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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B21B
管理番号 1016587
異議申立番号 異議1998-73844  
総通号数 12 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-12-14 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-08-04 
確定日 2000-01-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2709777号「圧延機の制御方法および制御装置」の請求項1ないし20に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2709777号の請求項1ないし20に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2709777号は、平成4年5月28日の特許出願に係り、平成9年10月24日にその特許の設定登録がされ、その後、新日本製鐵株式会社から特許異議の申立てがなされたので、当審より特許取消理由を通知したところ、その指定期間内である平成11年11月9日に訂正請求書が提出されたものである。
2.訂正の内容
その訂正請求による訂正(以下、本件訂正という。)の内容は以下のとおりである。
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1を
「【請求項1】 圧延荷重、ロールベンディング力および出側圧延材の板クラウンを検出し、該圧延荷重、ロールベンディング力の検出値およびロールプロフィル予測モデルから圧延材の板クラウンを計算し、該板クラウン計算値と前記板クラウン検出値との差を求めることによって、あらかじめ測定されるロールクラウンを初期値とするロールプロフィル予測値と実際のロールプロフィルとの予測誤差に起因する板クラウン偏差を打ち消すべく、次の圧延材を圧延する際にロールベンディング力を新たに設定し、板クラウンを制御する圧延機の制御方法において、ロールクーラント(冷却水)運用パターンに対応した作業ロール熱膨張量を圧延時の冷却係数及びアイドル時間による冷却係数に分割して計算し、ロールプロフィル予測を行うことを特徴とする圧延機の制御方法。」に訂正する。
(2)訂正事項b
特許請求の範囲の請求項6を、
「【請求項6】 圧延荷重測定用ロードセル、圧延荷重演算器、ロールベンディング力測定用ロードセル、ロールベンディング力演算器、出側圧延材の板クラウンを検出する板厚計および板クラウン演算器と、あらかじめ測定されるロールクラウンの初期値を設定する設定盤と、圧延機のロールベンディング力プリセット値、板クラウン計算のタイミングと圧延情報を伝達するタイミング指令および圧延情報伝達装置と、ロールベンダー指令装置を備え、ロールプロフィル予測値と実際のロールプロフィルとの予測誤差に起因する板クラウン偏差を打ち消すべく、次の圧延材を圧延する際にロールベンディングカを新たに設定し、板クラウンを制御する圧延機の制御装置において、アイドル時間に応じて流量を可変するロールクーラント(冷却水)運用パターンに対応した作業ロール熱膨張量を計算する計算機を備えたことを特徴とする圧延機の制御装置。」に訂正する。
(3)訂正事項c
特許請求の範囲の請求項11を、
【請求項11】 請求項1に記載の板クラウンを制御する圧延機の制御方法において、作業ロールサイクル開始以前の補強ロール摩耗クラウンに作業ロールサイクル開始以後の補強ロール摩耗を累積計算して、補強ロール摩耗クラウンを計算し、ロールプロフィル予測を行うことを特徴とする圧延機の制御方法。」に訂正する。
(4)訂正事項d
特許請求の範囲の請求項12を、
「【請求項12】 請求項6に記載の板クラウンを制御する圧延機の制御装置において、作業ロールサイクル開始以前の補強ロール摩耗クラウンに作業ロールサイクル開始以後の補強ロール摩耗を累積計算して、補強ロール摩耗クラウンを計算する計算機を備えたことを特徴とする圧延機の制御装置。」に訂正する。
3.訂正の適否についての判断
(1)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aは、特許請求の範囲の請求項1において、作業ロールの熱膨張量の計算方法の構成をより限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮に相当する。
訂正事項bは、同じく請求項6において、作業ロール熱膨張量を計算する計算機の構成をより限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮に相当する。
訂正事項cは、同じく請求項11において、補強ロール摩耗の計算方法の構成をより限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮に相当する。
訂正事項dは、同じく請求項12において、補強ロール摩耗を計算する計算機の構成をより限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮に相当する。
そして、これら訂正事項a〜dは、いずれも特許明細書及び図面に記載された事項の範囲内のものであって、いわゆる新規事項を追加するものではなく、さらには実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものではない。
(2)独立特許要件についての判断
(2-1)本件発明
訂正後の特許請求の範囲の請求項1、6、11、12に記載された事項を構成とするそれぞれの発明(以下、順に「訂正後の本件発明1、6、11、12」という。)は、前項「(1)訂正事項a〜d」において記載したとおりのものである。
(2-2)刊行物の記載事項
これに対し、当審が通知した取消理由通知で引用した各引用例には、次のように記載されている。
■刊行物1:特開昭54-81153号公報(特許異議申立人が提出した甲第1号証)
特許請求の範囲には、「ロールサーマルクラウンが被圧延材の形状に悪影響を及ぼさないようにロールベンディング制御あるいはロールクーラント制御を行う圧延機において、板幅、板厚等の如き圧延条件を設定する設定盤と、該圧延条件とロールクーラント信号とからロール境界温度を予測演算する装置と、該予測演算値と圧延履歴からロールサーマルプロフィルを演算する装置と、該演算値からサーマルクラウンを演算する装置とを備えると共に・・・」と記載されている。
また、第2頁右下欄第5行〜第7行には、「次にロールの温度変化は実験により第3図のようになるが、近似的に次式で表される。」と記載され、続いて次式として時刻τからΔτ時間後のロール温度を表す(1)式が記載されている。さらに、第3頁右上欄第5行〜第14行には、「従ってロール境界温度θfは、・・・ロール軸方向に求めればよい。」と記載され、第4頁右上欄第4行〜左下欄第8行には、「第9図において、(1)は作業ロール、・・・(5)は作業ロール(1)の幅方向に冷却能力を調整できるいわゆるゾーンコントロール可能なロールクーラント装置、・・・(13)は設定盤(11)からの圧延条件とロールクーラント装置(5)からのロールクーラント噴射条件とからロール境界条件を演算するロール周りの境界温度演算装置、(14)は目標板クラウン演算装置(12)から形状制御目標量と、境界温度演算装置(13)から圧延条件によりサーマルプロフィルの予測演算を行い、また後述するロールギャップ変化に基づくロール熱膨張量演算装置(16)より転送される圧延実績データにより予測演算値の修正を行うロールサーマルプロフィル演算装置・・・」と記載されている。
■刊行物2:特公平3-72364号公報(同じく甲第2号証)
特許請求の範囲には、「圧延板の幅方向板厚分布を制御できる装置を有する圧延機の圧延制御方法において、圧延板と作業ロール間の幅方向荷重分布が一様である場合に実現される幅方向板厚分布と圧延条件の関係を示すモデル式と、該モデル式に圧延条件を代入して計算される該幅方向板厚分布と圧延機入側の圧延板の幅方向板厚分布の一次結合として構成される圧延機出側の圧延板の幅方向板厚分布の計算式とを用いて・・・」と記載されている。
また、第5頁左欄第28行〜35行には、「メカニカル板クラウンは、基本的には作業ロールのクラウン、たわみ、および圧延材との接触による偏平変形によって決まる量である。ロールクラウンは圧延作業を続けて行くうちに摩耗および熱膨脹によって次第に変化していくことが知られているが、これらについては数式モデルによる推定あるいは直接測定等によって既知であると考える。」と記載され、第6頁左欄第9行〜第41行には、「作業ロールのたわみを求める際には、・・・すなわち、圧延材料との接触による作業ロール偏平変形がメカニカル板クラウンに及ぼす影響をCfとすると、補強ロールのクラウン・・・も考慮にいれてメカニカル板クラウンCは次式で計算できる。」と記載されるとともに、続いて板クラウンを表す数式(14)が記載されている。
■刊行物3:特開昭62-158512号公報(同じく甲第3号証)
特許請求の範囲の第4行〜第6行には、「ワークロールサーマルクラウンが板サイズ変更後の目標パターンとなるようにロールクーラント流量のロール軸方向分布を調節し」と記載され、第4頁右上欄第8行〜右下欄第5行には、「ワークロールサーマルクラウンの数値計算モデルは、一般的には前記式(1)で表わされるが、より具体的にはたとえば次の式(7)で表わされる。」と記載されるとともに、続いてワークロールサーマルクラウンを表す数式(7)式が記載されている。
(2-3)対比・判断
[訂正後の本件発明1について]
刊行物1には、ロールのサーマルクラウンを制御する圧延機の制御方法において、ロールクーラント噴射条件に対応した作業ロール熱膨張量を計算し、ロールプロフィル予測を行う技術が記載されている。しかしながら、「作業ロール熱膨張量を圧延時の冷却係数およびアイドリング時間による冷却係数に分割区分して計算」する訂正後の本件発明1の構成については、何ら記載されていない。また、刊行物2には、メカニカル板クラウンを計算する際に補強ロールの摩耗量を考慮することが記載され、刊行物3には、ロールクーラント流量のロール軸方向分布を調節することが記載されているが、刊行物2、3にも訂正後の本件発明1の前記構成については何ら記載されていない。
そして、訂正後の本件発明1は、作業ロール熱膨張量の計算に際し、前記のように圧延時とアイドリング時に分けることによって、作業サイクルのコイル一本毎の作業ロール熱膨張量の高精度の予測ができ、サイクル内のコイル一本毎の板クラウン精度の向上が図れるという明細書に記載された顕著な作用効果を奏するものである。
したがって、訂正後の本件発明1は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
[訂正後の本件発明6について]
訂正後の本件発明6が、作業ロール熱膨張量を計算する計算機が、「アイドル時間に応じて流量を可変するロールクーラント(冷却水)運用パターンに対応した」熱膨張量を計算するものであるのに対し、刊行物1には、アイドル時間に応じてロールクーラントの流量を可変することに対応した熱膨張量を計算することは記載されていない。また、刊行物2、3にも前記の構成については何ら記載されていない。
