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審決分類 審判 全部申し立て 4項(5項) 請求の範囲の記載不備  C01F
審判 全部申し立て 2項進歩性  C01F
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  C01F
管理番号 1016193
異議申立番号 異議1998-71328  
総通号数 12 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-11-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-03-16 
確定日 2000-03-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2655138号「新規な形態的特徴を有する酸化第二セリウム」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、 次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2655138号の特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第2655138号に係る出願は、昭和60年2月20日(パリ条約による優先権主張1984年2月20日)に出願された特願昭60-30685号の一部を特許法第44条第1項の規定により、平成7年8月28日に、特願平7-240457号として新たに特許出願されたものであって、平成9年5月30日に特許の設定の登録(発明の数1)がなされたところ、その特許請求の範囲の請求項1に係る発明の特許に対し、内田明(以下、「申立人」という。)より特許異議の申立てがあり、請求項1に係る発明の特許に対して取消理由の通知がされ、その指定期間内である平成11年3月8日に訂正請求がなされた。
なお、申立人は、特許請求の範囲の請求項2についても特許異議を申し立てているが、請求項2は請求項1に係る発明の実施態様項であって、本件特許に係る発明の要旨ではなく、特許異議申立の対象とはならないので、前記のように認定した。

II.訂正の適否についての判断

1.訂正明細書の請求項1に係る発明
訂正明細書の請求項1に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】400〜450℃の間の温度で6時間焼成した後に100〜130m2/gの比表面積(BET法で測定)を有することを特徴とする、100m2/g以上の比表面積を有する焼成酸化第二セリウム。」
(以下では、訂正明細書の請求項1に係る発明を「訂正発明」という。)
2.訂正の内容
訂正請求は、本件特許の願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであって、その訂正の内容は次のとおりである。
〈訂正事項〉
特許請求の範囲の請求項1中の「酸化第二セリウム」を「100m2/g以上の比表面積を有する焼成酸化第二セリウム」と訂正する。
3.訂正の目的、新規事項禁止、拡張・変更禁止の各要件についての判断
訂正事項は、訂正前の「酸化セリウム」について、その比表面積を限定すると共にそれが焼成されたものであることを技術的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、「焼成酸化第二セリウム」が「100m2/g」以上の比表面積を有することは、特許明細書の【0005】中の、「本発明の酸化第二セリウムは、最高の比表面積、即ち、400〜450℃の間の温度で焼成した後に100〜130m2/gの比表面積(BET法で測定)を示す。」という記載、【0014】中の「得られた酸化第二セリウムは400〜450℃の温度で焼成した後に100〜130m2/g程度の最大比表面積を示すことが確かめられた。」という記載、【0019】〜【0020】中の「450℃で6時間焼成」して得たものが「105m2/gの比表面積を示す。」という記載及び【0022】中の「得られた沈殿を400℃で6時間焼成する。110m2/gの比表面積を表わす酸化第二セリウムが得られた。」という記載によって開示されている。
してみれば、「100m2/g以上」という数値限定を付加する訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてされたものである。
また、請求項1の対象物が、訂正前の「酸化第二セリウム」を「焼成酸化第二セリウム」とする点について以下検討する。
特許明細書には次の記載A〜Dがある。
A.「本発明の目的は、従来技術のものよりも大きく且つ安定な比表面積を有する酸化第二セリウムを提供することである。」(【0004】)
B.「本発明の酸化第二セリウムは、最高の比表面積、即ち、400〜450℃の間の温度で焼成した後に100〜130m2/gの比表面積(BET法で測定)を示す。」(【0005】)
C.「発明の酸化第二セリウムは、セリウム(IV)の塩の水溶液を酸性媒体中で加水分解し、得られた沈殿をろ過し、洗浄し、場合によってはそれを乾燥し、次いで焼成することを特徴とする方法によって製造することができる。」(【0009】)
