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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01B
審判 全部申し立て 4項(5項) 請求の範囲の記載不備  H01B
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  H01B
管理番号 1016221
異議申立番号 異議1999-70713  
総通号数 12 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-11-01 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-03-01 
確定日 2000-02-21 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2790993号 「導電性複合材料および高周波用電気回路基板」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2790993号の特許請求の範囲第1項乃至第4項に記載された発明についての特許を維持する。 
理由 1)手続の経緯
本件特許第2790993号発明に係る出願は、昭和61年3月5日に出願された特願昭61-46402号を原出願とする分割に係わる出願であって、平成10年6月12日にその特許の設定登録がなされ、その後、日本ゼオン株式会社により特許異議の申し立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年9月27日に訂正請求がなされ、さらに、補正指令がなされ、平成11年12月28日に手続補正書(方式)が提出されたものである。
(2)訂正の適否についての判断
ア.訂正明細書の特許請求の範囲の第1項〜第4項に記載された各発明
訂正明細書の特許請求の範囲の第1項〜第3項に記載された発明及び第4項に記載された発明は、その特許請求の範囲の第1項〜第4項に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】テトラシクロドデセンまたはアルキル置換テトラシクロドデセンと、ノルボルネンまたはアルキル置換ノルボルネンとの合計を100モル%としたときに、テトラシクロドデセンまたはアルキル置換テトラシクロドデセン:50〜100モル%およびノルボルネンまたはアルキル置換ノルボルネン:0〜50モル%からなる開環重合体を水添反応させて得られる重合体の延伸または無延伸のシートまたはフィルムの表面に、導電性の半導体膜、酸化物半導体膜または多層膜が設けられていることを特徴とする導電性複合材料。
【請求項2】導電性膜が50%以上の光線透過率および100Ωcm以下の比抵抗を有している請求項1記載の導電性複合材料。
【請求項3】透明導電性フィルムとして用いられる請求項1または2に記載の導電性複合材料。
【請求項4】テトラシクロドデセンまたはアルキル置換テトラシクロドデセンと、ノルボルネンまたはアルキル置換ノルボルネンとの合計を100モル%としたときに、テトラシクロドデセンまたはアルキル置換テトラシクロドデセン:50〜100モル%およびノルボルネンまたはアルキル置換ノルボルネン:0〜50モル%からなる開環重合体を水添反応させて得られる重合体の延伸または無延伸のシートまたはフィルムの表面に、導電性の有機膜、金属膜、半導体膜、酸化物半導体膜または多層膜が設けられている導電性複合材料からなることを特徴とする高周波用電気回路基板。」
イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項a
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項の第1項中の「テトラシクロドデセンまたはアルキル置換テトラシクロドデセン:50〜100モル%およびノルボルネンまたはアルキル置換ノルボルネン:0〜50モル%からなる開環重合体を水添反応させて得られる重合体」を、「テトラシクロドデセンまたはアルキル置換テトラシクロドデセンと、ノルボルネンまたはアルキル置換ノルボルネンとの合計を100モル%としたときに、テトラシクロドデセンまたはアルキル置換テトラシクロドデセン:50〜100モル%およびノルボルネンまたはアルキル置換ノルボルネン:0〜50モル%からなる開環重合体を水添反応させて得られる重合体」と訂正することは、願書に最初に添付した明細書(以下、「特許明細書」という)の発明の詳細な説明の欄中の表1には、何れの例においてもテトラシクロドデセンと、ノルボルネンとの合計を100モル%とした重合体組成物における、テトラシクロドデセンと、ノルボルネンとの量比が記載されているところから、特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の4第2項但し書き第3号の明瞭でない記載の釈明に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(2)訂正事項b
訂正事項bは、上記訂正事項aにより訂正された特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために、特許明細書第4頁の【0010】、【0011】(特許公報第2頁右欄第24〜28行及び同第32〜36行)における該当個所を、上記訂正事項aと同様に訂正するものであるから、上記(1)と同様に、特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正であって、明瞭でない記載の釈明に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(3)訂正事項c