そして、訂正後の本件発明6は、前記のようにアイドル時間に応じてロールクーラントの流量を可変することに対応した計算を行う計算機を有することにより、前記の顕著な作用効果を奏するものである。
したがって、訂正後の本件発明6は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
[訂正後の本件発明11、16について]
訂正後の本件発明11は請求項1を、また、訂正後の本件発明12は請求項6を引用して記載された発明であるから、請求項1および請求項6に係る発明が、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、これらの発明についても同様に当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(2-4)むすび
よって、訂正後の本件発明1、6、11、12は、いずれも特許出願の際独立して特許を受けることができない発明ではないから、本件訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書及び同条第3項で準用する同法第126条第2〜4項の規定に適合するので、本件訂正は認められるものである。
4.特許異議の申立てについての判断
(1)本件発明
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1、6、11、12は、前述のとおり訂正されることとなり、それらの請求項に係る発明は、前記「2、訂正の内容」の「(1)訂正事項a〜(4)訂正事項d」において記載したとおりのものであり、その他の請求項2〜5、7〜10、13〜20に係る発明は、特許明細書の特許請求の範囲のそれぞれの請求項に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項2】請求項1において、ロールクーラント(冷却水)運用パターンとして、圧延時とアイドリング時の流量を可変とすることを特徴とする圧延機の制御方法。
【請求項3】請求項1において、ロールクーラント(冷却水)運用パターンとして、アイドリング時間内に流量を可変とすることを特徴とする圧延機の制御方法。
【請求項4】請求項1に記載のロールクーラント(冷却水)運用パターンとして、圧延時とアイドリング時の水圧を可変とすることを特徴とする圧延機の制御方法。
【請求項5】請求項1において、ロールクーラント(冷却水)運用パターンとして、アイドリング時間内に水圧を可変とすることを特徴とする圧延機の制御方法。
【請求項7】請求項6において、ロールクーラント(冷却水)運用パターンとして、圧延時とアイドリング時の流量を可変とし、これによる作業ロール熱膨張量を計算する計算機を備えたことを特徴とする圧延機の制御装置。
【請求項8】請求項6において、ロールクーラント(冷却水)運用パターンとして、アイドリング時間内に流量を可変とし、これによる作業ロール熱膨張量を計算する計算機を備えたことを特徴とする圧延機の制御装置。
【請求項9】請求項6において、ロールクーラント(冷却水)運用パターンとして、圧延時とアイドリング時の水圧を可変とし、これによる作業ロール熱膨張量を計算する計算機を備えたことを特徴とする圧延機の制御装置。
【請求項10】請求項6において、ロールクーラント(冷却水)運用パターンとして、アイドリング時間内に水圧を可変とし、これによる作業ロール熱膨張量を計算する計算機を備えたことを特徴とする圧延機の制御装置。
【請求項13】請求項1に記載の板クラウンを制御する圧延機の制御方法において、ロールクーラント(冷却水)運用パターンに対応した作業ロール熱膨張量と補強ロール摩耗を計算し、ロールプロフィル予測を行うことを特徴とする圧延機の制御方法。
【請求項14】請求項6に記載の板クラウンを制御する圧延機の制御装置において、ロールクーラント(冷却水)運用パターンに対応した作業ロール熱膨張量を計算する計算機と補強ロール摩耗を計算する計算機を備えたことを特徴とする圧延機の制御装置。
【請求項15】請求項1に記載の板クラウンを制御する圧延機の制御方法において、ロールクーラント(冷却水)運用パターンによる作業ロール熱膨張量と作業ロール摩耗および中間ロール摩耗(6重圧延機)を計算し、ロールプロフィル予測を行うことを特徴とする圧延機の制御方法。
【請求項16】請求項6に記載の板クラウンを制御する圧延機の制御装置において、ロールクーラント(冷却水)運用パターンに対応した作業ロール熱膨張量を計算する計算機と作業ロール摩耗および中間ロール摩耗(6重圧延機)を計算する計算機を備えたことを特徴とする圧延機の制御装置。
【請求項17】請求項1に記載の板クラウンを制御する圧延機の制御方法において、作業ロール摩耗、中間ロール摩耗(6重圧延機)および補強ロール摩耗を計算し、ロールプロフィル予測を行うことを特徴とする圧延機の制御方法。
【請求項18】請求項6に記載の板クラウンを制御する圧延機の制御装置において、作業ロール摩耗、中間ロール摩耗(6重圧延機)および補強ロール摩耗を計算する計算機を備えたことを特徴とする圧延機の制御装置。
【請求項19】請求項1に記載の板クラウンを制御する圧延機の制御方法において、ロールクーラント(冷却水)運用パターンに対応した作業ロール熱膨張量と作業ロール摩耗、中間ロール摩耗(6重圧延機)および補強ロール摩耗を計算し、ロールプロフィルの予測を行うことを特徴とする圧延機の制御方法。
【請求項20】請求項6に記載の板クラウンを制御する圧延機の制御装置において、ロールクーラント(冷却水)運用パターンに対応した作業ロール熱膨張量を計算する計算機と作業ロール摩耗、中間ロール摩耗(6重圧延機)および補強ロール摩耗を計算する計算機を備えたことを特徴とする圧延機の制御装置。」
(2)申立ての理由の概要
特許異議申立人は、前記刊行物1〜3であるところの甲第1〜3号証を提出し、本件特許の請求項1〜20に係る発明(訂正前のもの)は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであって、それらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、取り消されるべきものである旨の主張をしている。
(3)判断
しかしながら、本件特許明細書の特許請求の範囲は、前述のとおり訂正されることとなり、訂正後の請求項1、6、11、12に係る発明については、前記「3.訂正の適否についての判断」の「(2)独立特許要件についての判断」の項に記載したとおり、特許異議申立人が提出した証拠に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。また、その他の請求項に係る発明ついては、それぞれ請求項1あるいは請求項6のいずれかを引用した発明であるから、同様に当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。
5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1〜20に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜20に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
圧延機の制御方法および制御装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 圧延荷重、ロ-ルベンディング力および出側圧延材の板クラウンを検出し、該圧延荷重、ロ-ルベンディング力の検出値およびロ-ルプロフィル予測モデルから圧延材の板クラウンを計算し、該板クラウン計算値と前記板クラウン検出値との差を求めることによって、あらかじめ測定されるロールクラウンを初期値とするロ-ルプロフィル予測値と実際のロ-ルプロフィルとの予測誤差に起因する板クラウン偏差を打ち消すべく、次の圧延材を圧延する際にロ-ルベンディング力を新たに設定し、板クラウンを制御する圧延機の制御方法において、ロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンに対応した作業ロ-ル熱膨張量を圧延時の冷却係数及びアイドル時間による冷却係数に分割して計算し、ロ-ルプロフィル予測を行うことを特徴とする圧延機の制御方法。
【請求項2】 請求項1において、ロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンとして、圧延時とアイドリング時の流量を可変とすることを特徴とする圧延機の制御方法。
【請求項3】 請求項1において、ロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンとして、アイドリング時間内に流量を可変とすることを特徴とする圧延機の制御方法。
【請求項4】 請求項1に記載のロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンとして、圧延時とアイドリング時の水圧を可変とすることを特徴とする圧延機の制御方法。
【請求項5】 請求項1において、ロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンとして、アイドリング時間内に水圧を可変とすることを特徴とする圧延機の制御方法。
【請求項6】 圧延荷重測定用ロ-ドセル、圧延荷重演算器、ロ-ルベンディング力測定用ロ-ドセル、ロ-ルベンディング力演算器、出側圧延材の板クラウンを検出する板厚計および板クラウン演算器と、あらかじめ測定されるロ-ルクラウンの初期値を設定する設定盤と、圧延機のロ-ルベンディングカプリセット値、板クラウン計算のタイミングと圧延情報を伝達するタイミング指令および圧延情報伝達装置と、ロ-ルベンダ-指令装置を備え、ロ-ルプロフィル予測値と実際のロ-ルプロフィルとの予測誤差に起因する板クラウン偏差を打ち消すべく、次の圧延材を圧延する際にロ-ルベンディング力を新たに設定し、板クラウンを制御する圧延機の制御装置において、アイドル時間に応じて流量を可変するロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンに対応した作業ロ-ル熱膨張量を計算する計算機を備えたことを特徴とする圧延機の制御装置。
【請求項7】 請求項6において、ロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンとして、圧延時とアイドリング時の流量を可変とし、これによる作業ロ-ル熱膨張量を計算する計算機を備えたことを特徴とする圧延機の制御装置。
【請求項8】 請求項6において、ロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンとして、アイドリング時間内に流量を可変とし、これによる作業ロ-ル熱膨張量を計算する計算機を備えたことを特徴とする圧延機の制御装置。
