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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A41B
管理番号 1016182
審判番号 審判1993-12646  
総通号数 12 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1989-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1993-06-21 
確定日 2000-02-29 
事件の表示 昭和63年特許願第15685号「改良された留め具装置を有する使い捨ておむつ」拒絶査定に対する審判事件(平成1年6月27日出願公開、特開平1-162802)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [I]本願は、昭和63年1月26日の出願(優先権主張1987年1月26日,1987年12月18日 米国)であって、平成9年1月16日付けの手続補正書により補正し、本願発明は、「改良された留め具装置を有する使い捨ておむつ」に関するものであって、請求項1に係る発明は、明細書および図面の記載からみて、特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「1.液体透過性トップシート、該トップシートに固定された液体不透過性バックシート、該トップシートと該バックシートの間に包まれた液体を吸収するための吸収材芯、使い捨ておむつの各縦側に隣接した縦方向綾部分、該縦方向縁部分の各々に操作的に連合した弾性部材、使い捨ておむつの一方の末端における第一の腰部分、使い捨ておむつの反対側末端における第二の腰部分、及び該第一の腰部分及び該第二の腰部分を使用時に重複配置にて維持するための留め具装置であって、該留め具装置が、
複数のループ状繊維要素よりなる第一の部材、及び
該第一の部材の該ループ状繊維要素と係合可能な第二の部材よりなり、該第二の部材が、
a)第一の表面及び第二の表面を有するベース、及び
b)該ベースの該第一表面から延在する複数の係合要素よりなり、該係合要素の各々が、
i)該ベース上にその末端において支持されている脚部、及び
ii)該ベースの反対側の該脚部の末端に位置した拡大頭部よりなり、該頭部は平滑な、概して凸状の頂部表面及び該脚部から該脚部の少なくとも二つの半径に沿って該頂部表面の周辺に半径方向に外方に延在する底部表面を有し、該底部表面が該ループ状繊維要素の少なくとも一つにより係合されるようにされており、
該留め具装置の繊維張出し比が少なくとも約2:1であり、及び高さ比が少なくとも約5:1であることを特徴とする使い捨ておむつ。」(以下、「本願発明」という。)
[II]これに対して、当審における平成9年3月5日付けの拒絶の理由の概要は、本願明細書の記載不備を指摘したうえで、特開昭57-161101号公報(以下、引用例1という。)、特開昭61-255607号公報(以下、引用例2という。)、および、米国特許第3,138,841号明細書(以下、引用例3という。)に記載の発明を引用して、本願発明は前記引用例に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないというものである。そして、
▲1▼ 引用例1の特開昭57-161101号公報には、本願発明との比較において、『透水性シート11(本願発明における「液体透過性トップシート」に相当する。)と、該透水性シート11に固定された不透水性シート12(同、「液体不透過性バックシート」)、該透水性シート11と該不透水性シート12の間に包まれた液体を吸収するための吸収体(図示せず)(同、「吸収芯」)、前側部(同、「使い捨ておむつの一方」)の末端における第一の腰部分(第4図の符号8の近傍)、背側部(同、「使い捨ておむつの反対側」)末端における第二の腰部分(第4図の符号9の近傍)、該第一の腰部分及び該第二の腰部分を使用時に重複配置して維持するための係止部材1及び締め付け部材2(同、「留め具装置」)であって、
繊維6よりなる締め付け部材2(同、「第一の部材54」)、及び、該締め付け部材2の繊維6と着脱(係合)可能な係止部材1(同、「第二の部材」)よりなり、該係止部材1(同、「第二の部材」)が、
a)基材4(同、「ベース68」)を有し、
b)基材4(同、「ベース68」)の表面から延在する複数の係止突起3(同、「係合要素74」)よりなり、該係止突起3の各々が、脚部とさくらんぼ型突起の拡大頭部(第1図Bより)を有している使い捨ておむつ』が記載されている。
▲2▼ 引用例2の特開昭61-255607号公報には、きのこ型突起を有する面ファスナーであって、雌面は6ナイロンの100デニールのマルチフィラメント糸の経編起毛パイル製品で形成し、雄素子A(第2図),C1(第4図),C2(第5図)はきのこ型突起であり、雄面セグメントとしてはポリプロピレン系合成繊維の300デニールを使用したおり、おむつに使用した場合の剪断強度および剥離強度を考慮ていることが記載されている。
▲3▼ 引用例3の米国特許第3,138,841号明細書には、きのこ型突起の高さが、雄繊維の直径に比較して十分に高い面ファスナーが記載されている。
[III](本願発明と引用例との比較・検討)
そこで、本願発明(以下、「前者」という。)と、引用例1に記載された発明(以下、「後者」という。)とを比較するが、それに先だって、平成9年3月5日付けの拒絶の理由で、本願明細書の記載が不備であり特許法第36条第3,4項に規定する要件を備えていないと指摘し、これに対て出願人は平成9年9月16日付け意見書を提出しているので、前者の特許請求の範囲における不明瞭な語句を、請求人が上記意見書でも認めているように次のように解釈した。