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項の第4項中の「高周波回路基板」を、「高周波用電気回路基板」 訂正することは、より具体的に記載しただけにすぎないから、特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の4第2項但し書き第3号の明瞭でない記載の釈明に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(4)訂正事項d
訂正事項dは、上記訂正事項cにより訂正された特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために、特許明細書第1頁【発明の名称】、同第4頁の【0011】(特許公報第2頁右欄第39行)、第6頁の【0022】(特許公報第3頁右欄第28行)及び【0023】(特許公報第3頁右欄第35行)、第9頁の【0030】(特許公報第4頁右欄第5行)及び【0031】(特許公報第4頁右欄第18〜19行)中の「高周波回路基板」を、「高周波用電気回路基板」と訂正しただけにすぎないから、上記(3)と同様に、特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正であって、明瞭でない記載の釈明に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
ウ.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同条の4第3項で準用する第126条第2-3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
(3)特許異議申立についての判断
ア.本件発明
本件発明は、上記(2)のア.に記載されたように、訂正明細書の特許請求の範囲第1項〜第4項に記載されたとおりのものである。
イ.特許異議申立理由の概要
訂正明細書の特許請求の範囲第1項〜第3項に記載された発明及び第4項に記載された発明(以下、各々「本件第1発明及び第2発明」という)に対して、特許異議申立人日本ゼオン株式会社は、甲第1号証:「透明プラスチックス」(株)シーエムシー、1985年8月10日発行 p.98〜101、(以下、「甲1」と略す)、甲第2号証:「機能材料 1984年9月」p.5〜20、(以下、「甲2」と略す)、甲第3号証:「コンバーテック 1985年9月号」p.4〜5、(以下、「甲3」と略す)、甲第4号証:「プラスチックス 1982年2月号」p.39〜44(以下、「甲4」と略す)、甲第5号証:特開昭60-26024号公報、(以下、「甲5」と略す)、甲第6号証:「高分子材料便覧」(株)コロナ社昭和48年2月20日発行p.681〜682、(以下、「甲6」と略す)及び甲第7号証:「マグローヒル科学技術用語大辞典 第2版」p.999、(以下、「甲7」と略す)に記載された発明から容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、また、本件明細書中には記載不備があるから、特許法第36条第3項又は第4項及び第5項の要件を満たさないものであるから、特許を受けることができないものであり、特許を取り消すべきであると主張している。
ウ.甲各号証に記載の発明
甲1〜甲4には、導電性の複合材料である透明導電性フィルムについて、透明導電体の種類、高分子フィルムの種類、透明導電性薄膜の製法、透明導電膜の特性(光線透過率、比抵抗等)、透明導電性フィルムの用途等々の観点から総括的な記載がなされていて、透明導電体として、金属薄膜系、半導体薄膜系、酸化物半導体薄膜系、高分子電解質薄膜(=有機膜)系、多層薄膜系等があること、導電膜の光線透過率は、金属及び多層薄膜系では70%以上、、半導体及び高分子電解質薄膜(=有機膜)系では80%以上であること、酸化物半導体薄膜系の導電膜の比抵抗が2×10-3〜4×10-4Ωcmのオーダー(100Ωcm以下である)であること(甲1〜甲3参照)、透明導電膜のベースフィルムとして、金属薄膜系においてはポリエステル、ポリカーボネート等々が、有機膜系においてはPVAやPMMA等々が用いられること(甲4参照)、透明導電性フィルムの用途としては、金(金属薄膜)を蒸着したものは、電子回路に用途開発されていること(甲1参照)、また光メモリや端末機器などへの応用が提案されており、ITOフィルム(=酸化物半導体膜)では実用化されたものもあること(甲3参照)、が各々記載されている。
甲5には、(A)「テトラシクロドデセン又はその誘導体単位100〜50モル%とノルボルネン又はその誘導体単位0〜50モル%からなる開環重合体を水素添加反応させて得られた重合体を構成成分とする…光学材料。」(特許請求の範囲)、(B)「本発明はテトラシクロドデセン系開環重合体の水素添加物とノルボルネンからなる水添開環重合体を構成成分…とする透明性、耐水性および熱的性質に優れた光学材料に関するものである。」(第1欄下から第9〜6行)、(C)「コンパクトデイスク,ビデオデイスク,コンピユータデイスク等の光学式記録材料の表面保護層としては…プラスチツク製の材料が望ましい。…プラスチツクに要求される特性として…(2)プラスチック保護層としてアルミニウム,銅メッキしたアルミニウム等の記録基盤を保護しうる程度の耐熱変形性を有すること、…(3)成形加工性の良好なこと、などが挙げられる。」(第1欄下から第5行〜第2欄第9行)、(D)「得られた成形品はコンパクトデイスク,ビデオデイスク,コンピユータデイスク等の光学式記録材料の他に透明性、耐湿性および耐熱性等の特性を生かして光フアイバー,光フアイバーコネクター,プリズム,プラスチツクレンズ等の光通信、レンズの分野にも用いることができる。」(第7欄第10〜15行)といった記載がある。
