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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B09B
管理番号 1016442
異議申立番号 異議1998-74489  
総通号数 12 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1990-03-19 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-09-11 
確定日 2000-05-08 
異議申立件数
事件の表示 特許第2725819号「ごみ焼却炉の焼却灰処理方法および装置」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2725819号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 
理由 1、手続の経緯
特許第2725819号の請求項1ないし3に係る発明は、平成1年2月15日に特許出願(特許法第41条に基づく優先権主張、昭和63年6月15日)され、平成9年12月5日にその特許の設定登録がなされたものである。
これに対して、日立造船株式会社、株式会社荏原製作所、伊藤公也より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成11年2月8日付けで訂正請求がなされ、その後訂正拒絶理由通知がなされたところ、新たな訂正請求がなされたが、その後この訂正請求は訂正請求書の提出ができる期間以外の提出であるとの理由をもって却下され、その後再度訂正拒絶理由通知がなされたところ、その指定期間内の平成12年2月15日付けで上記訂正請求の手続補正書が提出されたものである。
2、訂正の適否
ア、訂正請求に対する補正の適否
上記平成12年2月15日付け手続補正書における訂正事項の補正は、請求項2、3の削除を含む特許請求の範囲の減縮とそれに伴う明りょうでない記載の釈明を目的とする補正であるから、当該補正は訂正請求書の要旨を変更するものではなく、特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に適合する。
イ、独立特許要件
イ-1、訂正発明
上記平成12年2月15日付け手続補正書で補正された訂正明細書の請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】ごみ焼却処理施設から回収される焼却灰を430〜610℃の温度で0.1〜10分間加熱して該焼却灰中に含まれる芳香族系塩素化合物を分解し、加熱処理後の焼却灰を有機塩素化合物が再生しないようにできるだけ速やかに200℃以下に冷却することを特徴とするごみ焼却炉の焼却灰処理方法。」
イ-2、引用刊行物
先の訂正拒絶理由通知において引用された「VGB KRAFTWERKSTECHNIK」第67巻、第11号、第1069〜1073頁(1987年11月)(以下、引用例1という。)には、「ごみ焼却施設のダイオキシン低減のための一次および二次対策の効果」(訳文、以下、同じ)という論文が記載されており、特に次の事項が記載されている。
(A)「ダイオキシン二次低減対策 表1による実験結果およびその他の考え方を基に、Hagenmaierによりごみ焼却施設フライアッシュの熱触媒処理プロセスが提案された〔13〕。これによりStuttgartごみ焼却施設において開発された実験設備(図1)にて広範囲な測定が実施された。本実験装置は円筒状リング管であり、その内筒部分を通ってフライアッシュが回転シャフト(1)上の種々の取付角度のブレード(2)により軸および放射方向に移送される。シャフトは電動機により無段変速機(3)をへて駆動される。シャフト回転数によりフライアッシュ滞留時間が調節される。電気集じん灰は供給口(4)から排出口(5)まで軸方向に移送され、放射方向移動は内筒管から反応層内部への熱伝達に利用される。内筒管はリング状隙間(12)を流動する燃焼ガス(10)によって加熱される。内筒管壁温度は250〜480℃に変動される。フライアッシュは電気集じん装置から直接取り出され、供給ホッパ(6)をへてフライアッシュカラム自体によって周囲から気密遮断されるように供給される。
