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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B01D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B01D
管理番号 1016591
異議申立番号 異議1998-75056  
総通号数 12 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1990-08-07 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-10-14 
確定日 1999-12-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2740533号「湿式排ガス脱硫方法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2740533号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許2740533号の請求項1乃至3に係る発明は、平成1年1月27日に特許出願され、平成10年1月23日にその特許の設定登録がなされたものである。
これに対し、その後特許異議申立人三菱重工業株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされたところ、平成11年3月5日に訂正請求がなされ、この訂正請求に対し訂正拒絶理由通知がなされ、平成11年10月26日付けで手続補正がなされたものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正請求に対する補正の適否について
訂正請求に対する補正は、特許請求の範囲の減縮とそれに伴う明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるから、訂正請求書の要旨を変更するものではなく、特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に適合する。
(2)訂正事項
(イ)「特許請求の範囲」の欄
訂正事項a
特許請求の範囲の減縮を目的として、請求項1を削除し、請求項2を減縮して手続補正書によって補正された訂正明細書の特許請求の範囲に記載された次のとおりに訂正請求されている。
「(1)排ガスを乾式集じん装置に導きこの排ガス中のダストを除去したのち、湿式排ガス脱硫装置の吸収塔に導いて吸収剤スラリにより排ガス中の硫黄酸化物を吸収除去する湿式排ガス脱硫方法において、上記吸収塔内の、未反応吸収剤を含む吸収剤スラリの一部を滞留槽で所定時間滞留させてpHを回復させるか、または前記滞留後アルカリ化合物を添加してpHを高めたのち、前記乾式集じん装置に導く排ガス中に噴霧して硫黄酸化物の除去を行うとともに、吸収剤スラリ中の水分を蒸発乾燥させることを特徴とする湿式排ガス脱硫方法。
(2)請求項(1)において、乾式集じん装置に導く排ガス中に噴霧する吸収剤スラリ量を、同排ガス流量と排ガス温度により制御することを特徴とする湿式排ガス脱硫方法。」
(ロ)「発明の詳細な説明」の欄
「発明の詳細な説明」については、特許請求の範囲の減縮に伴う明りょうでない記載の釈明を目的として、次の訂正事項b乃至hのとおりに訂正請求されている。
▲1▼訂正事項b
明細書第4頁第18行乃至第5頁第15行の「上記目的は、吸収塔より吸収液の一部を抜出し、乾式集じん機上流の煙道内に噴霧することにより、達成される。
また、噴霧する吸収液のpHが低い場合、・・・アルカリを添加する。
すなわち、従来技術の問題点は、・・・吸収剤スラリ中の水分を蒸発乾燥させることを特徴とする湿式排ガス脱硫方法により解決される。」を