甲6には、プラスチックの電気的性質についての一般的な記載があり、
甲7には、「端末」、「端末計器」及び「端末制御装置」についての意味が記載されている。
エ.対比・判断
まず、本件第1発明と上記甲1〜甲5に記載された発明とを対比する。
甲1〜甲4には、上記の記載内容から明らかなように、本件第1発明におけるシート及びフィルムとして使用されているテトラシクロドデセンとノルボルネンからなる水添開環重合体については、記載も示唆もされていない。
また、甲5には、本件第1発明におけるシート及びフィルムとして使用されているものと同じテトラシクロドデセンとノルボルネンからなる水添開環重合体が開示されているが、この材料は、上記(A)〜(D)の記載内容からみて、光学式記録材料のプラスチック製表面保護層、即ち、アルミニウムや銅メッキしたアルミニウム等の記録基盤の表面に設けて、これを保護するためのプラスチック保護層として用いることが開示されているにすぎず、さらに、アルミニウムや銅メッキしたアルミニウム等は、導電性金属の薄膜であることは自明であるとしても、上記重合体のシートまたはフィルムの表面の導電性薄膜として機能するものではなく、記録基盤において透明プラスチック面から入射したレーザ光を反射する反射膜として機能するものであるから(必要あらば、被請求人の提出した参考資料1「プラスチックエージ1984年3月号」第103〜105頁を参照)、本件第1発明における導電性の半導体膜、酸化物半導体膜または多層膜とは、その機能において明らかに相違するものであるし、金属膜である点でその種類も相違している。
結局、アルミニウムや銅メッキしたアルミニウム等の金属膜の表面にテトラシクロドデセンとノルボルネンからなる水添開環重合体の保護層が設けられた光学式記録材料として有用な複合材料に関して記載しているにすぎない甲5には、本件第1発明について記載も示唆もないので、本件第1発明は、甲1〜甲5に記載された発明をいかに寄せ集めて総合的に判断したとしても、これらから当業者が容易に発明し得たものとすることはできない。
また、導電性の有機膜、金属膜、半導体膜、酸化物半導体膜または多層膜からなる導電性薄膜と、テトラシクロドデセンとノルボルネンからなる水添開環重合体の導電性複合材料を使用した高周波用電気回路基板に係わる本件第2発明にあっては、上記した甲1〜甲5に記載も示唆もするところがなく、また、甲6及び甲7には、プラスチックの電気的性質についての一般的な記載や、技術用語の意味が記載されているにすぎないので、本件第2発明は、甲1〜甲7に記載された発明をいかに寄せ集めて総合的に判断したとしても、これらから当業者が容易に発明し得たものとすることはできない。
そして、本件第1発明の導電性複合材料は、「(1)透明性に優れる、(2)酸およびアルカリに対して強い抵抗性を示す、(3)耐溶剤性に優れる、(4)加工性がよく大面積化が可能である、(5)軽量でフレキシビリティに富む、(6)薄膜化ができる、(7)耐熱性に優れる、(8)耐熱老化性、耐光安定性に優れる、(9)電気特性に優れる」といった優れた特長を有し、さらに、本件第1発明の導電性複合材料を用いて高周波用電気回路基板を形成した本件第2発明においては、「(1)誘電率が小さいため高周波の電気信号の伝播速度が速くなり、また誘電損失が小さいので電気信号の減衰が小さくなり、情報技術の高速化が実現でき、微弱信号の高感度受信も実現できる、(2)耐熱性に富むので、回路基板製造における加熱加圧工程において軟化、溶融が発生せず変形することがなく、回路基板の厚みを正確にコントロールできる、(3)耐ハンダ性に優れている、(4)吸水性が小さく、優れた電気的性質を長期間にわたり安定して発揮できる、(5)寸法安定性に優れる」といった明細書記載の格別な効果が奏せられるものと認める。
従って、本件第1発明及び第2発明は、甲1〜甲7に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明しえたものとすることはできない。
次に明細書の記載不備の点について検討する。
(イ)請求項1又は4中に記載されている「モル%」がなにを基準にしたものか不明であるという主張について。
この点については、上記訂正事項a及びbにより、明瞭になったので、解消されたと認める。
(ロ)「高周波回路基板」及び「高周波」についての説明がないから、その意味するところが不明であるという主張について。
この点については、本件明細書の【0005】〜【0007】中に説明がなされているし、さらに、「高周波」については技術常識的な意味で使用されているにすぎない(必要あらば、被請求人の提出した参考資料2「岩波理化学辞典、p.435、p.1327」を参照)から、特に不明であるとすることはできないし、また、「高周波回路基板」については、上記訂正事項c及びdにより「高周波用電気回路基板」と訂正されたことにより明瞭になったので、解消されたものと認める。
従って、本件特許明細書に記載不備があると認めることはできない。
オ.むすび
以上のとおりであるから、本件特許異議の申立の理由及び証拠方法によっては、本件第1発明及び第2発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
導電性複合材料および高周波用電気回路基板