D.「この方法の第一工程においては、酸化第二セリウム水和物SeO2・2H2O(「Se」は「Ce」の誤記と認められる。)の製造が行われる。…(中略)…本発明の酸化第二セリウムの製造方法の第二工程は、反応後、懸濁液の形態にある温度が90〜100℃の間にある反応物をろ過することからなる。…(中略)…上記の製造方法の最後の工程においては、乾燥生成物は、触媒としての酸化第二セリウム平均使用温度として好ましくは選ばれる温度で焼成される。」(【0010】〜【0014】)
上記のA及びBには、本件発明の酸化第二セリウムは、「大きく且つ安定な比表面積を有」し、「最高の比表面積」を示すことが記載されており、また、特許明細書の【表1】には、焼成前の酸化第二セリウムは比表面積が小さい(<50m2/g)ことが示唆され、最大の比表面積は400〜450℃での焼成によって得られることが示されている。
また、上記C、Dには、本件発明の酸化第二セリウムは未焼成の酸化第二セリウムを焼成することによって得られることが示されている。
上記A、Bによると、特許明細書において、「本件発明」として説明されているものは、「大きく且つ安定な比表面積を有」し、「最高の比表面積」を示すものであって、これは焼成前の酸化第二セリウムが示す物性ではなく、また、特許明細書において「本件発明」の「物」の製造方法として示されているものは焼成工程を含むものである。
これらのことからすると、本件特許明細書中で本件発明として認識され、説明されていたものは「焼成酸化第二セリウム」であることは明らかであり、訂正事項において、「酸化第二セリウム」を、「焼成酸化第二セリウム」とする点は、発明の対象物をより明確にしたものであるといえる。
上記のとおりであるから、訂正事項は、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、この訂正は願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであって、しかも、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
4.独立特許要件について
4-1.当審が通知した取消理由の概要
(1)特許法第36条違反について
本件特許は、特許法第36条第4項及び5項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきである。
(2)特許法第29条第2項違反について
請求項1に係る発明は、下記引用例4,5を勘案すれば、下記引用例1〜3の刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、取り消されるべきである。

引用例1:Surface Technology,Vol.21 No.1(1984)p.73-82
引用例2:Thermochimica Acta,Vol.47(1981)p.27-36
引用例3:粉体及び粉末冶金、第17巻第6号(1971年3月) 第243〜250頁
引用例4:特願昭60-30685号出願(本件特許の原出願)の出願経過において本件特許権者が提出した特許異議答弁書
引用例5:ニッキ株式会社川口工場研究部課長の小林武敏が平成10年3月2日作成した実験成績証明書
引用例6:粉体工学研究会他編「粉体物性図説」(昭和50年11月15日、(株)産業技術センター発行、第222頁
(なお、引用例6は、請求項2に記載の技術的事項について挙げたものである。)
4-2.引用例1〜6の内容
各引用例にはそれぞれ、次の事項についての記載がある。
(1)引用例1
(1-1)酸化セリウム水和物をCeCl3・7H2Oの溶液から沈殿させること、及びこのようにして得た酸化セリウム水和物を水素、酸素又は窒素の雰囲気中で150〜550℃の温度範囲で2時間熱処理したこと(第74頁第26〜39行)。
(1-2)酸化セリウム水和物を酸素雰囲気中で熱処理したものが、137.6〜179.7m2/g(BET法)の比表面積を示したこと(第79頁の表1)
(2)引用例2
(2-1)硝酸アンモニウムセリウムの溶液から酸化セリウム(IV)水和物を製造し、これを空気の存在下で2時間の間周囲温度〜800℃で熱処理したこと(第28頁第13〜28行)。
(2-2)酸化セリウム水和物の熱処理品が次のような比表面積を示したこと(第30頁表1及び表2)
焼成温度(℃) BET比表面積(m2/g)
サンプルC1 サンプルC2
未焼成 164.5 214.7
110 175.1 204.2
210 156.2 207.1
310 131.7 160.8
400 145.2 152.9
600 97.9 114.5
800 87.5 89.7
(2-3)酸化第二セリウムのサンプルC1 を周囲温度から800℃まで加熱したときの熱重量分析曲線(a)とDTA曲線(b)を示す図(第29頁のFig1)
(3)引用例3
(3-1)セリウム修酸塩10水和物を空気中で5℃/分の昇温速度で加熱処理したときの、酸化セリウムの比表面積の変化及びこの加熱処理により、セリウム修酸塩10水和物が、350℃で約130m2/g、400℃で約110m2/g及び450℃で約90m2/gの比表面積を示すこと(第249頁図9)
(4)引用例4
引用例4の第15頁第11〜14行には、「本願発明者は・・甲第2号証(本件特許異議申立の証拠である甲第1号証(引用例1)に相当)のTable1に記載の酸化第二セリウムの比表面積(SBET)の結果を再現すべく実験を行った」との記載があり、同頁第15行〜第17頁第15行には酸化第二セリウムの製造方法と共に、実験結果として次のデータが示されている。
