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審決分類 |
審判 一部申し立て 4項(5項) 請求の範囲の記載不備 C12N 審判 一部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備 C12N |
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管理番号 | 1016692 |
異議申立番号 | 異議1999-70226 |
総通号数 | 12 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1990-01-05 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-01-25 |
確定日 | 2000-02-16 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2777805号「イソアミラーゼの構造遺伝子」の請求項5、9、12、20ないし27に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2777805号の請求項1ないし24に係る特許を維持する。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件特許第2777805号に係る発明についての出願は、昭和63年8月5日に特願昭63-194700号として出願され、平成10年5月8日にその特許の設定登録がなされ、その後、椙田 慈より特許異議申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年11月24日に訂正請求がなされたものである。 II.訂正請求 1.訂正の内容 ▲1▼特許請求の範囲の請求項20に係る記載「請求項6〜9記載のポリペプチドの製法において、」を削除する。 ▲2▼特許請求の範囲の請求項24乃至26を削除する。 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正事項▲1▼は、「請求項6〜9記載のポリペプチドの製法において、」を削除するものであるから明りょうでない記載の釈明に該当し、訂正事項▲2▼は、特許請求の範囲の請求項24乃至26を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当する。 そして、上記いずれの訂正も新規事項に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。 3.むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法120条の4,2項、及び同条3項で準用する126条2項から3項の規定に適合するので、請求のとおり当該訂正を認める。 III.特許異議申立 1.特許異議申立書の理由の概要 訂正前の本件請求項5,9,12,20〜27(以下、単に「請求項5,9,12,20〜27」という。)に係る発明は、以下の点で特許36条3項或いは4項に規定する要件を満たしていないものである。 (1)請求項5,12,27について 本件発明に係る「シュードモナスSMPI ATCC53651」は、「ATCC Bacteria and Bacteriophages Ninetecnth edition,1996」(甲第1号証)には見当たらず、現時点では最早一般には入手不能である。 (2)請求項9,20〜23について 請求項9の「イソアミラーゼと同等の生物学的活性を有するポリペプチドをコードづけする前記構造遺伝子の領域」の「領域」とは、前記構造遺伝子の一体どの領域を指すのか具体的説明がない。また、「イソアミラーゼと同等の生物学的活性を有するポリペプチド」については、本件明細書には何らの記載もないから、そのようなポリペプチドをコードづけする遺伝子の領域とは、一体どの領域を示すのか全く不明である。 (3)請求項20〜23について 請求項6〜9に係る発明は、イソアミラーゼの構造遺伝子に関する発明であって、ポリペプチドの製法に関する発明ではない。 したがって、「請求項6〜9記載のポリペプチドの製法において」という記載のある請求項20に係る発明は、全くその構成が不明である。 したがって、請求項20を引用する請求項21〜23に係る発明もその構成が不明である。 (4)請求項24〜26について 請求項24が構成要件とする「請求項6〜8記載のアミノ酸配列」とは何を指すのか不明であり、請求項24を引用する請求項25及び26も不明である。 2.判断 (1)について 本件発明に係る「シュードモナスSMPI ATCC53651」については、ATCCにブダペスト条約にもとづく国際寄託がなされた旨の証明書が願書に添付されているところ、ブダペスト条約にもとづく国際寄託がなされた場合には、特許存続期間は寄託されていることが、当条約により保証されているものである。 しかるに、甲第1号証は、販売を目的としたATCCのカタログであって、ブダペスト条約にもとづく国際寄託に係る微生物に関しては、必ずしも掲載されるものではない。 そうすると、甲第1号証に上記微生物が記載されていないことをもって、現時点では一般には入手不能であるということはできない。 (2)について 本件明細書には、▲1▼「本発明の他の目的は、DNAフラグメント又はその領域を包含し・・・」(特許公報12頁24欄45〜46行)、▲2▼「本発明の他の目的は、イソアミラーゼ又はその領域をコードづけする遺伝子を含有する組換えDNA分子によって・・・」(同13頁25欄2〜4行)という記載があり、これらの記載によれば、「領域」とは、▲1▼の場合は「DNAフラグメント」を示し、▲2▼の場合は「イソアミラーゼ」の部分であると理解することができる。 また、本件明細書には、「本発明の他の目的は、1-6グルコシド結合の加水分解法においてイソアミラーゼ及びイソアミラーゼと同等の生物学的活性を有するポリペプチドの使用にある。」(同13頁25欄13〜15行)との記載があり、また、実施例6には、イソアミラーゼ活性の検定について詳細な記載がある。 そうすると、「イソアミラーゼと同等の生物学的活性を有するポリペプチド」に関しては、明細書に実質的に開示されているといえるから、「イソアミラーゼと同等の生物学的活性を有するポリペプチドをコードづけする前記構造遺伝子の領域」の「領域」という記載が不明であるということにはならない。 (3)について 上記訂正請求にて、特許請求の範囲の請求項20に係る記載「請求項6〜9記載のポリペプチドの製法において、」は削除されたので、もはや、請求項20〜23に関して記載の不備はない。 (4)について 上記訂正請求にて、特許請求の範囲の請求項24〜26は、削除されたので、もはや、請求項24〜26に関しての記載の不備はない。 3.まとめ 以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明についての特許を取り消すことはできない。 また他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 イソアミラーゼの構造遺伝子 (57)【特許請求の範囲】 1 下記の式(1)で表されるヌクレオチド配列を有することを特徴とする、イソアミラーゼの構造遺伝子。 2 遺伝子が5′末端にATGを有する、請求項1記載のイソアミラーゼの構造遺伝子。 3 遺伝子が、5′末端に、イソアミラーゼの分泌シグナルペプチドをコードづけする下記の式(II)で表される配列を有する、請求項1記載のイソアミラーゼの構造遺伝子。 4 シュードモナス属に属する細菌の染色体DNAによって得られたものである、請求項1記載のイソアミラーゼの構造遺伝子。 5 細菌がシュードモナスSMPI ATCC53651である、請求項4記載のイソアミラーゼの構造遺伝子。 6 下記の式(III)で表されるポリペプチドをコードづけするものである、請求項1記載のイソアミラーゼの構造遺伝子。 7 遺伝子が、アミノ末端アラニン(Ala)がメチオニン(Met)に結合している前記式(III)のポリペプチドをコードづけするものである、請求項1記載のイソアミラーゼの構造遺伝子。 8 遺伝子が、アミノ末端アラニン(Ala)が下記の分泌シグナルペプチドに結合している前記式(III)のポリペプチドをコードづけするものである、請求項3記載のイソアミラーゼの構造遺伝子。 9 請求項1〜3記載のイソアミラーゼの構造遺伝子又はイソアミラーゼと同等の生物学的活性を有するポリペプチドをコードづけする前記構造遺伝子の領域。 位、RBSはリボゾーム付着部位、LSは分泌シグナル配列及びTはイソアミラ一ゼ遺伝子の転写のターミネ一夕ー配列である)で表されるヌクレオチド配列を有することを特徴とする、請求項1〜3記載のイソアミラーゼの構造遺伝子を含有するDNAフラグメント。 11 シュードモナス属の細菌の染色体DNAから得られたものである、請求項10記載のDNAフラグメント。 12 細菌がシュードモナスSMPI ATCC53651である、請求項11記載のDNAフラグメント。 13 クローニングベクターを請求項1、2、3又は10のいずれかに記載のDNAと結合することによって得られた、宿主微生物において発現する複製可能な組換えDNA分子。 14 クローニングベクターがプラスミド又はバクテリオファージの中から選ばれるものである、請求項13記載の組換えDNA分子。 15 クローニングベクターが、大腸菌、桿菌類及び酵母類における発現用の複製可能なプラスミドである、請求項14記載の組換えDNA分子。 