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 テトラシクロドデセンまたはアルキル置換テトラシクロドデセンと、ノルボルネンまたはアルキル置換ノルボルネンとの合計を100モル%としたときに、テトラシクロドデセンまたはアルキル置換テトラシクロドデセン:50〜100モル%およびノルボルネンまたはアルキル置換ノルボルネン:0〜50モル%からなる開環重合体を水添反応させて得られる重合体の延伸または無延伸のシートまたはフィルムの表面に、導電性の半導体膜、酸化物半導体膜または多層膜が設けられていることを特徴とする導電性複合材料。
【請求項2】 導電性膜が50%以上の光線透過率および100Ωcm以下の比抵抗を有している請求項1記載の導電性複合材料。
【請求項3】 透明導電性フィルムとして用いられる請求項1または2に記載の導電性複合材料。
【請求項4】 テトラシクロドデセンまたはアルキル置換テトラシクロドデセンと、ノルボルネンまたはアルキル置換ノルボルネンとの合計を100モル%としたときに、テトラシクロドデセンまたはアルキル置換テトラシクロドデセン:50〜100モル%およびノルボルネンまたはアルキル置換ノルボルネン:0〜50モル%からなる開環重合体を水添反応させて得られる重合体の延伸または無延伸のシートまたはフィルムの表面に、導電性の有機膜、金属膜、半導体膜、酸化物半導体膜または多層膜が設けられている導電性複合材料からなることを特徴とする高周波用電気回路基板。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は透明導電体や高周波用電気回路基板にとくに好適に用いられる導電性複合材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
高分子のフィルムまたはシートの表面に導電膜を設けたもののうち、全体が透明なものは透明導電体として有用である。すなわち透明導電体は、液晶表示素子、エレクトロルミネッセンス表示素子などの各種表示素子類の透明電極や、自動車・航空機などの防曇用窓ガラスに用いる抵抗発熱体等において使用されている。
【0003】
ところで透明導電体として従来から使用されているものの多くは、酸化スズ膜、酸化インジウム膜などの金属酸化物透明導電膜をガラス基板上に形成したものである。しかしガラスは大面積化に限界があり、厚みも精々0.3mm程度迄しか薄くすることができず、重量も重く、脆くも壊れ易く、打ち抜きや切り抜きなどの加工性も悪く、連続生産性にも難点がある。
【0004】
そこで近年になりガラスの代わりに高分子フィルムやシート(以下両者をあわせてフィルムと略称する)を基板とした透明導電性フィルムが開発され始めている。この高分子フィルムを基板とする透明導電性フィルムは、薄くて軽く、割れない、フレキシブルであり、加工性もよく、大面積化が可能で連続生産性に優れるといった透明導電性ガラスにない種々の特長を持っている。この透明導電性フィルムの基板として使用されている高分子フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステルフィルムが知られている。しかしポリエステルフィルムは、強酸や強アルカリに容易に侵されるうえ、吸水して加水分解を起こす虞がある。とくに透明導電性フィルムをディスプレイ用途に用いる場合には、導電膜を所定形状にパターニング化する必要があり、従来よりフォトエッチング方式が利用されているが、レジストの剥離液としてアルカリが必要な場合もあるので耐アルカリ性の欠如は重大な欠点である。また、真空蒸着法やスパッター法などで薄膜形成する際に、ポリエステル中の水分は、真空度を上げることを困難にして目的の真空度に上げるまで長時間要し生産性が悪く、また膜の酸化の程度をコントロールすることを困難にする問題がある。
【0005】
また、高分子フィルムの表面に導電膜を設けた複合材料の別の用途として電気回路基板があり、とくに高周波用の電気回路基板に期待がかけられている。すなわち、電磁波を通信に用いる場合、より高い周波数の波を用いればより広い周波数帯域がとれ、故により多量の情報を送ることができる。また周波数が高くなれば波長がそれに反比例して短くなり、その結果小型で高性能のアンテナを作れるようになるという利点もある。
【0006】
ところで、このような高周波を対象とする電気回路の基板には、誘電率および誘電損失が小さく耐熱性のある材質が求められる。つまり、高周波において電気信号の伝播速度は回路基板の誘導率が小さい程速くなり、電気信号の減衰は回路基板の誘電損失が小さい程少なくなる。したがって、誘電率および誘電損失の小さい材料程、高速化、高SN化が計れる。また、電気回路の製造過程において、ハンダ浸漬やハンダ付作業では200℃を越える温度がかかるので、このような温度下でも変形しないだけの耐熱性が求められる。
【0007】
このような状況下、現在種々の材料を使用した基板が提案され、たとえばフッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリプロピレン等で作られた基板が提案されている。しかしフッ素樹脂は導電層となる金属との接着性が劣っていたり、低剛性でありさらに極めて高価格であるという問題がある。エポキシ樹脂あるいはポリイミドは低周波用、中周波用の回路基板として従来から使用されているが、高周波用として使用するには誘電率、誘電損失が大き過ぎて適さない。ポリプロピレンは誘電率、誘電損失に優れるものの耐熱性が不足し、変形を生じ易い。
【0008】
以上の如く、従来から提案されている高周波用電気回路も一長一短があり、全ての面で優れた性能を示すものは知られていなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする問題点】
そこで本発明者らは機械的性質、光学的性質、電気的性質、熱的性質、化学的性質に優れた透明導電性フィルムや高周波用として好適なる電気回路基板を提供せんものと検討した結果、特定の重合体を基材に使用すると目的を達成できることを見い出した。