焼成条件 比表面積(m2/g)
温度(℃) 時間(hr) SBET 甲第2号証
350 2 83 134
400 2 75 -
400 6 70 -
550 2 44 179
550 2 40 145
550 2 44 109
(5)引用例5
引用例5は、ニッキ(株)の小林武敏が引用例1を追試した結果を記載したものであり、焼成後の酸化第二セリウムの比表面積について次のデータが示されている。
比表面積(m2/g)
焼成温度・時間 酸素雰囲気 空気中
400℃×2hr 123.0 124.1
400℃×4hr 121.8
400℃×6hr 122.5 124.4
(6)引用例6
(6-1)セリウム研磨剤について、化学式がCeO2・Ln2O3であり、それが、全レアアース95%でそのうちCeO2が90%、La2O3が4%であること、平均粒子系が0.5〜0.6μmであること(第222頁)
(6-2)セリウム研磨剤の粒度分布の例を示す図(第222頁)
4-3.対比・判断
(1)特許法第36条違反について
訂正発明の対象物が「焼成酸化第二セリウム」であることは前記「II.3」で述べたとおりである。
ところで、特許請求の範囲の「400〜450℃の間の温度で6時間焼成した後に100〜130m2/gの比表面積(BET法で測定)を有する」という構成は、その焼成処理の対象となるものが何であるかが明確ではない。
そこで、特許明細書の記載を参酌するに、特許明細書の【0009】には、「発明の酸化第二セリウムは、セリウム(IV)の塩の水溶液を酸性媒体中で加水分解し、得られた沈殿をろ過し、洗浄し、場合によってはそれを乾燥し、次いで焼成することを特徴とする方法によって製造することができる。」との記載があり、また、特許明細書の【0014】には、「上記の製造方法の最後の工程においては、乾燥生成物は、触媒としての酸化第二セリウムの平均使用温度として好ましくは選ばれる温度で焼成される。焼成温度は300〜600℃、好ましくは350〜450℃の間で選ばれる。」との記載がある。
これらの記載からすると、本件特許明細書においては、「焼成」とは、沈殿物について行われる熱処理操作を意味していることが読みとれるから、前記焼成処理の対象物は未焼成の酸化第二セリウムであると認めることができる。
また、特許明細書の【0014】には、「比表面積の測定に供される酸化第二セリウムを得るには、例えば、実施例に記載のように6時間焼成される。温度範囲の下限は臨界的意義を持たず、下げることができる。反対に、焼成温度の上限を上げることは、得られる酸化第二セリウムの比表面積が小さくなることが確認されているので利益がない。さらに、得られた酸化第二セリウムは400〜450℃の温度で焼成した後に100〜130m2 /g程度の最大比表面積を示すことが確かめられた。」との記載があり、この記載によると、訂正発明の対象物である「焼成酸化第二セリウム」を得るための未焼成酸化第二セリウムは、400〜450℃の温度で6時間焼成した時にそれが100〜130m2/gの比表面積を示すような性質を有するものであることを意味している。
そうすると、訂正発明の構成要件のうちの、「400〜450℃の間の温度で6時間焼成した後に100〜130m2/gの比表面積(BET法で測定)を有する」という構成は、本件発明の焼成酸化第二セリウムの物性を直接的に表現するものではないが、焼成酸化第二セリウムの原料である焼成前の酸化第二セリウムについて、それが「400〜450℃の間の温度で6時間」という焼成条件によって、「100〜130m2/gの比表面積を示す」という性質を有するものであることに着目して、この酸化第二セリウムの物性を特定することによって焼成酸化第二セリウムを間接的に特定しようとするものであるとすることができる。
そして、このように未焼成酸化第二セリウムの物性によって焼成酸化第二セリウムを特定することをもって、直ちに、特許請求の範囲の請求項1には、発明の構成に欠くことのできない事項のみが記載されていないとすることはできない。
以上のとおりであるから、特許請求の範囲の発明の詳細な説明を参酌すれば、「400〜450℃の間の温度で6時間焼成した後に100〜130m2/gの比表面積(BET法で測定)を有する」という構成において、その焼成処理の対象となるものは未焼成の酸化第二セリウムであることを認めることができるから、前記の構成は発明の構成に欠くことのできない事項のみを記載したものではないとすることはできない。
また、訂正発明の構成要件のうち、「100m2/g以上の比表面積を有する焼成酸化第二セリウム」という構成は、上記のような未焼成の酸化第二セリウムから得られた焼成物であって、その比表面積が100m2/g以上のであるものが本件訂正発明の対象物であることを規定したものであり、「焼成酸化第二セリウム」が「100m2/g」以上の比表面積を有することが発明の詳細な説明中に開示されていることは前記「II.3」で認定したとおりである。
更に、訂正明細書の発明の詳細な説明中の【0002】には、酸化第二セリウムが触媒の用途に使用できることが記載され、また、同じく【0019】〜【0023】には、訂正発明の焼成酸化第二セリウムを製造するための方法が記載されている。
そうすると、訂正明細書の発明の詳細な説明には、当業者が容易にその実施をすることができる程度に、発明の目的、構成及び効果が記載されているとすることができる。
