものであるとして、平成11年7月12日に、当審において特許法第159条第1項の規定により準用する特許法第54条の規定により却下された・
平成11年7月12日にその後発見した拒絶の理由が通知され、同通知において指定された期間内の平成12年2月17日に手続補正書が提出された。

第二.本願発明の要旨
平成12年2月17日付け手続補正書による補正は、特許請求の範囲について、その第1項から第7項まで(査定時)を削除するとともに、第8項(査定時)を新たな第1項とするものである。
そして、この補正は、特許請求の範囲の減縮を目的として特許法第159条第2項の規定により準用する同法第64条の規定により適法にされたものであり、同条第2項の規定により準用する同法第126条第2項の規定にも適合する。
本願発明は、出願公告後の平成8年11月21日付け手続補正書及び平成12年2月17日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された下記のとおりをその要旨とするものと認める。
記(特許請求の範囲)
(1)発光層及びホトカソードを有する入口スクリーンを収容した容器を具えるX線像増強管において、前記発光層はカラム構体を有し、このカラム構体のカラムが最大で約25μmの平均横断寸法を有し、これらカラムを0.5μmから3μmの間の範囲の幅を有する空所によって離間し、多くても少数のカラムがかなり大きい横断寸法を有し、前記空所を、支持部材に直角な方向の一連のバブルによって少なくとも部分的に形成するようにしたことを特徴とするX線像増強管。

第三.査定の理由・当審での拒絶の理由
これに対し、原審において査定の理由となった特許異議の申立てについての決定の理由は下記1のとおりであり、当審で通知した拒絶の理由は、下記2のとおりである。
記1(査定の理由)
特許請求の範囲第1項の発明は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物1(下記3)に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し、特許を受けることができない。
特許請求の範囲第8項の発明は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物2(下記3)に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し、特許を受けることができない。
記2(当審での拒絶の理由)
特許請求の範囲第1項の発明は、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、その出願前に日本国内において頒布された刊行物1(下記3)に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
特許請求の範囲第8項の発明は、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、その出願前に日本国内において頒布された刊行物2(下記3)に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記3(引用刊行物)
1.刊行物1:特開昭53-102663号公報
2.刊行物2:特開昭57-136744号公報