「上記目的は、吸収塔より未反応吸収剤を含む吸収液の一部を抜出し、滞留槽で一定時間滞留させることによって吸収液中の未反応CaCO3を溶解させてpHを回復させたのち、乾式集じん装置上流の煙道内に噴霧することにより、達成される。また、噴霧する吸収液のpHを高くする必要がある場合には、石灰石、消石灰等のアルカリを添加してpHを高くしたのち噴霧してもよい。
すなわち、従来技術の問題点は、排ガスを乾式集じん装置に導きこの排ガス中のダストを除去したのち、湿式排ガス脱硫装置の吸収塔に導いて吸収剤スラリにより排ガス中の硫黄酸化物を吸収除去する湿式排ガス脱硫方法において、上記吸収塔内の、未反応吸収剤を含む吸収剤スラリの一部を滞留槽で所定時間滞留させてpHを回復させるか、または前記滞留後アルカリ化合物を添加してpHを高めたのち、前記乾式集じん装置に導く排ガス中に噴霧して硫黄酸化物の除去を行うとともに、吸収剤スラリ中の水分を蒸発乾燥させることを特徴とする湿式排ガス脱硫方法により解決される。」と訂正する。
▲2▼訂正事項c
明細書第5頁第17行目の「本発明の実施例である。」を「本発明の参考例である。」と訂正する。
▲3▼訂正事項d
明細書第6頁第14行及び第15行目の「第2図も本発明の実施例であるが、この場合は吸収液のpHが低い場合であり」を「第2図は本発明の実施例であり」と訂正する。
▲4▼訂正事項e
明細書第8頁第19行目の「実施例1、2」を「参考例1、実施例1」と訂正する。
▲5▼訂正事項f
明細書第9頁の表中の「直接噴霧(実施例1)」を「直接噴霧(参考例1)」と、「滞留後噴霧(実施例2)」を「滞留後噴霧(実施例1)」とそれぞれ訂正する。
▲6▼訂正事項g
明細書第10頁第3行目の「一部を乾式集じん装置の上流側排ガス中に噴霧」を
「一部を滞留槽で所定時間滞留させてpHを回復させるか、または滞留後アルカリ化合物を添加してpHを高めたのち、乾式集じん装置の上流側排ガス中に噴霧」と訂正する。
▲7▼訂正事項h
明細書第10頁第9行及び第10行目の「第1図は、本発明の実施例図、第2図は、本発明の他の実施例図」を
「第1図は、本発明の参考例図、第2図は、本発明の実施例図」と訂正する。
(3)訂正の目的の適否及び拡張・変更の存否
上記訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明に該当し、また、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(4)独立特許要件の判断
(本件訂正発明)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、上記手続補正書によって補正された訂正明細書の上記2.(2)(イ)で示した請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(引用された証拠)
当審が訂正拒絶理由において引用した下記証拠には、それぞれ次の事項が記載されている。
引用例1:特開昭61-178022号公報
▲1▼「少なくともSO2とSO3とダストを含む排ガスを乾式集じん装置に通して大部分のダストを除去した後、ガス吸収装置に導き該ガス吸収装置で吸収剤として水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウムの少なくとも一方を使用して排ガス中のSO2と前記乾式集じん装置を通過したダストを除去する排ガス処理方法に於いて、該ガス吸収装置に供給する吸収液に空気を吹き込んで吸収液を酸化して石膏となし、該吸収液の一部を主に石膏粒子を含むスラリーと主にダストを含むスラリーに分割し、主に石膏粒子を含むスラリーから副生石膏を得ると共に、主にダストを含むスラリーにアルカリを添加して後これを該乾式集じん装置の前流側の排ガス中に噴霧してSO3を捕集すると共に乾燥固形化し、これを該乾式集じん装置でダストと共に捕集することを特徴とするSO2とSO3とダストの同時処理方法。」(第1頁)