上記のとおりであるから、訂正明細書は、特許法第36条第4項及び同第5項の規定を満たしている。
(2)特許法第29条第2項違反について
(2-1)引用例1記載のものとの対比
引用例1には、CeCl3・7H2Oの溶液から沈殿させた酸化セリウム水和物を150〜550℃の温度範囲で2時間熱処理したものが137.6〜179.7m2/g(BET法)の比表面積を示したことが記載されている。
しかるに、引用例1の記載からは、引用例1記載の未焼成物を400〜450℃の間の温度で6時間焼成して得られたものが100〜130m2/gの比表面積を有するものであるか否かは不明である。
(2-2)引用例2記載のものとの対比
引用例2には、硝酸アンモニウムセリウムの溶液から酸化セリウム(IV)水和物を製造し、これを空気の存在下で2時間で周囲温度〜800℃で加熱したこと及びその場合における熱重量分析曲線(a)とDTA曲線(b)を示す図が示されている。
このことからすると、引用例記載の試験は、2時間かけて、周囲温度から800℃まで温度を徐々に上昇させて酸化第二セリウムを加熱したときの酸化第二セリウムの物性の変化を調べたものであり、その表1に示されている比表面積のデータも、試料について温度を上昇させ、ある温度Tに達したときの試料の比表面積の値を示したものであるとするのが相当である。
従って、引用例2の記載からは、引用例2記載の未焼成物を400〜450℃の間の温度で6時間焼成した後に100〜130m2/gの比表面積を有するものであるか否かは不明である。
(2-3)引用例3記載のものとの対比
引用例3には、セリウム修酸塩10水和物を空気中で5℃/分の昇温速度で加熱処理したときの、酸化セリウムの比表面積の変化が示されているのみであり、比表面積の数値としては、350℃で約130m2/g、400℃で約110m2/g及び450℃で約90m2/gという値が示されている。
しかるに、引用例3記載の未焼成物を400〜450℃の間の温度で6時間焼成した後に100〜130m2/gの比表面積を有するものであるか否かは不明である。
(2-4)その他の引用例について
引用例6には、化学式がCeO2・Ln2O3であるセリウム研磨剤について、その粒度分布の例が示されているに過ぎない。
引用例4は、本件特許権者が、出願経過において、引用例1の追試結果を示すものとして提出したものであって、追試結果として、引用例1記載の酸化セリウム水和物を350〜550℃の温度で2時間焼成したところ、最大でも83m2/gの比表面積を示したこと、また、400℃で6時間焼成では70m2/gの比表面積を示したことが記載されており、これは、引用例1記載の実験データの信頼性を否定するものである。
引用例5は、ニッキ(株)の小林武敏が、引用例1を追試した結果を記載したものであり、これには、引用例1記載の酸化セリウム水和物を焼成した結果、その比表面積(m2/g)は、次のものであったことが記載されている。
比表面積(m2/g)
焼成温度×時間 酸素雰囲気 空気中
400℃×2hr 123.0 124.1
400℃×4hr 121.8
400℃×6hr 122.5 124.4
この試験結果は、引用例1記載の酸化セリウム水和物が400℃で6時間焼成したものが100m2/g以上の比表面積を有することを示している。
しかるに、引用例1に記載の酸化セリウム水和物については、引用例4に示されているように、400℃での6時間焼成では70m2/gの比表面積しか示さないという実験データが他方では存在するのであり、引用例5の試験結果が技術的真実であると断定すべき根拠を見いだすことはできない。
また、本件訂正発明における、「400〜450℃の間の温度で6時間焼成した後に100〜130m2/gの比表面積(BET法で測定)を有する」という構成は、本件訂正発明に係る未焼成の酸化第二セリウムを物性によって特定するため、その物性試験の方法を規定したものであるから、引用例1記載のものが本件訂正発明と同様の物性を有するとするには、6時間焼成を400〜450℃の温度範囲内のいずれの温度において行っても100〜130m2/gの比表面積を示すことを明らかにする必要があるとするのが相当であるところ、引用例5は、本件訂正発明で規定する焼成温度の下限値である400℃についてのみ行ったものに過ぎない。
上記のとおりであるから、引用例5を勘案してみても、引用例1から、本件訂正発明の構成に想到することが容易であったとすることはできない。
また、引用例4〜6の記載を考慮に入れて、引用例1〜3を相互に勘案しても、引用例1〜3記載のものから、本件訂正発明の構成に当業者が容易に想到することができたものとすることはできない。
従って、訂正発明は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。
以上のとおりであるから、訂正発明は特許出願の際に独立して特許を受けることができるものである。
5.訂正の認否
上記のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の4第2項ただし書及び同条第3項において準用する同法第126条第2〜4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.特許異議申立について

1.本件発明
前述のように、本件訂正は適法なものであるので、本件請求項1に係る発明は、前記「II.1」において摘記したとおりの訂正発明である(以下、「本件発明」という。)。