【請求項9】 請求項6において、ロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンとして、圧延時とアイドリング時の水圧を可変とし、これによる作業ロ-ル熱膨張量を計算する計算機を備えたことを特徴とする圧延機の制御装置。
【請求項10】 請求項6において、ロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンとして、アイドリング時間内に水圧を可変とし、これによる作業ロ-ル熱膨張量を計算する計算機を備えたことを特徴とする圧延機の制御装置。
【請求項11】 請求項1に記載の板クラウンを制御する圧延機の制御方法において、作業ロ-ルサイクル開始以前の補強ロ-ル摩耗クラウンに作業ロ-ルサイクル開始以後の補強ロ-ル摩耗を累積計算して、補強ロ-ル摩耗クラウンを計算し、ロ-ルプロフィル予測を行うことを特徴とする圧延機の制御方法。
【請求項12】 請求項6に記載の板クラウンを制御する圧延機の制御装置において、作業ロ-ルサイクル開始以前の補強ロ-ル摩耗クラウンに作業ロ-ルサイクル開始以後の補強ロ-ル摩耗を累積計算して、補強ロ-ル摩耗クラウンを計算する計算機を備えたことを特徴とする圧延機の制御装置。
【請求項13】 請求項1に記載の板クラウンを制御する圧延機の制御方法において、ロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンに対応した作業ロ-ル熱膨張量と補強ロ-ル摩耗を計算し、ロ-ルプロフィル予測を行うことを特徴とする圧延機の制御方法。
【請求項14】 請求項6に記載の板クラウンを制御する圧延機の制御装置において、ロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンに対応した作業ロ-ル熱膨張量を計算する計算機と補強ロ-ル摩耗を計算する計算機を備えたことを特徴とする圧延機の制御装置。
【請求項15】 請求項1に記載の板クラウンを制御する圧延機の制御方法において、ロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンによる作業ロ-ル熱膨張量と作業ロ-ル摩耗および中間ロ-ル摩耗(6重圧延機)を計算し、ロ-ルプロフィル予測を行うことを特徴とする圧延機の制御方法。
【請求項16】 請求項6に記載の板クラウンを制御する圧延機の制御装置において、ロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンに対応した作業ロ-ル熱膨張量を計算する計算機と作業ロ-ル摩耗および中間ロ-ル摩耗(6重圧延機)を計算する計算機を備えたことを特徴とする圧延機の制御装置。
【請求項17】 請求項1に記載の板クラウンを制御する圧延機の制御方法において、作業ロ-ル摩耗、中間ロ-ル摩耗(6重圧延機)および補強ロ-ル摩耗を計算し、ロ-ルプロフィル予測を行うことを特徴とする圧延機の制御方法。
【請求項18】 請求項6に記載の板クラウンを制御する圧延機の制御装置において、作業ロ-ル摩耗、中間ロ-ル摩耗(6重圧延機)および補強ロ-ル摩耗を計算する計算機を備えたことを特徴とする圧延機の制御装置。
【請求項19】 請求項1に記載の板クラウンを制御する圧延機の制御方法において、ロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンに対応した作業ロ-ル熱膨張量と作業ロ-ル摩耗、中間ロ-ル摩耗(6重圧延機)および補強ロ-ル摩耗を計算し、ロ-ルプロフィルの予測を行うことを特徴とする圧延機の制御方法。
【請求項20】 請求項6に記載の板クラウンを制御する圧延機の制御装置において、ロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンに対応した作業ロ-ル熱膨張量を計算する計算機と作業ロ-ル摩耗、中間ロ-ル摩耗(6重圧延機)および補強ロ-ル摩耗を計算する計算機を備えたことを特徴とする圧延機の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、作業ロ-ルと補強ロ-ルを有する圧延機に係り、特に、4重または6重圧延機によって板クラウンを制御する圧延機の制御方法および制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、作業ロ-ルと補強ロ-ルを有する4重または6重圧延機における板材の板クラウン制御方法としては、特公昭55-7324号公報に開示されているように、圧延荷重、ロ-ルベンディング力および出側圧延材の板クラウンを検出し、該圧延荷重およびロ-ルベンディング力の検出値から圧延材の板クラウンを計算し、該板クラウン計算値と前記板クラウン検出値との差を求めることによって、ロ-ルクラウンを計算し、該ロ-ルクラウン計算値と予め測定されている初期のロ-ルクラウン測定値の差からロ-ルクラウン変化量を求め、次の圧延材を圧延する際に、該ロ-ルクラウン変化量を加味してロ-ルベンディング力または圧下量を新たに設定することにより、板クラウンを制御する圧延方法がある。
この方法は、測定が困難もしくは解析手法が未確立な当時において、ロ-ル熱膨張量およびロ-ル摩耗によるロ-ルクラウン変化分を知ることが出来、圧延本数を重ねてゆく際に生じるロ-ルベンディングカのプリセット不適合による制御不安定を解消し、制御精度を向上させることに貢献した。
近年は、圧延鋼板の品質および歩留まり向上のニ-ズが高まり、測定解析技術が進歩し、作業ロ-ル交換後の圧延本数の累積による作業ロ-ル熱膨張量クラウンおよび作業ロ-ル摩耗クラウンの変化を予測するロ-ルクラウンモデルを用い、作業ロ-ル交換の初期から後期までの作業ロ-ルサイクル全体の板クラウン精度向上を図る方式が取られている。
さらに、軸方向に移動可能な一対の中間ロ-ルを有する6重圧延機においては、特願昭63-1206号に示されているように、中間ロ-ル交換後の圧延本数の累積により、中間ロ-ルが摩耗してくると、ロ-ル肩部の円弧上の逃げのずれ、つまり、ロ-ルの軸方向位置基準線のずれが生じるため、中間ロ-ル摩耗を検知し、中間ロ-ルの軸方向位置基準線のずれを計算し、常に実際の中間ロ-ル位置を把握し、板クラウン制御に反映することにより、中間ロ-ル交換の初期から後期までの中間ロ-ルサイクル全体の板クラウン精度向上を図る方式が採られだしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の従来方法には、次のような欠点があり、問題となることが判明した。
即ち、近年、省エネルギ-、生産の高効率化、圧延材の高品質化、歩留り向上の要求が高まっており、これに対応して、多種材質の圧延や冷却水量の最適化が必須となりつつある。例えば、ロ-ルク-ラントの水量を可変とし、不必要なク-ラントを消費しないような圧延が行われる。この場合、次のような不具合を生じる。
図1を用いて、作業ロ-ルサイクルのコイル一本毎にロ-ルク-ラント(冷却水)量変更に対応した作業ロ-ル熱膨張量予測を行なわない方式の場合、作業ロ-ル熱膨張量予測誤差に起因する板クラウン制御精度の低下をもたらす欠点を具体的に説明する。
図1-(a)は、単位時間当りのロ-ルク-ラント(冷却水)流量を一定にして圧延した場合の圧延コイル本数の進展に伴う作業ロ-ルの直径当り熱膨張量成長曲線を示す。本図では、ロ-ルク-ラント(冷却水)流量の考慮の有無の違いを明確にするため、作業ロ-ルサイクルのコイル一本毎の圧延条件として、圧延材の圧延時間trollと圧延アイドリング時間tidle、の比率T=troll/(troll+tidle)を一定とした場合について示している。
図1-(b)は、単位時間当りのロ-ルク-ラント(冷却水)流量を変更して圧延した場合の圧延コイル本数の進展に伴う作業ロ-ルの直径当り熱膨張量成長曲線を示す。本図では、ロ-ルク-ラント(冷却水)流量の考慮の有無の違いを明確にするため、作業ロ-ルサイクルのコイル一本毎の圧延条件として、コイル10本毎の圧延に際し、10本目に圧延材の圧延時間trollと圧延アイドリング時間tidle、の比率T=troll/(troll+tidle)を図1-(a)の場合に比して1/5とした場合について示している。
圧延操業上の何等かの理由から、図1-(b)に示すように、圧延材の圧延時間trollと圧延アイドリング時間tidle、の比率Tが10本目毎に1/5、つまり、アイドリング時間が長くなった場合、単位時間当りのロ-ルク-ラント(冷却水)流量を図1-(a)の場合と同じくQ=Q0(一定)にして冷却を行った場合、作業ロ-ル熱膨張量は、破線に示すように作業ロ-ルが冷却され、作業ロ-ル熱膨張量は減少し、図1-(a)の実線で示す作業ロ-ル熱膨張量より小さい値となる。アイドリング時間が著しく長くなった場合にも、単位時間当りのロ-ルク-ラント(冷却水)流量を図1-(a)の場合と同じくQ=Q0(一定)にして冷却を行った場合は、作業ロ-ル熱膨張量は著しく減少し、作業ロ-ルクラウン量のコイル問の相違により、良好な板品質をもたらす圧延が困難となる。なお、図2-(a)にロ-ルク-ラント(冷却水)流量一定の場合の作業ロ-ル熱膨張量を示す。
このことから、アイドリング時間が長くなった場合、単位時間当りのロ-ルク-ラント(冷却水)流量を図2-(b)のように、
Q=Q1(Q1<Q0)
にして、著しい熱膨張量の低下を防止する運用が行なわれている。
つまり、図1-(b)に示すように、あるコイルの圧延時に(ここでは10本毎)アイドリング時間が長くなった場合、それに応じて単位時間当りのロ-ルク-ラント(冷却水)流量を減少させることにより、作業ロ-ル熱膨張量は図1-(b)の実線となる。
従来は、このようなロ-ルク-ラント(冷却水)流量変更に対応する作業ロ-ル熱膨張予測モデルが考えられていなかったため、予測熱膨張は、逆に図1-(b)の点線の値となり、この予測誤差に起因する板クラウン計算精度の低下をもたらす欠点をもっていた。
即ち、従来の方式では、作業ロ-ルの交換初期から後期までの作業ロ-ルサイクル内の作業ロ-ル熱膨張量クラウンの予測については、一定流量のロ-ルク-ラント(冷却水)量による作業ロ-ル熱膨張量予測を行なっており、作業ロ-ルサイクル内のコイル一本毎のロ-ルク-ラント(冷却水)量変更に対応可能な作業ロ-ル熱膨張量予測は行なわれていなかったため、一本毎にロ-ルク-ラント(冷却水)量を変更する運用方式に対しては、作業ロ-ル熱膨張量予測誤差に起因する板クラウン制御誤差を生じる欠点を有していた。
また、次の場合においても従来方式には、次のような欠点があり、問題となることが判明した。
即ち、生産効率の向上を図り、生産コストの低減を図るためには、ロ-ルのサイクル寿命を伸ばすことが最も有力であり、このため、新たな耐摩耗性の作業ロ-ルの適用が進みつつある。これにより、作業ロ-ルのサイクル寿命は大幅に向上出来るが、次の問題を生じる。通常、補強ロ-ルの交換サイクルは、作業ロ-ルの交換サイクルの約100倍(累積圧延コイル重量)であるため、作業ロ-ルの交換サイクルが伸びると同時に、補強ロ-ルの交換サイクルも大幅に増加する。
しかしながら、補強ロ-ルは、従来材質のものが使用されるため、その摩耗量も増加することになる。従って、従来は無視出来た補強ロ-ルの摩耗が板材品質に大きな影響を与える。
図3に、補強ロ-ルの摩耗を考慮しないことによる、板クラウン精度の低下の欠点を具体的に説明する。

