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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C30B
審判 全部申し立て 2項進歩性  C30B
審判 全部申し立て 特29条の2  C30B
管理番号 1016199
異議申立番号 異議1999-71516  
総通号数 12 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-07-05 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-04-21 
確定日 2000-02-21 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2816633号 「単結晶引き上げ装置および引き上げ方法」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2816633号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第2816633号は、平成4年12月16日に特許出願され、平成10年8月21日にその特許の設定登録がされ、その後異議申立人・北垣 敏、及び西塚保遠により特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年11月5日に訂正請求がされた後、訂正拒絶理由が通知され、訂正拒絶理由に対して手続補正書が提出されたものである。
2.訂正の適否についての判断
ア.訂正請求に対する補正の適否について
特許権者は、(1)訂正請求書の特許請求の範囲の請求項1に関する訂正事項中、訂正後の記載の「融液面の上方の引き上げ単結晶を取り巻く位置に外周が輻射スクリーンによって囲まれた上部ヒータ」を「融液面の上方の、単結晶の引き上げと原料多結晶供給の兼用経路上の単結晶引き上げ時の引き上げ単結晶と単結晶引き上げ後に供給される原料多結晶とを取り巻く位置に、外周が輻射スクリーンによって囲まれて前記兼用経路に供給される原料多結晶を加熱する上部ヒータ」と補正し、(2)訂正請求書の第3頁第1行〜同頁第4行の「「融液面の上方の引き上げ単結晶を取り巻く位置に外周が幅射スクリーンによって囲まれた上部ヒータを設ける構成としている。また、融液面の上方に引き上げ単結晶を取り巻く上部ヒータを設けたチョクラルスキー法による」と訂正し、」を「「融液面の上方の、単結晶の引き上げと原料多結晶供給の兼用経路上の単結晶引き上げ時の引き上げ単結晶と単結晶引き上げ後に供給される原料多結晶とを取り巻く位置に、外周が輻射スクリーンによって囲まれて前記兼用経路に供給される原料多結晶を加熱する上部ヒータを設ける構成としている。また、融液面の上方に引き上げ単結晶を取り巻く上部ヒータを設けたチョクラルスキー法による」と訂正し、」と補正するものである。訂正請求に対する補正(1)は、訂正請求書に添付した明細書を基準明細書とし特許請求の範囲の減縮に該当するものであり、補正(2)は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるから、訂正請求書の要旨を変更するものでなく、特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に適合する。
イ.訂正の内容
(1)特許請求の範囲の請求項1に係る記載
「融液面の上方に引き上げ単結晶を取り巻く上部ヒータ」を「融液面の上方の、単結晶の引き上げと原料多結晶供給の兼用経路上の単結晶引き上げ時の引き上げ単結晶と単結晶引き上げ後に供給される原料多結晶とを取り巻く位置に、外周が輻射スクリーンによって囲まれて前記兼用経路に供給される原料多結晶を加熱する上部ヒータ」と訂正する。
(2)同請求項2に係る記載
「上部ヒータを用いて原料多結晶を溶解することを特徴とする請求項1の単結晶引き上げ装置を用いる単結晶引き上げ方法。」を「融液面の上方に引き上げ単結晶を取り巻く上部ヒータを設けたチョクラルスキー法による単結晶引き上げ装置の前記上部ヒータを用いて原料多結晶を溶解することを特徴とする単結晶引き上げ方法。」と訂正する。
(3)同請求項3に係る記載
「上部ヒータを用いて原料多結晶を加熱し、るつぼを取り巻くメインヒータを用いて前記原料多結晶を溶解することを特徴とする請求項1の単結晶引き上げ装置を用いる単結晶引き上げ方法。」を「融液面の上方に引き上げ単結晶を取り巻く上部ヒータを設けたチョクラルスキー法による単結晶引き上げ装置の前記上部ヒータを用いて原料多結晶を加熱し、るつぼを取り巻くメインヒータを用いて前記原料多結晶を溶解することを特徴とする単結晶引き上げ方法。」と訂正する。
(4)同請求項4に係る記載
「一定量の原料多結晶を溶解した後、追加する原料多結晶を上部ヒータまたは上部ヒータとメインヒータとを用いて溶解することを特徴とする請求項1の単結晶引き上げ装置を用いる単結晶引き上げ方法。」を「融液面の上方に引き上げ単結晶を取り巻く上部ヒータを設けたチョクラルスキー法による単結晶引き上げ装置を用い、一定量の原料多結晶を溶解した後、追加する原料多結晶を上部ヒータまたは上部ヒータとメインヒータとを用いて溶解することを特徴とする単結晶引き上げ方法。」と訂正する。