16 エシェリキア・コリ75/18(pSM257)ATCC64474としてアメリカン・タイプ・カルチャー・センターに寄託された請求項13〜15記載の組換えDNA分子。 17 大腸菌、桿菌類及び酵母類の中から選ばれる微生物を請求項13〜16のいずれかに記載のDNA分子によって形質転換させてなる、形質転換微生物。 18 エシェリキア・コリDH1である、請求項17記載の形質転換微生物。 19 バシラス・サチリスSMS108である、請求項17記載の形質転換微生物。 20 宿主微生物を請求項13〜16のいずれかに記載の組換えDNA分子によって形質転換させ、炭素源、窒素源及び無機塩の存在下、液状環境において、pH6、温度30ないし40℃で前記微生物を培養し、溶解処理した細胞又は培養基からポリペプチドを採取することを特徴とする、ポリペプチドの製法。 21 宿主微生物が、大腸菌、桿菌類及び酵母類の中から選ばれるものである、請求項20記載のポリペプチドの製法。 22 微生物が大腸菌であり、溶解処理した細胞からポリペプチドを採取する、請求項21記載のポリペプチドの製法。 23 微生物が枯草菌であり、ポリペプチドを培養基から採取する、請求項21記載のポリペプチドの製法。 24 削除 25 削除 26 削除 27 培養基中、良好な生物学的活性及び熱安定性を有するイソアミラーゼを多量に生産するシュードモナスSMPI ATCC53651。 【発明の詳細な説明】 本発明は、組換えDNA技術、該技術を利用するDNA配列及びイソアミラーゼから誘導されたアミノ酸配列を単離する手段及び方法、その製造、得られる生成物及びその使用法に係る。 さらに詳述すれば、本発明は、酵素イソアミラーゼをコードづけする遺伝子の単離及び配列決定及び該酵素のアミノ酸配列による特定化に係る。 本発明は、イソアミラーゼ遺伝子又はそのフラグメントを包含する複製可能な組換えDNA分子、及び該組換えDNAによって形質転換されかつ遺伝子生成物を発現及び/又は分泌する宿主微生物に係る。 さらに、本発明は、イソアミラーゼ遺伝子又はそのフラグメントを含有する組換えDNA分子によって形質転換された微生物を適当な培養基で培養し、培養基又は細胞から得られた遺伝子生成物を分離することからなる、成熟イソアミラーゼ又は該成熟イソアミラーゼのものと同等の生物学的活性を発揮するイソアミラーゼのペプチドフラグメントの製法にも係る。 直鎖状(アミロース)又は分枝状(アミロペクチン)のD(+)グルコースポリマーの混合物でなるアミドは酵素によって加水分解されて、デキストロース、マルトース及び他の少糖類を含有するシロップ又は固状物を生成する。アミドの加水分解で使用される主な酵素は、アミロース中に存在する1-4グルコシド結合を切断するアミラーゼ及びアミロペクチンの1-6グルコシド結合を攻撃するイソアミラーゼ及びプルラナーゼである。 マルトースを工業的に製造する際に使用されるアミドの多くは多量のアミロペクチンを含有するため、高収率(>95%)でマルトースを得るためには、2種類の酵素を組合せて使用する必要があった。 一般に、1-6グルコシド結合を加水分解する酵素は、酵母の如き単細胞真核生物(MarroB.及びKobayashiT.「ネーチャー(Nature)」167、606(1951);GunjaZ.H.ら「ザ・バイオケミカル・ジャーナル(Biochem.J.)」81、392(1961))から高級植物(HobsonP.N.ら「ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサエティー(J.Chem.Soc.)1451(1951))及び細菌(Lee E.Y.C.ら「アーカイブズ・オブ・バイオケミストリー・アンド・バイオフィジックス(Arch.Biochem.Biophys.)」125、1028(1968))までの広い範囲の生物から生産される。 さらに詳しくは、イソアミラーゼ(E.C.3.2.1.68)(分子量約90000ドルトンを有する酵素)は、シュードモナス・アミロデラモーサ(Pseudmonas amyloderamosa)の菌株から発酵によって生産される(Harada T.ら「アプライド・マイクロバイオロジー(APPl.Microbiol.)16、1439(1968))。 しかしながら、シュードモナス属のすべての菌が非一GRAS(Generally Recognized As Safe)性であるため、この方法は、完全には満足できるものではない。 従って、食品工業での使用にあたり必須の安全性に関する要求に適合するイソアミラーゼ生産菌株を得る技術が求められている。このような特性を有する微生物は、組換えDNA技術によりGRAS生物を形質転換させることによって得られる。 分子遺伝学の発達により、上記技術を使用し、各種源からの遺伝物質の部分をインビトロで組合せて新たに遺伝子の組合せを形成させ、これにより、特定の生物に新たな遺伝特性を与えることが可能となった。一般に、組換えDNA技術は下記の工程を包含する。 -所望のタンパク質をコードづけするDNAフラグメントを単離する工程 -上記フラグメントをクローニングベクターに挿入し、得られたハイブリッドベクター又は組換えDNA分子を単離する工程 -上記分子を形質転換技術によって宿主生物に挿入する工程 -形質転換された生物を培養してDNAフラグメントを発現させ、所望のタンパク質を生成する工程、及び -得られた発現生成物を培養基又は宿主生物から単離し、精製する工程 この技術は、高度レベルに達しており、当該技術分野では多くの研究者によって実施されてはいるが、効果的な実験によるデータがなければ成功を予測することは困難である。組換えDNA技術によって異種タンパク質を生成するためには、かかるタンパク質をコードづけするDNA又は遺伝子配列を得る必要がある。 これまでのところ、イソアミラーゼ又はこの酵素のアミノ酸配列をコードづけする遺伝子はいずれも知られていない。 本発明は、まず、イソアミラーゼ遺伝子の単離、その配列決定及び特定、及びヌクレオチド配列から誘導されるイソアミラーゼのアミノ酸配列を開示する。本発明は、さらに、イソアミラーゼ遺伝子をインビトロにおいて発現用クローニングベクターに結合させるための該遺伝子の5′及び3′末端の上方及び下方の配列に関する情報を提供する。 さらに詳述すれば、本発明では、成熟イソアミラーゼのアミノ酸配列の直前に位置し、成熟イソアミラーゼの分泌に応答する分泌シグナルペプチド(リーダー配列)をコードづけするDNA末端5′配列を開示する。 これらの知見の結果として、組換えDNAを介してイソアミラーゼを生産する手段及び方法が開発された。従って、本発明の1つの目的は、純粋な形で単離されかつ配列決定されたイソアミラーゼ遺伝子を包含するDNAのフラグメントにある。 本発明の他の目的は、成熟イソアミラーゼのアミノ酸配列及びその分泌シグナル配列の特定化にある。 本発明の他の目的は、DNAフラグメント又はその領域を包含し、宿主微生物において発現する複製可能な組換えDNA分子にある。 本発明の他の目的は、組換えDNA分子によって形質転換され、組換えDNA分子に含有される異種ヌクレオチド配列からコード化遺伝生成物を発現及び/又は分泌する宿主微生物にある。 本発明の他の目的は、イソアミラーゼ又はその領域をコードづけする遺伝子を含有する組換えDNA分子によって形質転換させた宿主微生物(該微生物は成熟イソアミラーゼ又は該イソアミラーゼと同等の生物学的活性を有するポリペプチドを発現及び/又は分泌する)を適当な培養基で培養し、培養基又は微生物細胞から発現生成物を分離、精製することからなる成熟イソアミラーゼ等の製法にある。 本発明の他の目的は、得られた成熟イソアミラーゼ及び該成熟イソアミラーゼと同等の生物学的活性を有するポリペプチドにある。 本発明の他の目的は、1-6グルコシド結合の加水分解法においてイソアミラーゼ及びイソアミラーゼと同等の生物学的活性を有するポリペプチドの使用にある。 本発明の他の目的は以下の記載及び実施例から明らかになるであろう。 本発明をさらに明確にするために、使用す用語について簡単に述べる。 ゲノムバンク(gencme bank) これは、各々がドナー生物由来のDNAフラグメントを有する(これによってバンクが得られる)宿主微生物のクローンのすべてに関する用語である。 ゲノムバンクは、各クローンにおける各々のフラグメントを組み合わせてドナー生物の染色体DNAの多く(又はすべて)を再構成できる場合を代表例として定義される。 制限酵素 これは、特異な部位(制限酵素の認識部位と称される)でDNA分子を切断する加水分解酵素をいう。 クローニングベクター これは、宿主微生物に移される際、複製用のすべての遺伝情報を含有するDNA分子をいう。 クローニングベクターの例としては、プラスミド及びいくつかのバクテリオファージのDNAがある。 好ましくは、組換えDNA技術では、多くの細菌及び他の微生物には細胞当たり多数のコピーが存在するため、環状のDNA二重ら線を包含するプラスミドが使用される。さらに、プラスミドDNAは、宿主生物内でそれ自体を再生成するための複製開始点だけでなく、抗生物質に対する耐性の如き選択的な表現型特性をコードづけする遺伝子を含有する。この結果、選択的培養基で培養する際、所望のプラスミドを含有する宿主細胞を容易に認識できる利点がある。各種の制限酵素(それぞれプラスミドDNAにおける異なる制限位置を認識する)によって特異的に切断されるため、プラスミドも有効である。 つづいて、異種遺伝子又はそのフラグメントが切断後プラスミドDNAに挿入され、再び閉環して、より大きい分子、組換えDNA分子又はハイブリッドプラスミドを形成する。 ついで、組換えDNA分子を、形質転換と呼ばれる方法によって宿主細胞に導入する。 得られた形質転換細胞を、プラスミドに挿入された遺伝子からコード化されたポリペプチドを生成する発酵(発現と呼ばれる工程)で使用する。 