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審決分類 |
審判 全部申し立て 出願日、優先日、請求日 A01C 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 A01C 審判 全部申し立て 発明同一 A01C |
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管理番号 | 1016711 |
異議申立番号 | 異議1999-71550 |
総通号数 | 12 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1998-02-03 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-04-22 |
確定日 | 2000-03-02 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2812325号「苗植付装置」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2812325号の特許を維持する。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件特許第2812325号発明は、昭和59年12月3日に出願された特願昭59-256171号出願の一部を新たな特許出願(特願平1-85088号)とし、この特許出願の一部を新たな特許出願(特願平6-8583号)とし、さらに、この出願の一部を平成9年3月10日に新たな特許出願としたものであり、その特許は平成10年8月7日に設定登録された。 II.本件発明 本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの、 「駆動回転される回転ケース22の一側方に突出し回転ケース22の回転にともなって回転する複数の植付軸31aのそれぞれに苗植付具34を取付けて該苗植付具34が回転ケース22の回転により圃場に苗を植付けるよう作動する構成とした苗植付装置において、 苗植付具34に、回転ケース22に対して固定され苗植付具34のケース本体35内に配置された苗押出し作動カム36によって苗植付時に苗を圃場に押し出すよう作動する苗押出し体38aを設け、 前記苗押出し作動カム36の回転ケース22への固定を、苗押出し作動カム36のカム軸32を回転ケース22側に延出して該カム軸32を回転ケース22の苗植付具34取付け側とは反対側で固定する構成とし、 苗植付具34のケース本体35の植付軸31aへの取付けを、植付軸31aと一体回転するよう設けたフランジ部60bにケース本体35を固定して取付け、且つ、該フランジ部60bの回転ケース22側とは反対側にケース本体35を取付ける構成としたことを特徴とする苗植付装置。」にある。 III.特許異議申立てについて 1、申立ての理由の概要 異議申立人三菱農機株式会社は、下記の甲第1ないし4号証及び参考資料1ないし3を提示し、本件発明の特許は、次の理由により取り消されるべきである旨主張する。 (1)平成9年4月2日付け及び平成10年4月27日付けの補正は明細書の要旨を変更するものであるから、本件発明の出願日は、改正前特許法第40条の規定により上記補正について手続補正書を提出した時である平成9年4月2日とみなされるべきである。 してみれば、本件発明は、甲第3号証の1又は甲第3号証の2に記載された発明と同一、若しくは甲第3号証の1又は甲第3号証の2に記載された発明から当業者が容易に想到できるものであるから、その特許は特許法第29条の規定に違反してされたものである。 (2)上記手続補正が明細書の要旨を変更するものでないとしても、本件発明は、参考資料1ないし3を考慮すると、甲第4号証の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と実質的に同一であるから、その特許は特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。 (3)本件発明は、その明細書の記載が不備であるから、その特許は特許法第36条に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。 記 甲第1号証:特開昭61-135512号公報(本件の原出願である特願昭59-256171号の公開公報) 甲第2号証:特願平9-97851号(本件)の出願時の明細書及び図面 甲第3号証の1:特公平4-35123号公報 甲第3号証の2:実公平3-35055号公報 甲第4号証:実願昭58-146618号(実開昭60-55314号のマイクロフイルム参照) 参考資料1:実開昭59-75303号公報 参考資料2:実開昭59-102406号公報 参考資料3:実開昭59-165201号公報 IV.当審の判断 1、上記理由(1)について 異議申立人は、平成9年4月2日付け及び平成10年4月27日付けの手続補正書で補正された、本件発明の「苗植付具34のケース本体35の植付軸31aへの取付けを、植付軸31aと一体回転するよう設けたフランジ部60bにケース本体35を固定して取付け、且つ、該フランジ部60bの回転ケース22側とは反対側にケース本体35を取付ける構成としたこと」によって奏する「苗植付具34をフランジ部60bの外側方から組付け取外しできて苗植付装置の組立て分解が容易なものとなる。」及び「回転ケース22に対して苗植付具34が外側方に大きく突出させないで取り付けられて、苗植付装置がコンパクトとなる。」という効果は、出願当初の明細書(甲第2号証)に記載されておらず、又図面の記載から自明なことではないから、上記補正は明細書の要旨を変更するものである旨主張している。 