▲2▼「次にライン117からポンプ118を介して取り出した主にダストを固形物として含むスラリーにライン124からCa(OH)2を添加してアルカリ性となし、スプレーノズル96から約170℃の排ガスが流れている煙道95の内部で噴霧した。」(第7頁上段右欄)
引用例2:特公昭63-63248号公報
▲1▼「石炭焚き排ガスからフライアッシュを除去する乾式集じん装置と該排ガスから硫黄酸化物を除去する湿式石灰一石こう法排煙脱硫装置とを組み合わせた排ガス処理装置における排液の処理方法に於いて、該湿式石灰石こう法排煙脱硫装置の排ガス冷却塔から抜き出されるダスト含有スラリーと、冷却除じん後の排ガスを石灰スラリーにより洗浄することにより得られる石こうスラリーの一部とを混合し、更に消石灰を加えてpH9〜11で撹拌混合し該混合スラリーをろ過して石こうを回収すると共にろ液を該乾式集じん装置の上流側の排ガス中に噴霧蒸発させ、乾燥して得られる固形物を該乾式集じん装置で捕集することを特徴とする排ガス処理装置における排液の処理方法。」(第1頁)
▲2▼「中和槽28における、スラリーは固形物として金属水酸化物、石こう、フライアッシュ、可溶塩として塩化物を主に含むものである。」(第5欄第30行乃至第32行)
▲3▼「中和槽28にて冷却塔6からの洗浄液13と、石こうスラリー37を撹拝混合しながら、Ca(OH)2粉末26を加え、中和スラリーのpHを9〜11平均的にはpH=10を維持しながら、平均滞留時間30分で連続的に処理した。」(第9欄第18行乃至第22行)
引用例3:特開昭61-181519号公報
▲1▼「排ガスを乾式集じん装置に導き、排ガス中に含まれているばいじんを除去した後、湿式排ガス処理装置に導き、排ガスを浄化し、該湿式排ガス処理装置からの排液を、前記集じん装置の上流の蒸発装置に注入して、この乾燥固形物を前記集じん装置で捕集する排液の処理方法において、前記蒸発装置に導く排ガス量を、蒸発装置入口あるいは出口排ガス温度により制御することを特徴とする排ガス処理装置における排液の処理方法。」(第1頁)
▲2▼「ダクト23に設置された温度検出器43、あるいはダクト29に設置された温度検出器44により温度を検出し、その信号を調節計45により外力信号としてダンパ46を制御する。」(第3頁下段右欄)
▲3▼「またライン24より消石灰あるいは石灰石が中和槽25に供給され、冷却塔循環液中の溶解金属の水酸化物及び石膏が生成される。」(第4頁上段右欄)
(当審の判断)
(イ)本件請求項1に係る発明(以下「訂正発明1」という)について
上記引用例1には、「湿式排ガス脱硫方法」に関し、ダストを主体としたスラリーにCa(OH)2等の脱硫吸収剤又はアルカリ剤を添加してこれをスプレーノズルから排ガス中に噴霧する排ガス脱硫方法が記載されているが、そこには、「未反応吸収剤」の有効利用という技術思想を示唆する記載はなく、したがって、この引用例1に記載の発明は、未反応吸収剤を溶解するための「滞留槽」を使用するものではないから、本件訂正発明1と「未反応吸収剤を含む吸収剤スラリの一部を滞留槽で所定時間滞留させてpHを回復させる」という点で相違していると云える。
また、上記引用例2及び3について検討するに、これら証拠には、中和槽(滞留槽に相当)においてCa(OH)2粉末を加え中和スラリーのpHを高めた後排ガス中にこのスラリーを噴霧する「湿式排ガス脱硫方法」が記載されているが、この方法における「石こう分離濾液」は、これら証拠の記載に徴すれば、明らかに「未反応吸収剤を含む」ものとは云えないから、これら証拠にも、「未反応吸収剤」の有効利用という技術思想を示唆する記載はなく、本件訂正発明1は、上記引用例2及び3に記載の発明と「未反応吸収剤を含む吸収剤スラリの一部を滞留槽で所定時間滞留させ」る点で相違していると云える。
そして、上記引用例1乃至3には、上述したとおり、本件訂正発明1の「未反応吸収剤の有効利用」いう技術的課題について示唆する記載は見当たらないから、本件訂正発明1は、上記引用例1乃至3に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(ロ)本件請求項2に係る発明について