発現 これは、宿主生物が与えられた遺伝子からコードづけされたタンパク質を合成する機構をいう。 これは、転写(すなわち、DNAからメッセンジャーRNA(mRNA)へ遺伝情報を移すこと)及び翻訳[すなわち、J.D.Watson「モレキュラー・バイオロジー・オブ・ザ・ジーン(Molecular Biology ofthe Gene)」W.A.Benjamin Inc.発行、第3版1976)によって記載された遺伝子コードの原則(コドン、すなわち特定のアミノ酸をコードづけするヌクレオチド塩基のトリプレットに関する)に従ってmRNAからタンパク質に情報を移すこと]の過程を包含する。 各種のコドンが同じアミノ酸をコードづけできるが、各アミノ酸については、これらの特殊なコドンのみであり、他にはない。転写は、プロモーターとして公知の領域(ポリメラーゼRNAによって認識及び結合される)において開始する。 ついで、得られたmRNAの情報が、コード化されたアミノ酸配列を有するポリペプチドに翻訳される。 翻訳は開始シグナル(ATG)に従って始まり、ターミネーションコドンで終了する。 プライマー これは、通常、塩基15ないし20個を含有し、酵素法によって配列決定されるシングルら線の領域に相補的なオリゴヌクレオチドである。 遺伝子 これは、構造遺伝子、すなわち成熟タンパク質をコードづけする塩基の配列[転写調節配列(プロモーター及び転写開始部位)、リボゾーム付着位置、及び分泌形タンパク質の場合には、成熟タンパク質(すなわち、天然タンパク質とは異質のアミノ酸配列をもたないタンパク質)の分泌シグナルペプチドをコードづけするヌクレオチド配列]を含むヌクレオチド配列をいう。 次に、図面について説明する。 第1図はSau3Aゲノムバンクから選ばれたいくつかのクローンを含有するM9+アミロペクチン寒天培地(pH6.0)を示す。ヨウ素で染色した後、クローン9(A)及び17(B)は、イソアミラーゼ活性を表示する紫色のリングを示す。 第2図はクローン9から抽出されたプラスミドpSM257の制限地図である。 第3図はクローン17から抽出されたプラスミドpSM258の制限地図である。 第4図は制限酵素による消化の後、ハイブリッドプラスミドの電気泳動挙動による比較分析の結果を示す。クローン9(pSM257)のプラスミドを酵素Sau3A(2)及びHpaII(5)によって消化し、クローン17(pSM256)からのプラスミド(3及び6)及びシングルベクターpUC12(1及び4)と比較した。Mは分子量のマーカーである。 第5図は抗-イソアミラーゼ抗体での処理によるイソアミラーゼの存在に関する分析の結果を示す。1はクローン9によるタンパク質、2は大腸菌71/18からのタンパク質、3は精製イソアミラーゼ100ngに係る。 第6図はベクターM13mp8におけるプラスミドpSM257から得られたSma1-BamHIフラグメント(1900bp)及びBamHI-XbaIフラグメント(1300bp)のク ローニングのダイアグラムである。 第7図、第7(A)図及び第7(B)図はイソアミラーゼ遺伝子を含有するシュードモナスSMPIから得られた染色体DNAの3335bpフラグメントのヌクレオチド配列を示す。 第8図、第8(A)図及び第8(B)図はイソアミラーゼをコードづけする構造遺伝子のヌクレオチド配列(2250bpからなる)及び該ヌクレオチド配列から誘導される酵素のアミノ酸配列(アミノ酸750個)を表す。 第9図、第9(A)図及び第9(B)図はイソアミラーゼの構造遺伝子及び調節及び分泌配列を含有するシュードモナスSMPIから得られた染色体DNAのフラグメントのヌクレオチド配列を表す。 イソアミラーゼ及びそのシグナル配列(LS)をコードづけするフラグメントは2328bpを含み、アミノ酸776個を含有するタンパク質をコードづけする。 該配列において、以下の記号を使用する。 第10図はプラスミドpSM262の制限地図である。 第11図は大腸菌における発現及び分泌用のハイブリッドプラスミドpSM289の制限地図である。 第12図は枯草菌における発現及び分泌用のハイブリッドプラスミドpSM290の制限地図である。 本発明によれば、上記酵素をコードづけする遺伝子を単離するにあたり、イソアミラーゼを生産し得るシュードモナス属に属する各種の菌を使用できる。 好ましくは、発明者らの研究室で単離され、良好な活性及び熱安定性を有するイソアミラーゼを高収率(約125U/ml)で生産し得るシュードモナス属の菌株(シュードモナスSMPI)を使用できる。 この菌株について、その染色体又はプラスミドにイソアミラーゼ遺伝子が存在するか否かを調べるため、Kado及びLiuの技術(ジャーナル・オブ・バクテリオロジー(J.of Bacteriol.)」145、1365(1981))によって分析した。その結果、この菌株は非染色体形DNAを有していないことを示した。 従って、染色体DNAの消化に適する制限酵素を使用し、シュードモナスSMPIのゲノムバンクを構成することによって、イソアミラーゼの遺伝子を単離した。 さらに詳述すれば、微生物から抽出した染色体DNAを別々に制限酵素EcoRI(BRL)及びSau3A(BRL)によって消化して、シュードモナスSMPIの2つのゲノムバンクを構成した。消化反応を、緩衝溶液中、温度37℃又は約37℃、所望の消化が達成されるに充分な時間で実施した。 得られたDNAフラグメントから、3000ないし4000塩基対(bp)のサイズを有するもののみを精製した。 このようなサイズの選択は、イソアミラーゼの分子量が公知であるため、その遺伝子のサイズを約3000ないし4000bpと概算できたことによって決定したものである。 ついで、得られたDNAのEcoRI及びSau3Aフラグメントの2つの集団を、大腸菌における発現用クローニングベクターに、ベクター1分子当たり1つのDNAシングルフラグメントを結合させるに適する条件下で挿入した。 さらに詳しくは、緩衝溶液中、T4 DNAリガーゼ(BRL)の存在下、温度4ないし37℃、好ましくは13ないし18℃で反応を行った。 この目的に適するベクターは、当分野で通常使用される大腸菌プラスミド又はバクテリオファージの中から選ばれる。 さらに詳述すれば、Messing J.ら(「ジーン(Gene)」19、159(1981))によって開示されたプラスミドpUC12(1800bp)を使用した。 この場合、外来のDNAフラグメントが合体されたクローンを区別する容易かつ迅速な方法である。 実際、プラスミドはβ-ラクタマーゼ及びβ-ガラクトキシダーゼに係る遺伝子を有しており、大腸菌の宿主菌株がアンピシリン含有培地で生育できるようになる。外来のフラグメントがβ-ガラクトキシダーゼに係る遺伝子に存在する制限部位(特にクローニングベクターに適する)間に挿入される場合には、遺伝子は破壊され、もはや酵素を生産できない。 このように、ラクトースと類似する基質(染料減成分子)を使用することによって、元のプラスミドを含有するクローン(ブルーに着色される)から組換えクローン(着色されない)を区別することが可能である。 本発明に従い、pUC12から得たプラスミドDNAを、制限酵素(β-ガラクトキシダーゼのヌクレオチド配列の内側を切断する)によって消化して直鎖状とし、反応混合物から沈殿、分離した後、リガーゼで処理して、予めEcoRI及びSau3Aでの消化によって得たシュードモナスSMPIの染色体DNAのフラグメントに結合させた。 リガーゼによる反応の前にプラスミドが再び環化することを防止するため、プラスミドDNA分子をアルカリホスファターゼ(分子の5n末端から硫酸基を除去し、リガーゼの存在下における3′末端OHの縮合を阻止する酵素)によって処理した。 リガーゼによる反応を、プラスミド:DNAフラグメントの比としてプラスミドが多くなる量、好ましくは2:1で使用して実施した。 反応終了後、Mandel M.及びHigaの方法(「ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.)」53、154(1970))に従って、コンピテントした大腸菌を形質転換させるために2種類のリガーゼ混合物を使用し、このようにして2つの集団のコロニー(ゲノムバンク)を得た。各コロニーは、プラスミドpUC12及びシュードモナスSMPIの染色体DNAのフラグメントを含有するハイブリッドプラスミドを有していた。 この目的に好適な大腸菌は、エシェリキア・コリ JM 83(pro,ara,△lacpro,straA,φ80d,lacZ M15)、エシェリキア・コリ HB 101(F-,hsd S20(r-B,m-B)rec A13,ara-14,proA2,Lac Yl,galK2,rps L20(SmR),Xy1-5,mtl-1,sup E44λ)、エシェリキア・コリ JM 101(lac,pro,supE,thiF′proAB,lac-q)及びエシェリキア・コリ 71/18△(1ac-proAB),thi,supE,[F′,proAB,lacI-qZ M15]から選ばれる。 形質転換した細胞を使用して、選択的なものとした培地に置き、ハイブリッドプラスミドを含有するクローン単離した。pUC12はDNA μ9当たりコロニー2×106以上の効率で形質転換されている。 ついで、得られたゲノムバンクを分析して、イソアミラーゼ遺伝子を含有するクローンの存在を検知した。これは、特殊なDNAプローブによるハイブリダイゼーション又は直接の発現によるスクリーニングの如き各種の方法によって行なわれる。 第1の方法は、主にイソアミラーゼのアミノ酸配列の少なくとも一部の決定に基づくものである。この情報は、小さなヌクレオチドフフラグメント[適当にマーク付けされる際、一般に公知の技術(Hagness D.S.