(5)明細書第3頁第1行〜同頁第3行の「融液面の上方に引き上げ単結晶を取り巻く上部ヒータを設ける構成とし、この」を「融液面の上方の、単結晶の引き上げと原料多結晶供給の兼用経路上の単結晶引き上げ時の引き上げ単結晶と単結晶引き上げ後に供給される原料多結晶とを取り巻く位置に、外周が輻射スクリーンによって囲まれて前記兼用経路に供給される原料多結晶を加熱する上部ヒータを設ける構成としている。また、融液面の上方に引き上げ単結晶を取り巻く上部ヒータを設けたチョクラルスキー法による」と訂正する。
(6)明細書第4頁第6行目の「上部ヒータ10は」を「外周が輻射スクリーン9によって囲まれた上部ヒータ10は」と訂正する。
ウ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項(1)は特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。訂正事項(2)〜(4)は、請求項1が訂正されたことに伴い、請求項2〜4に係る発明について、訂正前と訂正後の発明の同一性を担保するための訂正であって、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。訂正事項(5)は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。訂正事項(6)は、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。そして、上記訂正(1)〜(6)は、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
エ.訂正明細書の請求項1〜4に係る発明
訂正明細書の請求項1〜4に係る発明(以下、「本件発明1〜4」という)は、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された次に記載のとおりのものである。
「【請求項1】チョクラルスキー法による単結晶引き上げ装置において、融液面の上方の,単結晶の引き上げと原料多結晶供給の兼用経路上の単結晶引き上げ時の引き上げ単結晶と単結晶引き上げ後に供給される原料多結晶とを取り巻く位置に、外周が輻射スクリーンによって囲まれて前記兼用経路に供給される原料多結晶を加熱する上部ヒータを設けたことを特徴とする単結晶引き上げ装置。
【請求項2】融液面の上方に引き上げ単結晶を取り巻く上部ヒータを設けたチョクラルスキー法による単結晶引き上げ装置の前記上部ヒータを用いて原料多結晶を溶解することを特徴とする単結晶引き上げ方法。
【請求項3】融液面の上方に引き上げ単結晶を取り巻く上部ヒータを設けたチョクラルスキー法による単結晶引き上げ装置の前記上部ヒータを用いて原料多結晶を加熱し、るつぼを取り巻くメインヒータを用いて前記原料多結晶を溶解することを特徴とする単結晶引き上げ方法。
【請求項4】融液面の上方に引き上げ単結晶を取り巻く上部ヒータを設けたチョクラルスキー法による単結晶引き上げ装置を用い、一定量の原料多結晶を溶解した後、追加する原料多結晶を上部ヒータまたは上部ヒータとメインヒータとを用いて溶解することを特徴とする単結晶引き上げ方法。」
オ.独立特許要件の判断
(1)特許法第29条第1項第3号或いは同条第2項違反について
(引用刊行物)
本件発明1に対して、当審が通知した取消理由で引用した刊行物1(特開昭54-139890号公報)、刊行物2(特開昭56-100195号公報)、刊行物3(実願昭60-67877号の全文明細書及び図面)、刊行物4(特開昭60-86092号公報)、刊行物5(特開平1-153589号公報)、刊行物6(特開昭61-201692号公報)、刊行物7(特開平4-16589号公報)には、それぞれ次の発明が記載されている。
刊行物1;
半導体単結晶製造装置に関して、次の発明が記載される。
(1)特許請求の範囲には、「半導体を入れるルツボと、このルツボを加熱する加熱機構と、前記ルツボの真上に配設され下端に種結晶を保持する保持部を有する昇降可能な引上軸とを備える半導体単結晶製造装置において、ルツボ内に入れられる溶融状態の半導体の好ましくは溶湯面領域のみを加熱する補助加熱機構を有することを特徴とする半導体単結晶製造装置。」と記載される。
(2)第4頁に第2図から第5図を掲げるとともに、第2頁右下欄6行〜13行には、「(第2図および第3図の)ルツボ10の上部には円弧を描く、補助加熱機構(補助ヒータ)16が配設されている。この補助ヒータ16はルツボ10の内周壁と種結晶14に引き上げられながら作られる単結晶17の外周面とのほぼ中間部に沿って延び、かつルツボ10内の溶融シリコン18の溶湯面19のわずか上方に位置するようになっている。」と記載される。
刊行物2;
半導体単結晶成長法に関するもので、第3頁に第2図を掲げるとともに、第2頁右上欄6行〜13行には、「(第2図の)この後通常の引上速度(毎分0.5〜8mm)により結晶を引き上げながら成長させ、その際に結晶体4と溶融体2との温度差を小さくするために、結晶体の周囲に設けた上下移動可能のヒーター9により結晶を加熱する。例えば溶融体は高周波加熱により約1400℃に保ち、一方結晶体は抵抗加熱(ヒーター)により1300 〜1350℃に加熱する。」と記載される。
刊行物3;
単結晶成長装置に関して、次の発明が記載される。