第四.検討
平成12年2月17日付け手続補正書による補正により、第1項は削除され第8項が新たな第1項とされたので、以下、新たな第1項の発明(上記第二 本願発明)について検討する。
1.引用刊行物の記載
本願発明について査定の理由および当審での拒絶の理由において共に引用された刊行物2(特開昭57-136744号公報)には、下記の事項が記載されている。
(ア)「本発明はイメージ管や蛍光板のような放射線励起蛍光面およびその製造方法に関する。」(第1頁右下欄20行から第2頁左上欄1行まで)
(イ)「本発明者らが特願昭55-80146号において提案した発明は、表面が平らな基板に結晶粒子の大きさが平均15μm以下の大きさのポーラスな第1の蛍光体層と、この個々の結晶粒子を種として互いに光学的に分離された柱状結晶の第2の蛍光体層とからなる新規な蛍光面である。この蛍光面は解像度が大幅に改善される。しかし個々に隣接した柱状結晶の表面部すなわちその上に光電面を形成する頂上面部では空間的に分離されて形成されているため、光電面がところどころ分離されて被着される場合があり、この場合は動作中に光電面の全面にわたって電子の供給が十分には行なわれず、出力像にゆがみを起してしまう。」(第2頁右下欄13行から第3頁左上欄6行まで)
(ウ)「このような光電面の部分的な分離の問題を解決する1つの解決策として・・・酸化インジウム膜をCsI蛍光膜の表面に形成する考え方もある。しかしながら実際問題として、ピッチが15μm以下で隣接する柱状結晶の結晶相互間に例えば1μmというように小さい空間がある場合に、酸化インジウム膜でCsI蛍光面の全面に電子の供給を行なわせるような膜にすることは発明者らの実験によればほとんど不可能である。」(第3頁左上欄9行から19行まで)
(エ)「この発明は・・・すぐれた解像度、光電感度をもち、かつ電子の供給不足による出力像のゆがみが生じない改良された入力蛍光面を提供するものである。そしてその特徴とするところは、特願昭55-80146号において本発明者らが提案した入力蛍光面の第2の蒸着蛍光層上に高真空度のもとで平均的な厚さが1〜30μmの高密度の第3のCsI蒸着蛍光層を形成する点にある。」(第3頁右上欄5行から13行まで)
(オ)「本発明の放射線励起蛍光面は第2図に断面を示すように、基板8の平坦な表面上に・・・平均15μm以下の大きさの結晶粒子がほぼ1〜2層敷きつめられた第1蒸着層21と、この層21の結晶粒子の1つ1つもしくは複数の粒子の突起面上に結晶成長され、基板8に対して垂直方向に第1層21の厚さの約10倍以上に蒸着されて例えば平均7μmのピッチで密に並らぶ柱状結晶塊のアルカリハライド蛍光体の第2蒸着層22と、さらにこの層22の上にこの層よりも緻密な蒸着結晶構造を持つCsIのようなアルカリハライド蛍光体の第3の蒸着層23とを有してなる。・・・そしてとくに最も厚い第2蒸着層22を構成する柱状結晶塊の1つ1つがライトガイド作用を呈するものである。」(第3頁左下欄13行から右下欄11行まで)
(カ)「次にこの発明の好ましい製造方法にしたがってさらに詳しく説明する。・・・この蒸着により第1の蒸着層の各突起部分を種として互に分離された平均ピッチ15μm以下の柱状塊よりなる第2の蒸着層が形成される。なお、基板8上に蒸着したこれら蛍光体層は、その各柱状結晶塊が互いに微細な空隙によって隔絶されているので柱状塊の各々の結晶はフライバーオプティックスのように結晶の横方向へ光をほとんど通さず基板と垂直方向へ選択的に光りを通すライトガイド作用をもっている。」(第4頁右上欄5行から右下欄6行まで)
(キ)「また第6図および第7図は、・・・第2の蒸着層として沃化セシウム蛍光体を・・・蒸着したものの走査形電子顕微鏡写真・・・で、蛍光体柱状塊が表面迄きれいに成長していることがわかる。この場合の蛍光体柱状結晶塊の直径は平均約7μm(2〜20μm直径の範囲で分布している)で、隣接するもの同志互に密接もしくは極めてわずかな隙間を保って近接しあいながら比較的高密度に並んでいることがわかる。」(第5頁左下欄18行から右下欄10行まで)
(ク)「この第1の蒸着層の上に・・・直径が平均15μm以下の柱状結晶塊を基板に垂直方向に約100μm以上成長させると共に隣接する結晶間に微細はすき間を有して各柱状結晶塊がフライバーオプティックス作用を有する第2の蒸着層を形成する」(第6頁右上欄15行から左下欄2行まで)
2.対比・判断
本願発明と刊行物2に記載された発明とを対比する。
刊行物2には、本願発明の下記構成Aについては記載されていない。また、下記構成Aは刊行物2に記載された事項から当業者が容易に導くことができたものである、とも認められない。
記(構成A)
「カラムを0.5μmから3μmの間の範囲の幅を有する空所によって離間し、前記空所を、支持部材に直角な方向の一連のバブルによって少なくとも部分的に形成する」
そして、本願発明は、「かかる構体はひび割れ(クラックルド(crackled))構体を有する層として既知である。かかる構体を有する蛍光材料層を設けたX線像増強管は満足な動作を行うことが証明されているが、特にX線像増強管の解像度に対する要求が著しく高くなってきているため、前記構体をこの目的に対し最適化することが必要になってきている。実際上、これは発光材料層において一層高いひび割れ頻度が実現されることを意味する。」(明細書第5頁1行から9行まで(特許公報第2頁第3欄41行から48行まで))ところへ、「カラム間の間隔(ギャップ)は約0.25μm以上が好適であり、その理由はこの値が一層小さくなると光学的分離が劣化するからであり、かつカラム間の間隔は2μm以下が好適であり、その理由はこれ以上の値になると発光材料層の阻止能力が減少するからである。」(明細書第7頁7行から12行まで(特許公報第2頁第4欄14行から19行まで))との知見、及び「バブル間ではカラムは互いに接触できるが、これによっては比較的小さい光学的接触が生ずるに過ぎない。長手方向において測定したバブルは大体において直列長さの90%以上を占める一方、バブル間のノードも他の手段を講じなければ良好な光学的接触を形成せず、状態はむしろ逆になる。本発明による角度における蒸着はバブル形成に対し良好な影響を呈する。このようにして得た間隙はひび割れと、例えば原理的に個々の結晶である蒸着鉱柱間の分離部との間に多少、中間形態部を示す。」(明細書第7頁16行から第8頁6行まで(特許公報第2頁第4欄39行から48行まで))との知見に基づき、上記構成Aにより、「高い解像度を得るのに良好に適合したスクリーン構体は、・・・実現できる」(明細書第8頁7行から12行まで(特許公報第2頁第4欄49行から第3頁第4欄3行まで))との効果を得るものである。