「P.N.A.S.」72、3961(1975);Meson P.J.ら「ヌクレイック・アシッド・ハイブリダイゼーション(Nucleic Acid Hybridization)」245P(1985)、IRL PRESS 発行)に従って(+)のクローンを決定するために使用される]の合成に利用される。 一方、第2の方法は、イソアミラーゼ遺伝子は該遺伝子を含有するゲノムバンクのクローンから発現されるとの仮定に基づくものでる。 仮に、このクローンがアミロペクチンを含有する培地で生育する場合には、アミロペクチンは減成されるはずであり、この減成は比色法によって検知される。従って本発明では、アミロペクチンを含有しかつpH≦6.0に緩衝化した最小培地を使用し、直接的な発現によって、シュードモナスSMPIの2種類のゲノムバンクの組換えクローンを検定した。つづいて、酵素の存在によるアミロペクチンの減成をヨウ素蒸気によって実証した。 この方法を使用して、プレート培地での検定に対して明らかな(+)の応答を示す2種類のクローン(いずれもSau3Aゲノムバンクからのもの)を単離した。これら2種類のクローンのイソアミラーゼ生産の可能性を、ウエスタンーブロット法(Hames B.D.ら「ゲル・エレクトロホレシス・オブ・プロテインズ(Gel Electrophoresis of Proteins)」290P(1981)、IRL PRESS発行)に従い、特殊な抗-イソアミラーゼ抗体を使用する免疫検定によって確認した。 次に、これら2種類の(+)コロニーのハイブリッドプラスミドの制限地図を決定した。 実際には、Birnboim H.C.ら(「ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Res.)」7,1513(1979))の方法を使用して、これらのプラスミドを単離し、適当な制限酵素によって処理した後、電気泳動によって分析した。 2つのプラスミドのうち1つ(pSM257)は約3200bpの挿入部(EcoRI制限部位、BamHI部位及びSstI部位を含有することが判明した)を有していた。他のプラスミド(pSM258)は、第1のプラスミドと同じ制限部位を含有する約3000bpの挿入部を有していた。 ついで、プラスミドを2種類の酵素(頻繁に切断を行う)で順次消化した。該プラスミドはサイズはわずかに異なるが、電気泳動では同じ挙動を示した。 本発明に従い、約3200bpの染色体DNAフラグメントのヌクレオチド配列を決定した。 この決定は、Maxam及びGilbertの技術(「P.N.A.S.」74、560(1977))を利用し、DNAの特殊な減成用の化学システムを使用することにより、又は配列決定酵素システムに基づくSangerF.らの方法(「P.N.A.S.」74、5463(1977))を 使用することによって行われる。 後者の方法(非常に長くかつ多少知られているDNAフラグメントの配列決定に特に好適である)では、配列決定に供するフラグメントがシングルら線(鋳型)及びプライマーとして定義されかつ該シングルら線の開始領域に対して相補的である小さいオリゴヌクレオチド(塩基15-20個)の形状で利用できるものであることが要求される。従って、本発明では、約3200bpの染色体DNAフラグメントをベクター内でサブクローン化し、Sanger法によって配列決定した。この目的に適するベクターは、ウイルス、プラスミド又はバクテリオファージである。好ましくは、ファージベクターM13mp8(Messing J.ら「Gene」19、263(1982))及びM13mp9(Yamamoto K.R.ら「バイロロギー(Virology)」40、734(1970))(クローニング部位がプライマーのアニーリング部位に比べて逆転して位置し、2つの向い合う末端からの挿入部の配列を限定するために使用される)を使用できる。 本発明の目的に関してはファージベクターM13mp8が特に好ましい。これは、そのDNAが大腸菌の細胞に存在する際には二重ら線形で単離され、一方その感染サイクルの終了時、細菌細胞を出たファージが培養基の上澄み液中に流入する際にはシングルら線形であるためである。 本発明では、イソアミラーゼ遺伝子を2つのフラグメントに分割し、各々をファージベクターM13mp8に挿入した。 さらに詳述すれば、遺伝子内にBamHI部位及び該遺伝子の前後に他の2つの部位が存在するとの利点から、プラスミドpSM257を制限酵素BamHI、SmaI及びXbaIで消化した。得られたフラグメントの端を、DNAポリメラーゼ1酵素(ラージフラグメント又はKlenOWフラグメント)で処理して平らにし、フラグメントを電気泳動によって分離し、つづいて常法に従って溶出した。 得られたフラグメント(それぞれ約1900bp(SmaI-BamHI)及び約1300bp(BamHI-XbaI)を含有する)を、SmaI酵素によって直鎖状とした後、T4 DNAリガーゼの存在下でM13mp8ファージに挿入し、ついでリガーゼ混合物を大腸菌のコンピテント細胞を形質転換するために使用した。 組換えクローン、すなわちハイブリッドベクターを有するクローンを同定した後、2つのフラグメントの配向を、制限酵素により適当に切断することによって決定した。 さらに詳述すれば、1900bpフラグメントを含有するハイブリッドベクターを、フラグメント内部で対称にかつベクター内ではフラグメントのすぐ近くで切断する制限酵素EcoRIで消化した。予想した如く、結果は配向に応じて300bp又は1600bpのセグメントであった。同様に、1300bpフラグメントを有するプラスミドでは、酵素SstI及びHindIIIで消化した場合、配向に応じて500bp及び800bpのセグメントを与えた。 Messing J.により「メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology)」101、20(1983)に記載された方法によって、逆方向の配向の確認を行った。ついで、クローンからシングルら線を抽出し、StraussE.C.らによって開示された連続プライマー法(「アナリティカル・バイオケミストリー(Analytical Biochem.)」154、353(1986))によって配列決定した。 プラスミドpSM257に挿入されたDNAフラグメントは3335bpを含有し、一方、酵素イソアミラーゼをコードづけする領域は2328bp(アミノ酸776個に相当)を含有することがわかった。 公知の方法に従い自動タンパク質シーケンサーを使用して3335bpフラグメントの一方の端から塩基約1000個の位置にある所望の酵素のアミノターミナル配列に相当する54個のヌクレオチドの配列を決定した。成熟イソアミラーゼの構造遺伝子の5′末端を正確に同定するためこの方法を利用したものであり、2250bp(アミノ酸約750個に相当)を含有することがわかった。 分泌形タンパク質から予想されるように、成熟イソアミラーゼの構造遺伝子の直上に、タンパク質の分泌に応答するメチオニン(-ATG-)で始まる代表的なシグナル配列(アミノ酸26個)(LS)が見られた。このLSは、細胞膜外にタンパク質を運ぶために必要な高度に疎水性の構造によって特徴づけられる。タンパク質の移動後、膜ペプチダーゼによってLSを除去する。ペプチダーゼの認識部位はAla-His-Alaの配列で同一と見なされ、第2のアラニンの後で切断が行われる。 これは、発明者らによって精製した分泌タンパク質のアミノターミナル配列のデータにより確認され、該配列はAla-Ile-Asnである。 翻訳を開始させる-ATG-の前のヌクレオチド約10個のところに、配列GGAGGを有する代表的なリボゾームの結合部位(RBS)も見られた。 LSからヌクレオチド約130個上方の位置に、マルトースによる誘発に感応するプロモーターのコンセンサス配列(-GGATGA-)と類似する構造(-GGATGT-)が見られた。 この配列の前方ヌクレオチド35個のところに、転写の開始部と見られる-G-残基が存在する。 この-G-の前ヌクレオチド10個のところに、プルラナーゼ[その遺伝子はマルトースによって誘発される(Chanpan C.ら「ジャーナル・オブ・バクテリオロジー(J.of Bacteriol.)」164(2)、639(1985))]の類似″-10領域に近似した-TCTATT-構造がある。この遺伝子の後方でストップコドン-TAG-の後ヌクレオチド約10個のところに、△G[Tinocoらの方法(「ネーチャー・ニュー・バイオロジー(Nature New Biol.)246、40(1973))に従って算定]-24.8Kcal/モルを有する2次構造を形成し得る4個のヌクレオチドのゾーンで分離された逆方向の繰返し配列を含有する代表的な転写夕ーミネー夕ー構造がある。 後述の配列データに基づき、イソアミラーゼ又はその領域をコードづけする遺伝子を含有するDNAフラグメントを使用し、プラスミドの如き複製可能なクローニングベクターを使用して、イソアミラーゼ又は該イソアミラーゼと同等の生物学的活性を有するポリペプチドを生産する組換えDNAを構成できる。 本発明の好適な1具体例では、成熟イソアミラーゼをコードづけする構造遺伝子を、シュードモナスの配列とは異なるプロモーター及び分泌配列の後方に位置することによってプラスミドベクターに挿入できる。この目的は、強力なプロモーター(すなわち、これらの後方の遺伝子の発現を非常に効果的に案内できかつ当分野で公知のプロモーターの中から選択される)によって達成される。 かかるプロモーターの例としては、トリプトファンシステム(trp)、ラクトースシステム(lac)又はP1及びT5の如きバクテリオファージにおけるものである。 