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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B02C
管理番号 1016176
審判番号 審判1998-18296  
総通号数 12 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1990-02-01 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-11-19 
確定日 2000-03-08 
事件の表示 昭和63年特許願第182337号「粉砕機及びセラミック粉体の粉砕方法」拒絶査定に対する審判事件(平成7年6月7日出願公告、特公平7-53248)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯・本願発明
本願は、昭和63年7月21日の出願であって、その請求項1乃至5に係る発明は、出願公告後の平成10年12月21日付手続補正書で補正した明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載したとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」と云う)は、下記のとおりのものであると認める。
「粉砕容器と、玉石と撹拌器とを備えた媒体撹拌型粉砕機において、前記撹拌器がジルコニアを主成分とするセラミックスからなり、かつ前記玉石の直径が0.4mm以下でかつジルコニア、ジルコン又はチタニアのいずれかを主成分とするセラミックスからなることを特徴とする粉砕機。」
II.引用例記載事項
これに対し、原査定の拒絶の理由となった特許異議の決定の理由に引用した「ウルトラ ビスコミル」(昭和62年度第3回粉砕分科会での配布資料)(以下「引用例」と云う)には、次のように記載されている。
(1)「顔料等の粒子がサブミクロンまで必要になってきたのはこの数年である。特に需要の多い軽量コート紙、中性抄紙に使用する炭酸力ルシューム、電子部品のコンデンサーに使用するチタン酸バリウム、磁気材料として使用するCO-γFe2O3、バリューム・フェライト、染料として使用する有機顔料、ファクシミリーに使用する感熱紙の染料+発色性酸化物など、情報産業での利用が盛んである。これらの粒子を分散・粉砕させるためには主に湿式分散機が使用されている。その原形となるものは、1948年Dupont社で開発したSandgrind-erである。その後各社で改良して今日までの経過をたどっているが、サブミクロンの分散・粉砕するには、ベッセッル内の循環回数(パス回数)を数回以上しないと性能が満足できないので効率が良くない。よってパス回数を少なくして、サブミクロンの分散・粉砕できるようにしたのがウルトラビスコ・ミルである。ウルトラビスコ・ミルは、従来の横型ビーズミルに比べサブミクロンの湿式分散・粉砕ができ、性能が飛躍的に向上した新製品です。」(第1頁第6〜22行)
(2)「1.スリットは精密円筒型で使用メディアは、粒径が0.2ミリのものまで使用できます。2.微細メディアが使用できるので、スラリー粒子に与える粉砕エネルギーが増大し、サブミクロンまで微粒分散粉砕が可能です。3.スリットの駆動はディスクの回転に関係なく、単独かつ低速回転で変速できる構造のため、スリットライフが大幅に向上した。4.メディアの投入は、ベッセル最上部からスムースに投入でき、投入時間の短縮化と高充填率化(80〜90%)が可能です。5.金属摩耗やコンタミを少なくするため、接液部やメディアは、ジルコニア等のオプションの中から選定できます」(第2頁第2〜10行)
(3)「メディア径mm φ0.42〜0.59」(第2頁「A.試験条件」の表中)
(4)「メディア径mm φ0.42〜0.59」(第3頁第9行)
(5)「メディアとして一般に使用されているのは、ソーダ系ガラスである。しかしガラスビーズの摩耗が品質向上に問題を生じている処理液がある。それに対応するために、最近セラミックの耐摩耗を応用したセラミックボールが、市販されてきている。特に部分安定化ジルコニアを原料として高強度・高靭性・耐摩耗にすぐれたジルコニアボールが、注目されているので一部紹介してみる。」(第4頁第6〜10行)
(6)「ジルコニアボールZ100」新日鉄φ0.5(第5頁「3.試験結果」の表中)
(7)「上記の試験では、A社のガラスビーズより、ジルコニアボールの方が耐摩性が良い。又ジルコニアボールの各社比較では、新日鉄Z100が耐摩性がすぐれている。」(第5頁下から第3行乃至最下行)
引用例には、サブミクロンの分散・粉砕ができる上記ウルトラビスコミルが記載されている。該ウルトラビスコミルはメディアを使用する湿式分散粉砕機であって、本願発明の玉石に相当するメディアと粉砕容器と撹拌器とを備えた媒体撹拌型粉砕機である。
