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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1016181
審判番号 審判1997-10548  
総通号数 12 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1987-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1997-06-30 
確定日 2000-01-05 
事件の表示 昭和62年特許願第79529号「多次元又は多方向テキスト・エデイター」拒絶査定に対する審判事件(昭和62年10月31日出願公開、特開昭62-250481)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明の要旨
本願は、昭和62年3月31日(パリ条約による優先権主張1986年3月31日および1986年6月27日、米国)の出願であって、その発明(以下、「本願発明」という。)の要旨は、特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。
「(a)情報処理システムにおける、多次元又は多方向のテキストのためのエディティング手段において、
(b)テキスト・キャラクタ及びエディットコマンドを表すキーストロークに応答して、テキストを定めるコードのストリングを発生するエディター手段(146)であって、
(b-1)テキストを表すコードの前記ストリングにおける前記コードは、
(b-1-1)前記テキストのキャラクタ又はシンボルを表わすキャラクタ・コードと、
(b-1-2)前記テキストの特性を定めるオペレータ・コードとを含み、
(b-1-2-1)前記オペレータ・コードは、前記テキストのユニット間の組織的な関係を定める構造オペレータと、
(b-1-2-2)前記テキストのキャラクタ及びシンボルの属性を定める環境オペレータとを含む、エディター手段と、
(c)エディティング手段のオペレーションに応答する構文解析手段(148)であって、
(c-1)前記ストリングの前記コードを読み取り、前記コードをコード化ユニット(134)に構文解析し、
(c-1-1)各コード化ユニットはユニットとして表現に配置される1つ又はそれ以上のキャラクタのグループを定めるコードのグループからなり、
(c-2)各コード化ユニットについてユニット構造(136)を発生し、
(c-2-1)各ユニット構造は対応するコード化ユニットの可視的な表示(120)を定める情報を含み、
(c-3)構文解析手段は前記エディター手段のオペレーションに応答して、前記ユニット構造及び対応する前記ストリングのコードを読み取り、前記テキストの可視的に表示可能な表示を発生する、構文解析手段と、
(d)を備える多次元又は多方向テキストのためのエディティング手段。」
(なお、行頭の符号は構成の比較を容易にするために便宜的に附したものである。)
2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前である昭和59年8月に頒布された「情報処理、Vol.25,No.8,P.848-853」(以下「引用例」という)には、次の記載がある。
(1)「TEXはKnuthによって開発された.特に数式について入念に考えられており、」(引用例第848頁左欄第14行〜15行)この記載から、引用例は多次元のテキストのためのエディティングに関する技術を開示していると認められる。
(2)「図-1に例を示す.\はTEXのコントロールシーケンス開始記号、{、}は区切り記号である.・・・中略・・・、\slはslantedフォントを使い、」(引用例第848頁左欄第21行〜25行)
(3)slantedフォントの使用例として、引用例第848頁図-1には、「\sl by A.N.Onym」が記載されており、その出力結果として「by A.N.Onym」と記載されている。
(4)引用例第850頁図-5には、いろいろな数式の入出力例が記載されており、例えば、入力例「$$\sqrt{1+\sqrt{1+\sqrt{1+\sqrt{1+X}}}}$$」が記載されており、この出力例として、