この発明は、請求項1を引用してなるものであるから、上記(イ)で述べたと同様の理由により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
(5)むすび
以上のとおり、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項、同条第3項で準用する第126条第2項乃至第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議申立てについての判断
(1)特許異議申立人の理由の概要
特許異議申立人は、証拠方法として、甲第1号証(上記引用例1と同じ)、甲第2号証(上記引用例2と同じ)及び甲第3号証(上記引用例3と同じ)を提出して、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、また本件請求項2及び3に係る発明は、甲第1号証乃至甲第3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第1項第3号又は同法第29条第2項に違反してなされたものであり、取り消されるべきものであると主張している。
(2)当審の判断
請求項1は削除され、また請求項2及び3に係る発明については、上記2.(3)の独立特許要件の(当審の判断)のところで言及したとおりであるから、特許異議申立人の上記主張は採用することができない。
4.むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件訂正発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
湿式排ガス脱硫方法
(57)【特許請求の範囲】
(1)排ガスを乾式集じん装置に導きこの排ガス中のダストを除去したのち、湿式排ガス脱硫装置の吸収塔に導いて吸収剤スラリにより排ガス中の硫黄酸化物を吸収除去する湿式排ガス脱硫方法において、上記吸収塔内の、未反応吸収剤を含む吸収剤スラリの一部を滞留槽で所定時間滞留させてpHを回復させるか、または前記滞留後アルカリ化合物を添加してpHを高めたのち、前記乾式集じん装置に導く排ガス中に噴霧して硫黄酸化物の除去を行うとともに、吸収剤スラリ中の水分を蒸発乾燥させることを特徴とする湿式排ガス脱硫方法。
(2)請求項(1)において、乾式集じん装置に導く排ガス中に噴霧する吸収剤スラリ量を、同排ガス流量と排ガス温度により制御することを特徴とする湿式排ガス脱硫方法。
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は湿式排ガス脱硫方法に係り、特に装置からの処理排水をなくするに好適な湿式排ガス脱硫方法に関する。
〔従来の技術〕
大気汚染防止のため、排ガス中の硫黄酸化物の除去方法として、湿式石灰石-石膏脱硫方法が広く実用化されている。
石炭焚きボイラ排ガスに適用される湿式排ガス脱硫装置は、硫黄酸化物・煤塵を除去するだけでなく、排ガス中のハロゲンガスも吸収除去する。従来のボイラからの排ガス処理設備を第6図に示す。ボイラ1からの排ガスは、煙道12から通常は乾式集じん装置2で排ガス中の煤塵が除去された後、吸収塔3に導かれ、排ガス中のハロゲン化合物と乾式集じん機2で除去しきれなかった煤塵を吸収塔3で除去するとともに、ガス中の硫黄酸化物を吸収除去する。