引用例には「金属摩耗やコンタミを少なくするため、接液部やメディアは、ジルコニア等のオプションの中から選定できます」(第2頁第9〜10行)と記載されており、メディアをジルコニアからなるものとすることと共に、接液部を金属摩耗やコンタミを少なくするためにジルコニアからなるものとすることもまた記載されている。そして、撹拌機は接液部に配置され金属摩耗の発生源となるものであるからその接液部に属する粉砕機の構成部品である。したがって、引用例の上記の説明は、撹拌器をジルコニア等で構成することを開示したものにほかならない。
メディアについては、その直径が0.42〜0.59mmを使用した試験例及び当該ウルトラビスコミルでは、粒径が0.2ミリのメディアが使用できる」ことが説明されている。
III.対比
そこで、本願発明と引用例に記載された発明とを対比すると、両者は、
「粉砕容器と、玉石と撹拌器とを備えた媒体撹拌型粉砕機において、前記撹拌器がジルコニアを主成分とするセラミックスからなり、かつ前記玉石がジルコニア等を主成分とするセラミックスからなる粉砕機」である点で一致し、次の点で相違しているものと認められる。
(相違点)
本願発明の玉石が、その直径を「0.4mm 以下」とするところ、引用例には玉石の直径を0.4mm 以下とすることの直接の記載がない点。
IV.判断
本願明細書には、玉石直径が2mm、1mm、0.6mm、0.4mm及び0.3mmの試験例(表1及び表2参照)を記載し、「その実施例から明らかなように」(本件公報第3頁左欄第50行参照)前置きし、その例について次のように説明している。
「実施例に見られるように単に水量を減らすだけではスラリーの流動性がなくなり全く粉砕されない。玉石の磨耗量は直径が2mmの玉石では著しく大きいが1mm以下では激減する。玉石の直径は1mm以下で小さいほど微粉砕に適している。玉石の直径が0.6mm以下では微粉砕の効果はいっそう大きくなる。尚、玉石の大きさは平均の直径であり前後に分布しているものである」(本件公報4頁左欄第7〜13行参照)
その説明は、次のように要約できる。
▲1▼玉石の磨耗量は直径が2mmの玉石では著しく大きいが1mm以下では激減する。
▲2▼玉石の直径は1mm以下で小さいほど微粉砕に適している。
▲3▼玉石の直径が0.6mm以下では微粉砕の効果はいっそう大きくなる。
即ち、玉石の直径が0.4mmを境界にするところの技術的意義についての特段の説明はない。
引用例においては、試験例としてはメディア径を0.42mm〜0.59としたものが示されているに過ぎず、メディア径を0.4mm以下としたものは示されていない。しかしながら、その引用例には試験例に併せ「使用メディアは、粒径が0.2ミリのものまで使用できます」と記載されている。もし、試験例の「メディア径0.42〜0.59mm」における0.42mmが使用するメディアの下限径を意味するものであるとすれば、粉砕機のスクリーンを殊更0.2mmのもの迄の使用を可能に構成する必要性はない。これらを綜合し判断するに、引用例には「使用メディアは、粒径が0.2ミリのものまで使用できます」と記載されており、それはメディア径0.4mm以下を含む0.2mm程度のものの採用を予定した説明であるものと認める。
更に検討するに、前審における特許異議申立に際し特許異議申立人アシザワ株式会社が参考資料として提出した「粉砕」(No.30、細川粉体工学研究所、昭和61年3月5日発行、第83頁右欄第9行乃至第84頁左欄第18行)には「1μm以下の超微粒粉砕を狙う場合、0.3〜2.0mmのボール

結果の引用によって示している」と記載し、メディアをその直径が0.4mm以下である0.3mm程度とすることが、本願出願前に既に知られていた事実を示している。
したがって、玉石の直径が0.4mm以下のものとした点は、当業者が容易に想到することができたものである。
そして、本願発明の効果についても格別のものではなく予測できるものである。
V.むすび
本願発明は、本願出願前に国内において頒布された引用例に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論の通り審決する。
 
審理終結日 1999-12-06 
結審通知日 1999-12-17 
審決日 2000-01-06 
出願番号 特願昭63-182337
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B02C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大黒 浩之大熊 幸治鈴木 久雄  
特許庁審判長 藤田 豊比古
特許庁審判官 林 晴男
西野 健二
発明の名称 粉砕機及びセラミック粉体の粉砕方法  
代理人 坂口 智康  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 岩橋 文雄  

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