2.特許異議申立の概要・判断
申立人の主張する特許異議申立ての理由及び証拠方法は、当審が取消理由通知において示した取消理由及び証拠方法と同一のものである。
従って、上記「II.4」で述べたと同じ理由により、申立人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件特許が、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとすることはできない。
3.申立人の主張について
(1)申立人の平成11年9月27日付回答書における主張
(1-1)訂正請求において、「酸化第二セリウム」を「100m2/g以上の比表面積を有する焼成酸化第二セリウム」とする訂正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものではないから、特許法第120条第3項で準用する同法第126条第2項の規定に違反する。
(1-2)訂正請求において、「酸化第二セリウム」を「焼成酸化第二セリウム」とする訂正は、特許請求の範囲を実質上変更するものであり、特許法第120条第3項で準用する同法第126条第3項の規定に違反する。
(2)申立人の上記主張についての判断
「酸化第二セリウム」を「100m2/g以上の比表面積を有する焼成酸化第二セリウム」とする訂正が、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてされたものであること、及び「酸化第二セリウム」を「焼成酸化第二セリウム」とする訂正が実質上特許請求の範囲を変更するものではないことは、上記「II.3」で述べたとおりである。
また、申立人は、訂正前の発明の対象物は「未焼成酸化第二セリウム」であるとするが、特許明細書の発明の詳細な説明においては、本件発明の対象物が「焼成酸化第二セリウム」であることが一貫して示されていることは「II.3」で述べたとおりであり、この発明の詳細な説明に記載した発明の構成に欠くことのできない事項として特許請求の範囲に「酸化第二セリウム」と記載して特許の登録がされているのであるから、訂正前の発明の対象物が「未焼成酸化第二セリウム」であったとするのは相当でない。

IV.むすび

上記のとおりであるから、本件発明についての特許は、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
新規な形態的特徴を有する酸化第二セリウム
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 400〜450℃の間の温度で6時間焼成した後に100〜130m2/gの比表面積(BET法で測定)を有することを特徴とする、100m2/g以上の比表面積を有する焼成酸化第二セリウム。
【請求項2】 細く狭い幅の粒度分布を示し、そして平均直径が0.5〜1.5μmであり、標準偏差e1及びe2が1.0〜2.5の間にあることを特徴とする請求項1記載の酸化第二セリウム。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な形態的特徴を有する酸化第二セリウムに関する。
以下の説明において、「比表面積」という用語は、「The Journal of American Society,60,309(1938)」に記載のブルナウアー・エメット・テラー(Brunauer-Emmet-Teller)法に従って決定されるB.E.T.比表面積を示す。
【0002】
【従来の技術】
酸化第二セリウムは、単独で又は他の金属酸化物と混合して、特にメタノールの合成(C.R.Seances Acad.Sci.Ser.2;292(12),883-5(1981))用触媒或いは残留ガス処理法(特願昭51-62616号)において使用する触媒として使用される。
触媒の反応性を良くするにはできるだけ大きな比表面積を持つ酸化第二セリウムを用意するのが望ましい。
ところが、これまで、酸化第二セリウムを得る方法のほとんどがこの結果を達成していない。
例えば、S.Horsley、J.M.Towner及びM.S.Waldron(Tirages Prelim.Syrup.Eur.Metall.Poudres,4th、1、文書12(1975))の論文により、セリウム(III)のしゅう酸塩の熱分解によりセリウム(IV)の酸化物を調製する方法が知られている。
しかし、450℃での加熱処理の後に69m2/gの比表面積しか有しない酸化第二セリウムが得られる。
【0003】
また、R.Sh.Mikhail、R.M.Gabr及びR.B.Fahin{J.Appl.Chem.,20,7,222-225(1970)}の論文を挙げることができる。この論文は、酸化第二セリウムの構造に注目しつつ、過酸化水素水の存在下にアンモニアで硝酸第一セリウム溶液を処理するこにより得られる水酸化第二セリウムの焼成によって調製される酸化第二セリウムの性質をの研究している。しかしながら、400℃で焼成して得られた酸化第二セリウムは80m2/gの比表面積しか示さないことが注目される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来技術のものよりも大きく且つ安定な比表面積を有する酸化第二セリウムを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、セリウム(IV)の塩の水溶液を酸性媒体中で加水分解し、得られた沈殿をろ過し、洗浄し、場合によってはそれを乾燥し、次いで焼成することによって、非常に大きい比表面積を有すると共に温度を上昇させても比表面積が大きく変動しない酸化第二セリウムを提供できることを見出した。