(1)実用新案登録請求の範囲には、「結晶原料の融液を収容するるつぼと、前記融液を加熱するために前記るつぼの周囲に設けられている第1の加熱手段と、前記融液から単結晶を引き上げる引上げ手段とをそれぞれ具備する単結晶成長装置において、前記るつぼと前記融液と引き上げられた前記単結晶とによって形成される空間に第2の加熱手段を設けたことを特徴とする単結晶成長装置。」と記載される。
(2)第14〜15頁に第1図〜第3図を掲げるとともに、第8頁1行〜5行には、「(第1図、第2図の)るつぼ2と融液3と単結晶6とによって形成される空間15には、融液3の液面に近接して環状の発熱体16が設けられている。この発熱体16は、円筒状の熱遮蔽体17の底面17aに断熱材(図示せず)を介して取り付けられている。」と記載される。
刊行物4;
単結晶引き上げ装置に関して、次の発明が記載される。
(1)特許請求の範囲の請求項1には、「溶融体から単結晶を引上げる装置において、引上げた結晶の周囲に配置したアフタヒータを結晶引上げに伴い生じる溶融面の降下に応じて降下させ溶融面と該ヒータの間隔を最適値に保つような機構を有することを特徴とする単結晶引上装置。」が記載される。
(2)第4、5頁に第4図、第5図を掲げるとともに、第2頁右下欄2行〜13行には、「(第4図の)るつぼと同じ材質の白金製のアフタヒータ21が結晶周囲に設けられ、このヒータを上下に移動するためにネジ棒に固定されている。ネジ棒はモータ15により回転できるようになっている。このアフタヒータ21を発熱させるため第5図に示すように白金製の支持棒14が図のように溶接してあり、上部に電極取りだし用の端子がある。上下に移動するネジ棒との固定部と電極との間には絶縁体のパイロフェライト19を設けた。白金製のアフタヒータの温度はスライダック16とトランス19で調整する構造になっている。」と記載される。
刊行物5;
単結晶引き上げ装置に関して、次の発明が記載される。
(1)特許請求の範囲の請求項4には、「るつぼに入れられた溶融原料を引上げて柱状の単結晶を製造する装置において、複数の小孔が貫設され前記引上げられる単結晶を囲むように前記るつぼ内に浸潰された仕切りリングと、該仕切りリングの外側の溶融原料上に配設された顆粒状原料の供給装置とを備え、前記仕切りリングの外側の溶融液に近接して加熱体を配設すると共に、該加熱体、仕切りリング及び前記るつぼの側壁を囲むように保温板を配設したことを特徴とする単結晶引上げ装置。」と記載される。
(2)第6、7頁に第5図、第7図を掲げるとともに、第5頁左上欄1行〜8行には、「(第5図の)23は保温板20に囲まれた仕切りリング11の外側の溶融面上に、第7図に示すように原料供給装置13の直下及び温度検出器14,15の視野領域を除いて配設された、全体としてリング状の補助ヒータである。この補助ヒータ23は例えばカーボン発熱体からなり、その周囲を高純度石英で囲って単結晶15の不純物汚染を防止するようにしたものである。」と記載される。
刊行物6;
特許請求の範囲には、引上げ装置内のルツボに保持されたシリコン融液からシリコン単結晶を引上げ育成する方法において、引上げ育成されたシリコン単結晶の所定帯域に濃度制御装置を設け、前記シリコン単結晶に対して、その全長に亘って1100〜900℃の温度領域に3時間以上保持の熱処理を施すことを特徴とする欠陥発生の少ないシリコン単結晶を引上げ育成する方法、が記載される。
また、第2図には、融液面の上方に引き上げ単結晶を取り巻く多段可変ヒータ10を設けることが記載される。
刊行物7;
ルツボ内の原料融液から単結晶を引き上げる単結晶製造装置において、第1図には、融液面の上方に引き上げ単結晶を取り巻く抵抗加熱コイル11を設けることが記載される。
(対比・判断)
そこで、本件発明1と上記刊行物1〜7に記載の各発明とを比較検討する。
本件発明1は、訂正された請求項1の構成を採ることにより、原料多結晶の溶解所要時間を大幅に短縮させることができ、また、石英るつぼに加えられる熱負荷を最小に抑え、劣化を遅らせることができるので、石英るつぼを交換せずに数回の単結晶引き上げが可能となる、等の効果を奏するものである。
これに対して、刊行物1〜7にはいずれも、本件発明1の構成要件である「融液面の上方の,単結晶の引き上げと原料多結晶供給の兼用経路上の単結晶引き上げ時の引き上げ単結晶と単結晶引き上げ後に供給される原料多結晶とを取り巻く位置に、外周が輻射スクリーンによって囲まれて前記兼用経路に供給される原料多結晶を加熱する上部ヒータを設ける」ことの記載は何等なく、そのことを示唆する記載もない。
特に、刊行物5には、第6、7頁に第5図、第7図を掲げるとともに、第5頁左上欄1行〜8行には、「(第5図の)23は保温板20に囲まれた仕切りリング11の外側の溶融面上に、第7図に示すように原料供給装置13の直下及び温度検出器14,15の視野領域を除いて配設された、全体としてリング状の補助ヒータである。この補助ヒータ23は例えばカーボン発熱体からなり、その周囲を高純度石英で囲って単結晶15の不純物汚染を防止するようにしたものである。」と記載されるが、この記載は、本件発明1の「外周が輻射スクリーンによって囲まれて前記兼用経路に供給される原料多結晶を加熱する上部ヒータ」を示唆するものではない。
したがって、本件発明1は、刊行物1〜7に記載の発明であるとはいえず、また、刊行物1〜7に記載の発明に基づいて当業者が容易になし得たものともいえない。
(2)特許法第29条の2違反について
(先願明細書1,2)
先願明細書1;