【0010】
【問題点を解決するための手段】
すなわち本発明は、テトラシクロドデセンまたはアルキル置換テトラシクロドデセンと、ノルボルネンまたはアルキル置換ノルボルネンとの合計を100モル%としたときに、テトラシクロドデセンまたはアルキル置換テトラシクロドデセン:50〜100モル%およびノルボルネンまたはアルキル置換ノルボルネン:0〜50モル%からなる開環重合体を水添反応させて得られる重合体の延伸または無延伸のシートまたはフィルムの表面に導電性の半導体膜、酸化物半導体膜または多層膜が設けられたことを特徴とする導電性複合材料である。
【0011】
さらに本発明は、テトラシクロドデセンまたはアルキル置換テトラシクロドデセンと、ノルボルネンまたはアルキル置換ノルボルネンとの合計を100モル%としたときに、テトラシクロドデセンまたはアルキル置換テトラシクロドデセン:50〜100モル%およびノルボルネンまたはアルキル置換ノルボルネン:0〜50モル%からなる開環重合体を水添反応させて得られる重合体の延伸または無延伸のシートまたはフィルムの表面に、導電性の有機膜、無機膜、半導体膜、酸化物半導体膜または多層膜が設けられた導電性複合材料からなる高周波用電気回路基板である。
【0012】
【作用】
本発明の導電性複合材料の基板となるシートあるいはフィルム(以下フィルムと略称)を構成する重合体は、テトラシクロドデセンまたはアルキル置換テトラシクロドデセンの単独開環重合体もしくはテトラシクロドデセン類とノルボルネンまたはアルキル置換ノルボルネンとの開環共重合体のいずれかの開環重合体を水添して得られる重合体からなる。したがって、該重合体の骨格中には、開環重合に基づく不飽和結合を実質的に含まず、よって水添前の重合体に比べて耐薬品性、耐溶剤性、耐油性および耐熱性、耐候安定性に優れた性質を示す。
【0013】
かかる水添重合体の原料モノマーは市販品を使用してもよいが、市販品中に含まれる雑モノマーが目的とする重合体の重合を阻害することもありうるので必要に応じて精製するのが好ましい。また、とくにテトラシクロドデセン類は入手困難な場合もありうるので、その場合は米国特許第3557072号、特公昭46-14910号公報、特開昭57-154133号公報などに開示された方法によって合成すればよい。
【0014】
テトラシクロドデセン類とノルボルネン類とを重合して開環重合体を製造する技術は既に知られており、たとえば特公昭46-14910号公報、特開昭58-127728号公報に開示されている方法を採用することができる。テトラシクロドデセン類の開環重合体中における割合は、耐熱性の点から通常は50モル%以上、とくには70モル%以上が好ましい。ノルボルネン類の開環重合体中における割合は、通常50モル%未満、とくに30モル%未満である。分子量は、特開昭58-127728号公報に示されているようにオレフィン類を添加して調整されるが、一般に1000〜100万、好ましくは1万〜50万である。また、流動性の指標であるメルトフローインデックスMFR(260℃、2.16kg)は、0.001〜1000、好ましくは0.05〜200、特に好ましくは0.1〜100g/10minの範囲である。
【0015】
開環重合体の水添反応は通常の方法により行われ、触媒の種類により均一系または不均一系で1〜150気圧の水素圧下、0〜180℃、好ましくは20〜100℃の温度範囲で行われる。そして水素圧、反応温度、反応時間、触媒濃度等を変化させることにより、水添率を任意に調整できる。
【0016】
水添触媒としては、オレフィン化合物の水添に際し使用されているものであれば如何なるものでもよく、たとえば不均一系触媒としてニッケル、パラジウム、白金、またはこれらの金属をカーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタン等の担体に担持させた触媒すなわちニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナなどを挙げることができる。また均一系触媒としては、ナフテン酸ニッケル/トリエチルアルミニウム、オクテン酸コバルト/n-ブチルリチウム、ニッケルアセチルアセトネート/トリエチルアルミニウムなどのニッケル、コバルト化合物と周期律表第1〜III族金属の有機金属化合物からなるもの、あるいはRh化合物などを挙げることができる。
【0017】
開環重合体水添物が前述した優れた諸性質を示すためには、重合体主鎖中の不飽和結合部分の80%以上、好ましくは90%以上、とくに95%以上が水添されるべきである。また水添率が80%以上とくに90%以上になると、水添前の重合体とは異なる溶解度パラメーター(SP値)を持つようになり、耐有機溶剤性が向上するという効果も発揮する。さらに、耐湿性の面から水添物は極性基を有しないことが望ましい。
【0018】
基材となるフィルムを製造するには、開環重合体水添物を押出、射出、圧縮、湿式キャストなどの公知の種々の方法によって成形することができる。この成形の際には、必要に応じて通常樹脂に用いられる種々の配合剤を添加してもよい。また、得られたフィルムには1軸延伸や同時2軸延伸あるいは逐次2軸延伸といった延伸処理を施し、強度などをさらに高めてやってもよい。
【0019】
前記開環重合体水添物を原料としてフィルムを製造すると、分解、ゲル化が生じず均一な透明フィルムが得られる。これらは通常85%以上の光線透過率、多くは90%以上の光線透過率を示す。
【0020】
また、透明性を必要としない高周波用基板用途には、本重合体に、性質をそこなわない限り、50wt%以下のポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-4-メチルペンテン-1など)をブレンドしておいても良い。