このようなセルフシールはとくに連続運転には重要となり、間欠運転では弁(7)によって空気が遮断される。またフライアッシュ排出も空気遮断して水冷ロック装置(8)をへて行われる。冷却は空気漏入以前にフライアッシュ温度をダイオキシンが最早著しく生成されない温度まで低下するために必要となる。
実施実験では反応容器内にて温度が400℃以下、また滞留時間が4時間以内にそれぞれ調節された。最大処理灰量は60kg/hであった。3基の全ボイラのフライアッシュが処理されたが、この場合PCDDおよびPCDFの入口ならびに出口濃度が求められた。
実験フライアッシュは実験開始前に直接電気集じん灰排出口から取り出された。PCDDおよびPCDF濃度調節のために、同一チャージ灰から未処理フライアッシュ検体が設備供給直前に、また熱処理フライアッシュ検体が設備冷却部排出直後にそれぞれ採取された。」(第1071頁左欄第26行〜右欄第33行)
(B)第1071頁の第1図には、実験装置が示されており、内筒の左端に弁(7)を2ヶ連設しフライアッシュ供給口(4)、供給ホッパー(6)につながる管が垂直に配設されており、右端にはフライアッシュ出口(5)が配設されており、該出口と水冷ロック(8)との間の管に弁(7)が配設されており、また、水冷ロック(8)の出口側の管に弁(7)が配設されていることが示されている。
(C)「結果 熱処理が温度350〜400℃または滞留時間30分〜1時間にて最大となった。この場合分解率がPCDDおよびPCDF合計に対して95%以上となる。」(第1072頁左欄第21〜25行)
(D)「実質的調査結果は次のようになる。
-入口濃度に関係なく全ダイオキシンおよびフランの95%以上が分解される。
-今迄の処理により僅かの残留濃度となるが、それらは恐らくさらにプロセス最適化によって検出限界値以下に低下される。
-プロセスでは他の塩化芳香族、例えば塩化ベンゾール、塩化ナフタレン、ポリ塩化ジフェノール等々も分解される。
-反応層ではガスは放出されず、全反応生成物が吸着および収着によってフライアッシュに結合される。設備自体は僅かに負圧に調節される。
このためStuttgartごみ焼却施設の広範囲の実験から、ラボ実験の確認調査結果が実証された。したがって、本二次低減対策によってごみ焼却施設の環境調和性が向上されると共に、施設受け入れ高揚に寄与するようになる。Stuttgartごみ焼却施設での今までの結果が通常運転ダスト排出に対して設計された大形設備に転用されている。この設備は常用運転時の排出フライアッシュが連続処理される。」(第1072頁右欄第11行〜第1073頁左欄第5行)
(E)「本実験から簡単な集塵ダスト熱後処理によりごみ焼却時発生ダイオキシンおよび他のハロゲン化有害物質をドラスチックに低減すると共に、最小化の基礎を技術および経済的フィジビリテイ計算することが可能となった。」(第1073頁左欄第10〜16行)
同じく「CHEMOSPHERE」第15巻、第9〜12号、第1373〜1378頁(1986年)(以下、引用例2という。)には、「市営焼却器からのフライアッシュ中のPCDD/PCDFの熱的挙動」(訳文、以下同じ。)という論文が記載されており、特に次の事項が記載されている。
(F)「それぞれ120、200、300、400、500、600度において2時間の等温加熱をしたときのPCDD/PCDFの挙動のデータを表1、2に示す。表のAの区分はフライアッシュ中の濃度である。Bの区分は実験中に蒸発し、石英チューブや洗浄びんから回収された分の濃度である。」(第1375頁第2〜6行)
(G)「PCDDの挙動:非処理サンプルはPCDDの全濃度は395ppbである。PCDDの内訳の分布はOCDDとH7CDDが一番多く含まれており、低塩素化のものほど減少している。この濃度の数値や内訳の分布は200℃まで変化はない。300℃で全PCDDの増加分は、3915ppbに達する。内訳の個々の物質の増加程度は相違する。OCDDは120ppbから640ppbに増加する。これは5倍である。同じようにH7CDDは10倍、H6CDDは20倍、P5CDDは15倍、T4CDDは4倍となる。この温度における蒸発分は無視できる(表1B)。400℃での加熱では異なった様相となる。蒸発しないで残留するPCDDの合計は90ppbであり、蒸発する方は280ppbとなる。非処理サンプルでのフライアッシュ中の濃度と比べる23%に減少している。蒸発しないで残留する分で、P5CDDが最大の濃度を持つようになり、蒸発する方でも同じになる。500℃では分解がさらに起こり、約4ppbの濃度となる。最後に600℃ではフライアッシュでも集めた液の中でもPCDDは0.1ppb未満に減少する。」(第1375頁第9〜22行)