しかしながら、他の多くのプロモーターも同定され、使用されており、その配列の詳細もSiebenlistらによって公表されている(「セル(Cell)」20、269(1980))。 分泌シグナルタンパク質をコードづけするヌクレオチド配列は、組換えDNAの分野で一般的に使用されているものの中から選択される。 この目的に適する配列の例としては、サブチリシン及びニュートラルプロテアーゼがある。 本発明の他の具体例によれば、シュードモナスの配列とは異なる調節配列のコントロールの下、プラスミドベクターに、調節配列を使用することなく、イソアミラーゼをコードづけする遺伝子を位置せしめることによって組換えDNA分子を構成できる。 上述の具体例のいずれかに従って操作して得られた組換えDNA分子を、通常、細菌及び酵母から選ばれかつ各種文献に開示された方法によってコンピテントとされた宿主微生物を形質転換させるために使用する。 ついで、このように形質転換された微生物を使用し、イソアミラーゼ又はイソアミラーゼ活性を有するポリペプチドの発酵による製造を行う。 好ましくは、大腸菌K12、桿菌類及びサッカロミセス類でなる群がら選ばれる。 これらの中で、ヒトに対する病原性がなく、合成された異種タンパク質を直接培養基に分泌し得ることから、枯草菌が特に好適である。 この場合、つづく所望タンパク質の回収及び精製の工程が簡単であるとの利点が得られる。 本発明の好適な具体例では、大腸菌及び枯草菌でイソアミラーゼを発現する組換えDNA分子を、これら細菌において複製可能なクローニングベクターに、LS及びイソアミラーゼの構造遺伝子を含有するDNAフラグメントを挿入することによって構成する。 さらに詳しくは、イソアミラーゼRBSの直前にNarI制限部位が存在するため、プラスミドpSM257から約2400bpのDNAフラグメントを単離することが可能であった。該フラグメントは、シュードモナスSMPIの元のプロモーターを含有することなく、分泌シグナルペプチド及び成熟イソアミラーゼをコードづけする配列を含有する。後述の実施例4に記載する如くして中間プラスミドを構成した後、大腸菌での発現のためクローニングベクターpUC12に上記フラグメントを挿入した。 単離した組換えDNA分子をpSM289と名付け、大腸菌DHl細胞の形質転換に使用した。 これら細胞は、プレート培地又は特殊な液状培地で培養する際、イソアミラーゼを発現及び分泌した(後述の実施例6のデータによって示される)。 本発明に従い、LSと共にイソアミラーゼの構造遺伝子を含有するDNAフラグメントをハイブリッドプラスミドpSM289からEcoRI-HindIIIフラグメントとして取り出し、枯草菌における発現及び複製用のクローニングベクターに挿入した。 この目的のため、枯草菌における複製開始点、クロラムフェニコールに対する耐性をコードづけする遺伝子及び強力な合成プロモーターを含有するファージのプラスミドpSM268(その構成については後述の実施例5に詳述する)を使用した。上記強力なプロモーターのコントロールの下、EcoRI-HindIIIフラグメントを配置せしめ、得られた組換えDNA分子(pSM290)を単離した。 クローニング操作の間に配列の再配列が生じていないことを確認するため、イソアミラーゼ構造遺伝子とプロモーターとの間の結合領域を配列決定した。 結果は予測したとおりの配列を示した。 ついで、DubrauD.及びDavidoff-Abelson R.の方法(「J.Mol.Biol.」56、209(1971))によってコンピテントとした枯草菌の細胞を、pSM 290を使用して形質転換させた。 本発明によれば、各種機関に寄託された分譲可能な枯草菌類の各種の菌株を使用できる。 さらに詳しくは、枯草菌MS108(rec-、Lis-、1eu-)を使用し、形質転換物質を適当な培地(たとえばVY+クロラムフェニコール)で選択した。 ついで、(+)のクローンをM9及びMB培地のプレート上及び液体培地中、温度約37℃で16時間培養した。 その後、培養基及び細胞抽出物中のイソアミラーゼを、Yokobayashi A.らの方法(「ビオシミカ・エ・ビオ・フィジアクタ(Biochim.Biophys.Acta)」212、458-469(1970))によって定量した。 その結果によれば、これら微生物は、酵素イソアミラーゼを発現できるだけでなく、元の菌株(シュードモナスSMPI)によって得られるものに匹敵する量で分泌できる。 さらに、シュードモナスSMPIの場合、インキュベーション後約72-120時間でイソアミラーゼの最適生産に達するが、枯草菌(pSM290)に関しては16時間にすぎない。 ハイブリッドプラスミドpSM257(大腸菌)71/18(pSM257)及び菌株シュードモナスSMPIについては1987年7月24日にアメリカン・タイプ・カルチャー・センターに寄託してあり、寄託番号はそれぞれATCC67474及びATCC53651である。 以下の実施例は本発明を限定することなく説明するものである。 実施例1 シュードモナスSMPIから染色体DNAの抽出 HSM発酵培養基(マルトース20g/l、グルタミン酸Na4g/l、(NH4)2HPO4 1.5g/l、KH2PO4 1g/l、MgSO4・7H2O 0.5g/l、FeCl3・6H2O 0.1g/l、MnCl2・4H2O 0.1g/l及びNaCl 0.1g/l;pH5.5)100mlに菌株シュードモナスSMPIを接種し、撹拌しながら(220rpm)、30℃に5日間維持した。その後、遠心分離機Sorvall RC-5BモデルSS34において4℃で遠沈して(10分、5000rpm)、細胞を培養基から分離し、25%ショ糖、100mM NaCl及び50mM Tris-HCl(pH7.5)の溶液で洗浄し(2×120ml、前記と同じ条件下で遠心分離し、リゾチーム(SIGMA)1mg/mlを含有する緩衝液(100mM EDTA及び50mM NaCl;pH6.9)10ml中に再度懸濁させた。得られた懸濁液を穏やかに撹拌しながら37℃に30分間維持し、ついで10%SDS(硫酸ドデシルナトリウム)1mlと混合し、60℃に10分間維持し、1×SSC(1×SSC=0.15M NaCl及び15mMクェン酸ナトリウム)中、37℃で30分間予じめインキュベートしたプロナーゼ1mg/mlと混合し、37℃に2時間維持した。NaClを添加して最終濃度1Mとした後、冷たい(-20℃)エタノール2又は3容でDNAを沈殿させ、ガラス棒で集め、0.l×SSC 10ml中に再度懸濁させた。この懸濁液を穏やかに撹拌しながら常温(20-25℃)に1夜維持し、RNAse(10μg/mlを添加した後、37℃に30分間維持した。溶液の塩濃度をl×SSCとした。タンパク質をフェノール(1容)で抽出した後、該溶液にイソプロパノールを滴加することによってDNAを沈殿させ、穏やかに撹拌しながら常温に維持した。 ついで、遠心分離してDNAを回収し、0.1×SSC1mlに再度懸濁させた。 染色体DNAの量(分光光度計Perkin-Elmer 515を使用し、OD 260における分光測光によって評価)は0.645mg/mlであった。 実施例2 イソアミラーゼ遺伝子のクローニング a)EcoRIおけるシュードモナスSMPIゲノムバンクの調製 前記実施例1に記載の如くして得られた染色体DNA80μgを緩衝液(100mMTris-HCl、50mM NaCl及び10mM MgCl2;pH7.5)800μlに懸濁させ、酵素EcoRI(BRL)375単位(U)の存在下、370℃で2.5時間インキュベートした。 ついで、DNA混合物をショ糖グラディエント(10-40%)に負荷し、BecKmanSW28ローターにおいて20℃で遠心分離した(20時間、25000rpm)。 その後、グラディエントをフラクションに分け、各フラクションの一部を0.7%アガロース上、20V、1夜の条件下における電気泳動によって分析して所望のサイズ(3000-4000bp)を有するフラグメントを含有するフラクションを同定した。これらフラクションを集め、エタノールにより-20℃でDNAを沈殿させ、12000rpmで15分間遠沈して分離した。ついで、EcoRIにより予じめ消化した大腸菌からのプラスミドpUC12にDNAを挿入した。 pUC12(2800bp)7μgを、上述の組成を有する反応混合物70μ4中、EcoRI(BRL)10Uにより37℃で1時間消化した。 ついで、プラスミドDNAを-20℃でエタノールによって沈殿させ、遠心分離機Eppendorfにおいて4℃で遠沈して(15分間、12000rpm)分離し、TE緩衝液(10mM Tris-HCl(pH8.0)及び1mM EDTA)50μl中に再度懸濁させ、酵素CIP(仔ウシの腸内ホスファーゼ)(Boehringer)1Uにより37℃で30分間処理した。 この溶液にH2O 40μl、10×STE(100mM Tris-HCl、lmM NaCl、10mM EDTA;pH8)10μ4及び10%硫酸ドデシルナトリウム(SDS)5μlを添加することによって酵素反応を停止させた。 前述の如くして沈殿させたプラスミド2.6μ9を、3000-4000bpDNAフラグメントを含有するグラディエントからの混合物1.3μgと共に、T4 DNAリガーゼ(Boehringer)20Uの存在下、緩衝液(66mM Tris-HCl、1mM ATP、10mM MgCl2及び10mMジチオトレイトール;pH7.6)130μ4(最終容量)中、14℃で12時間インキュベートした。 リガーゼ混合物2μlずつを使用し、50mM CaCl2による処理(Mandel M及びHiga「J.Mol.Biol.」53、154(1970))によってコンピテントとした大腸菌71/18細胞(Miller J.H.