【0021】
請求項1に記載の導電性複合材料では、導電性の膜として、In2O3(Sn)、SnO2(Sb)、SnO2(Fe)、CdO、Cd2O3、CdSnO4、TiO2、ZrO2、CuIなどの半導体膜または酸化物半導体膜あるいはTiOx/Ag/TiOx(x≦2)などの多層薄膜が用いられる。
【0022】
請求項4に記載の高周波用電気回路基板では、導電性膜は必ずしも透明である必要はなく、導電性の有機膜、金属膜、半導体膜、酸化物半導体膜または多層膜が用いられる。
【0023】
これらの導電性の膜は、シート、フィルム、箔として接着されたり、プラズマ重合、スパッター、蒸着、メッキ等の手段でフィルム上に積層される。たとえば高周波用電気回路基板に用いる場合、この導電膜は通常重合体フィルムの表面のみ、表面と裏面の2層、内部にも成形された3層以上の複合層の態様を採ることができる。回路の形成は、種々の公知のリソグラフィー法により、例えばエッチング法で行うことができる。また、別の方法として、本発明の重合体または本発明の重合体の不飽和カルボン酸変性物を含むポリマー成分と導電性材料(金属、有機物)とからなる塗料を形成し(導電性塗料)、スクリーン印刷法などで回路形成することができる。もちろん、導電性塗料の回路を形成したうえで、さらに無電解メッキなどの方法により、より高導電回路を形成することもできる。
【0024】
さらに、重合体層と導電膜(金属、ポリマー、有機物、導電塗料など)の間に接着層を介在させてもよい。かかる接着層としては、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリブタジエン、フェノール樹脂、ポリエーテルエーテルケトン等の耐熱性樹脂を例示することができる。これらの中ではポリイミド、エポキシ樹脂が耐熱性、高周波での誘電特性、金属との接着性に優れていて好ましい。このような接着層を介在させる場合、注意すべきことは、重合体層と接着層の厚み割合によって回路基板としての誘電特性が左右されることである。すなわち、(重合体層の厚さ)<(接着層の厚さ)の場合には、回路基板の誘電特性は主として接着層の誘電特性に大きく影響され、全体として悪くなる。勿論、用途によってたとえば高周波としてそこそこの周波数を対象にし、誘電特性が厳しい要望ではなく、むしろ表層の導電膜との接着強度等が要求されるようなケースでは、接着剤層の厚みを比較的厚くしてもかまわない。しかし、高周波用として良好なる誘電特性を発現させるには、重合体層の厚み/接着剤層の厚みの比が2以上、とくに3以上になるように構成するのが好適である。また、この厚み比は後述する複数の積層体の場合にも各の層の合計厚みに対して適用できる。
【0025】
また別には、接着層として基板を構成する前記重合体の高分子量体([η]0.3以上のもの)および前記重合体にα,β-不飽和カルボン酸、その無水物、エステル等をグラフト共重合させたものを使用すると基板の誘電特性を変化させることがないので好ましい。
【0026】
本発明の別の態様として、重合体層および/または接着層に補強材として耐熱性、絶縁性の繊維状物を混入してもかまわない。かかる補強繊維状物としては、石英繊維、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維、高強度高弾性ポリエチレン繊維などの短繊維、編織布、不織布等を例示できる。
【0027】
また別の態様として、重合体層と接着層を複数組合せた積層体の形で回路基板を形成してもよい。尚この場合、各層を好ましくは2層以上30層以下に積層すればよい。また必要に応じ前述の如く繊維状物を各層にまたは一部の層に混入してもよい。
【0028】
さらに別の態様として、重合体層を架橋剤によって架橋してもかまわない。架橋剤は加熱、放射線照射などによって3次元的構造を形成し、重合体層の熱的特性と寸法安定性をさらに改善する。架橋剤としては公知の種々のものが利用でき、たとえばジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、液状ポリブタジエン等を挙げることができる。
【0029】
本発明の複合材料を透明導電性シートとして用いる場合には、導電膜として可視光透過率すなわちJIS K 6714に準拠して測定した値が50%以上、とくに70%以上で、比抵抗が100Ωcm以下、とくに50Ωcm以下のものを用いる。より具体的にはIn2O3(Sn)、SnO2(Sb)、SnO2(Fe)、CdO、Cd2O3、CdSnO4、TiO2、ZrO2、CuIなどの半導体膜および酸化物半導体薄膜、TiOx/Ag/TiOx(x≦2)などの多層薄膜などを挙げることができる。
【0030】
また本発明に係る高周波用電気回路基板では、導電性膜として、特に透明性は要求されないが、比抵抗が100Ωcm以下とくに50Ωcm以下のものを用いることが好ましい。より具体的には、Au、Ag、Cu、Pt、Al、Cr、Rhなどの金属薄膜、In2O3(Sn)、SnO2(Sb)、SnO2(Fe)、CdO、Cd2O3、CdSnO4、TiO2、ZrO2、CuIなどの半導体膜および酸化物半導体薄膜、TiOx/Ag/TiOx(x≦2)などの多層薄膜、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、オリゴ(ポリ)スチレンスルホン酸塩などの高分子電解質薄膜系、ポリアニリン類、ポリチオフェン類、ポリピロール類などの導電性有機膜を挙げることができる。
【0031】