即ち、本発明の酸化第二セリウムは、最高の比表面積、即ち、400〜450℃の間の温度で焼成した後に100〜130m2/gの比表面積(BET法で測定)を示す。
本発明の酸化第二セリウムの他の特徴は、温度を上昇させたときに比表面積が僅かしか変動しないことである。
しかして、本発明の酸化第二セリウムは、300℃及び600℃の各焼成温度において90m2/g程度の比表面積、そして400℃で120m2/g程度の比表面積を示し、しかもその比表面積は400℃から600℃に温度を高めても、即ち400℃の温度で焼成し、次いで600℃の温度で焼成した後でもせいぜい約30m2/gしか、特にせいぜい約20m2/gしか減少しないようなものである。
【0006】
【0007】
さらに、本発明の酸化第二セリウムの他の特徴は、これが細く狭い粒度分布を示すことである。
しかして、本発明の酸化第二セリウムは、0.2〜2.0μmの粒子寸法を有する。粒度測定の方法は、粒子の重力沈降により生ずるX線の吸収の変化に基づいている。
【0008】
一般に、粒子の大きさは、平均直径(d50)で表わして、0.5〜1.5μm、好ましくは0.9〜1.1μmの間である。ここで、平均直径とは、粒子の50重量%が平均直径よりも大きい以下又は小さい直径を有するような直径であると定義される。
比率(d84)/(d50)及び(d50)/(d16)によって定義される標準偏差e1及びe2は1.0〜2.5の間にある。
添付する図1及び図2は、本発明によって得られる酸化第二セリウムの球状粒子の形態を表わす走査電子顕微鏡写真(二つの異なった拡大率G=1,200及びG=12,000)を表わす。また、得られた生成物の均一な粒度分布が認められる。
【0009】
【発明の実施の形態】
発明の酸化第二セリウムは、セリウム(IV)の塩の水溶液を酸性媒体中で加水分解し、得られた沈殿をろ過し、洗浄し、場合によってはそれを乾燥し、次いで焼成することを特徴とする方法によって製造することができる。
【0010】
この方法の第一工程においては、酸化第二セリウム水和物SeO2・2H2Oの製造が行われる。
これを行うためには、セリウム(IV)の塩の溶液より出発する。これは、硝酸第二セリウム水溶液又は硝酸第二セリウムアンモニウム水溶液であってよい。この溶液は、第一セリウム状態のセリウムを不都合なく含有できるが、良い沈殿収率を得るためには少なくとも85%のセリウム(IV)を含有することが望ましい。
セリウム塩は、焼成後に最終生成物中に見出されるかもしれない不純物を含有しないようなものから選ばれる。99%以上の純度を有するセリウム塩を用いることが有益である。
セリウム塩の溶液の濃度は本発明では臨界的ではない。セリウム(IV)で表わして、その濃度は0.3〜2モル/リットルであってよい。
加水分解の媒体は水からなり、これは好ましくは蒸留水又はイオン交換水である。
加水分解は酸性媒体中で行われる。酸性度は加水分解反応の開始によって得てもよい。なぜならば、1モルの酸化第二セリウム水和物の生成は4個のプロトンの放出を伴うからである。
酸性度は、無機酸を添加することにより得てもよい。好ましい方法によれば、硝酸が選ばれる。酸は濃くてもよく又は例えば1×10-2Nまで希釈されていてもよいものを用いることができる。
また、酸性度は、弱酸性であって0.3〜5N、好ましくは0.3〜1Nの規定度を有する硝酸第二セリウム溶液から得てもよい。
加水分解の媒体は1×10-2Nから1.0Nまでの酸性度を表わすことができる。
【0011】
セリウム(IV)の塩の水溶液と加水分解媒体(本質的に水)との比率は、セリウム(IV)の最終当量濃度が0.2〜0.8モル/リットルの間であるような比率である。
セリウム(IV)の最終当量濃度は次式によって定義される。
【数1】

上式において、〔CeIV〕はセリウム(IV)の塩の溶液のモル/リットル濃度を表わし、
Vは場合により酸を加えた水の体積を表わし、
V’はセリウム(IV)の溶液の体積を表わす。
上記のような条件下で行われるセリウム(IV)の塩の加水分解は、好ましくは70℃から反応媒体の還流温度(これは100℃付近にある)までで行われる。
しかし、制御と再現が容易である還流温度ではさらに容易に作業することができる。
【0012】
好ましい実施態様によれば、反応は、場合により酸を含有する水を上記のように規定した範囲で選ばれる所望温度が得られるまで加熱することで開始される。
それから、徐々に又は連続的にセリウム(IV)の塩の溶液を導入する。セリウム(IV)の塩の溶液の添加時間は一般に1〜4時間である。セリウム(IV)の塩の溶液の添加流量についての例示は実施例を参照されたい。
この溶液の添加が終了した後、その水和物の形のセリウム(IV)の沈殿が完了するまで加熱し続ける。この期間は、1〜24時間の非常に広い範囲で変えられるが、一般には2〜8時間の加熱で十分である。
【0013】
本発明の酸化第二セリウムの製造方法の第二工程は、反応後、懸濁液の形態にある温度が90〜100℃の間にある反応物をろ過することからなる。この操作は、反応物を周囲温度、即ち10〜25℃に冷却する前に又は冷却した後に行われる。