本件発明1に対して、当審が通知した取消理由で引用した先願の特願平4-316166号(特開平6-144987号公報)の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「先願明細書1」という)には、単結晶成長装置に関して、以下の発明が記載される。
すなわち、特許請求の範囲の請求項1には、 「ルツボ内で半導体原料融液に種結晶を浸潰し、その種結晶を引上げることによって単結晶を成長させる装置であって、その単結晶の成長の際に単結晶棒の軸に沿って上方から成長界面に向けて雰囲気ガスを導入するためのガス整流管と、前記ガス整流管の下端に設けられそのガス整流管の外上方向に折り返されて拡開するリフレクタとを備えた単結晶成長装置において、前記ガス整流管に再加熱用ヒータを組み込んだことを特徴とする単結晶成長装置。」と記載され、第4頁に図1を掲げるとともに、第3欄34行〜40行には、「一方、ガス整流管21の上端部内周には再加熱用ヒータ22が付設されている。この再加熱用ヒータ22は、ガス整流管21に巻回された加熱コイルを有し、この加熱コイルに電極30からフイーダ31を通じて給電できるようになっている。なお、再加熱用ヒータ22の外周に付設されている部材すなわち符号23は断熱材である。」と記載される。
先願明細書2;
本件発明1に対して、当審が通知した取消理由で引用した先願の特願平4-95311号(特開平5-294782号公報)の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「先願明細書2」という)には、シリコン単結晶の製造装置に関して、以下の発明が記載される。
すなわち、特許請求の範囲の請求項1には、「シリコン融液表面の上方に、それぞれ温度制御可能な同心円状の多段のサブヒータを備えたことを特徴とするシリコン単結晶の製造装置。」が記載され、第4頁に図1を掲げるとともに、第3欄23行〜31行には、「図1は、本発明による装置を示す。図2はサブヒータのエレメントを示している。実施例では、同心円状に4段のサブヒータ5を融液表面の上方30mmの位置に設置した。多段のサブヒータは、それぞれ独立に温度制御が可能であり、単結晶の引上げ段階に応じて、それぞれ温度を変化させる。また、結晶引上げ時にはルツボを上昇させることによって、融液表面と多段のサブヒータとの距離を一定に保った。」と記載される。
(対比・判断)
本件発明1が上記先願明細書1,2に記載の発明と同一であるか否かについて比較検討する。
先願明細書1,2にはいずれも、本件発明1の構成要件である「融液面の上方の,単結晶の引き上げと原料多結晶供給の兼用経路上の単結晶引き上げ時の引き上げ単結晶と単結晶引き上げ後に供給される原料多結晶とを取り巻く位置に、外周が輻射スクリーンによって囲まれて前記兼用経路に供給される原料多結晶を加熱する上部ヒータを設ける」ことの記載は何等なく、そのことを示唆する記載もない。
したがって、本件発明1は、先願明細書1,2に記載の発明と同一であるとはいえない。
また、他に本件発明1が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。
また、下記の「3.特許異議の申立てについての判断」の項で述べるように、本件発明2〜4は特許出願の際独立して特許を受けることができないものではない。
したがって、本件発明1〜4は特許出願の際独立して特許を受けることができないものとはいえない。
カ.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2ないし4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議の申立てについての判断
ア.申立ての理由の概要
申立人・北垣 敏は、証拠として甲第1号証(上記「刊行物1」に相当)、甲第2号証(上記「刊行物2」に相当)、甲第3号証(上記「刊行物3」に相当)、甲第4号証(上記「刊行物4」に相当)、甲第5号証(上記「刊行物5」に相当)、甲第6号証(上記「先願明細書1」に相当)、甲第7号証(上記「先願明細書2」に相当)を提示して、次の理由により本件請求項1に係る発明の特許を取り消すべきと主張している。
(1)本件請求項1に係る発明の特許は、甲第1〜5号証の記載を基に、特許法第29条第1項第3号或いは同法第29条第2項の規定に違反している。
(2)本件請求項1に係る発明の特許は、甲第6,7号証の記載を基に特許法第29条の2の規定に違反している。
申立人・西塚保遠は、証拠として甲第1号証(特開平4-170388号公報)、甲第2号証(上記「刊行物6」に相当)、甲第3号証(上記「刊行物7」に相当)、周知技術の証拠として甲第4号証(特開昭62-36096号公報)及び甲第5号証(実開平1-122068号公報)を提示して、次の理由により本件請求項1〜4に係る発明の特許を取り消すべきと主張している。
(1)本件請求項1〜3に係る発明の特許は、甲第1号証の記載を基に、特許法第29条第2項の規定に違反している。また、本件請求項4に係る発明の特許は、甲第1号証の記載及び甲第4,5号証の周知技術に関する記載を基に、特許法第29条第2項の規定に違反している。
(2)本件請求項1に係る発明の特許は、甲第2,3号証の記載を基に、特許法第29条第1項第3号の規定に違反している。
イ.本件発明1〜4
本件発明1〜4は、前記2.項エに記載のとおりのものである。
ウ.甲各号証の記載