したがって、本願発明は刊行物2に記載された発明であると言うことはできない。また、本願発明は刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると言うこともできない。
以下、刊行物2について検討する。
刊行物2には、本願発明の「空所を、支持部材に直角な方向の一連のバブルによって少なくとも部分的に形成する」に関連する事項として、「(蛍光体柱状結晶塊は)隣接するもの同士互に密接もしくは極めてわずかな隙間を保って近接しあいながら比較的高密度に並んでいることがわかる。」(上記(キ))と記載されているのでこれについて考察する。
まず、この記載(キ)の意味として、隣接する柱状結晶塊同士が、
(1)「基板側から光電面側に至るまで、一つの隙間も形成することなく密接して並んでいる」と「基板側から光電面側に至るまで、一度も密接することなく隙間を保って近接して並んでいる」のいずれかの状態で並んでいる
(2)「基板側から光電面側に至るまでの間に、密接もし隙間も保って近接して並んでいる」
の2つが考えられる。
ところで、刊行物2の第2の蒸着層に関するその他の記載(上記(イ)(ウ)(オ)(カ)(ク)等)を参照すると、「基板側から光電面側に至るまで、一度も密接することなく隙間を保って近接して並んでいる」(上記(1))について記載がある一方で、「基板側から光電面側に至るまでの間に、密接もし隙間も保って近接して並んでいる」(上記(2))について記載はなく、またそのことを窺わせる記載もない。
したがって、記載(キ)の意味は上記(2)の意味であると一義的に言うことはできず、結果、刊行物2に本願発明の「空所を、支持部材に直角な方向の一連のバブルによって少なくとも部分的に形成する」が記載されていると言うことはできない。
つぎに、刊行物2には、「すぐれた解像度、光電感度をもちかつ・・・入力蛍光面を提供する」(高解像度、上記(エ))、「各々の結晶はフライバーオプティックスのように結晶の横方向へ光をほとんど通さず基板と垂直方向へ選択的に光を通すライトガイド作用をもっている。」(ライトガイド作用、上記(カ))を目的とすること、及び、第2の蒸着層は「基板側から光電面側に至るまで、一度も密接することなく隙間を保って近接して並んでいる」(上記(1))こと、がそれぞれ記載されているものの、上述のように、「基板側から光電面側に至るまでの間に、密接もし隙間も保って近接して並んでいる」(上記(2))について記載はなくまたそのことを窺わせる記載もない。特に、その製造工程を見ても「この蒸着により第1の蒸着層の各突起部分を種として互に分離された平均ピッチ15μm以下の柱状塊よりなる第2の蒸着層が形成される。」と記載されているように、「基板側から光電面側に至るまでの間に、密接もし隙間も保って近接して並んでいる」を意図するものではない。
このように、刊行物2は、「高解像度」、「ライトガイド作用」という目的の認識においては本願発明と共通しているものの、第2の蒸着層を形成するの当たっての「バブル間ではカラムは互いに接触できるが、これによっては比較的小さい光学的接触が生ずるに過ぎない。」との本願発明の知見、すなわち、「隣接する柱状結晶塊の間に多少の接触があったとしても、光学的接触は比較的小さい」との知見が認識されていたとは言えない。一方、本願発明はこの知見に基づき「ライトガイド作用」を損なうことなく「高解像度」を実現したものである。
したがって、刊行物2には「隣接する柱状結晶塊の間に多少の接触があったとしても、光学的接触は比較的小さい」との本願発明の知見が認識されていたとは言えないことから、記載(キ)を参照しても本願発明の「空所を、支持部材に直角な方向の一連のバブルによって少なくとも部分的に形成する」を導き出すことはできない。
以上より、上記構成Aは、刊行物2に記載されておらず、また、刊行物2に記載された事項から当業者が容易に導くことができたものである、とも言えない。

第五.むすび
したがって、「本願発明は刊行物2に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない」という理由で本願は拒絶をすべきものであるとした原査定は妥当でない。
また、他に、本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2000-05-16 
出願番号 特願昭61-219852
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01J)
P 1 8・ 113- WY (H01J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 張谷 雅人中村 和夫小松 徹三  
特許庁審判長 高瀬 浩一
特許庁審判官 平井 良憲
渡邊 聡
発明の名称 X線像増強管の製造方法及びX線像増強管  
代理人 津軽 進  
代理人 沢田 雅男  

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