「エキスペリメンツ・イン・モレキュラー・ジェネティックス(Experiments in Molecular Genetics)」Corld Spring Lab発行(1972))300μ4を形質転換させた。 アンピシリン50μ9/l、IPTG(イソプロピルβ-D-チオガラクトピラノシド)0.05mM及び0.2%X-Gal(5-ブロモ-4-クロロ-3-ヨードリル-D-ガラクトピラノシド)を添加して選択的とした2XYT培地(16g/l Bacto-Tryptone(DIFCO)、10g/l Bacto-Yeast Extract(DIFCO)及び10g/l NaCl)に細胞を接種し、恒温室において37℃で12時間インキュベートすることによって形質転換体を選別した。 リガーゼ混合物全量から、組換えコロニー6000個を得た。 アンピシリン50μg/mlを含有するLuria寒天培地(Bacto-Tryptone(DIFCO)、59/l Bacto-Yeast Extract(DIFCO)及び59/l NaCl)のプレート上で、コロニーを100個の群に移した。 b)Sau3AにおけるシュードモナスSMPIのゲノムバンクの調製 シュードモナスSMPIの染色体DNA78μgを、反応緩衝液(6mM Tris-HCl(pH7.5)、50mM NaCl及び 5mM MgCl2)100μl中、37℃、30分間で酵素Sau3A(BRL)16Uにより部分的に消化した。 このようにして消化したDNA混合物をショ糖グラディェント上に負荷し、3000ないし4000bpのDNAフラグメントを含有するフラクションを寒天ゲル上での電気泳動によって同定した。操作条件は上記a)のものと同じである。 反応混合物(10mM Tris-HCl(pH8.0)、100mMNaCl 及び 5mM MgCl2)70μl中、37℃、2時間で酵素MamHI(BRL)50UによってpUC127μgを消化した。 ついで、プラスミドDNAを-20℃においてエタノールで沈殿させ、遠心分離し、前記a)の如く、再環化を防止するため酵素CIP(仔ウシの腸内ホスファターゼ)で処理した。DNA160ngを、グラディエントから得られた3000-4000bpフラグメントを含有する混合物80ngと共に、T4 DNAリガーゼ10Uの存在下、反応混合物100μl中、4℃において18時間インキュベートした。 リガーゼ混合物2μlを上述の方法によってコンピテントした大腸菌71/18細胞300μlの形質転換に使用し、2xYT寒天培地上に置き、37℃で12時間インキュベートした。 リガーゼ混合物全体から組換えコロニー6300個が得られた。 アンピシリン50μg/mlを含有するLuria寒天培地(Bacto-Tryptone、5g/l Bacto-Yeast Extract、5g/l NaCl)のプレート上で、コロニーを100個の群に移した。 c)EcoRI及びSau3Aゲノムバンクの直接発現によるスクリーニング EcoRI及びSau3Aゲノムバンクから得たコロニーを、レプリカ平板法(HayesW.「Thegeneticsof bacteria and their viruses」p187、Wiley発行、1968年)によって、M9+グルコース最小培地(6g/l Na2HPO4、3g/l KH2PO4、0.5g/lNaCl、1g/l NH4Cl、2mM MgSO4、0.1mM CaCl2、0.2%グルコース、0.5%寒天及び1%アミロペクチン;pH6.0)のプレート上に移し、37℃で48時間インキュベートした。 ついで、ヨウ素フレーク2g、KI 1g、EtOH(95%)25ml、H2O 75mlの組成を有する溶液(HaradaT.ら「APPl.microbiol.」28、336(1974))を使用して、コロニーをヨウ素蒸気に1-2分間さらした。EcoRIゲノムバンクからのコロニーは(-)の結果を示したが、Sau3Aゲノムバンクからの2つのコロニー(コロニー9及び17と称する)は、同じ条件下でシュードモナスSMPIを生育させる際に観察されたものと同一のアミロペクチン減成リング(第1図)を示した。これは、これらコロニーがイソアミラーゼを生産できることを示し、従って、コロニー内に上記酵素をコードづけする遺伝子が存在することを示す。 形質転換していない大腸菌71/18細胞を、コントロールとして、M9+アミロペクチン最小培地上、pH6.0、37℃で48時間生育させ、ヨウ素蒸気で処理したところ、減成リングを示さなかった。 さらに、最小培地において他のpH値で生育させた場合、pH>6.0ではコロニー9及び17が減成リングを示さないことがわかった。 b)(+)コロニーの制限酵素による分析 コロニー9及び17中に存在する組換えプラスミドを大量抽出によって単離し、制限酵素PstI、EcoRI、HindIII、SstI、SmaI、BamHI、XbaI及びSalIによって処理した後、0.8%アガロースゲル上、100V、2時間での電気泳動によって分析した。 コロニー9から単離したプラスミドpSM257は約3200bpの挿入体(EcoRI部位、BamHI部位及びSstI部位を含有しており、その正確な位置を第2図に示す)を含有していた。コロニー17から単離したプラスミドpSM258は、プラスミドpSM257と同じ制限部位を含有する約3000bpの挿入体を有していた。 このプラスミドの制限地図を第3図に示す。 ついで、これら2種類のプラスミドをSau3A及びHpaIIIの如き2種類の酵素(頻繁に切断する)で消化し、同じ酵素で処理したプラスミドpUC12及び分子量マーカー(Boehringer)と比較した。 得られた消化ハイブリッドのポリアクリルアミドでの分析では、いずれの場合とも同じではあるが、pUC12について得られたものとは異なる電気泳動挙動を示した(第4図)。 e)ウエスタン-ブロットによる分析 コロニー9及び17から得られた細胞をM9+アミロペクチン培地(pH6)のプレートから採取し、STS緩衝液(125mM TriS-HCl、3%2-メルカプトエタノール、3%硫酸ドデシルナトリウム及び20%グリセリン;pH6.8)10μlに溶解させた。 ついで、溶液を、不連続ポリアクリルアミド-STSゲル(Hames B.D.「Gel Electrophoresis of Proteins」290、IRL Press発行、1981年)に負荷し、125V、2時間で展開した。 タンパク質を、Parker R.G.らの方法(「MethodsEnzymology」65、358(1980))によって、ゲルから低融点ニトロセルロースフィルター上に移した。 同時に、混合物30μl中、25℃、1.5時間で、M13mp82μ9を制限酵素SmaI10Uで消化した。 リガーゼ混合物50μl中、T4 DNAリガーゼ1Uの存在下、23℃、18時間で、各フラグメント10ngをM13mp8ファージDNA 200ngと結合させた。 リガーゼ混合物全体を大腸菌71/18のコンピテント細胞の形質転換に使用し、L寒天プレート上で組換えコロニーを選別した。 ハイブリッドファージベクターを含有するコロニーを分析に供し、制限酵素によって適当に切断することによりフラグメントの配向を決定した。 たとえば1900bpフラグメントを有するハイブリッドベクターを制限酵素EcoRI(フラグメント及びベクターにおいて、フラグメントの極近辺で対称的に切断する)で消化した場合、配向によって、300bp又は1600bpのフラグメントを生成した。同様に、1300bpを有するプラスミドを酵素SstI及びHindIIIで消化した場合、Schull 45μmフラグメントを得た後、Towbin H.らの開示に従って(「PNAS USA」Vol.76、4350-4354(1979))、ペルオキシダーゼと共役せしめた抗-イソアミラーゼ抗体及びウサギ抗-IgG抗体によってフィルターを処理した。 結果(第5図に示す)は、(+)の反応、すなわちタンパク質と抗-イソアミラーゼ抗体との特異な反応を示した。 実施例3 M13mp8における約3200pb染色体DNAフラグメントのクローニング及びその配列決定 プラスミドpSM257 5.2μgを、酵素SmaI(BRL)10Uを含有する緩衝液20μl中、25℃で1時間消化し、反応液の容量を15μlとした後、BamHI(BRL)10Uによって37℃で1時間消化した。プラスミドpSM2572.6μgを、緩衝液50μl中、37℃、2時間で、BamHI及びXbaI(BRL)それぞれ10Uによって消化した。 65℃で10分間処理することによって酵素反応を停止し、得られたDNAフラグメントを酵素DNAポリメラーゼI(ラージフラグメント又はKlenowフラグメント)2Uで処理して、その端部を平らにさせた。 ついで、アガロースゲル上での電気泳動によって、SmaI-BamHIフラグメント(約1900bp)及びBamHI-XbaIフラグメント(約1300bp)を分離した。その後、これらのフラグメントからは、配向に応じて、それぞれ300bp及び1600bpのセグメント、500bp及び800bpのセグメントが得られた。2種類のフラグメントを含有するプラスミドをα、β、γ及びδと名付けた(第6図)。 つづいて、Messingの方法(「Methods in Enzymology」101、20(1983))によって逆方向の配向の確認を行った。 ついで、Straussらによって開示された連続プライマー法(「Anal,Biochem.」154、353(1986))を使用し、Sauger F.らの方法(「P.N.A.S.」74、5463(1977))によってシングルら線を配列決定した。プライマーとして使用したオリゴヌクレオチドはDNA自動合成装置システム1プラス(Beckman)によって合成したものである。 配列決定反応を、トレーサーとしてα[32p]dATPを含有する「DNAシーケンシングシステム(NEN)」を使用し、常法に従って実施した。 