吸収塔3では吸収剤スラリを循環ライン4を通して循環スプレーさせ、ハロゲン化合物を除去するとともにSO2などの硫黄酸化物を除去する。SO2などを吸収した吸収剤スラリの一部は、シックナ5へ送り、濃縮したスラリは脱水機6で脱水して、反応生成物である石膏9を回収する。排ガスは、循環される吸収剤スラリにより冷却されるため、吸収剤スラリ中の水が蒸発し、これを補うため工業用水およびシックナ上澄水7が吸収塔3へ供給される。吸収除去されたハロゲン化合物(主に塩化物)は溶解度が高いため、系内で濃縮し脱硫性能の低下、あるいはステンレス系材料の腐食を起こすので、これを防ぐためにシックナ5の上澄水7の一部を排水ライン8より排水処理施設13を経て系外に排出して、系内の塩素濃度が一定の値以下となるようにする。排水は塩素の他に、同様に除去されたフッ素、また系内で副生されたCOD起因物質を含むため、そのまま系外へ排出することはできず、特別な排水処理施設13が必要となる。この排水処理施設13のフローは通常、排水中の固形物が除去されるSS除去工程、アルカリ(Ca塩、Na塩)等の薬品14を添加し、溶解金属類およびフッ素化合物が除去される凝集沈殿工程、その後のCOD起因物質(S2O62-等)がイオン吸着樹脂等で除去されるCOD除去工程により構成され、非常に複雑なものであり、処理された排水は放流ライン15より放流される。
〔発明が解決しようとする課題〕
上記従来技術では、特別に湿式脱硫装置の排水処理設備が必要であった。
本発明の目的は、吸収液の一部を排ガス中に噴霧して、排ガス中のSO2などの硫黄酸化物を除去するとともに、湿式脱硫装置の排水量低減あるいは無排水化を行なうことにより、排水処理設備を縮小あるいは不要とすることにある。
〔課題を解決するための手段〕
上記目的は、吸収塔より未反応吸収剤を含む吸収液の一部を抜出し、滞留槽で一定時間滞留させることによって吸収液中の未反応CaCO3を溶解させてpHを回復させたのち、乾式集じん装置上流の煙道内に噴霧することにより、達成される。また、噴霧する吸収液のpHを高くする必要がある場合には石灰石、消石灰等のアルカリを添加してpHを高くしたのち噴霧してもよい。
すなわち、従来技術の問題点は、排ガスを乾式集じん装置に導きこの排ガス中のダストを除去したのち、湿式排ガス脱硫装置の吸収塔に導いて吸収剤スラリにより排ガス中の硫黄酸化物を吸収除去する湿式排ガス脱硫方法において、上記吸収塔内の、未反応吸収剤を含む吸収剤スラリの一部を滞留槽で所定時間滞留させてpHを回復させるか、または前記滞留後アルカリ化合物を添加してpHを高めたのち、前記乾式集じん装置に導く排ガス中に噴霧して硫黄酸化物の除去を行うとともに、吸収剤スラリ中の水分を蒸発乾燥させることを特徴とする湿式排ガス脱硫方法により解決される。
〔実施例〕
第1図は、本発明の参考例である。第6図で述べたものと異なる点は、湿式排ガス脱硫装置の吸収塔3から吸収液を吸収液抜出しポンプ19により一部抜出し、吸収液抜出しライン10を経て乾式集じん機2の上流の煙道12内へ噴霧装置18により噴霧する。この噴霧装置18より噴霧される吸収液は、吸収液中に含まれる未反応吸収剤CaCO3によって、排ガス中のSO2を吸収するとともに水は蒸発する。そして、塩素化合物を含む乾燥固形物は、乾式集じん機2で捕集される。排水を行う必要がある場合には、排水ライン8より排水処理施設へ送る。16は吸収塔に補給されるカルシウム化合物などの吸収剤スラリである。21は吸収塔内への空気吹込み装置であり、硫黄酸化物を吸収した吸収剤スラリを酸化させて石膏にするとともに、吸収剤スラリのpHを回復させる。
第2図は本発明の実施例であり、吸収液抜出しライン10により抜出された吸収液は、貯留槽11に送られ、一定時間滞留させる。このとき、吸収液中の未反応吸収剤CaCO3が溶解し、pHが高くなる。滞留槽11内の滞留時間とpH回復の関係について試験を行った結果を第3図に示す。さらにpHを高くする必要がある場合には、アルカリ供給ライン17より石灰石、消石灰等のアルカリ剤を添加する。pHを調整した吸収液は、乾式集じん機2の上流の噴霧装置18により煙道12内に噴霧する。
噴霧する噴霧液量は系内で維持されるCl-濃度により決まり、系内のCl-濃度と噴霧する吸収液量の関係は第4図に示すとおりである。脱硫性能を維持するため、あるいは装置材料の腐食を防止するために、系内の塩素濃度を一定値以下に保たなければならないので、その値により噴霧する吸収液量が決まる。