ける補強ロールの摩耗量の測定例を示す。(ロ)は補強ロール(イ)の摩耗状態を表す。

は、図3-(a)に示すような比例関係がある。
補強ロ-ル摩耗に比して、作業ロ-ル摩耗の圧延重量当りの進展は早いため、作業ロ-ル組替えは、補強ロ-ル組替えの約100倍の頻度で行なわれる。このため、従来のように作業ロ-ルの1サイクル圧延だけの板クラウン精度向上を図る方式では、図3-(a)からもわかるように、補強ロ-ル組替えと同時に作業ロ-ル組替えを行う場合と、補強ロ-ル組替え直前で補強ロ-ル摩耗が最大の場合に作業ロ-ル組替を行う場合の作業ロ-ルサイクルとでは、補強ロ-ル摩耗の板クラウンに及ぼす影響の差異は最大になる。また、補強ロ-ル摩耗の中期進展段階における作業ロ-ル交換時の作業ロ-ルサイクルにおいても、補強ロ-ルの摩耗の進展に応じた板クラウンヘの影響を及ぼす。このように、補強ロ-ルの摩耗を考慮しない場合、板クラウン精度の低下を及ぼすこととなる。
本発明の目的は、これらの欠点をなくし、常に、板クラウン制御の精度を向上させる圧延機の制御方法および制御装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、圧延荷重、ロ-ルベンディング力および出側圧延材の板クラウンを検出し、該圧延荷重、ロ-ルベンディング力の検出値およびロ-ルプロフィル予測モデルから圧延材の板クラウンを計算し、該板クラウン計算値と前記板クラウン検出値との差を求めることによって、あらかじめ測定されるロ-ルクラウンを初期値とするロ-ルプロフィル予測値と実際のロ-ルプロフィルとの予測誤差に起因する板クラウン偏差を打ち消すべく、次の圧延材を圧延する際にロ-ルベンディング力を新たに設定し、板クラウンを制御する圧延機の制御方法において、次の手段を講ずることにより、達成される。
1.ロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンに対応した作業ロ-ル熱膨張量を計算し、ロ-ルプロフィル予測を行うこと。
2.補強ロ-ル摩耗を計算し、ロ-ルプロフィル予測を行うこと。
3.ロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンに対応した作業ロ-ル熱膨張量と補強ロ-ル摩耗を計算し、ロ-ルプロフィル予測を行うこと。
4.ロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンに対応した作業ロ-ル熱膨張量と作業ロ-ル摩耗および中間ロ-ル摩耗(6重圧延機)を計算し、ロ-ルプロフィル予測を行うこと。
5.作業ロ-ル摩耗、中間ロ-ル摩耗(6重圧延機)および補強ロ-ル摩耗を計算し、ロ-ルプロフィル予測を行うこと。
6.ロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンに対応した作業ロ-ル熱膨張量と作業ロ-ル摩耗、中間ロ-ル摩耗(6重圧延機)および補強ロ-ル摩耗とを計算し、ロ-ルプロフィルの予測を行うこと。
また、上記目的は、圧延荷重測定用ロ-ドセル、圧延荷重演算器、ロ-ルベンディング力測定用ロ-ドセル、ロ-ルベンディング力演算器、出側圧延材の板クラウンを検出する板厚計および板クラウン演算器と、あらかじめ測定されるロ-ルクラウンの初期値を設定する設定盤と、圧延機のロ-ルベンディング力プリセット値、板クラウン計算のタイミングと圧延情報を伝達するタイミング指令および圧延情報伝達装置と、ロ-ルベンダ-指令装置を備え、ロ-ルプロフィル予測値と実際のロ-ルプロフィルとの予測誤差に起因する板クラウン偏差を打ち消すべく、次の圧延材を圧延する際にロ-ルベンディング力を新たに設定し、板クラウンを制御する圧延機の制御装置において、次の手段を構成することにより、達成される。
1.ロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンに対応した作業ロ-ル熱膨張量を計算する計算機を備えること。
2.補強ロ-ル摩耗を計算する計算機を備えること。
3.ロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンに対応した作業ロ-ル熱膨張量を計算する計算機と補強ロ-ル摩耗を計算する計算機を備えること。
4.ロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンに対応した作業ロール熱膨張量を計算する計算機と作業ロ-ル摩耗および中間ロ-ル摩耗(6重圧延機)を計算する計算機を備えること。
5.作業ロ-ル摩耗、中間ロ-ル摩耗(6重圧延機)および補強ロ-ル摩耗を計算する計算機を備えること。
6.ロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンに対応した作業ロ-ル熱膨張を計算する計算機と作業ロール摩耗、中間ロ-ル摩耗(6重圧延機)および補強ロ-ル摩耗を計算する計算機を備えること。
【0005】
【作用】
本発明の基礎となる原理を、作業ロ-ルシフトも行える四重圧延機と作業ロ-ルシフトも行える中間ロ-ルシフト型6重圧延機を例にとって説明する。
図5-(a)に4重圧延機、図5-(b)に6重圧延機を示す。
板クラウンChは、一般に圧延材の板幅中央部と板端から25mm点の板厚差により定義される。
圧延材の板幅方向変形を考慮した、いわゆる3次元変形状態における板クラウンChは、次式により表される。