電気泳動による分離に使用した装置は、Macrophorシークケシングシステム(LKB)である。 イソアミラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列に関連するいくつかの問題がある(ゲル上各フラグメントが同様の移動を生ずる)。これらは、MizusawaS.らによって開示された方法(「Nucleic AcidsReser.」14(3)、1319(1986))に従い、グアノシン(すなわち、7位に窒素原子がなく、従って、近接するヌクレオチドと2次構造を形成しうるヌクレオチドの能力を大いに低減させるC7デアザdGTP)を使用することによって回避される。配列の複雑な領域を明確にするための他の方法は、DNAポリメラーゼI(ラージフラグメント)の代りに酵素インバース・トラスクリプターゼを使用することである。 配列決定の結果、シュードモナスSMPIの染色体DNAのフラグメントは3335bpを含有し、酵素をコードづけする領域は2328bp(アミノ酸776個に相当する)を含有していた(第7-8図)。 第9図は、遺伝子調節配列を含むイソアミラーゼの構造遺伝子のヌクレオチド配列を示す。 ヌクレオチド組成(その配列を第9図に示す)から推測されるアミノ酸組成を下記第1表に示す(芳香族及び飽和脂肪族残基30%が存在するため著しい疎水特性を示す)。 実施例4 大腸菌における発現及び分泌用pSM289組換えDNA分子の構成 A)プラスミドpSM221の構成 プラスミドpUC125μgを、制限酵素EcoRI及びHindIII(BRL)によって、該酵素の供給者が指示する方法に従って消化し、該プラスミドからポリリンカーを単離し、採取した。 EcoRI-HindIIIフラグメントを含有しないプラスミドベクターを、18塩基対を含有しかつ下記配列を有する合成オリゴヌクレオチド(末端にEcoRI制限部位 及びHindIII制限部位を有し、中間にSphI制限部位及びAvaI制限部位を有する)とりガーゼによって結合させた。 B)プラスミドpSM262の構成 プラスミドpSM2575μgを、制限酵素SphI及びSmaI(BRL)20Uによって、該酵素の供給者が指示する方法に従って消化した。 消化混合物を、酵素反応を停止するため65℃で10分間処理した後、5%アクリルアミドゲル上に負荷し、イソアミラーゼ遺伝子を含有する約2400bpのSphI-SmaIフラグメントを溶出した。 ついで、予じめ酵素AvaIで消化し、挿入体のSmaI末端に適合するようにDNAポリメラーゼIのKlenowフラグメントで処理し、最後に制限酵素SphIで処理したプラスミドpSM221(1μg)に、上記フラグメント1μgを挿入した。 SphI-SmaIフラグメントと上記の如く消化したプラスミドpSM221との間のリガーゼ反応を、リガーゼ緩衝液(50μ4)中、T4 DNAリガーゼ1Uの存在下、14℃、18時間で実施した。反応終了後、リガーゼ混合物10μlを使用して、50mMCaCl2での処理によってコンピテントとした大腸菌71/18細胞200μlの形質転換を行った。 50mg/lアンピシリン、0.05mM IPTG(イソプロピルD-チオガラクトピラノシド)及び0.02%X-gal(5-ブロモ-4-クロロ-3-ヨードリル-D-ガラクトピラノシド)を添加することによって選択的なものとした2xYT培地(16g/l Bactotryptone、10g/l Bacto Yeast Extract、1g/l NaCl)上に展開し、恒温室において37℃で12時間インキュベートした。組換えプラスミド[BirnboimH.C及びDoly J.の方法(「NucleicAcids Res.」7、1515(1979)によって抽出]を制限酵素によって分析した。 良好な割合のコロニーが予想したように挿入された所望のフラグメントを含有することが確認された。 これらプラスミドの1つ(pSM262)は第10図に示す制限地図によって特徴づけ られる。 C)プラスミドpSM289の構成 プラスミド pSM257 10μgを制限酵素NarI(BRL)40Uによって37℃、1時間で消化し、特殊な緩衝液100μl(最終容量)中、30分間、常温(20-25℃)においてKlenow DNAポリメラーゼIと反応させて、その端部を平らにした。 ついで、混合物を37℃、1時間で制限酵素BamHI 40Uによって消化し、5%アクリルアミドゲル上に負荷し、リーダーペプチド及びイソアミラーゼ構造遺伝子の最初のヌクレオチド390個を含有する511bp NarI-BamHIフラグメント(a)を溶出した。 残りの部分、すなわち遺伝子の2010bp(b)を、プラスミドpSM262(5μg)を制限酵素BamHI 20U及びHindIII(BRL)20Uで消化することによって得。 同時に、ベクターpUC12(c)5μgを、まず制限酵素SmaI 20Uによって該酵素の供給者が指示する緩衝液中、25℃、1時間で消化し、NaClを添加して塩の濃度を最終濃度50mMに変化させた後、制限酵素HindIII 20Uにより37℃、1時間で消化した。 リガーゼ緩衝液50μl(最終濃度)中、T4 DNAリガーゼ1Uの存在下で、ベクター(c)100ng、挿入体(b)100ng及び挿入体(a)35ngを14℃において1夜反応させた。 反応終了後、リガーゼ反応混合物10ngを使用して、Hanahanによって開示されたように(「J.Mol.Biol.」166、557-850(1983))塩化ルビジウムによってコンピテントとした大腸菌DH1細胞[F-rec Al、emd Al、gry A96、thi-1、sup E44、hsd R17(r-n、m-k)]100μlの形質転換を行った。 ついで、2xYT培地のプレート上(37℃、18時間)で形質転換体を選別した。形質転換クローンから組換えプラスミドを抽出した。制限酵素による分析では、予想したパターンを示した。 この組換えプラスミド(pSM289)の制限地図を第11図に示す。 実施例5 枯草菌における発現及び分泌用pSM290組換えDNA分子の構成 A)プラスミドpSM268の構成 pSM214 ATCC67320 3容(各々1μg)を37℃、1時間でBglII 5U及びBamHI 5Uで消化した。 得られたDNAフラグメントをヌクレアーゼBal31 0.3Uと23℃において、2、3及び4分間インキュベートすることによってその端を侵食させ、つづいて標準条件下、DNAポリメラーゼI-ラージフラグメントで修繕した。 得られた各種の鎖長を有する分子を、14℃、1夜でのT4 DNAリガーゼによる処理によって再環化させた。 ついで、リガーゼ反応混合物を使用し、DubnauD.及びDavidoff-Abelson R.によって開示された方法(「J.Mol.Biol.」56、209(1971))によりコンピテントとした枯草菌の菌株SMS108(rec-,his-,leu-)を形質転換させた。 形質転換体を、クロラムフェニコール5μg/mlを含有するVYプレート(25g/l Veal InfusionBroth,5g/l Yeast Extract)上で選別した。 得られたクローンから抽出したプラスミドを各種制限酵素によって分析した。 組換えプラスミド(pSM268)は、枯草菌の複製開始点及び抗生物質クロラムフェニコールに対する耐性をコントロールする遺伝子(CAT遺伝子)を含有するものの最小(約5000bp)のものであった。 該プラスミド10μgを、制限酵素EcoRI及びHindIII各4Uにより、370C、1時間で消化した。 65℃に10分間維持して酵素反応を停止させた後、消化混合物を低融点アガロースゲル上に負荷し、枯草菌の複製開始点及びCAT遺伝子を含有するEcoRI-HindIIIフラグメント(4200bp)を溶出し、「Gene clean」システム(VogelsteinB.及びGillespieD.「P.N.A.S.」76、615(1979))によって精製した。 同時に、プラスミドpSM289(5μg)を、緩衝剤混合物20μβ中、37℃、1時間でHindIII 10Uによって消化し、得られた切断生成物をアガロースゲル上での電気泳動によってチェックした後、37℃、15分間でEcoRI 5Uによって消化した。 ついで、アガロースゲル上での電気泳動及びエレクトロ溶出によって、消化混合物からDNAのEcoRI-HindIIIフラグメント(約2400bp)を単離した。 B)pSM290の構成 4200bpフラグメント500ng及び2400bpフラグメント1μgを、リゲーション緩衝液15μl中、T4 DNAリガーゼ1Uの存在下、150C、1夜の条件で結合させた。該反応混合物300ngを使用して枯草菌SMS108のコンピテント細胞100μlを形質転換させ、クロラムフェニコールを混合したVY培地上で形質転換体を選別した。 得られたクローンからプラスミドDNAを抽出し、制限酵素を使用して分析した。 分析したプラスミドのうち2つが予想した構造のイソアミラーゼ遺伝子を含有するEcoRI-HindIIIフラグメントを有していることが確認された。 これらのプラスミドの1つ(pSM290)は第12図に示す制限地図によって特徴づけられる。 「pucシーケンシングキット」(Boehringer)を使用して、プラスミドpSM290の正確な構成をチェックするヌクレオチド配列を得た。 実施例6 イソアミラーゼの発現及び分泌 A)プレート上でのイソアミラーゼ活性の検定 Haradaによって開示されたイソアミラーゼ活性を証明する方法(Sugimoto T.ら「Appl.Microbiol.」28、336(1974))を変形して、各種組換えクローンからイソアミラーゼを生産するクローンをピックアップした。 