これらの導電膜は、前述した高周波用電気回路基板と同じように周知の方法でもって重合体フィルム上に積層される。また導電性高分子は、電解重合法または気相法によってフィルム中内部に形成することもできる。また、TTF-TCNQ(テトラチオフルバレン-テトラシアノキノジメタン)などの錯体を含浸させることによって導電性を発現させることもできる。
【0032】
【発明の効果】
以上述べてきたように本発明の導電性複合材料は、▲1▼透明性に優れる、▲2▼酸およびアルカリに対して強い抵抗性を示す、▲3▼耐溶剤性に優れる、▲4▼加工性がよく大面積化が可能である、▲5▼軽量でフレキシビリティに富む、▲6▼薄膜化ができる、▲7▼耐熱性に優れる、▲8▼耐熱老化性、耐光安定性に優れる、▲9▼電気特性に優れるといった種々の特長を有している。
【0033】
したがって高周波用電気回路基板に利用すると、
(i)誘電率が小さいので高周波電気信号の伝播速度が速くなり、また誘電損失が小さいので電気信号の減衰が小さくなるので、情報伝達の高速化が実現でき、微弱信号の高感度受信も実現できる。
(ii)耐熱性に富むので、回路基板製造における加熱加圧工程において軟化、溶融が発生せず変形することがない。したがって回路基板の厚みを正確にコントロールすることができる。
(iii)耐ハンダ性に優れている。
(iv)吸水性が小さく、優れた電気的性質を長期間に亘り安定して発揮できる。
(v)寸法安定性に優れる。
といった特長を有している。
【0034】
したがって各種回路基板、フラットアンテナ、筺体一体型基板、フレキシブル基板などに利用できる。また透明導電性フィルムは次のような用途に使用できる。すなわち導電膜上に必要に応じてポリビニルカルバゾールや硫化カドミウムなどの光導電体や誘導体の薄膜を形成させて、OHP、第2原図、スライドフィルム、マイクロフィルムなどの電子写真記録用途、EL(エレクトロルミネッセンス)、液晶、エレクトロクロミック、電気泳動表示などの固体ディスプレイ用途、サーモプラスチックレコーディング、強誘電体メモリーなどの光メモリー用途、透明タブレットなどの端末機器、メーター類の窓、TVブラウン管、クリーンルームの窓や床、半導体包装材料、電磁波遮蔽用途、太陽電池の窓、光増幅器などの光電変換素子、熱線反射用途、自動車や航空機のデフロスタなどの面発熱体用途等に好適である。
【0035】
【実施例】
【0036】
【参考例1〜6】
メチルテトラシクロドデセン
【0037】
【化1】

【0038】
およびメチルノルボルネン
【0039】
【化2】

【0040】
とを、塩化ルテニウム(RuCl2・3H2O)のn-ブタノール溶液の存在下に、ガラス製アンプル内で100℃で約3時間反応させた後、生成物をテトラヒドロフランおよびメタノールを用いて洗浄、乾燥した。
【0041】
次に前記生成重合体をテトラヒドロフランに溶解し、パラジウム/シリカ触媒の存在下、水素圧50kg/cm2・G、10℃で30分間攪拌後、50℃に昇温しさらに18時間攪拌した。得られた沈澱生成物をシクロヘキサンに溶解し、フィルターで濾過後メタノールで再沈させ乾燥した。
【0042】
得られた重合体の水添率はNMRスペクトルにより、TgはDSCにより、光透過率はJIS K 6717、吸水率はJIS K 6911により測定した。結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
次にこれらの重合体を用いて種々の導電性複合材料を作成し、それらを透明導電性フィルムまたは高周波回路基板として評価した。以下にその例を示す。
【0045】
【実施例1】
参考例2で得られた重合体を用いて、Tダイにより厚さ0.1mm、巾20cmの透明フィルムを成形した。
【0046】
2極マグネトロンスパッター(日電アネルバ)により、13.56MHzの高周波電源を用い、基板温度50℃、ターゲットはIn2O3/SnO2=90/10(%)合金ターゲットを用い、Arガス流入下、スパッター圧力1×10-2Torr、RF出力50W、スパッター速度250Å/minでITO膜を形成した。フィルム性能は、タイリースチップ(Taylor Hobson製)により測定したITO膜厚3000Å、四探針法により測定した比抵抗2×10-3Ω・cm、自己分光光度計UV365(島津製作所)で測定した光透過率(400nm〜750nm)は80%であり、良好な導電性フィルムが得られた。またカーボンアーク燈で35時間照射した後も変化はなかった。
【0047】
【実施例2】
参考例6で得られた重合体を用いて厚さ0.1mm、巾20cmのフィルムを成形した。
【0048】
ターゲットはCdO2/SnO2=2/1(重量比)、反応ガスはO2/Ar=5/95(%)、スパッター圧2×10-2Torr、RF出力50W、スパッター速度200Å/minでTO膜を形成した。その結果、導電層膜2500Å、光透過率83%、比抵抗3×10-3Ωcmの透明導電性フィルムが得られた。またカーボンアーク燈で35時間照射した後も変化はなかった。
【0049】
【比較例1〜3】
参考例1、3、5に示した重合体を使用して、参考例1の重合体は実施例1、参考例3の重合体は実施例3、参考例5の重合体は実施例2の条件と同様にして透明導電性フィルムを作製した。その後カーボンアーク燈で35時間光を照射した。各透明導電性フィルムは黄色に変色し、また比抵抗も低下した。
【0050】
以上の実施例を見ても判るとおり、本発明の透明導電性フィルムは長時間に亘り安定した性質を示すが、比較例の如く水素添加前の開環重合体を使用したものは光に長時間あたると変色等が生じ、長期間の使用に耐えないことが判る。また光の代りに長期間熱を加えても同様な結果を示し、故に水素添加前の開環重合体を使用した透明導電性フィルムは、該フィルムの具体的用途である液晶表示素子等の透明電極や抵抗発熱体などに実質使用できない。
【0051】
【実施例3】