申立人・北垣 敏が証拠として提示した甲第1号証(上記「刊行物1」に相当)、甲第2号証(上記「刊行物2」に相当)、甲第3号証(上記「刊行物3」に相当)、甲第4号証(上記「刊行物4」に相当)、甲第5号証(上記「刊行物5」に相当)、甲第6号証(上記「先願明細書1」に相当)、甲第7号証(上記「先願明細書2」に相当)、申立人・西塚保遠が証拠として提示した甲第2号証(上記「刊行物6」に相当)、甲第3号証(上記「刊行物7」に相当)は、前記2.項オに記載のとおりのものである。
申立人・西塚保遠が証拠として提示した甲第1号証(以下「刊行物8」という)には、次の発明が記載されている。
(1)特許請求の範囲の請求項1には、「チョクラルスキー法の結晶育成装置において、原料上部に原料加熱源を設置し、原料溶解後に該加熱源を移動し、待避させる機能を具備することを特徴とする結晶育成装置」が記載されている。
(2)第2頁右上欄〜同頁左下欄の「実施例」には、「結晶育成装置1は、るつぼ2と種結晶用シャフト3、熱電対6を備え、原料(融液)の上部にヒータ(加熱源)4が設置され、融液を上部から加熱でき、るつぼ上面からの輻射熱で抑制できる。ヒータ4はモリブデン製とした。融液原料の作製が終了した時点で移動機構7によりヒータ4をるつぼ2上部より移動し待避させ、種結晶用シャフト3を用いて、シリコンの結晶育成が可能となる。
原料融液の作製時のるつぼ2の底の温度を熱電対6により観測した。ヒータ4を用いると、摂氏1500度であり、従来のヒータを用いない場合の1550度と比べ50度の温度差があることがわかった。これはヒータ4により、るつぼ上面よりの輻射熱を抑制でき、るつぼ内の温度が均質化できたからである。原料融液の作製が従来よりも50度も低い温度でできるので、るつぼの低温化ができ、るつぼと原料融液との反応が抑制され、るつぼの使用可能回数の増加、即ち長寿命化が達成できた。」と記載される。
申立人・西塚保遠が周知技術の証拠として提示した甲第4号証(以下「刊行物9」という)及び甲第5号証(以下「刊行物10」という)には、それぞれ次の発明が記載されている。
刊行物9;
るつぼ内の溶融原料に固形原料を追加する際に、その固形原料を事前に加熱溶融してるつぼ内の溶融原料に供給することが記載される。
刊行物10;
るつぼ内の溶融原料に、固形原料を加熱溶融して追加することが記載される。
エ.対比・判断
[本件発明1について]
本件発明1が上記刊行物8に記載の発明に基づいて当業者が容易になし得たものか否か検討する。
刊行物8のものは、単結晶引き上げ装置において、「原料上部に原料加熱源を設置し、原料溶解する」点で本件発明1と構成が共通するが、本件発明1のように「融液面の上方の,単結晶の引き上げと原料多結晶供給の兼用経路上の単結晶引き上げ時の引き上げ単結晶と単結晶引き上げ後に供給される原料多結晶とを取り巻く位置に、外周が輻射スクリーンによって囲まれて前記兼用経路に供給される原料多結晶を加熱する上部ヒータを設けた」ものではない。
したがって、本件発明1は、刊行物8に記載の発明に基づいて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
また、上記2.項オにおいて述べたように、本件発明1は、刊行物1〜7に記載の発明であるとはいえないし、また刊行物1〜7に記載の発明に基づいて当業者が容易になし得たものであるともいえないし、さらに申立人・北垣 敏が証拠として提示した甲第6号証(上記「先願明細書1」に相当)あるいは甲第7号証(上記「先願明細書2」に相当)に記載の発明と同一であるともいえない。
[本件発明2、3について]
本件発明2、3が上記刊行物8に記載の発明に基づいて当業者が容易になし得たものか否か検討する。
刊行物8のものは、本件発明2、3のもののように「融液面の上方に引き上げ単結晶を取り巻く上部ヒータを設け、この上部ヒータを用いて原料多結晶を溶解あるいは加熱する」ものではない。
したがって、本件発明2、3は、刊行物8に記載の発明に基づいて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
[本件発明4について]
本件発明4が上記刊行物8に記載の発明及び刊行物9,10に記載の周知技術に基づいて当業者が容易になし得たものか否か検討する。
刊行物8のものは、本件発明4のもののように「融液面の上方に引き上げ単結晶を取り巻く上部ヒータを設け、この上部ヒータを用いて原料多結晶を溶解あるいは加熱する」ものではない。
したがって、刊行物8のものは本件発明4のような上部ヒータを用いるものではない以上、本件発明4は、刊行物8に記載の発明と刊行物9,10に記載の周知技術とを組み合わせて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
オ.むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1〜4の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜4の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
単結晶引き上げ装置および引き上げ方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 チョクラルスキー法による単結晶引き上げ装置において、融液面の上方の、単結晶の引き上げと原料多結晶供給の兼用経路上の単結晶引き上げ時の引き上げ単結晶と単結晶引き上げ後に供給される原料多結晶とを取り巻く位置に、外周が輻射スクリーンによって囲まれて前記兼用経路に供給される原料多結晶を加熱する上部ヒータを設けたことを特徴とする単結晶引き上げ装置。