(H)「PCDFの挙動:非処理サンプルにおいて全PCDFはPCDDと同程度ある、しかし、内訳は塩素原子が4か5の物質が最大の濃度を示すというPCDDとは逆の分布となっている(表2)。加熱実験において、PCDFの挙動はPCDDと同じである。事実上、200℃まで変化はない。300℃ではPCDFの全濃度は、15倍に近い増加を示す4577ppbに達する。塩素原子5から7の物質は1570ppbのP5CDFが最大となる。表2Bから300℃での蒸発分は無視できることがわかる。400℃では、PCDFの形成は少なくなると同時に蒸発するようになる。非処理サンプルと比較すると、蒸発しないで残留するPCDFと蒸発するPCDFの合計(約1600ppb)は4倍以上あるが、その70%以上はガスとして放出される。PCDDと比べて、PCDFは温度を上げても減少せず高い化学的安定性を示す。これは500℃、600℃の実験の結果から明らかである。500℃で256ppbのPCDFは93%が気相となるが、2時間の熱処理後も残る。600℃でも、PCDFは蒸発しないで残留する方に計測可能な0.4ppbの濃度がある。」(第1375頁第23〜37行)
(I)第1376頁の表1にはフライアッシュ中のPCDDの熱的挙動が示されており、PCDDの全合計(ng/フライアッシュg当たり)は非処理の時395、120℃の時325、200℃の時310、300℃の時3916、400℃の時370、500℃の時13.5、600℃の時0.1以下であることが示されている。
(J)第1376頁の表2にはフライアッシュ中のPCDFの熱的挙動が示されており、PCDFの全合計(ng/フライアッシュg当たり)は非処理の時358、120℃の時318、200℃の時372、300℃の時4581、400℃の時1603、500℃の時256、600℃の時27であることが示されている。
イ-3、対比・判断
上記(A)〜(E)の記載から、引用例1には「ごみ焼却施設のフライアッシュを円筒状リング管内の内筒部分で400℃以下の温度で4時間以内で加熱してフライアッシュ中のPCDDおよびPCDFを分解し、空気漏入以前にフライアッシュ温度をダイオキシンが最早著しく生成されない温度まで低下するために水冷ロック装置で冷却するフライアッシュの熱触媒処理プロセス。」が記載されていると云える(以下、引用例1発明という。)。
そこで、上記訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、訂正発明という。)と引用例1発明を対比すると、引用例1発明の「フライアッシュ」、「PCDDおよびPCDF」、「フライアッシュの熱触媒処理プロセス」は、それぞれ訂正発明の「焼却灰」、「芳香族系塩素化合物」、「焼却灰処理方法」に相当するから、両者は、「ごみ焼却処理施設から回収される焼却灰を加熱して該焼却灰中に含まれる芳香族系塩素化合物を分解し、加熱処理後の焼却灰を冷却することを特徴とするごみ焼却炉の焼却灰処理方法。」で一致し、
ただ、(1)訂正発明では、430〜610℃の温度で0.1〜10分間加熱しているのに対して、引用例1発明では、400℃以下の温度で4時間以内加熱している点、(2)訂正発明では、有機塩素化合物が再生しないようにできるだけ速やかに200℃以下に冷却しているのに対して、引用例1発明では、空気漏入以前にフライアッシュ温度をダイオキシンが最早著しく生成されない温度まで低下するために水冷ロック装置で冷却している点で相違する。
そこで上記相違点(1)について検討する。
引用例1発明における「400℃以下」という条件は実施実験として行った条件にすぎず、400℃以上では実施できない旨の記載も引用例1にはない。加えて、上記引用例2の記載から、ごみ焼却施設からのフライアッシュを一定の温度で加熱した場合、PCDDの場合は300℃で最大に存在し、400℃、500℃と非処理のときより存在量が減っていき、600℃で無視できるほどの量になり、PCDFもやはり300℃で最大になり、400℃、500℃と存在量が減っていき、500℃のときに非処理ののときより存在量が少なくなり、600℃で27ppbとなることが記載されているところから、フライアッシュを400℃以上600℃までの定温で加熱したとき、フライアッシュ中のPCDDやPCDFが400℃のときより減少することは明らかである。また、明細書の記載をみても訂正発明の下限の430℃と上限の610℃の数値自体に格別の臨界的意義があるとも云えないから、上記引用例2の記載に徴し、焼却灰を430℃〜610℃の温度で加熱することは当業者が容易に想到し得るものである。