ここで、過剰の吸収液噴霧は排ガス温度の過度の低下を招き、ガス-ガス・ヒータによる脱硫後の排ガスの再加熱が充分に行なわれず、煙突出口排ガス温度が充分な値にならない場合を引き起こす。また、噴霧液が充分に乾燥できない場合も起こり得る。よって、吸収液噴霧により排ガス温度が低下し過ぎないように、また噴霧液が完全に蒸発するように、吸収液噴霧量を制御しなければならない。吸収液を必要量噴霧できない場合には、噴霧できない吸収液量に対応した排水を行なう必要がある。
吸収液噴霧の制御の実施例を第5図に示す。蒸発量計算機22において、吸収液噴霧装置18上流の排ガス温度、排ガス量より吸収液蒸発量を推算し、その信号を調節計21に送り、調節弁20を制御する。なお、吸収液噴霧装置18上流の排ガス中水分量を測定することで、さらに正確な吸収液蒸発量を推算することが可能となる。本発明の特有の効果として、噴霧する吸収液中の未反応吸収剤CaCO3により、排ガス中のSO2を吸収することができる。本発明について3000Nm3/hのパイロットプラントで実証試験を行なった。試験方法は2種類の石炭A、Bについて、石灰石過剰率5%で運転している脱硫装置の吸収液の一部を、乾式EP上流煙道内に噴霧する本発明の参考例1、実施例1の場合でどのようにSO2除去率が変化するかを確認した。試験結果は下記に示す。

上記表に示すように、Cl分の多いB炭を使用した場合は、吸収液噴霧によるSO2除去率が高くなる。これはA炭に較べて、脱硫装置内に蓄積するCl分が高くなるため、吸収液噴霧量がふえていることと、入口SO2濃度が低いためである。試験結果より、吸収液噴霧により脱硫装置入口のSO2が軽減できるので、脱硫装置を縮小あるいは費用を削減することができ、特にCl分の高い石炭を使用する場合に、本発明が有効であると判明した。
〔発明の効果〕
本発明によれば、吸収塔からの吸収剤スラリの一部を、滞留槽内で所定時間滞留させ、未反応吸収剤を溶解させてpHを回復させるか、または滞留後アルカリ化合物を添加してpHを高めたのち、乾式集じん装置の上流側排ガス中に噴霧するので、排ガス中の硫黄酸化物を吸収することができ、湿式脱硫装置の負荷を低減できるとともに、脱硫装置からの排水量をなくすか低減できるので、排水処理設備のコストを節約できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の参考例図、第2図は、本発明の実施例図、第3図は、滞留槽内の吸収剤スラリのpH値と滞留時間の関係図、第4図は、湿式脱硫装置の吸収剤スラリ中の塩素濃度と吸収剤スラリの噴霧量の関係図、第5図は、吸収剤スラリの噴霧量制御系統図、第6図は、従来技術の説明図である。
1…ボイラ、2…乾式集じん装置、3…湿式排ガス脱硫装置の吸収塔、4…吸収剤スラリ循環ライン、5…シックナ、6…脱水機、7…シックナ上澄水、8…排水ライン、9…石膏、10…吸収剤スラリ抜出しライン、11…滞留槽、12…排ガス煙道、16…吸収剤補給ライン、17…アルカリ剤供給ライン、18…吸収剤スラリ噴霧装置、19…吸収剤スラリ抜出しポンプ、20…調節弁、21…空気供給ライン。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許第2740533号発明の特許明細書を平成11年10月26日付け手続補正書によって補正された全文訂正明細書のとおりに、すなわち次の訂正事項a乃至hのとおりにそれぞれ訂正するものである。
(1)「特許請求の範囲」の欄
訂正事項a
特許請求の範囲の減縮を目的として、請求項1を削除し、請求項2を減縮して次のとおりに訂正する。
「(1)排ガスを乾式集じん装置に導きこの排ガス中のダストを除去したのち、湿式排ガス脱硫装置の吸収塔に導いて吸収剤スラリにより排ガス中の硫黄酸化物を吸収除去する湿式排ガス脱硫方法において、上記吸収塔内の、未反応吸収剤を含む吸収剤スラリの一部を滞留槽で所定時間滞留させてpHを回復させるか、または前記滞留後アルカリ化合物を添加してpHを高めたのち、前記乾式集じん装置に導く排ガス中に噴霧して硫黄酸化物の除去を行うとともに、吸収剤スラリ中の水分を蒸発乾燥させることを特徴とする湿式排ガス脱硫方法。