【請求項2】 融液面の上方に引き上げ単結晶を取り巻く上部ヒータを設けたチョクラルスキー法による単結晶引き上げ装置の前記上部ヒーターを用いて原料多結晶を溶解することを特徴とする単結晶引き上げ方法。
【請求項3】 融液面の上方に引き上げ単結晶を取り巻く上部ヒータを設けたチョクラルスキー法による単結晶引き上げ装置の前記上部ヒータを用いて原料多結晶を加熱し、るつぼを取り巻くメインヒータを用いて前記原料多結晶を溶解することを特徴とする単結晶引き上げ方法。
【請求項4】 融液面の上方に引き上げ単結晶を取り巻く上部ヒータを設けたチョクラルスキー法による単結晶引き上げ装置を用い、一定量の原料多結晶を溶解した後、追加する原料多結晶を上部ヒータまたは上部ヒータとメインヒータとを用いて溶解することを特徴とする単結晶引き上げ方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、単結晶引き上げ装置および引き上げ方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体集積回路素子の基盤には主として高純度シリコンが用いられているが、この高純度シリコンの製造方法の一つとして、るつぼ内の原料融液から円柱状の単結晶を引き上げるチョクラルスキー法(以下CZ法という)が用いられている。CZ法においては、るつぼ内に原料多結晶を充填し、前記るつぼの外周を取り巻くヒータによって原料を加熱溶解した上、シードチャックに取り付けた種子結晶を融液に浸漬し、シードチャックおよびるつぼを同方向または逆方向に回転しつつシードチャックを引き上げて、単結晶を成長させる。
【0003】
近年は、半導体ウェーハの直径が大型化し、6インチを超える大径ウェーハが要求されるようになり、単結晶の直径も6インチ以上のものが主流になりつつある。このため単結晶製造装置も大型化し、1サイクル当たりの処理量も増大する傾向にある。しかし、単結晶製造装置の大型化に伴って単結晶成長工程における所要時間が長くなるとともに、その前後工程、たとえば原料多結晶の溶解所要時間や、成長した単結晶を炉外に取り出した後、るつぼ、ヒータ等が清掃可能な温度に下がるまでの冷却所要時間等も従来に比べて長くなっている。これらは単結晶の生産性を低下させる要因になる。また石英るつぼは、原料多結晶の溶解時に加えられる熱負荷によって変形、割れ等が発生するため、1本の単結晶引き上げごとに新品と交換している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
単結晶の生産性低下を解決する手段として従来から知られている方法にリチャージ法がある。これは、融液から単結晶を引き上げた後、ヒーター電源をOFFにすることなく原料多結晶を再度チャージして溶解し、再度単結晶を成長させる工程を数回繰り返す方法である。このリチャージ法は、炉内部品の冷却時間やチャンバ清掃時間等を数バッチ分省略することができる。また、通常は単結晶1本分の引き上げごとに1個必要とする石英るつぼも、数本の単結晶に対して1個の割合となり、製造コストが低減する。しかしながら、原料多結晶たとえば棒状の多結晶を石英るつぼ内に残留する融液に直接浸漬して溶解しようとすると、石英るつぼに大きな熱負荷がかかり、その表面が浸食される。また、石英中の気泡が膨張して石英るつぼに変形が起こり、甚だしい場合は前記気泡が破裂して石英るつぼの破片が融液中に混入するため単結晶化が阻害されるという問題点がある。本発明は上記従来の問題点に着目してなされたもので、単結晶製造時間を短縮することができるとともに、1個の石英るつぼで数回の単結晶引き上げを可能とする単結晶引き上げ装置および引き上げ方法を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る単結晶引き上げ装置は、チョクラルスキー法による単結晶引き上げ装置において、融液面の上方の、単結晶の引き上げと原料多結晶供給の兼用経路上の単結晶引き上げ時の引き上げ単結晶と単結晶引き上げ後に供給される原料多結晶とを取り巻く位置に、外周が輻射スクリーンによって囲まれて前記兼用経路に供給される原料多結晶を加熱する上部ヒータを設ける構成としている。
また、融液面の上方に引き上げ単結晶を取り巻く上部ヒータを設けたチョクラルスキー法による単結晶引き上げ装置を用いる結晶引き上げ方法は、上部ヒータを用いて原料多結晶を溶解するものとし、または、
上部ヒータを用いて原料多結晶を加熱し、るつぼを取り巻くメインヒータを用いて前記原料多結晶を溶解してもよい。更に、
一定量の原料多結晶を溶解した後、追加する原料多結晶を上部ヒータまたは上部ヒータとメインヒータとを用いて溶解してもよい。
【0006】
【作用】