(1)前者の「使い捨ておむつの各縦側に隣接した縦方向縁部分、該縦方向縁部分の各々に操作的に連合した弾性部材、」とは、使い捨ておむつの脚部の出し入れ分にゴム等の弾性部材を配する程度の意味と解釈した。
(2)前者の「第一の表面70及び第二の表面72を有するベース68」とは、ベースの係合要素が存在する表面及びその裏面の意味と解釈した。なお、後者の基材4も当然に同様の構成である。
(3)前者の「脚部の少なくとも二つの半径にそって頂部表面の周辺に半径方向に外方に延在する底部表面を有し」とは、実施例の写真Fig6からみて、断面が真円の半分である、きのこ形状をも含むものと解釈した。
(4)前者の「繊維張出し比が少なくとも約2:1であり」とは、「一本のループ状繊維の直径に対して、繊維要素の頭部の底部表面82が脚部76からの張出距離Zの比が2:1以上である」と解釈した。
(5)前者の「高さ比が少なくとも約5:1である」とは、「一本のループ状繊維の直径に対して、頭部78の底部表面82の最下位部分からのベース68までの垂直距離Hの比が5:1以上である」と解釈した。
したがって、本願発明は、「液体透過性トップシート12、該トップシート12に固定された液体不透過性バックシート16、該トップシート12と該バックシート16の間に包まれた液体を吸収するための吸収材芯14、使い捨ておむつの脚部の出し入れ分にゴム等の弾性部材18、使い捨ておむつの一方の末端22における第一の腰部分、使い捨ておむつの反対側末端24における第二の腰部分、及び該第一の腰部分及び該第二の腰部分を使用時に重複配置にて維持するための留め具装置52であって」該留め具装置52が、
複数のループ状繊維要素62よりなる第一の部材53、及び該第一の部材53の該ループ状繊維要素62と係合可能な第二の部材54よりなり、該第二の部材54が、
a)ベース68の係合要素74が存在する表面70及びその裏面72
b)該ベースの該表面から延在する複数の係合要素74よりなり、該係合要素74の各々が、
i)該ベース68上にその末端において支持されている脚部76、及び
ii)該ベース68の反対側の該脚部76の末端に位置した拡大頭部78よりなり、該頭部は平滑な、概して凸状の頂部表面80及び該脚部76から該脚部76の少なくとも二つの半径に沿って該頂部表面80の周辺に半径方向に外方に延在する底部表面82を有し、該底部表面82が該ループ状繊維要素62の少なくとも一つにより係合されるようにされており、
該留め具装置の一本のループ状繊維64の直径に対して、繊維要素の頭部の底部表面82が脚部76からの張出距離Zの比が2:1以上であり、及び一本のループ状繊維64の直径に対して、頭部78の底部表面82の最下位部分からのベース68までの垂直距離Hの比が5:1以上であることを特徴とする使い捨ておむつ。」と解釈した。
そして、使い捨ておむつにおいて、脚部の出し入れ分にゴム等の弾性部材を配すること自体はこの出願前周知であって、後者には弾性部材について直接的記載はないが、弾性部材を配することに前者と実質的な相違はない。
したがって、両者を比較すると、両者は「液体透過性トップシート、該トップシートに固定された液体不透過性バックシート、該トップシートと該バックシートの間に包まれた液体を吸収するための吸収材芯、使い捨ておむつの脚部の出し入れ分にゴム等の弾性部材、使い捨ておむつの一方の末端における第一の腰部分、使い捨ておむつの反対側末端における第二の腰部分、及び該第一の腰部分及び該第二の腰部分を使用時に重複配置にて維持するための留め具装置であって、該留め具装置が、
複数のループ状繊維要素よりなる第一の部材、及び該第一の部材の該ループ状繊維要素と係合可能な第二の部材よりなり、該第二の部材が、
a)ベースの係合要素が存在する表面及びその裏面
b)該ベースの該表面から延在する複数の係合要素よりなり、該係合要素の各々が、
i)該ベース上にその末端において支持されている脚部、及び
ii)該ベースの反対側の該脚部の末端に位置した拡大頭部よりなる係合要素からなり、該係合要素が該ループ状繊維要素の少なくとも一つにより係合されるようにされている使い捨ておむつ。」である点で一致し、次の点で一応相違する。
[相違点]
(1)前者の係合要素が、きのこ型突起であって、「ループ状繊維64の直径に対して、係合要素の頭部の底部表面82が脚部76からの張出し距離Zの比が2:1以上である」のに対して、後者の係合要素は、さくらんぼ型突起であって、具体的に係合要素の数値限定が記載されていない点。
(2)前者の係合要素が、きのこ型突起であって、「ループ状繊維64の直径に対して、頭部78の底部表面82の最下位部分からのベース68までの垂直距離Hの比が5:1以上である」のに対して、後者の係合要素は、さくらんぼ型突起であって、具体的に係合要素の数値限定が記載されていない点。
なお、前者における上記数値の「2:1」,「5:1」の意味が必ずしも明瞭ではなく、特に、数値の前後での作用の差は明確ではなく、平成9年1月16日付け意見書の記載からすれば、係合度合いが「幼児によって剥離されることがなく、大人によって取外せる」(2頁26〜末行)程度の意味と解釈でき、厳格な数値の限定であるとは理解できない。
次に、上記相違点を検討する。
(相違点1について)
引用例2においても、雌面は6ナイロンの100デニールのマルチフィラメント糸の経編起毛パイル製品としているから、少なくとも2本以上のフィラメントからなり、仮に2本からなるマルチフィラメントとした場合でも、単糸フィラメントでは100/2=50デニールとなり、きのこ型突起であるA(第2図),C1(第4図),C2(第5図)型の雄面セグメントとしてはポリプロピレン系合成繊維の300デニールを使用したとあるから、雄のきのこ型突起フィラメントの直径は、雌の起毛パイルフィラメントの直径のほぼ

