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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C03C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C03C
管理番号 1016439
異議申立番号 異議1999-73111  
総通号数 12 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-03-01 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-08-13 
確定日 2000-04-20 
異議申立件数
事件の表示 特許第2857820号「撥水性ウィンドウガラス」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2857820号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 同請求項3に係る特許を維持する。 
理由 1.請求項1ないし3に係る発明
特許第2857820号(平成4年8月6日出願、平成10年12月4日設定登録。)の請求項1ないし3に係る発明は、特許明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次のとおりのものである(記号付与)。
「【請求項1】A.セラミックスゾルとフッ素化合物との混合物から形成されたセラミックコーティング層が
B.ガラス表面に設けられていることを特徴とする撥水性ウィンドウガラス。
【請求項2】請求項1において、
C.セラミックスゾルが、水分散ジルコニアゾルに有機溶媒を加えて水を有機溶媒に置換して得られる有機溶媒分散のジルコニアルゾルであることを特徴とする撥水性ウィンドウガラス。
【請求項3】請求項1又は2において、
D.フッ素化合物が、ノニオンタイプフッ素系界面活性剤,パーフルオロ安息香酸,又はN-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕-N-n-プロピルパーフルオロオクチルスルフォンアミドであることを特徴とする撥水性ウィンドウガラス。」
2.申立ての理由の概要
申立人・中西みどりは、証拠として甲第1号証(特開昭58-172243号公報)、甲第2号証(特開平2-212337号公報)、甲第3号証(特開平3-218928号公報)及び甲第4号証(特開平1-68477号公報)を提示して、本件請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という)の特許は甲第1或いは第2号証の記載を基に特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであり、本件請求項2に係る発明(以下「本件発明2」という)の特許は甲第1、第3、第4号証の記載を基に特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、また、本件請求項3に係る発明(以下「本件発明3」という)の特許は甲第2号証の記載を基に特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであるか、甲第1、第2号証の記載を基に特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである旨主張する。
3.甲第1ないし第4号証記載の発明
甲第1ないし第4号証には、次の発明が記載されている。
甲第1号証;
(1)特許請求の範囲第1項には、「ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物又は該化合物の部分加水分解縮合物とシランカップリング剤とコロイダルシリカとからなるガラス表面の処理剤。」が記載される。
(2)2頁左上欄6〜7行には、「本発明は、ガラス表面に撥水性、撥油性、耐汚染性、低反射性などを付与する処理剤に関し、」と記載される。
(3)5頁左下欄16行〜右下欄3行及び6頁の第1表には、比較例1〜3として、シランカップリング剤を含まない処理剤、即ち、コロイダルシリカとポリフルオロアルキル基含有シラン化合物とを溶剤で希釈した処理剤を用いた撥水性ガラス板について記載される。
甲第2号証;
(1)特許請求の範囲の請求項第1項には「ポリシロキサンを含有し、チタンを含まない上部層と底部層の間に挟まれたチタン化合物を含有する中間層からなる、CR-39及びガラスからなる群から選択された基質のための3層非反射コーティング組成物。」と記載され、同第4項には「前記の上部層の組成が:(a)・・・ポリシロキサン;(b)・・・・・フルオロ界面活性剤;を含む、請求項(1)に従った3層非反射コーティング組成物。」と記載され、同第8項には「前記の中間層が:(a)・・・・・有機チタン化合物(b)・・・ポリシロキサン・・・(c)・・・・・フルオロ界面活性剤;の混合物からなる、請求項(1)に従った3層非反射コーティング組成物。」と記載され、同第15項には「前記の底部層(基質に隣接)の組成が:(a)・・・ポリシロキサン;(b)・・・・・フルオロ界面活性剤;からなる、請求項(1)に従った3層非反射コーティング組成物。」と記載される。
そして、同第1項中に記載の「CR-39」は、5頁左下欄下から4行〜3行の記載からして、レンズを示す。
(2)4頁左下欄3〜5行には、「この非反射コーティングは対象物、例えばレンズ、シート及び棒に適用できそしてレンズ又はシートの片面又は両面に適用できる。」と記載される。
(3)13頁左上欄4〜5行には、「また上部層と底部層にコロイド状シリカを配合してコーティングの耐摩耗性を増加する。」と記載される。
(4)11頁左下欄〜右下欄には、非イオン性フルオロ界面活性剤の使用について記載される。
甲第3号証;
特許請求の範囲の請求項第1項には、「水分散ジルコニアゾルに有機溶媒を加え、水を有機溶媒に置換して得られる有機溶媒分散ジルコニアゾル。」が記載され、2頁左上欄には、このジルコニアゾルは、ガラス等の基材の表面にコーティングされることが記載される。
甲第4号証;
特許請求の範囲には、鋼板表面に(1)Al、Zr等のアルコキシド、または(2)これらの金属のモノメチルアルコキシド、あるいは(3)前記金属のアセチルアセトネート塩と、フルオロアルキルシランとを所定濃度含有するアルコールを塗布した後、加熱する撥水性、耐久性に優れた表面処理鋼板の製造方法、が記載される。