正係数、λdは接触投影長さ、Aは圧延圧力差補正係数、ξは形状変化係数(ひずみ差比)、CHは入側板クラウン(=Hc-He)、hcは出側板厚(中央)、heは出側板厚(板端よりの評価位置)である。
つまり、3次元変形状態における板クラウンChは、圧延材の軸方向変形を無

より得られる。
板クラウンChに影響を与える因子として、板幅B、圧延荷重P、作業ロ-ルベンティングカF、作業ロ-ル位置δW、中間ロ-ル位置δI、作業ロ-ルクラウン

第1番目に、4重圧延機の場合


圧延機使用条件より求まる補正項である。



動しない4重圧延機の場合は、作業ロ-ル位置δWの値を一定とした場合となる。
第2番目に、6重圧延機の場合



ル位置δI、作業ロ-ル位置δW、板幅Bの関数として表される。



が軸方向に移動しない6重圧延機の場合は、作業ロ-ル位置δWの値を一定とした場合となる。
また、6重圧延機の中間ロ-ル3、4がロ-ル端の一方にテ-パ-を設ける場

ことから、次式により表される。




(本方式は、特願昭63-1206号に基本アイデアが説明されているため、詳細説明を省略する。)

fOは作業ロ-ル位置δW、板幅Bについて2次関数表現を行い、6重圧延機に関

-ル位置δW、板幅Bについて2次関数表現を行うことにより、実用上誤差が少ないことがわかっている。
このような、板クラウンを計算するモデルは、要求される制御応答時間を満足し、板クラウンの実用精度を満足し、各々のロ-ルクラウンの大きさと胴長方向の分布に関し、作業ロ-ル、補強ロ-ル、中間ロールの摩耗量および作業ロ-ルのロ-ルク-ラント流量対応熱膨張量が反映されるものであれば、本発明の目的は達成される。
次に、ロ-ルク-ラント(冷却水)流量に対応した作業ロ-ル熱膨張量予測モデルについて、詳細に説明する。
作業ロ-ルの累積熱膨張量Uは、次式により表される。


加熱(圧延)時の作業ロ-ル平均温度、TR(x)は加熱時の温度分布関数、文字の添字UおよびLは各々上作業ロ-ルおよび下作業ロ-ルを示す。

される。

ここに、KQは入熱係数、HRは加熱(圧延)時の冷却係数、KA、KBは作業ロ-ルの材質と作業ロ-ル半径Rからなる定数である。


イドリング)時の冷却係数、KDは作業ロ-ルの材質と作業ロ-ル半径Rからなる定数である。
このように、作業ロ-ルサイクルのコイル一本毎の加熱(圧延)時と冷却(アイドリング)時の圧延時間、アイドリング時間に使用されるク-ラント(冷却水)流量一定における冷却係数HR、Hcからなる熱膨張量予測モデルに留まらず、例えば、冷却(アイドリング)時間の長さtidleを判定時間t1において、ク-ラント流量をQ1、Q2と変化させる場合、冷却(アイドリング)時のク-ラント(冷却水)流量に対応した冷却係数Hc1、Hc2(tidle、<判別時間t1でHc1、tidle、>t1でHc2)を事前に実験的に求めておくことにより、ク-ラント流量に対応した作業ロ-ル熱膨張量の予測が可能になる。又、連続的に流量を変更する場合についても、最大から最小までの代表ケ-スの冷却係数Hmax〜Hminの取得とその補間により、従来よりかなり高精度な熱膨張量の予測が可能となる。加熱(圧延)時に冷却流量を変更する場合も、同様に対応可能なことは明らかである。
次に、補強ロ-ル摩耗モデルについて、詳細に説明する。
補強ロ-ルの累積摩耗量WBは、次式により表される。

ここに、Aは補強ロ-ルの摩耗係数、WP(x)は補強ロ-ルのロ-ル胴長方

各々上補強ロ-ルおよび下補強ロ-ルを示し、文字の上の添字Bは補強ロ-ルであることを示す。
本補強ロ-ル摩耗モデルにより、補強ロ-ル交換後の累積圧延時の補強ロ-ル摩耗クラウン量を、ロ-ル胴長方向の分布も含めて、予測することが可能となり、摩耗を考慮した補強ロ-ルクラウンによる板クラウンヘの影響を考慮したものとすることが出来る。
【0006】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
まず、本発明の一つであるロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンに対応した作業ロ-ル熱膨張量を計算し、ロ-ルプロフィル予測を行う実施例について、説明する。
図6は、作業ロ-ルと補強ロ-ルを有する4重圧延機に本発明の一つを適用した一実施例である。図6において、圧延材7は、作業ロ-ル1、2と補強ロ-ル5、6から構成される4重圧延機により、圧延される。
この圧延材7を圧延する際のプリセットは、次のように行われる。
タイミング指令および圧延情報伝達装置23によって伝達される圧延情報(予測圧延荷重PS、板幅B、入出側板厚Hc、hc、目標板クラウンChr、圧延時間troll,アイドリング時間tidle、)と、設定盤22より事前に設定された初

(ここで、計算機26は(3)式を計算する。作業ロ-ル摩耗および補強ロ-ル摩耗を考慮しない場合は、(3)式は

となる。)
を用い、(板クラウン)計算機27により計算する板クラウン計算値Chcが目標板クラウンChrに一致するように、(プリセット)計算機30においてプリセット作業ロ-ルベンディング力FSを求め、作業ロ-ルベンダ-指令装置17に設定値FSを送る。
(ここで、(板クラウン)計算機27は、(1)、(2)式で示される板クラウン計算式を使用して計算する。)
この時の圧延材の出側の板クラウン検出値Chaは、幅方向中央と板の端部評価点に設置された2台の板厚計31、32の信号から演算器19が板厚差を計算することにより、求められ、圧延荷重Pは、左右の圧延荷重測定用ロ-ドセル10、11の信号を演算器21において加えることにより、また、作業ロ-ルベンディング力Fは、やはり左右の作業ロ-ルベンダ力測定用ロ-ドセル8、9の信号を演算器18において平均することにより、それぞれ求められる。これらはいずれもすでに公知の方法によって測定することができる。
ここで、実測圧延荷重Pおよび実測作業ロ-ルベンディング力Fを用いた板クラウン計算値Chcaは、設定盤22とタイミング指令および圧延情報伝達装置23によって伝達された圧延情報(板幅B、入出側板厚Hc、hc)を用い、(板クラウン)計算機27によって求められる。
【0007】
次ぎの圧延材7を圧延する際のプリセットは、下記のように行われる。
設定盤22とタイミング指令および圧延情報伝達装置23によって伝達される圧延情報(予測圧延荷重PS、板幅B、入出側板厚Hc、hc、目標板クラウンChr、圧延時間troll,アイドリング時間tidle)を用いて、計算板クラウンChcが目標板クラウンChrに一致するように、計算機26、27、30を介してプリセット作業ロ-ルベンディング力FSをプリセットしょうとする場合、先行材の板クラウン計算値Chcaと板クラウン検出値Chaの偏差△Chを計算機28により求め、ロ-ルプロフィル予測計算値と実際のロ-ルプロフィルとの予測誤差に起因する板クラウン偏差を考慮して、作業ロ-ルベンディング力の補正を(プリセット補正)計算機29において行い、(プリセット)計算機30を介して最適な板クラウンで圧延される新たな作業ロ-ルベンディング力設定値FOが作業ロ-ルベンダ-指令装置17に送られる。
この際、ロ-ルプロフィル予測計算は、設定盤22より事前に設定されるロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンに対応した圧延時の冷却係数HRおよびアイドリング時間tidle、による冷却係数HC変更値HC1、HC2(tidle<判別時間t1でHC1、tidle>t1でHC2)とタイミング指令および圧延情報伝達装置23によって伝達される圧延情報(圧延時間troll,アイドリング時間tidle)から、(ロ-ル熱膨張量)計算機24において、ロ-ルク-ラント(冷却水)運用

れる。
(ここで、(ロ-ル熱膨張量)計算機24は、(8)、(9)、(10)式および図2(b)に示すような計算を行う。)