プラスミドpSM289を含有する大腸菌DH1細胞を、最小培地M9+0.2%グルコース及び/又はマルトース(6g/l Na2HPO4、3g/l KH2PO4、0.5g/l NaCl、1g/l NH4Cl、2mM MgSO4、0.1mM CaCl2、1.5%寒天)+1%アミロペクチン(基質及びインデューサーとして)及び50μg/mlアンピシリンで生育させた。培地のpHをHClによって6.8とした。 プラスミドpSM290によって形質転換させた枯草菌SMS108の細胞を、1%アミロペクチン、5μg/mlクロラムフェニコール及び50μg/ml Nisidina及びロイシンを混合したM9培地+0.2%グルコース及び/又はマルトースで生育させた。 枯草菌に関して使用した他の培地は、0.2%グルコース及び/又はマルトースを含有するMB培地(2g/l(NH4)2SO4、18.3g/l K2HPO4・3H2O、6g/l KH2PO4、1g/lクエン酸Na・2H2O、0.2g/l MgSO4・7H2O)+1%アミロペクチン、1.5%寒天、5μg/mlクロラムフェニコール及び50μg/ml上述のアミノ酸である。 これら培地のpHを6.0に調整した。 コロニーを37℃で約24時間生育させ、ついでヨウ素蒸気(ヨウ素フレーク2g、KI 1g、エタノール(95%)25ml及び水25ml)にさらした。 2分間さらした後、イソアミラーゼを生産する大腸菌DH2(pSM289)のコロニーは目立つ青色のリングを示し、枯草菌SMS108(pSM290)のクローンは、上記菌株によって生産されたα-アミラーゼによる干渉のため、より淡いリングを示した。 B)液中におけるイソアミラーゼ活性の検定 大腸菌DH2(pSM289)及び枯草菌SMS108(pSM290)の細胞を、それぞれM9培地50ml、M9培地及びMB培地各50mlに接種し、穏やかに撹拌しながら37℃で16時間培養した。 ついで、大腸菌細胞から周辺質を抽出し、大腸菌及び枯草菌から全タンパク質を抽出した。 実際には、Koshland及びBotsteinの方法(「Cell」20(3)、749-780(1980))に従い、下記の如く操作して、周辺質タンパク質を抽出した。細菌培養基2mlをEppendorf遠心分離において、1200rpmで30秒間遠心分離した。 ついで、ペレットを回収し、30mM酢酸塩緩衝液(pH4)及び50mMNaClで2回洗浄し、上述の如く遠心分離し、最後に20%ショ糖、30mM酢酸塩緩衝液(pH4)及び1mM EDTAの溶液1ml中に懸濁させた。 得られた懸濁液を常温(20-25℃)に5分間維持し、一定時間毎に撹拌し、4℃で5分間遠心分離し、最後に4℃に維持した蒸留水1ml中に懸濁させた。 得られた懸濁液を氷浴中で10分間インキュベートし、4℃、3000rpmで10分間遠心分離し、上澄み液中に所望の周辺質フラクションを得た。 使用した溶液のいずれにも、プロテアーゼ阻害剤、すなわちPMSF(塩化フェニル-メチル-スルホニル)及びEDTAを最終濃度それぞれ1mM及び5mMで含有する。 このフラクション400μl(必要であれば、AMYCONシステムによって濃縮する)をイソアミラーゼ活性の検定に使用した。 一方、各細菌培養基10mlを4℃、5000rpmで5分間遠心分離することによって全タンパク質を抽出した。 得られた細胞ペレットを、10mM酢酸塩緩衝液(pH4)、50mM NaCl、1mM PMSF及び5mM EDTAの溶液1容によって2回洗浄し、上述の如く遠心分離した。 ついで、ペレットを、1mM PMSFを含有する10mM酢酸塩緩衝液(pH4)5ml中に再び懸濁させた。 細胞懸濁液をFrenchi-press(AMINCO)により2500psiで処理して細菌の細胞壁を破壊し、細胞成分を放出させた。 枯草菌細胞の場合、Frenchi-pressによる細胞融解前に、リゾチーム5mg/mlと37℃で10分間インキュベートして細胞壁の抵抗性を低減させた。 ついで、上澄み液、細胞抽出物及び周辺質抽出物中におけるイソアミラーゼ活性を、YokobayashiA.らによって記載された方法(「B.B.A.」212、458-469(1970))に従って測定した。 実際には、40℃に維持した1%(w/v)アミロペクチン(SIGMA)水溶液2mlを、酢酸塩緩衝液(pH4)400μl及び被検定溶液400μlと混合した。 得られた混合物を40℃に1時間維持し、反応開始時(T0)及び反応終了時(T1)に分析用サンプル(400μl)を採取した。 比色反応及び分光光度計による読み取りを行う前に、サンプルをEppendorf遠心分離機において常温、1000rpmで30秒間遠心分離して、吸収の測定を妨害する懸濁物質を除去した。 遠心分離後、サンプルを、ヨウ素試薬(0.2%(w/v)I、2%(w/v)KI及び0.2%(w/v)H2SO4を水で20mlとしたもの)400μlと混合し、常温に約15分間維持した。 分光光度計Perkin-Elmer 551Sにおいて、上述の如く調製したブランク(サンプルの代わりに酢酸塩緩衝液を使用したもの)に対する610nmの吸収を測定した。 純粋なイソアミラーゼを使用して、(+)のコントロールも調製した。 用語「イソアミラーゼ単位」は、610nmにおける分光光度計の読みを40℃、 1時間で0.01 OD上昇させるイソアミラーゼの量をいう。 大腸菌及び枯草菌に関して得られた結果をそれぞれ第2表及び第3表に示す。 第3表のデータによって示されるように、枯草菌は、プラスミドpSM290によって形質転換された際には、元のシュードモナスSMPIのものに匹敵する量でイソアミラーゼを合成できるだけでなく、特に培養基内に該酵素を分泌できる。さらに、該酵素の最適生産レベルに関し、シュードモナスSMPIでは5日であるのに対し、枯草菌(pSM290)ではわずか16時間で最適生産レベルに達する。 【図面の簡単な説明】 第1図は形質転換されたクローンを選別する際の状態を示す図、第2図はプラスミドpSM257の制限地図を示す図、第3図はプラスミドpSM258の制限地図を示す図、第4図はハイブリッドプラスミドの電気泳動挙動による比較分析の結果を示す写真、第5図はイソアミラーゼの存在に関する分析の結果を示す写真、第6図はベクターM13mp8におけるプラスミドpSM257から得られたSmal-BamHIフラグメント(1900bp)及びBamHI-XbaIフラグメント(1300bp)のクローニングの進行を表すダイアグラム、第7図、第7(A)図及び第7(B)図はイソアミラーゼ遺伝子を含有するシュードモナスSMPIから得られた染色体DNAの3335bpヌクレオチド配列を示す図、第8図、第8(A)図及び第8(B)図はイソアミラーゼをコードづけする構造遺伝子のヌクレオチド配列及び該ヌクレオチド配列から誘導される酵素のアミノ酸配列を表す図、第9図、第9(A)図及び第9(B)図はイソアミラーゼの構造遺伝子及び調節及び分泌配列を含有するシュードモナスSMPIから得られた染色体DNAのフラグメントのヌクレオチド配列を表す図、第10図はプラスミドpSM262の制限地図を示す図、第11図は大腸菌における発現及び分泌用のハイブリッドプラスミドpSM289の制限地図を示す図、及び第12図は枯草菌における発現及び分泌用のハイブリッドプラスミドpSM290の制限地図を示す図である。 |
訂正の要旨 |
(3)訂正の内容 ▲1▼訂正事項a 特許請求の範囲の請求項20中の 「請求項6〜9記載のポリペプチドの製法において、」を、不明りょうな記載の釈明を目的として削除する。 ▲2▼訂正事項b 特許請求の範囲の減縮を目的として請求項24乃至26を削除する。 (4)請求の原因 ▲1▼上記訂正事項aについて: 請求項20は、請求項13〜16のいずれかに記載された組換えDNA分子を利用して、これら組換えDNA分子が有する遺伝子情報を、 宿主微生物を介してポリペプチドとして発現させる方法に係るものである。この請求項20における訂正は、この点を明確にすることにより取消理由IIの解消を目的とするものであり、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明りょうでない記載の釈明に該当する。 ▲2▼上記訂正事項bについて: 請求項24乃至26の削除は、取消理由IIIの解消を目的とするものであり、特許法第120条の4第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当する。 ▲3▼これら訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。さらに、これら訂正の結果、取消理由II及びIIIで指摘された本件特許の明細書の記載はすべて明りょうになっており、特許法第36条第3項及び第4項の要件を十分に充足するものであることが明白になったものと確信する。従って、上記訂正事項a及びbは特許法第120条の4第3項で準用する第126条第4項の規定にも適合するである。 |
異議決定日 | 2000-01-28 |
出願番号 | 特願昭63-194700 |
審決分類 |
P
1
652・
531-
YA
(C12N)
P 1 652・ 532- YA (C12N) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 鵜飼 健 |
特許庁審判長 |
徳廣 正道 |
特許庁審判官 |
佐伯 裕子 大高 とし子 |
登録日 | 1998-05-08 |
登録番号 | 特許第2777805号(P2777805) |
権利者 | エニーケム・シンテシース・エセ・ピ・ア |
発明の名称 | イソアミラーゼの構造遺伝子 |
代理人 | 長南 満輝男 |
復代理人 | 朝倉 勝三 |
復代理人 | 朝倉 勝三 |
代理人 | 長南 満輝男 |