が記載されている。
そして、上記入力例における「1」、「+」及び「x」はテキストのキャラクタ又はシンボルを表すキャラクタコードであり、「\sqrt{}」はルート記号を指示するコントロールシーケンスを表すものと認められる。
(5)「TEXは文書の整形結果として、装置に依存しないコマンド列から成るDVI(DeVice Independent)ファイルを出力する.視覚化出力を得るためには、出力装置に応じた変換プログラムやインターフェースハードウエアが必要である.システムの構成例を図-7に示す.」(引用例第851頁左欄第4行〜8行)この記載から、テキストが含まれる文書から可視的に表示可能な表示が得られることが開示されていると認められる。
(6)そして、引用例第851頁の図-7には、ユーザーがテキストファイル「file.TEX」を「エディタ」により作成し、「TEXソフトウエア」および「TEX出カシステム」により「file.TEX」の視覚化出力を得るTEXシステムが記載されている。同図における「エディタ」の具体的機能については、引用例に記載されていないが、エディタは少なくともキーボードから文字や編集コマンドを入力して、所望の文章を作成する機能を有していなければならないから、エディタがテキスト・キャラクタ及びエディットコマンドを表すキーストロークに応答して、テキストを定めるコードのストリングを発生することは、引用例から自明のことと認められる。また、テキストが保存された「file.TEX」の視覚化出力を得るために、「TEXソフトウエア」および「TEX出カシステム」は、「file.TEX」の構文解析を行っていることは引用例の図-5の入出力例から判断しても自明のことと認められる。また、「TEXソフトウエア」および「TEX出カシステム」は、システム全体を構成するTEXシステムの一部をなすものと認められるから、TEXシステムのオペレーションに応答して動作することも自明であると認められる。
したがって、引用例には、次の事項を有する発明が記載されているものと認められる。
「(a′)情報処理システムにおける、多次元のテキストのためのTEXシステムにおいて、
(b′)テキスト・キャラクタおよびエディットコマンドを表すキーストロークに応答して、テキストを定めるコードのストリングを発生するエディター手段であって、
(b-1′)テキストを表すコードの前記ストリングにおける前記コードは、
(b-1-1′)前記テキストのキャラクタ又はシンボルを表わすキャラクタ・コードと、
(b-1-2′)前記テキストの特性を定めるコントロールシーケンスとを含み、
(b-1-2-1′)前記コントロールシーケンスは、ルート記号を指示する\sqrt{}と、
(b-1-2-2′)slantedフォントを指示する\slと、を含む、エディター手段と、
(c′)TEXシステムのオペレーションに応答するTEXソフトウエア及びTEX出カシステムであって、
(c-1′)前記ストリングのコードを読み取り、前記ストリングを構文解析し、
(c-3′)TEXソフトウエア及びTEX出カシステムは前記テキストの可視的に表示可能な表示を発生する、TEXソフトウエア及びTEX出カシステムと、
(d′)を備える多次元のテキストのためのTEXシステム。」
3.対比
本願発明と引用例に記載された発明とを対比する。
引用例に記載された発明における「コントロールシーケンス」、「ルート記号を指示する\sqrt{}」、「slantedフォントを指示する\s」、「TEXソフトウエア及びTEX出カシステム」および「TEXシステム」は、それぞれ本願発明における「オペレータ・コード」、「テキストのユニット間の組織的な関係を定める構造オペレータ」、「テキストのキャラクタ及びシンボルの属性を定める環境オペレータ」、「構文解析手段」および「エディティング手段」に相当するものと認められる。
以上の点を考慮すると、引用例に記載された発明と本願発明とは、
「(a)情報処理システムにおける、多次元又は多方向のテキストのためのエディティング手段において、
(b)テキスト・キャラクタ及びエディットコマンドを表すキーストロークに応答して、テキストを定めるコードのストリングを発生するエディター手段であって、
(b-1)テキストを表すコードの前記ストリングにおける前記コードは、
(b-1-1)前記テキストのキャラクタ又はシンボルを表わすキャラクタ・コードと、
(b-1-2)前記テキストの特性を定めるオペレータ・コードとを含み、
(b-1-2-1)前記オペレータ・コードは、前記テキストのユニット間の組織的な関係を定める構造オペレータと、
(b-1-2-2)前記テキストのキャラクタ及びシンボルの属性を定める環境オペレータとを含む、エディター手段と、
(c)エディティング手段のオペレーションに応答する構文解析手段であって、
(c-1″)前記ストリングの前記コードを読み取り、前記ストリングを構文解析し、
(c-3″)構文解析手段は前記エディター手段のオペレーションに応答して、前記テキストの可視的に表示可能な表示を発生する、構文解析手段と、
(d)を備える多次元又は多方向テキストのためのエディティング手段。」
である点で一致しているものと認められる。
そして、以下の点で両者は相違しているものと認められる。
(i)本願発明では、構文解析手段が、ストリングのコードを読み取り、前記コードをコード化ユニットに構文解析し、各コード化ユニットはユニットとして表現に配置される1つ又はそれ以上のキャラクタのグループを定めるコードのグループからなり、各コード化ユニットについてユニット構造を発生し、各ユニット構造は対応するコード化ユニットの可視的な表示を定める情報を含むのに対して、引用例には、構文解析手段に関する具体的な記載がない点。
(ii)本願発明では、エディター手段のオペレーションに応答して、構文解析手段が視覚的に表示可能な表示を発生する対して、引用例には、エディターと構文解析あるいは表示手段との関係が示されていない点。
4.当審の判断
(相違点(i)について)
引用例に記載された発明において、上記(4)で引用した入力例にも示されるように「x+1」はユニットとして表現に配置される複数のキャラクタの集まりであると認められる。そして、その出力例に示されるように、「x+1」というキャラクタの集まりに対して、一つのルート記号が附されている。これはキャラクタの集まりに対してルート記号を付加し、可視的な表示を実現しているものと認められる。してみると、「TEXソフトウエア及びTEX出カシステム」においてコードをコード化ユニットに構文解析すること(すなわち、「x+1」を一つのまとまりを持ったキャラクターのグループとして認識すること)および該コード化ユニットについてユニット構造を発生すること(すなわち、「x+1」に対して単一のルート記号を付加するための構造を発生させること)は、当業者が構文解析を具体的にインプリメントする際に当然に採用する構成であると認められるから、本願発明の上記構成は、引用例に記載された発明から当業者であれば容易に想到し得ることと認められる。
したがって、上記相違点(i)が格別のものであるとは認めることができない。
(上記相違点(ii)について)
テキストを作成するエディタにおける操作指示により、表示又は印字機能を起動せしめ、テキストの可視的に表示可能な表示を発生せしめることは、当業者に周知の技術であると認められるから、引用例に記載された発明において、エディターのオペレーションに応答して、TEXソフトウエアおよびTEX出カシステムが視覚化出力を発生せしめるようにすることは、当業者が上記周知の技術から容易になし得る事項と認められる。してみると、本願発明においてエディター手段のオペレーションに応答して、構文解析手段が視覚的に表示可能な表示を発生することは、当業者が容易になし得ることと認められる。
5.結び
以上の通りであるから、本願発明は、引用例に記載された発明および上記周知の技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論の通り審決する。
 
審理終結日 1998-04-23 
結審通知日 1998-05-19 
審決日 1998-05-14 
出願番号 特願昭62-79529
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂庭 剛史  
特許庁審判長 祖父江 榮一
特許庁審判官 鶴谷 裕二
稲葉 慶和
発明の名称 多次元又は多方向テキスト・エデイター  
代理人 社本 一夫  
代理人 小林 泰  

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