いて行われる。
これにより、作業ロ-ルサイクルのコイル一本毎に高精度の作業ロ-ル熱膨張量の予測が可能となり、コイル一本毎の板クラウン精度が向上することになる。
尚、ロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンとしては、図2-(b)に示すように、アイドリング時間内の流量をアイドリング時間に対応して可変とする方法について説明したが、運用パタ-ンとしては圧延時とアイドリング時の流量を可変とする方法等の対応も可能である。又、流量の可変方法として、水圧を可変にすることも可能である。これらは、本発明と本質を異にするものではない。
【0008】
以上の説明は、4重圧延機に本発明の一つを適用したものであるが、6重圧延機に本方式を適用しても同じ効果がある。
図7は、作業ロ-ルと補強ロ-ルを有し、軸方向に移動可能な中間ロ-ルを有する6重圧延機に本発明の一つを適用した一実施例である。図7において、作業ロ-ル1、2と補強ロ-ル5、6の間に中間ロ-ル軸方向移動装置12、13によって移動可能な中間ロ-ル3、4が配置され、圧延材7が圧延される。
この圧延材7を圧延する際のプリセットは、先の実施例と同様、次のように行われる。
タイミング指令および圧延情報伝達装置23によって伝達される圧延情報(予測圧延荷重PS、板幅B、入出側板厚Hc、hc、目標板クラウンChr、圧延時間troll,アイドリング時間tidle、プリセット中間ロ-ル位置δIS)と、設


(ここで、計算機26は(5)式を計算する。作業ロ-ル摩耗および補強ロ-ル摩耗を考慮しない場合は、(5)式は

となる。)
を用い、(板クラウン)計算機27により計算する板クラウン計算値Chcが目標板クラウンChrに一致するように、(プリセット)計算機30においてプリセット作業ロ-ルベンディング力FSおよびプリセット作業ロ-ル位置δISを求め、作業ロ-ルベンダー指令装置17および中間ロ-ル移動指令装置16に設定値FSおよびδISを送る。
(ここで、(板クラウン)計算機27は、(1)、(4)または(6)式により示される板クラウン計算式を使用して計算する。)
この時の圧延材の出側の板クラウン検出値Chaは板厚計31、32により、圧延荷重Pは圧延荷重測定用ロ-ドセル10、11により、また、作業ロ-ルベンディング力Fは作業ロ-ルベンダカ測定用ロ-ドセル8、9により、先の実施例と同じく、それぞれ測定される。中間ロ-ル位置δIは、上下の中間ロ-ル位置検出器14、15の信号から演算器20によって求められる。
ここで、実測圧延荷重P、実測作業ロ-ルベンディングカFおよび実測中間ロ-ル位置δIを用いた板クラウン計算値Chcaは、先の実施例と同様、設定盤22とタイミング指令および圧延情報伝達装置23によって伝達された圧延情報(板幅B、入出側板厚Hc、hc)を用い、(板クラウン)計算機27によって求められる。
【0009】
次ぎの圧延材7を圧延する際のプリセットに関しても、先の実施例と同様、下記のように行われる。
設定盤22とタイミング指令および圧延情報伝達装置23によって伝達される圧延情報(予測圧延荷重PS、板幅B、入出側板厚Hc、hc、目標板クラウンChr、圧延時間troll,アイドリング時間tidle、プリセット中間ロ-ル位置δIS)を用いて、計算板クラウンChcが目標板クラウンChrに一致するように、計算機26、27、30を介してプリセット作業ロ-ルベンディングカFSおよびプリセット中間ロ-ル位置δISをプリセットしょうとする場合、先行材の板クラウン計算値Chcaと板クラウン検出値Chaの偏差ΔChを計算機28により求め、ロ-ルプロフィル予測計算値と実際のロ-ルプロフィルとの予測誤差に起因する板クラウン偏差を考慮して、作業ロ-ルベンディングカおよび中間ロ-ル位置の補正を(プリセット補正)計算機29において行い、(プリセット)計算機30を介して最適な板クラウンで圧延される新たな作業ロ-ルベンディングカ設定値FOおよび中間ロール位置設定値δIOが作業ロ-ルベンダー指令装置17および中間ロ-ル移動指令装置16に送られる。
この際、ロ-ルプロフィル予測計算は、先の実施例と同じく、(ロ-ル熱膨張量)計算機24において、ロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンに対応した

これにより、作業ロ-ルサイクルのコイル一本毎に高精度の作業ロ-ル熱膨張量の予測が可能となり、コイル一本毎の板クラウン精度が向上することになる。
【0010】
次ぎに、本発明の二つである補強ロ-ル摩耗を計算し、ロ-ルプロフィル予測を行う実施例について、説明する。
図8は、4重圧延機に本発明の二つを適用した一実施例である。
構成機器は、図6と殆ど同じであり、違いは(ロ-ル熱膨張量)計算機24がなく、(ロ-ル摩耗量)計算機25を有することである。
ここでは、補強ロ-ル摩耗が進展した段階において、作業ロ-ルサイクルが開始される状態について説明する。
図8の構成機器において、圧延材7を圧延する際のプリセットは、先の実施例と同様に、次のように行われる。

タイミング指令および圧延情報伝達装置23によって伝達される圧延情報(予測圧延荷重PS、板幅B、入出側板厚Hc、hc、目標板クラウンChr、圧延コイル重量Wt)と、設定盤22より事前に設定された初期作業ロ-ルクラウン

(ここで、計算機26は(3)式を計算する。作業ロ-ル熱膨張量および作業ロ-ル摩耗を考慮しない場合は、(3)式は

となる。)
を用い、(板クラウン)計算機27により計算する板クラウン計算値Chcが目標板クラウンChrに一致するように、(プリセット)計算機30においてプリセット作業ロ-ルベンディング力FSを求め、作業ロ-ルベンダ-指令装置17に設定値FSを送る。
(ここで、(板クラウン)計算機27は、先の実施例と同じく、(1)、(2)式により示される板クラウン計算式を使用して計算する。)
この時の出側圧延材の板クラウンCha、圧延荷重P、作業ロ-ルベンデイング力Fも、先の実施例と同様に、検出され、実測圧延荷重Pおよび実測作業ロ-ルベンデイングカFを用いた板クラウン計算値Chcaも同様に計算機27において求められる。
【0011】
次ぎの圧延材7を圧延する際のプリセットも、先の実施例と同様、下記のように行われる。
設定盤22とタイミング指令および圧延情報伝達装置23によって伝達される圧延情報(予測圧延荷重PS、板幅B、入出側板厚Hc、hc、目標板クラウンChr、圧延コイル重量Wt)を用いて、計算板クラウンChcが目標板クラウンChrに一致するように、計算機26、27、30を介してプリセット作業ロ-ルベンディングカFSをプリセットしようとする場合、先行材の板クラウン計算値Chcaと板クラウン検出値Chaの偏差ΔChを計算機28により求め、ロ-ルプロフィル予測計算値と実際のロ-ルプロフィルとの予測誤差に起因する板クラウン偏差を考慮して、作業ロ-ルベンディング力の補正を(プリセット補正)計算機29において行い、(プリセット)計算機30を介して最適な板クラウンで圧延される新たな作業ロ-ルベンディング力設定値FOが作業ロ-ルベンダ-指令装置17に送られる。
この際、ロ-ルプロフィル予測計算は、設定盤22より事前に設定される補強

指令および圧延情報伝達装置23によって伝達される圧延情報(圧延コイル重量Wt)から、(ロ-ル摩耗量)計算機25において、作業ロ-ルサイクル開始以前の補強ロ-ル摩耗クラウンに作業ロ-ルサイクル開始以後の補強ロール摩耗を

このように、本実施例によれば、(ロ-ル摩耗量)計算機25において、補強ロ-ルの摩耗量の大きさとロ-ル胴長方向分布を考慮した補強ロ-ル摩耗クラウ

組替えサイクル内に生じる全期間の補強ロ-ル摩耗に対して、板クラウン精度が向上することになる。
【0012】
以上の説明は、4重圧延機に本発明の二つを適用したものであるが、6重圧延機に本方式を適用しても同じ効果がある。
図9は、6重圧延機に本発明の二つを適用した一実施例である。
構成機器は、図7と殆ど同じであり、違いは先の実施例と同じく、(口-ル熱膨張量)計算機24がなく、(ロ-ル摩耗量)計算機25を有することである。
先の、図7に示した6重圧延機のロ-ル熱膨張に関する実施例と、図8に示した4重圧延機のロ-ル摩耗量に関する実施例からわかるように、図9に示す実施例の6重圧延機においても、(ロ-ル摩耗量)計算機25において、補強ロ-ルの摩耗量の大きさとロ-ル胴長方向分布を考慮した補強ロ-ル摩耗クラウン計算を行うロ-ルプロフィル予測計算を行うことによって、補強ロ-ル組替えサイクル内に生じる全期間の補強ロ-ル摩耗に対して、板クラウン精度が向上することは明白である。
【0013】
次ぎに、本発明の三つであるロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンに対応した作業ロ-ル熱膨張量と補強ロ-ル摩耗を計算し、ロ-ルプロフィル予測を行う実施例について、説明する。
図10は、4重圧延機に本発明の三つを適用した一実施例である。
構成機器は、先の実施例図6と図8の複合形態であり、(ロ-ル熱膨張)計算機24と(ロ-ル摩耗量)計算機25を有する。
先の実施例からわかるように、本実施例は、(ロ-ル熱膨張)計算機24において、ロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンに対応した作業ロ-ル熱膨張量