そして、張出し距離Zも第2,簗4,第5図より雄のフィラメントの直径程度の距離を有していると認められ、技術常識からしても、係合するために距離Zは雌繊維の直径よりも十分大きくなければならず妥当な距離であると理解できるから、雌の起毛パイル(ループ状繊維)を形成するフィラメントの直

維の直径に対して、繊維要素の頭部の底部表面が脚部からの張出し距離Zの比が、ほぼ2.45:1である」ことが認められ、引用例2はおむつに使用した場合の剪断強度および剥離強度を考慮しているから、後者の留め具装置として用いることに困難性はなく、当業者が必要に応じて適宜選択して使用しうる設計的事項にすぎず、それによる効果も当業者が予測される範囲を越えるものではなく、上記相違点(1)は格別のものとは認められない。
(相違点2について)
きのこ型突起の而ファスナーにおいて、引用例3に記載されているように、一般に、きのこ型突起の高さHがフィラメント(繊維要素)の直径に比較して十分に高いものは周知であり、引用例2においても、図から雄而セグメントであるフィラメントの直径の少なくとも2,3倍以上を有するものと認められ、技術常識からも、係合するために高さHは十分大きな高さでなければならず妥当な高さであると理解できる。
このことは、雌の起毛パイルのフィラメントの直径が、前述したように雄面セグメントであるフィラ

例2においても「ループ状繊維の直径に対して、頭部の底部表面の最下位部分からのベースまでの垂直

上である」と認められ、前記数値も十分に5:1以上を含み、前(1)項と同様に引用例2はおむつに使用した場合の剪断強度および剥離強度を考慮しているから、後者の留め具装置として用いることに困難性はなく、当業者が必要に応じて適宜選択して使用しうる設計的事項にすぎず、それによる効果も当業者が予測される範囲を越えるものではなく、上記相違点(2)は格別のものとは認められない。
以上のように、前記各相違点はいずれも格別のこととは認められず、それらを総合する上で格別工夫を要するものとは認められず、それらを総合により格別の効果を奏するものとも認められない。
[V]それゆえ、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、引用例1、引用例2、および、引用例3に記載の発明および技術常識に基づいて、当業者が容易に発明することができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1997-10-13 
結審通知日 1997-10-21 
審決日 1997-10-31 
出願番号 特願昭63-15685
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A41B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小野寺 務  
特許庁審判長 小原 英一
特許庁審判官 船越 巧子
河合 厚夫
発明の名称 改良された留め具装置を有する使い捨ておむつ  
代理人 野一色 道夫  
代理人 佐藤 一雄  
代理人 小野寺 捷洋  

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