好ましい別法によれば、沈殿上に吸着した硝酸イオンを除去するようにろ過ケーキが洗浄される。
この洗浄は、有機溶媒によって行われる。その例として、脂肪族、環状脂肪族又は芳香族炭化水素、或いはメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、ネオブタノールのような脂肪族又は環状脂肪族アルコールが挙げられる。一回又は数回の洗浄が行われる。しばしば行われるのは1〜3回の洗浄である。この洗浄の後、ケーキの含水量は20〜80%、一般に20〜50%である。
ろ過、洗浄操作の後に得られた生成物は、次いで風乾し又は1×10-2〜100mmHg程度の減圧下で乾燥される。乾燥温度は90〜200℃の問で変えることができ、乾燥時間は臨界的意義がなく、10〜48時間の間で変えることができる。
【0014】
上記の製造方法の最後の工程においては、乾燥生成物は、触媒としての酸化第二セリウムの平均使用温度として好ましくは選ばれる温度で焼成される。
焼成温度は300〜600℃、好ましくは350〜450℃の間で選ばれる。焼成は約30分〜約10時間行われる。比表面積の測定に供される酸化第二セリウムを得るには、例えば、実施例に記載のように6時間焼成される。
温度範囲の下限は臨界的意義を持たず、下げることができる。
反対に、焼成温度の上限を上げることは、得られる酸化第二セリウムの比表面積が小さくなることが確認されているので利益がない。さらに、得られた酸化第二セリウムは400〜450℃の温度で焼成した後に100〜130m2/g程度の最大比表面積を示すことが確かめられた。
焼成後、酸化第二セリウムを非常に良い収率で収集することができる。なぜならば、このものがセリウム(IV)で表わしときに出発時のセリウム(IV)の塩の溶液中に存在するセリウム(IV)の85〜95%を示しているからである。
さらに、本発明の上記の製造方法は全く連続的に実施するのに適している。
【0015】
本発明の酸化第二セリウムの製造は、従来の装置で実施することができる。酸化第二セリウム水和物の沈殿工程は、温度調節された加熱装置、反応調節のための常用手段(温度計)、撹拌手段(アンクル式又はラセン式撹拌)及び反応体導入手段を備えた反応器内で行われる。
次いで、得られた懸濁液のろ過は、窒素のような不活性ガス圧力下のフィルター、減圧下のフィルター(ブヒナー又はヌッチェ)又は連続ろ過装置、例えばベルネイ(Vernay)型回転フィルター若しくは帯フィルターで実施することができる。
沈殿物は、シリカ製、陶製又はアルナ製ボートの中に置き、次いで乾燥操作に付される。この乾燥操作は、任意の装置、例えば換気付き乾燥室又は減圧乾燥室で行うことができる。
次いで、焼成処理に付される。この焼成処理は熱処理の間に温度調節ができる装置を備えた室内炉、トンネル炉、マッフル炉又は回転炉内で行うことができる。
【0016】
本発明の酸化第二セリウムの応用は非常に多い。特に、フィラー、結合剤、ウォッシュコート、シックナー、分散剤、補強剤、顔料、吸着剤並びにセラミック及びガラス研磨組成物などが挙げられる。
【0017】
本発明の酸化第二セリウムは、大きな比表面積を持っているので、触媒の領域内で触媒として又は触媒担体として使用するのに適している。
この比表面積が急激な温度上昇の影響下であまり変動しないことを考えれば、良好な触媒寿命が保証される。
本発明の酸化第二セリウムは、例えば炭化水素その他の有機化合物の脱水、ヒドロ硫酸化、水素化脱窒化、脱硫、水素化脱硫、脱ハロゲン化水素、改質、蒸気改質、クラッキング、水素化クラッキング、水素化、脱水素、異性化、不均化、オキシクロル化、脱水素環化のような反応、酸化還元反応、クラウス反応、内燃機関の排気ガス処理、脱金属、メタン化、シフト・コンバージョンのような種々の反応を行うための触媒又は触媒担体として使用することができる。
本発明の酸化第二セリウムは、単独で又は他の酸化物との混合物として使用することができる。
化学反応性が高いために、本発明の酸化第二セリウムは、例えばAl2O3-MgO-CeO2(特願昭53-40077号)のような混合担体を作成するのに有利である。
【0018】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0019】
例1
温度計、撹拌装置、反応体導入系(計量供給ポンプ)、上向冷却器を備え、また加熱装置も備えた6リットルの三口のフラスコに4265cm3のイオン交換水を導入し、これを沸騰させる。
次いで、119M/リットルのセリウム(IV)及び0.05M/リットルのセリウム(III)を含有する2735cm3の硝酸第二セリウム溶液を900cm3/hの割合で導入する。この溶液は0.5Nに等しい遊離酸性度及びCeO2で表わして99%以上の純度を有する。
しかして、0.465M/リットルに等しいセリウム(IV)の最終当量濃度を有する溶液が得られた。
反応物を3時間還流し続ける。
次いで、フリットガラス(気孔率No.3)でろ過する。
608gの酸化第二セリウム水和物CeO2・2H2Oの沈殿が回収されたが、このものは硝酸第二セリウム中に含まれるCeIVと比較して表わして90%のCeIV収率となる。
エタノールで続けて3回洗浄する(608gの沈殿に対して1000cm3のエタノールの割合で)。その際、沈殿は遠心処理により回収する。