(2)請求項(1)において、乾式集じん装置に導く排ガス中に噴霧する吸収剤スラリ量を、同排ガス流量と排ガス温度により制御することを特徴とする湿式排ガス脱硫方法。」
(2)「発明の詳細な説明」の欄
特許請求の範囲の減縮に伴う明りょうでない記載の釈明を目的として、次の訂正事項b乃至hのとおりに訂正する。
▲1▼訂正事項b
明細書第4頁第18行乃至第5頁第15行の「上記目的は、吸収塔より吸収液の一部を抜出し、乾式集じん機上流の煙道内に噴霧することにより、達成される。
また、噴霧する吸収液のpHが低い場合、・・・アルカリを添加する。
すなわち、従来技術の問題点は、・・・吸収剤スラリ中の水分を蒸発乾燥させることを特徴とする湿式排ガス脱硫方法により解決される。」を
「上記目的は、吸収塔より未反応吸収剤を含む吸収液の一部を抜出し、滞留槽で一定時間滞留させることによって吸収液中の未反応CaCO3を溶解させてpHを回復させたのち、乾式集じん装置上流の煙道内に噴霧することにより、達成される。また、噴霧する吸収液のpHを高くする必要がある場合には、石灰石、消石灰等のアルカリを添加してpHを高くしたのち噴霧してもよい。
すなわち、従来技術の問題点は、排ガスを乾式集じん装置に導きこの排ガス中のダストを除去したのち、湿式排ガス脱硫装置の吸収塔に導いて吸収剤スラリにより排ガス中の硫黄酸化物を吸収除去する湿式排ガス脱硫方法において、上記吸収塔内の、未反応吸収剤を含む吸収剤スラリの一部を滞留槽で所定時間滞留させてpHを回復させるか、または前記滞留後アルカリ化合物を添加してpHを高めたのち、前記乾式集じん装置に導く排ガス中に噴霧して硫黄酸化物の除去を行うとともに、吸収剤スラリ中の水分を蒸発乾燥させることを特徴とする湿式排ガス脱硫方法により解決される。」と訂正する。
▲2▼訂正事項c
明細書第5頁第17行目の「本発明の実施例である。」を「本発明の参考例である。」と訂正する。
▲3▼訂正事項d
明細書第6頁第14行及び第15行目の「第2図も本発明の実施例であるが、この場合は吸収液のpHが低い場合であり」を「第2図は本発明の実施例であり」と訂正する。
▲4▼訂正事項e
明細書第8頁第19行目の「実施例1、2」を「参考例1、実施例1」と訂正する。
▲5▼訂正事項f
明細書第9頁の表中の「直接噴霧(実施例1)」を「直接噴霧(参考例1)」と、「滞留後噴霧(実施例2)」を「滞留後噴霧(実施例1)」とそれぞれ訂正する。
▲6▼訂正事項g
明細書第10頁第3行目の「一部を乾式集じん装置の上流側排ガス中に噴霧」を「一部を滞留槽で所定時間滞留させてpHを回復させるか、または滞留後アルカリ化合物を添加してpHを高めたのち、乾式集じん装置の上流側排ガス中に噴霧」と訂正する。
▲7▼訂正事項h
明細書第10頁第9行及び第10行目の「第1図は、本発明の実施例図、第2図は、本発明の他の実施例図」を「第1図は、本発明の参考例図、第2図は、本発明の実施例図」と訂正する。
異議決定日 1999-11-25 
出願番号 特願平1-18264
審決分類 P 1 651・ 113- YA (B01D)
P 1 651・ 121- YA (B01D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中野 孝一  
特許庁審判長 沼澤 幸雄
特許庁審判官 新居田 知生
野田 直人
登録日 1998-01-23 
登録番号 特許第2740533号(P2740533)
権利者 バブコツク日立株式会社
発明の名称 湿式排ガス脱硫方法  
代理人 川北 武長  
代理人 田中 重光  
代理人 川北 武長  
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