しかしながら、甲第2号証の【図5】に示されている実施例の構成では、ボルト61をフランジ部60bの外側方から取り外すことによって「苗植付具34をフランジ部60bの外側方から組付け取外しでき」るものであり、また、「回転ケース22と苗植付具34との間に苗植付具34の植付軸31aへの取付け部位と苗押出し作動カム36の回転ケース22への固定部位が集中」しないで、「回転ケース22に対して苗植付具34が外側方に大きく突出させないで取り付けられて、苗植付装置がコンパクトなものとなる。」という効果を奏することは明らかである。 したがって、上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面の範囲内においてするものであるから、要旨を変更するものでなく適法であり、本件の特許出願は、その補正について手続補正書を提出した時にしたものとみなされるものではない。 そうすると、甲第3号証の1又は2は本件出願日より後に頒布されたものであるから、本件発明が、甲第3号証の1又は甲第3号証の2によって特許を受けることができないものとすることはできない。 2、上記理由(2)について 甲第4号証には、次の発明が記載されていると認められる(括弧内に本件発明が対応している構成部材を記す)。 駆動回転される回転ケース11の一側方に突出し回転ケース11の回転にともなって回転する複数のスリーブ状軸18(植付軸31a)のそれぞれに苗植付具を取付けて該苗植付具が回転ケース11の回転により圃場に苗を植付けるよう作動する構成とした苗植付装置において、苗植付具に、回転ケース11に対して固定され苗植付具の苗植体20(ケース本体35)内に配置されたカム33(苗押出し作動カム36)によって苗植付時に苗を圃場に押し出すよう作動する押出具28(苗押出し体38a)を設け、前記カム33の回転ケース11への固定を、カム33の遊星歯車軸14(カム軸32)を回転ケース11側に延出して該遊星歯車軸14を回転ケース11の苗植付具取付け側とは反対側で固定する構成とし、苗植付具の苗植体20を、スリーブ状軸18に設けたねじ部に苗植体20を螺合することによって取付け、且つ、スリーブ状軸18の回転ケース11側とは反対側に苗植体20を取付ける構成とした苗植付装置。 本件特許発明と甲第4号証に記載された発明とを対比すると、 本件発明では、「苗植付具34のケース本体35の植付軸31aへの取付けを、植付軸31aと一体回転するよう設けたフランジ部60bにケース本体35を固定して取付け、且つ、該フランジ部60bの回転ケース22側とは反対側にケース本体35を取付ける構成」としているのに対し、甲第4号証記載の発明では、苗植付具の苗植体20を、スリーブ状軸18に設けたねじ部に苗植体20を螺合することによって取付けている点で両者は構成が相違する。 上記相違点について検討するに、車輪の取付手段において、回転軸と一体的に回転するよう設けたフランジ部に車輪を外側方から取り付け、取り外しする技術は、参考資料1ないし3に示されるように周知慣用技術であるが、この技術を田植機のケース本体35の植付軸31aへの取付けに適用することは、当業者が適宜行うことのできる設計的事項とはいえないから、本件特許発明が甲第4号証と実質的に同一とすることはできない。 3、上記理由(3)について 異議申立人は、【図5】に示されている本件特許発明の実施例の構成では、ボルト61を回転ケース22と苗植付具34のケース本体35の間で締付けなければならず、また、回転ケース22と苗植付具との間にボルト61の締付作業を行うためのスペースが必要であるから、実施例の構成のものは、「苗植付具34をフランジ部60bの外側方から組付け取外しできて苗植付装置の組立て分解が容易なものとなる。」及び「回転ケース22に対して苗植付具34が外側方に大きく突出させないで取り付けられて、苗植付装置がコンパクトとなる。」という効果を奏するものではなく、本件発明の明細書の記載が不備である旨主張している。 しかしながら、本件発明は「従来、・・・苗植付具を容易に且つ強固に組付けられる構成としたものではなく実用的なものではなかった。また、・・・コンパクトに構成する必要性もある。」という従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、本件発明の実施例のものが、ボルト61を外すことによって「苗植付具34をフランジ部60bの外側方から組付け取外しでき」るものであり、また、「回転ケース22と苗植付具34との間に苗植付具34の植付軸31aへの取付け部位と苗押出し作動カム36の回転ケース22への固定部位が集中」しないので、「回転ケース22に対して苗植付具34が外側方に大きく突出させないで取り付けられて、苗植付装置がコンパクトなものとなる。」という特許明細書記載の効果を奏するものであり、本件発明とその効果の記載に不備があるとは認められない。 したがって、異議申立人の主張は採用できない。 V.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠方法によって、本件発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-12-22 |
出願番号 | 特願平9-97851 |
審決分類 |
P
1
651・
03-
Y
(A01C)
P 1 651・ 536- Y (A01C) P 1 651・ 161- Y (A01C) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 吉田 英一、郡山 順、岩崎 孝治、中村 圭伸、川向 和実 |
特許庁審判長 |
藤井 俊二 |
特許庁審判官 |
吉村 尚 新井 重雄 |
登録日 | 1998-08-07 |
登録番号 | 特許第2812325号(P2812325) |
権利者 | 井関農機株式会社 |
発明の名称 | 苗植付装置 |