上記構成によれば、チョクラルスキー法による単結晶引き上げ装置において、融液面の上方に引き上げ単結晶を取り巻く上部ヒータを設けたので、この上部ヒータを用いることにより、るつぼを取り巻くメインヒータのパワーを上げなくても原料多結晶を溶解することができる。又、上部ヒータで加熱する間はメインヒータのパワーを下げて、石英るつぼへの熱負荷を低減することもできる。従って、1回目の単結晶引き上げ後、結晶引き上げ機構のワイヤケーブルに釣支した棒状または粒状の原料多結晶を上部ヒータで溶解し、あるいは前記上部ヒータで加熱した原料多結晶をメインヒータで溶解すれば、メインヒータから石英るつぼに加えられる熱負荷を最小限に抑えることができ、石英るつぼの耐用回数を数回まで延ばすことができる。また、石英るつぼに充填した粒状多結晶が溶解したとき融液面はるつぼの上端より下方にあるので、前記溶解完了後、追加する原料多結晶を前記上部ヒータあるいは上部ヒータとメインヒータとを用いて溶解することにより、1回のチャージ量を増やすことが可能となり、従来の引き上げよりも長い単結晶を引き上げることができるため単結晶の収率,生産性向上に寄与する。
【0007】
【実施例】
以下に本発明に係る単結晶引き上げ装置の実施例について、図面を参照して説明する。図1は単結晶引き上げ装置下部の概略構成を模式的に示す部分断面図で、単結晶引き上げ中の状態を示している。同図において、メインチャンバ1内に設置された黒鉛るつぼ2に石英るつぼ3が嵌着され、この石英るつぼ3内に貯留された融液4からシリコン単結晶5が引き上げられている。6はるつぼ軸、7はメインヒータ、8は断熱筒で、前記断熱筒8の上端に輻射スクリーン9が取り付けられている。この輻射スクリーン9は、単結晶引き上げ領域を取り巻く熱遮蔽体であり、下端開口部の直径が上端開口部の直径以下の円錐状の筒である。また、外周が輻射スクリーン9によって囲まれた上部ヒータ10はシリコン単結晶5を取り巻く円筒状の黒鉛製ヒータで、断熱筒8の上端に設けられたブラケット11に釣支されている。上部ヒータ10は図2に示すように、円筒状の黒鉛製ヒータ本体10aと、これを取り巻く円筒状の黒鉛製保温筒10bとからなり、前記保温筒10bは炭素繊維からなる円筒状の断熱材10cを黒鉛製表層10dで被覆したものである。上部ヒータ10の軸方向長さ、大きさ等を変えることにより、原料多結晶の加熱、溶解所要時間の短縮を図ることができる。本実施例では上部ヒータ10を、ブラケット11を介して断熱筒8に釣支したが、これに限るものではなく、チャンバ内壁あるいは輻射スクリーン9に釣支または固定してもよい。なお、言うまでもなく本発明は、輻射スクリーンのない単結晶引き上げ装置に対しても適用可能である。
【0008】
次に、上記単結晶引き上げ装置を用いる単結晶引き上げ方法について説明する。図1に示した単結晶引き上げ時には上部ヒータ10を作動させず、メインヒータ7のみが作動する。1本目の単結晶の引き上げが完了すると、この単結晶インゴットを図示しないプルチャンバから外部に取り出す。次に、図3に示すように結晶引き上げ機構のワイヤケーブル12に釣支した棒状の多結晶シリコン13を上部ヒータ10内に吊り降ろし、上部ヒータ10を作動させる。加熱、溶解された多結晶は石英るつぼ3内に残留する融液4に滴下する。融液4が所定量に達した時点で上部ヒータ10の作動を停止し、ワイヤケーブル12を巻き上げ、多結晶シリコン13の残部をプルチャンバから外部に取り出す。その後、結晶引き上げ機構のワイヤケーブル12に種子結晶を釣支し、この種子結晶を融液4に浸漬し、図1に示すように単結晶の引き上げを行う。このように、原料多結晶を上部ヒータ10によって溶解、補給することにしたので、メインヒータ7から石英るつぼ3に加えられる熱負荷が軽減され、石英るつぼを交換せずに複数回の単結晶引き上げを行うことができる。前記多結晶シリコン13を上部ヒータ10で加熱した状態で融液4に浸漬し、メインヒータ7で溶解する請求項3の方法を用いてもよい。この場合、多結晶シリコン13は十分に加熱されているため、メインヒータ7のパワーを上げずに融液内で容易に溶解することが可能である。
【0009】
図4は第2実施例の説明図で、上記棒状の多結晶シリコンに代えて粒状の多結晶シリコンを用いる場合を示している。粒状の多結晶シリコン14を石英又は、内側に石英を設けた黒鉛製の容器15に充填し、これを結晶引き上げ機構のワイヤケーブル12に釣支して上部ヒータ10内に吊り降ろし、上部ヒータ10によって溶解する。前記多結晶シリコン14を上部ヒータ10で加熱した状態で融液4に落下させ、その後メインヒータ7で溶解する方法でもよい。
【0010】
図5は第3実施例の説明図である。粒状の多結晶シリコン14を石英るつぼ3内に残留する融液上にそのまま落下させ、メインヒータ7と上部ヒータ10とを同時に作動させて溶解する。この方法を第1回目の原料溶解、すなわち石英るつぼ3に充填した粒状多結晶シリコンの溶解時に用いてもよい。上部ヒータ10の作動によりメインヒータ7の電力を大きくする必要がないので、石英るつぼに加えられる熱負荷を最小に抑えて原料を溶解することができる。
【0011】
石英るつぼに充填した粒状の原料多結晶の溶解が完了すると、融液面は石英るつぼの上端より低い位置となり、石英るつぼの容量に余裕ができる。請求項4はこの現象を利用してチャージ量を増やすもので、前記溶解完了後、原料多結晶を追加して溶解する。追加する原料多結晶は上述と同じく棒状または粒状とし、上部ヒータのみで、あるいは上部ヒータとメインヒータとによって溶解する。この方法により、1回のチャージ量を従来の1.5倍程度に増やすことが可能となる。