計算を行う。
このようにして、ロ-ルプロフィル予測計算を行うことによって、作業ロ-ルサイクルのコイル一本毎に高精度の作業ロール熱膨張量の予測が可能となり、コイル一本毎の板クラウン精度が向上すると共に、補強ロ-ル組替えサイクル内に生じる全期間の補強ロ-ル摩耗に対して、板クラウン精度が向上することになる
【0014】
以上の説明は、4重圧延機に本発明の三つを適用したものであるが、6重圧延機に本方式を適用しても同じ効果がある。
図11は、6重圧延機に本発明の三つを適用した一実施例である。
構成機器は、先の実施例図7と図9の複合形態であり、(ロ-ル熱膨張)計算機24と(ロ-ル摩耗量)計算機25を有する。
先の実施例からわかるように、本実施例は、6重圧延機においても先の実施例と同じ機能を発揮し、同じ効果があるのは明白である。
【0015】
次ぎに、本発明の四つであるロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンに対応した作業ロ-ル熱膨張量と作業ロ-ル摩耗および中間ロ-ル摩耗(6重圧延機)を計算し、ロ-ルプロフィル予測を行う一実施例について、説明する。
図12は、4重圧延機に本発明の四つを適用した一実施例である。
構成機器は、図6に示す(ロ-ル熱膨張量)計算機24を有し、図8に示す補強ロ-ルの(ロ-ル摩耗量)計算機25の代わりに作業ロ-ルの(ロ-ル摩耗量)計算機25’を有する複合形態となっている。
ここで、作業ロ-ルの(ロ-ル摩耗量)計算機25’は、作業ロ-ルの摩耗量

伝達装置23によって伝達される圧延情報(予測圧延荷重PS、板幅B、圧延コイル長さL)を用いて計算する。
(ここで、作業ロ-ル摩耗は、中間ロ-ルや補強ロ-ルのように圧延コイル重量で捉えず、圧延荷重P、板幅B、圧延コイル長さしの関数として一般式として、次式のように表わされることが知られている。


数、WWは作業ロ-ル累積摩耗量、Pは圧延荷重、Lはコイル長さ、Bは板幅、Rは作業ロ-ル半径、λdは接触投影長さを示す。添字UおよびLは各々上作業ロ-ルおよび下作業ロ-ルを示す。)
尚、予測圧延荷重PSの代わりに、実測圧延荷重Pを使う方が精度上好ましいが、本例では一実施例として予測圧延荷重PSを用いて説明した。
このように、本実施例は、作業ロ-ルの(ロ-ル摩耗量)計算機25’において、作業ロ-ルの摩耗量の大きさとロ-ル胴長方向の分布を考慮した作業ロ-ル摩耗クラウンの計算を行うロ-ルプロフィル予測計算を行うことによって、作業ロ-ル組替えサイクル内に生じる全期間の作業ロ-ル摩耗に対して、板クラウン精度が向上することになる。
また、本実施例では、(ロ-ル熱膨張量)計算機24を用いて、ロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンに対応した作業ロ-ル熱膨張量の計算を行い、(ロ-ルクラウン)計算機26を介して、作業ロ-ル熱膨張量と作業ロ-ル摩耗量および初期作業ロ-ルクラウンの合成クラウンを用いた板クラウン計算を(板クラウン)計算機27により行い、以降、先の実施例と同じ制御を行うため、作業ロ-ル組替えサイクル内の全期間において、コイル一本毎の板クラウン精度が一層向上することになる。
【0016】
以上の説明は、4重圧延機に本発明の四つを適用したものであるが、6重圧延機に本方式を適用しても同じ効果がある。
図13は、6重圧延機に本発明の四つを適用した一実施例である。
構成機器は、図7に示す(ロ-ル熱膨張量)計算機24を有し、図9に示す補強ロ-ルの(ロ-ル摩耗量)計算機25の代わりに作業ロ-ルの(ロ-ル摩耗量)計算機25’および中間ロ-ルの(ロ-ル摩耗量)計算機25”を有する複合形態となっている。
ここで、中間ロ-ルの(ロ-ル摩耗量)計算機25”は、中間ロ-ルの摩耗量