また、加熱時間についても、0.1〜10分間とすることは、加熱温度と芳香族系塩素化合物の分解や除去の度合をみはからいつつ、当業者が適宜設定することができると云える。
なお、特許権者は、加熱時間に関し平成12年2月15日付け特許異議意見書において、加熱温度450〜600℃でかつ加熱時間10分以内のときにダイオキシンの除去率が高く、10分を越えるとダイオキシン低減率が下がる旨主張しているが、本件特許明細書第2表には、加熱温度500℃や600℃で30分間加熱した場合でもPCDD、PCDFは「nd」(ネグリジブルスモール」と示されているから、10分という加熱時間に臨界的意義があるとも云えない。
したがって、特許権者の上記主張は採用できない。
次に相違点(2)について検討する。
引用例1発明では、空気漏入以前にフライアッシュ温度をダイオキシンが最早著しく生成されない温度まで低下するために水冷ロック装置で冷却しているが、「ダイオキシンが最早著しく生成されない温度まで低下する」ということは、訂正発明の「有機塩素化合物が再生しないように冷却している」ことに相当し、加えて水冷ロック装置で冷却していることは「できるだけ速やかに冷却」していることを意味していると云える。そして、その際「200℃以下に冷却」することについても、上記引用例2の記載から、フライアッシュを一定の温度で加熱したとき、200℃までは加熱してもPCDDやPCDFは増加しないこと、言い換えれば200℃以下まで冷却すればPCDD、PCDFは再生しないことを示唆していると云えるから、「200℃以下に冷却」することも当業者が容易に想到し得ることである。
そして、本件訂正発明の効果についても、引用例1に、ごみ焼却施設フライアッシュの熱触媒処理プロセスがダイオキシン二次低減対策として研究され、PCDD、PCDF合計で95%以上の分解率があり、大形設備に転用されて常用運転時の排出フライアッシュを処理することが記載されていることや、引用例2には、加熱温度を600℃に近づけるほどフライアッシュ中のPCDD、PCDFが少量になるということが記載されていることから、訂正発明の「焼却灰中の有機塩素化合物を効果的に分解処理する」という明細書記載の効果も予期される範囲内のものと認められる。
以上のとおり、訂正明細書の請求項1に係る発明は、上記引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
ウ、まとめ
したがって、上記訂正は特許法第120条の4第3項において準用する特許法第126条第4項の規定に適合しないので当該訂正は認められない。
3、特許異議申立てについて
本件請求項1ないし3に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、それぞれその特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】ごみ焼却処理施設から回収される焼却灰を300℃以上に加熱して該焼却灰中に含まれる芳香族系塩素化合物を分解し、加熱処理後の焼却灰を速やかに200℃以下に冷却することを特徴とするごみ焼却灰処理方法。
【請求項2】ごみ焼却炉から排出される焼却灰を集塵装置により回収するごみ焼却処理装置において、該集塵装置の焼却灰を充満させた滞留部に加熱手段を設け、該焼却灰中に含まれる芳香族系塩素化合物を加熱分解するようにしたことを特徴とするごみ焼却炉の焼却灰処理装置。
【請求項3】前記集塵装置の焼却灰を充満させた滞留部にロータリーバルブを設け、該滞留部の焼却灰が所定レベルを保つように該ロータリーバルブの調節手段を設けたことを特徴とする請求項2記載のごみ焼却炉の焼却灰処理装置。」
4-1、引用刊行物
先の取消理由通知において引用した刊行物は、上記イ-2で示した上記引用例1、2である。
4-2、対比・判断
(ア)請求項1に係る発明について