4.本件発明1ないし3と甲各号証記載の発明との対比・判断
(本件発明1,2について)
本件発明1は刊行物1(甲第1号証に相当)に記載された発明であるから、本件発明1の特許は特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、また、本件発明2は刊行物1記載の発明と刊行物2(甲第3号証に相当)、刊行物3(甲第4号証に相当)に記載の発明とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明2の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである旨平成11年10月26日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは何らの応答もない。
そして、上記の取消理由は妥当なものと認められるので、本件発明1,2の特許は、この取消理由によって取り消すべきものである。
(本件発明3について)
申立人は、本件発明3は甲第2号証に記載の発明であるか、甲第1号証(刊行物1に相当)及び甲第2号証に記載の各発明に基いて当業者が容易になし得たものであると主張するので、この点について検討する。
先ず、本件発明3は甲第2号証に記載の発明であるかどうかについて検討する。
本件発明3は、セラミックスゾルとフッ素化合物との混合物から形成されたセラミックコーティング層Aがガラス表面に設けられている撥水性ウィンドウガラスBにおいて、フッ素化合物が、ノニオンタイプフッ素系界面活性剤,パーフルオロ安息香酸,又はN-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕-N-n-プロピルパーフルオロオクチルスルフォンアミドである撥水性ウィンドウガラスD、とすることにより、長期に亘って良好な撥水性、撥霜性を示し、製造も容易であるという効果を奏するものである。
これに対して、甲第2号証の3層非反射コーティング組成物はレンズ、シート及び棒に適用するものであり、本件発明3の撥水性ウィンドウガラスへの適用を開示するものではない。しかも、甲第2号証の3層非反射コーティング組成物の構成は、本件発明3のセラミックコーティング層の構成との対比からすると、請求項第1項に記載される「ポリシロキサンを含有し、チタンを含まない上部層と底部層の間に挟まれたチタン化合物を含有する中間層からなる、CR-39及びガラスからなる群から選択された基質のための3層非反射コーティング組成物」からなる基本構成に、上部層或いは底部層にフルオロ界面活性剤及びコロイド状シリカを配合するものであって、本件発明3のセラミックスゾルとフッ素化合物との混合物から形成されたセラミックコーティング層であり、フッ素化合物が、ノニオンタイプフッ素系界面活性剤,パーフルオロ安息香酸,又はN-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕-N-n-プロピルパーフルオロオクチルスルフォンアミドであるコーティング層の構成とは著しく相違する。
したがって、本件発明3は甲第2号証に記載の発明であるとはいえない。
つぎに、本件発明3は甲第1号証(刊行物1に相当)及び甲第2号証に記載の各発明に基いて当業者が容易になし得たものであるかどうかについて検討する。
本件発明3と甲第1号証に記載の発明、特に比較例1〜3とを対比すると、フッ素化合物が、前者は「ノニオンタイプフッ素系界面活性剤,パーフルオロ安息香酸,又はN-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕-N-n-プロピルパーフルオロオクチルスルフォンアミド」であるのに対して、後者は「ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物又は該化合物の部分加水分解縮合物」である点で相違する。
上記相違点について甲第2号証を検討するに、上記したように、甲第2号証の3層非反射コーティング組成物の構成は、本件発明3のセラミックコーティング層の構成とは著しく相違するものであるから、上記相違点の構成を有する本件発明3は、甲第1号証及び甲第2号証に記載の各発明に基いて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
5.むすび
以上のとおりであるから、請求項1に係る発明は上記刊行物1に記載された発明であるから、請求項1に係る発明の特許は、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律26号)により改正された特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、また、請求項2に係る発明は上記刊行物1記載の発明と刊行物2,3に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2に係る発明の特許は、同特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、請求項1ないし2に係る発明の特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
また、請求項3に係る発明の特許については、他に取消理由を発見しない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第1項及び第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-02-22 
出願番号 特願平4-210082
審決分類 P 1 651・ 113- ZC (C03C)
P 1 651・ 121- ZC (C03C)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 平田 和男  
特許庁審判長 石井 勝徳
特許庁審判官 能美 知康
唐戸 光雄
登録日 1998-12-04 
登録番号 特許第2857820号(P2857820)
権利者 株式会社日本触媒 三菱自動車工業株式会社
発明の名称 撥水性ウィンドウガラス  

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