伝達装置23によって伝達される圧延情報(圧延コイル重量Wt)を用いて計算する。
(中間ロ-ルのロ-ル端の一方にテ-パ-を設ける場合は、中間ロ-ルテ-パ

(ここで、中間ロ-ル摩耗は、補強ロ-ル摩耗と同様、圧延コイル重量Wtに比例し、一般式として次式のように表される。


間ロ-ルの摩耗プロフィル関数、添字UおよびLは各々上中間ロ-ルおよび下中間ロ-ルを示す。)
先の図12の実施例と、中間ロ-ルの(ロ-ル摩耗量)計算機25”の機能からわかるように、本実施例では、中間ロ-ル組替えサイクルの全期間において、全ての作業ロ-ルサイクルのコイル一本毎の板クラウン精度が一層向上することになる。
【0017】
次ぎに、本発明の五つである作業ロ-ル摩耗、中間ロ-ル摩耗(6重圧延機)および補強ロ-ル摩耗を計算し、ロ-ルプロフィル予測を行う一実施例について、説明する。
図14は、4重圧延機に本発明の五つを適用した一実施例である。
構成機器は、図8に示す補強ロ-ルの(ロ-ル摩耗量)計算機25に加えて作業ロ-ルの(ロ-ル摩耗量)計算機25’を有する複合形態となっている。
先の図8に示した実施例と作業ロ-ルの(ロ-ル摩耗量)計算機25’の機能を説明した図12の実施例からわかるように、本実施例では、補強ロ-ル組替えサイクル内に生じる全期間の補強ロ-ル摩耗に対して、板クラウン精度が向上し、更に、作業ロ-ルサイクル内に生じる作業ロ-ル摩耗に対して、板クラウン精度が向上することになる。
【0018】
以上の説明は、4重圧延機に本発明の五つを適用したものであるが、6重圧延機に本方式を適用しても同じ効果がある。
図15は、6重圧延機に本発明の五つを適用した一実施例である。
構成機器は、図8に示す補強ロ-ルの(ロ-ル摩耗量)計算機25に加えて作業ロ-ルの(ロ-ル摩耗量)計算機25’および中間ロ-ルの(ロ-ル摩耗量)計算機25”を有する複合形態となっている。
先の図8に示した実施例と作業ロ-ルの(ロ-ル摩耗量)計算機25’の機能を説明した図12の実施例および中間ロ-ルの(ロ-ル摩耗量)計算機25”の機能を説明した図13の実施例からわかるように、本実施例では、補強ロ-ル組替えサイクル内に生じる全期間の補強ロ-ル摩耗に対して、また、中間ロ-ルサイクル内に生じる全期間の中間ロ-ル摩耗に対して、更に、作業ロ-ルサイクル内に生じる作業ロ-ル摩耗に対して、それぞれ板クラウン精度が向上することになる。
【0019】
次ぎに、本発明の六つであるロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンによる作業ロ-ル熱膨張量と作業ロ-ル摩耗、中間ロ-ル摩耗(6重圧延機)および補強ロ-ル摩耗を計算し、ロ-ルプロフィル予測を行う一実施例について、説明する。
図16は、4重圧延機に本発明の六つを適用した一実施例である。
構成機器は、図10に示す(ロ-ル熱膨張量)計算機24と補強ロ-ルの(ロ-ル摩耗量)計算機25に加えて作業ロ-ルの(ロ-ル摩耗量)計算機25’を有する複合形態となっている。
先の図10に示した実施例と作業ロ-ルの(ロ-ル摩耗量)計算機25’の機能を説明した図12の実施例からわかるように、本実施例では、補強ロ-ル組替えサイクル内に生ずる全期間の補強ロ-ル摩耗に対して、板クラウン精度が向上し、更に、作業ロ-ルサイクル内の作業ロ-ル摩耗およびロ-ルク-ラント対応熱膨張量の計算により、コイル一本毎の板クラウン精度が一層向上することになる。
【0020】
以上の説明は、4重圧延機に本発明の六つを適用したものであるが、6重圧延機に本方式を適用しても同じ効果がある。
図17は、6重圧延機に本発明の六つを適用した一実施例である。
構成機器は、図11に示す(ロ-ル熱膨張量)計算機24と補強ロ-ルの(ロ-ル摩耗量)計算機25に加えて作業ロ-ルの(ロ-ル摩耗量)計算機25’および中間ロ-ルの(ロ-ル摩耗量)計算機25”を有する複合形態となっている。
先の図11に示した実施例と作業ロ-ルの(ロ-ル摩耗量)計算機25’の機能を説明した図12の実施例および中間ロ-ルの(ロ-ル摩耗量)計算機25”の機能を説明した図13の実施例からわかるように、本実施例では、補強ロ-ル組替えサイクル内に生じる全期間の補強ロ-ル摩耗に対して、また、中間ロ-ルサイクル内に生じる全期間の中間ロ-ル摩耗に対して、それぞれ板クラウン精度が向上し、更に、作業ロ-ルサイクル内の作業ロ-ル摩耗およびロ-ルク-ラント対応熱膨張量の計算により、コイル一本毎の板クラウン精度が一層向上することになる。
【0021】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、作業ロ-ルサイクルのコイル一本毎の作業ロ-ル熱膨張量の高精度の予測により、コイル一本毎の板クラウン精度の向上を図ることが出来る。
また、補強ロ-ル組替えサイクル内の全期間に亘り、補強ロ-ル摩耗による板クラウンの影響を把え、板クラウン精度の向上を図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】
作業ロ-ルの熱膨張量と単位時間当りのロ-ルク-ラント(冷却水)流量との関係説明図
図1-(a) 単位時間当りのロ-ルク-ラント(冷却水)流量を一定にして圧延した場合の作業ロ-ル熱膨張量
図1-(b) 単位時間当りのロ-ルク-ラント(冷却水)流量を変更して圧延した場合の作業ロ-ル熱膨張量
【図2】
コイル1本圧延毎の作業ロ-ル熱膨張量の加熱(圧延)および冷却(アイドリング)時の挙動説明図
図2-(a) ロ-ルク-ラント(冷却水)流量を一定にして圧延した場合の挙動
図2-(b) ロ-ルク-ラント(冷却水)流量を変更して圧延した場合の挙動
【図3】
補強ロ-ル摩耗
図3-(a) 補強ロ-ル摩耗量と圧延総重量の関係
図3-(b) 補強ロ-ル摩耗量の測定例
【図4】
補強ロ-ル摩耗プロフィルモデル
【図5】
4重圧延機および6重圧延機
【図6】
本発明の一つ、ロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンに対応した作業ロ-ル熱膨張量を計算する計算機を備えた4重圧延機における一実施例
【図7】
図6の発明の6重圧延機における一実施例
【図8】
本発明の二つ、補強ロ-ル摩耗を計算する計算機を備えた4重圧延機における一実施例
【図9】
図8の発明の6重圧延機における一実施例
【図10】
本発明の三つ、ロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンに対応した作業ロ-ル熱膨張量と補強ロ-ル摩耗を計算する計算機を備えた4重圧延機における一実施例
【図11】
図10の発明の6重圧延機における一実施例
【図12】
本発明の四つ、ロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンに対応した作業ロ-ル熱膨張量と作業ロ-ル摩耗、中間ロ-ル摩耗(6重圧延機)を計算する計算機を備えた4重圧延機における一実施例
【図13】
図12の発明の6重圧延機における一実施例
【図14】
本発明の五つ、作業ロ-ル摩耗、中間ロ-ル摩耗(6重圧延機)および補強ロ-ル摩耗を計算する計算機を備えた4重圧延機における一実施例
【図15】
図14の発明の6重圧延機における一実施例
【図16】
本発明の六つ、ロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンに対応した作業ロ-ル熱膨張と作業ロ-ル摩耗、中間ロ-ル摩耗(6重圧延機)および補強ロ-ル摩耗とを計算する計算機を備えた4重圧延機における一実施例
【図17】
図16の発明の6重圧延機における一実施例
【符号の説明】
1、2 作業ロ-ル
3、4 中間ロ-ル
5、6 補強ロ-ル
7 圧延材
8、9 作業ロ-ルベンダ力測定用ロ-ドセル
10、11 圧延荷重測定用ロードセル
12、13 中間ロ-ル軸方向移動装置
14、15 中間ロ-ル位置検出器
16 中間ロ-ル移動指令装置
17 作業ロ-ルベンダー指令装置
18〜21 演算器
22 設定盤
23 タイミング指令および圧延情報伝達装置
24 (ロ-ル熱膨張量)計算機
25 (ロ-ル摩耗量)計算機:補強ロ-ル
25’ (ロ-ル摩耗量)計算機:作業ロ-ル
25” (ロ-ル摩耗量)計算機:中間ロ-ル
26 (ロ-ルクラウン)計算機
27 (板クラウン)計算機
28 (板クラウン偏差)計算機
29 (プリセット補正)計算機
30 (プリセット)計算機
31、32 板厚計
【図面】

















 
訂正の要旨 訂正の要旨
(1)特許請求の範囲の請求項1を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「【請求項1】 圧延荷重、ロ-ルベンディングカおよび出側圧延材の板クラウンを検出し、該圧延荷重、ロ-ルベンディングカの検出値およびロ-ルプロフィル予測モデルから圧延材の板クラウンを計算し、該板クラウン計算値と前記板クラウン検出値との差を求めることによって、あらかじめ測定されるロ-ルクラウンを初期値とするロ-ルプロフィル予測値と実際のロ-ルプロフィルとの予測誤差に起因する板クラウン偏差を打ち消すべく、次の圧延材を圧延する際にロ-ルベンディングカを新たに設定し、板クラウンを制御する圧延機の制御方法において、ロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンに対応した作業ロ-ル熱膨張量を圧延時の冷却係数及びアイドル時間による冷却係数に分割して計算し、ロ-ルプロフィル予測を行うことを特徴とする圧延機の制御方法。」に訂正する。
(2)特許請求の範囲の請求項6を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
【請求項6】 圧延荷重測定用ロ-ドセル、圧延荷重演算器、ロ-ルベンディングカ測定用ロ-ドセル、ロ-ルベンディング力演算器、出側圧延材の板クラウンを検出する板厚計および板クラウン演算器と、あらかじめ測定されるロ-ルクラウンの初期値を設定する設定盤と、圧延機のロ-ルベンディング力プリセット値、板クラウン計算のタイミングと圧延情報を伝達するタイミング指令および圧延情報伝達装置と、ロ-ルベンダー指令装置を備え、ロ-ルプロフィル予測値と実際のロ-ルプロフィルとの予測誤差に起因する板クラウン偏差を打ち消すべく、次の圧延材を圧延する際にロ-ルベンディングカを新たに設定し、板クラウンを制御する圧延機の制御装置において、アイドル時間に応じて流量を可変するロ-ルク-ラント(冷却水)運用パタ-ンに対応した作業ロ-ル熱膨張量を計算する計算機を備えたことを特徴とする圧延機の制御装置。
(3)特許請求の範囲の請求項11を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
【請求項11】 請求項1に記載の板クラウンを制御する圧延機の制御方法において、作業ロ-ルサイクル開始以前の補強ロ-ル摩耗クラウンに作業ロ-ルサイクル開始以後の補強ロール摩耗を累積計算して、補強ロール摩耗クラウンを計算し、ロ-ルプロフィル予測を行うことを特徴とする圧延機の制御方法。
(4)特許請求の範囲の請求項12を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
【請求項12】 請求項6に記載の板クラウンを制御する圧延機の制御装置において、作業ロ-ルサイクル開始以前の補強ロ-ル摩耗クラウンに作業ロ-ルサイクル開始以後の補強ロ-ル摩耗を累積計算して、補強ロール摩耗クラウンを計算する計算機を備えたことを特徴とする圧延機の制御装置。
異議決定日 1999-12-15 
出願番号 特願平4-162023
審決分類 P 1 651・ 121- YA (B21B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 國方 康伸  
特許庁審判長 影山 秀一
特許庁審判官 中西 一友
中村 朝幸
登録日 1997-10-24 
登録番号 特許第2709777号(P2709777)
権利者 日新製鋼株式会社 株式会社日立製作所
発明の名称 圧延機の制御方法および制御方法  
代理人 伊藤 修  
代理人 笹岡 茂  
代理人 津波古 繁夫  
代理人 笹岡 茂  
代理人 矢葺 知之  
代理人 伊藤 修  

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