請求項1に係る発明は、上記訂正発明の上位概念の発明に相当し、引用例1発明とは上記イ-3で指摘した相違点(1)及び(2)のうち相違点(2)のみで相違するだけであるから、上記イ-3と同様な理由で、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものである。
(イ)請求項2に係る発明について
上記(A)〜(E)の記載から、引用例1には「フライアッシュを電気集じん装置から取り出すごみ焼却施設において、燃焼ガスをリング状隙間を流動させることによって、円筒状リング管内の内筒部分でフライアッシュを加熱し、フライアッシュ中のPCDDおよびPCDFを分解する円筒状リング管、弁、水冷ロック装置、弁が連設された実験装置。」が記載されていると云える(以下、引用例1装置発明という。)。
請求項2に係る発明と引用例1装置発明とを対比すると、引用例1装置発明の「内筒部分」、「リング状隙間」、「PCDDおよびPCDF」、「実験装置」は、それぞれ請求項2に係る発明の「滞留部」、「加熱手段」、「芳香族系塩素化合物」、「焼却灰処理装置」に相当するから、両者は「ごみ焼却炉から排出される焼却灰を集塵装置により回収するごみ焼却処理装置において、該集塵装置の焼却灰を滞留部に加熱手段を設け、該焼却灰中に含まれる芳香族系塩素化合物を加熱分解するようにしたことを特徴とするごみ焼却炉の焼却灰処理装置」で一致し、ただ請求項2に係る発明では焼却灰を滞留部に充満させているのに対して、引用例1装置発明ではその点が触れられていない点で相違する。
そこで、上記相違点を検討すると、引用例1には「供給ホッパ(6)をへてフライアッシュカラム自体によって周囲から気密遮断されるように供給される。このようなセルフシールは特に連続運転には重要になり、」と記載されている。この場合のセルフシールとは焼却灰が詰まっている気密状態と解されるから、引用例1の第1図からみると、連続運転のセルフシールの場合は滞留部にも焼却灰が充満していると解するのが至当であり、加えて滞留部の焼却灰の量は、装置の焼却灰処理量と密接に関係していると云えるから、焼却灰処理量に応じて滞留部に焼却灰を充満させることは当然のことである。
したがって、この発明は、引用例1装置発明に、焼却灰を滞留部に充満させる構成を具備することによって当業者が容易に想到し得るものであり、その効果も予測される範囲内のものと認められる。
(ウ)請求項3に係る発明について
一般に、ロータリーバルブは弁として気密を保ちながら粉粒体を供給、排出する周知の手段である。また、引用例1装置発明では滞留部の前後に弁が示されており、加えてこの滞留部は焼却灰を一定量滞留させて加熱処理を受けさせることを目的とするものである。さらに引用例1には気密処理についても「気密遮断されるように供給される」、「空気漏入以前に・・・温度まで低下する」と示唆されているから、この発明も、引用例1装置発明に、滞留部の焼却灰が所定レベルを保つようにロータリーバルブの調節手段を設けることによって当業者が容易に想到し得るものである。
5、むすび
以上のとおり、本件請求項1ないし3に係る発明の特許は、特許法第29条第定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号に該当し、同法第114条第2項の規定により取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-03-02 
出願番号 特願平1-35779
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (B09B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 中野 孝一  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 山田 充
野田 直人
登録日 1997-12-05 
登録番号 特許第2725819号(P2725819)
権利者 三井造船株式会社
発明の名称 ごみ焼却炉の焼却灰処理方法および装置  
代理人 渡辺 彰  
代理人 清末 康子  
代理人 小野 信夫  
代理人 日比 紀彦  
代理人 岸本 守一  
代理人 岸本 瑛之助  
代理人 川北 武長  

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