洗浄した沈殿を乾燥室内で105℃で48時間乾燥する。
沈殿をアルミナ製ボートに入れ、次いでマッフル炉内で450℃で6時間焼成する。
【0020】
得られた酸化第二セリウムは、下記の物理化学的性質を示す。
(1)その純度は非常に良好であるので、0.27重量%の吸蔵硝酸イオンを含有するにすぎない。
(2)得られた酸化第二セリウムの結晶構造は、モリブデン又は銅の単色光線透過デバイ-シェラー法によって特徴づけられる。
本発明に従って製造された酸化第二セリウムは、螢石型構造、即ち面心立方晶型構造を有する。
CaF2がた構造のパラメーター及び強さは次の通りである。
格子定数 α=5.42±0.01Å
結晶化率 t=68%
純粋な酸化第二セリウムの格子定数は5.411Åである(JCPDS4 0593)。
従って、格子定数はわづかに拡大していることがわかる。
(3)それは105m2/gの比表面積を示す。
(4)その粒度分析から、狭い幅の粒度分布が立証される。
【0021】
まず、2〜3g/リットルのCeO2の懸濁液を調整し、セジグラフ(SEDIGRAPH)5000D装置によって粒度分析を行う。
この装置は、懸濁粒子の沈降速度を測定し、これらの結果を等価球体の直径の関数として累積%で表わした分級線として自動的に表示する(ストークスの法則に基づいている)。
この装置は、非常に細いX線束によって、時間の関数として種々の沈降高さで懸濁状で保持された粒子のの濃度を決定する。X線の強度の対数が電気的に得られ、記録され、次いで記録装置XYのY軸上に「累積%」(より小さいものから)として線状で表わされる。分析に要する時間を制限するために、沈降セルは、そのセルの深さが時間に逆比例するように連続的に運動状態にある。セルの運動は、所定の沈降深さで経過時間に相当する等価球体の直径を直接指示させるために記録装置のX軸と同期させ、そして寸法の情報が3つのモジュールで対数方眼紙上に表示される。
粒子の直径の関数として得られた累積%は次の通りである。
d50=1.1μm
d16=0.51μm
d84=1.7μm
標準偏差e1及びe2は、次の通りである。
(d84)/(d50)の比であるe1は1.5に等しい。
(d50)/(d16)の比であるe2は2.11に等しい。
【0022】
例2
還流させた1155cm3の水と105.5cm3の濃硝酸(約14.5N)に、1.25M/リットルのセリウム(IV)、0.04M/リットルのセリウム(III)を含み且つ0.63Nに等しい遊離酸性度を有する740cm3の硝酸第二セリウム溶液を導入し、そして反応媒体の遊離酸性度が約1Nであることを除いて、例1を繰返す。
硝酸第二セリウム溶液の添加は246cm3/hの割合で行う。
反応物を3時間還流し続ける。
ろ過し、これにより33gの酸化第二セリウム水和物を回収する。これは17%のCeIV収率に相当する。
次いで、例1におけるように洗浄し、乾燥する。
得られた沈殿を400℃で6時間焼成する。
110m2/gの比表面積を表わす酸化第二セリウムが得られた。
【0023】
例3〜10
この一連の例では、得られた酸化第二セリウムの比表面積に対する焼成温度の影響を立証するものである。
それぞれの試験は、例2の実施態様に一致させたが、焼成温度は各回で変えることにより実施した。それぞれの試験で得られた各沈殿は所定の温度で6時間焼成された。
得られた結果は表1に示す通りである。
【表1】

上記の表から、酸化第二セリウムを400℃付近で焼成した後に最も大きな比表面積が得られることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の酸化第二セリウムの粒子構造の電子顕微鏡写真(1,200倍の拡大率)である。
【図2】
本発明の酸化第二セリウムの粒子構造の電子顕微鏡写真(12,000倍の拡大率)である。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許第2655138号発明の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正する。
その訂正の内容は次のとおりである。
特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として、特許請求の範囲の請求項1中の「酸化第二セリウム」を「100m2/g以上の比表面積を有する焼成酸化第二セリウム」と訂正する。
異議決定日 2000-02-10 
出願番号 特願平7-240457
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C01F)
P 1 651・ 532- YA (C01F)
P 1 651・ 531- YA (C01F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 辻 邦夫吉見 京子後谷 陽一安齋 美佐子  
特許庁審判長 酒井 正己
特許庁審判官 唐戸 光雄
能美 知康
登録日 1997-05-30 
登録番号 特許第2655138号(P2655138)
権利者 ローヌ-プーラン・スペシアリテ・シミーク
発明の名称 新規な形態的特徴を有する酸化第二セリウム  
代理人 風間 弘志  
代理人 倉内 基弘  
代理人 倉内 基弘  
代理人 風間 弘志  

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