【0012】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、融液面の上方に引き上げ単結晶を取り巻く上部ヒータを設け、るつぼに充填した原料多結晶やリチャージする原料多結晶を主として前記上部ヒータで溶解し、または上部ヒータで十分に加熱した後メインヒータで溶解することにしたので、原料多結晶の溶解所要時間を大幅に短縮させることができる。これによる効果とリチャージ法による効果とにより、1本当たりの単結晶製造所要時間を従来の1/3程度に短縮させることが可能である。また上部ヒータの活用により、石英るつぼに加えられる熱負荷を最小に抑え、劣化を遅らせることができるので、石英るつぼを交換せずに数回の単結晶引き上げが可能となる。その他、上部ヒータを利用して既に成長の完了した単結晶の熱履歴を変えることや、リチャージする原料多結晶のドープ材を変えることにより抵抗値の異なる単結晶を同一の石英るつぼで引き上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
単結晶引き上げ装置下部の概略構成を模式的に示す部分断面図である。
【図2】
上部ヒータの平面図である。
【図3】
上部ヒータで棒状多結晶を溶解する状態を示す説明図である。
【図4】
上部ヒータで粒状多結晶を溶解する状態を示す説明図である。
【図5】
上部ヒータとメインヒータとを用いて粒状多結晶を溶解する状態を示す説明図である。
【符号の説明】
2 黒鉛るつぼ
3 石英るつぼ
4 融液
5 シリコン単結晶
7 メインヒータ
10 上部ヒータ
13,14 多結晶シリコン
 
訂正の要旨 (1)特許請求の範囲の請求項1に係る記載
「融液面の上方に引き上げ単結晶を取り巻く上部ヒータ」を、特許請求の範囲の減縮を目的として「融液面の上方の、単結晶の引き上げと原料多結晶供給の兼用経路上の単結晶引き上げ時の引き上げ単結晶と単結晶引き上げ後に供給される原料多結晶とを取り巻く位置に、外周が輻射スクリーンによって囲まれて前記兼用経路に供給される原料多結晶を加熱する上部ヒータ」と訂正する。
(2)同請求項2に係る記載
「上部ヒータを用いて原料多結晶を溶解することを特徴とする請求項1の単結晶引き上げ装置を用いる単結晶引き上げ方法。」を「融液面の上方に引き上げ単結晶を取り巻く上部ヒータを設けたチョクラルスキー法による単結晶引き上げ装置の前記上部ヒータを用いて原料多結晶を溶解することを特徴とする単結晶引き上げ方法。」と訂正する。
(3)同請求項3に係る記載
「上部ヒータを用いて原料多結晶を加熱し、るつぼを取り巻くメインヒータを用いて前記原料多結晶を溶解することを特徴とする請求項1の単結晶引き上げ装置を用いる単結晶引き上げ方法。」を「融液面の上方に引き上げ単結晶を取り巻く上部ヒータを設けたチョクラルスキー法による単結晶引き上げ装置の前記上部ヒータを用いて原料多結晶を加熱し、るつぼを取り巻くメインヒータを用いて前記原料多結晶を溶解することを特徴とする単結晶引き上げ方法。」と訂正する。
(4)同請求項4に係る記載
「一定量の原料多結晶を溶解した後、追加する原料多結晶を上部ヒータまたは上部ヒータとメインヒータとを用いて溶解することを特徴とする請求項1の単結晶引き上げ装置を用いる単結晶引き上げ方法。」を「融液面の上方に引き上げ単結晶を取り巻く上部ヒータを設けたチョクラルスキー法による単結晶引き上げ装置を用い、一定量の原料多結晶を溶解した後、追加する原料多結晶を上部ヒータまたは上部ヒータとメインヒータとを用いて溶解することを特徴とする単結晶引き上げ方法。」と訂正する。
(5)明細書第3頁第1行〜同頁第3行の「融液面の上方に引き上げ単結晶を取り巻く上部ヒータを設ける構成とし、この」を「融液面の上方の、単結晶の引き上げと原料多結晶供給の兼用経路上の単結晶引き上げ時の引き上げ単結晶と単結晶引き上げ後に供給される原料多結晶とを取り巻く位置に、外周が輻射スクリーンによって囲まれて前記兼用経路に供給される原料多結晶を加熱する上部ヒータを設ける構成としている。また、融液面の上方に引き上げ単結晶を取り巻く上部ヒータを設けたチョクラルスキ一法による」と訂正する。
(6)明細書第4頁第6行目の「上部ヒータ10は」を「外周が輻射スクリーン9によって囲まれた上部ヒータ10は」と訂正する。
訂正事項(2)〜(4)は、請求項1が訂正されたことに伴い、請求項2〜4に係る発明について、訂正前と訂正後の発明の同一性を担保するための訂正であって、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。訂正事項(5)は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。訂正事項(6)は、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。
異議決定日 2000-01-26 
出願番号 特願平4-353902
審決分類 P 1 651・ 113- YA (C30B)
P 1 651・ 16- YA (C30B)
P 1 651・ 121- YA (C30B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 五十棲 毅  
特許庁審判長 石井 勝徳
特許庁審判官 野田 直人
唐戸 光雄
登録日 1998-08-21 
登録番号 特許第2816633号(P2816633)
権利者 コマツ電子金属株式会社
発明の名称 単結晶引き上げ装置および引き上げ方  
代理人 五十嵐 清  
代理人 五十嵐 清  
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