参考例2の重合体をサーモプラスチック製30mmφ、Tダイ成形機により厚さ1.5mm、巾20cmのシートを作製した。
【0052】
このシート(10cm×10cm)に、三井金属鉱業社製電解銅箔(35μm厚さ)を両面にはりつけ、260℃でプレス成形機より融着させた。両面銅張板での誘電率、誘電損失は、それぞれ2.2、4.5×10-4であり剥離強度は1.0kg/cmであった。この銅張板に、フォトレジスト(富士合成化学研究所No.200)をコートし、アルカリ現像液およびエッチング処理(塩化第2鉄飽和溶液)で微細パターンを形成した。その結果、100μ以下の微細パターンが形成できた。
【0053】
【実施例4】
参考例2の重合体に無水マレイン酸をグラフト共重合し、無水マレイン酸含量1.5wt%の変性物を得た。このポリマーを参考例2の重合体に、10wt%混合し、シート成形して、両面銅箔を融着した。両面銅張板の誘電率は2.3、誘電正接は6.5×10-4であった。また、剥離強度は1,6kg/cmであった。
【0054】
【実施例5】
参考例4の重合体をシクロヘキサンに溶解し、プリント基板用ガラスクロスに含浸させ、乾燥させた。ポリマー含浸ガラスクロスを6枚重ね、260℃でプレス圧着し、厚さ1.5mmでヤング率8×1010dyne/cm2の高剛性体を得た。その後、実施例5に記載の変性物を裏面に10μ厚にコートした銅箔を積層体両面に誘着させた。その結果、両面銅張板の誘電率は2.8、誘電正接は5.8×10-4、剥離強度は1.1kg/cmであった。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
本件訂正請求の要旨は、特許第2790993号の明細書を、本件訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであって、具体的に下記のように訂正しようとするものである。
(1)訂正事項a
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項の第1項及び第4項中の「テトラシクロドデセンまたはアルキル置換テトラシクロドデセン:50〜100モル%およびノルボルネンまたはアルキル置換ノルボルネン:0〜50モル%からなる開環重合体を水添反応させて得られる重合体」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、「テトラシクロドデセンまたはアルキル置換テトラシクロドデセンと、ノルボルネンまたはアルキル置換ノルボルネンとの合計を100モル%としたときに、テトラシクロドデセンまたはアルキル置換テトラシクロドデセン:50〜100モル%およびノルボルネンまたはアルキル置換ノルボルネン:0〜50モル%からなる開環重合体を水添反応させて得られる重合体」と訂正する。
(2)訂正事項b
上記訂正事項aにより訂正された特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために、特許明細書第4頁の【0010】、【0011】(特許公報第2頁右欄第24〜28行及び同第32〜36行)の「テトラシクロドデセンまたはアルキル置換テトラシクロドデセン:50〜100モル%およびノルボルネンまたはアルキル置換ノルボルネン:0〜50モル%からなる開環重合体を水添反応させて得られる重合体」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、「テトラシクロドデセンまたはアルキル置換テトラシクロドデセンと、ノルボルネンまたはアルキル置換ノルボルネンとの合計を100モル%としたときに、テトラシクロドデセンまたはアルキル置換テトラシクロドデセン:50〜100モル%およびノルボルネンまたはアルキル置換ノルボルネン:0〜50モル%からなる開環重合体を水添反応させて得られる重合体」と訂正する。
(3)訂正事項c
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項の第4項中の「高周波回路基板」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、「高周波用電気回路基板」と訂正する。
(4)訂正事項d
上記訂正事項cにより訂正された特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために、特許明細書第1頁【発明の名称】、同第4頁の【0011】(特許公報第2頁右欄第39行)、第6頁の【0022】(特許公報第3頁右欄第28行)及び【0023】(特許公報第3頁右欄第35行)、第9頁の【0030】(特許公報第4頁右欄第5行)及び【0031】(特許公報第4頁右欄第18〜19行)中の「高周波回路基板」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、「高周波用電気回路基板」と訂正する。
異議決定日 2000-01-27 
出願番号 特願平7-343574
審決分類 P 1 651・ 532- YA (H01B)
P 1 651・ 531- YA (H01B)
P 1 651・ 121- YA (H01B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 齋藤 哲須原 宏光  
特許庁審判長 松本 悟
特許庁審判官 柿沢 恵子
山岸 勝喜
登録日 1998-06-12 
登録番号 特許第2790993号(P2790993)
権利者 三井化学株式会社
発明の名称 導電性複合材料および高周波用電気回路基板  
代理人 鈴木 俊一郎  
代理人 鈴木 俊一郎  

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