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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 C08G
管理番号 1017847
審判番号 審判1998-12384  
総通号数 13 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-08-13 
確定日 2000-07-12 
事件の表示 平成4年特許願第224863号「エポキシ樹脂およびその製造法」拒絶査定に対する審判事件〔平成5年8月31日出願公開、特開平5-222158、平成7年5月24日出願公告、特公平7-47620、発明の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.本願は、昭和58年2月18日に出願された特願昭58-26084号の出願を原出願とする分割出願であって、原審において出願公告(特公平7-47620号)されたところ、3件の特許異議の申立てがあり、そのうち、油化シェルエポキシ株式会社の特許異議の申立ては理由があるものと決定され、その特許異議決定の理由により拒絶査定されたものである。
2.本願発明の要旨は、出願公告後の平成8年6月3日付け、平成11年10月28日付け、平成11年11月19日付け及び平成12年4月27日付けの各手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのもの(以下、それぞれ「本願第1発明」及び「本願第2発明」という。)と認める。
「(請求項1) 一般式


で表されるエポキシ当量約500〜1300の固型ビスフェノールA型エポキシ樹脂であって、α-ジオール基含有量が4.5ミリ当量以下/100gでかつ次の式を満足させるエポキシ樹脂。


w:末端エポキシ基含有量(当量/100g)
x:末端α-ジオール基含有量(当量/100g)
y:末端加水分解性塩素含有量(当量/100g)
z:末端フェノール性水酸基含有量(当量/100g)
(請求項2)加水分解性塩素含有量が0.1%未満、αージオール基含有量が6ミリ当量以下/100gの液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂100重量部に30〜50重量部のビスフェノールAを反応させることを特徴とする、一般式

で表されるエポキシ当量が500〜1300の固型ビスフェノールA型エポキシ樹脂であって、α-ジオール基含有量が4.5ミリ当量以下/100gでかつ次の式を満足させるエポキシ樹脂の製造法。


w:末端エポキシ基含有量(当量/100g)
x:末端α-ジオール基含有量(当量/100g)
y:末端加水分解性塩素含有量(当量/100g)
z:末端フェノール性水酸基含有量(当量/100g)
3.これに対する原査定の理由の概要は、本願請求項1及び2に係る発明は、油化シェルエポキシ株式会社の提示した甲第2号証の実験報告書を参照すると本願出願前頒布された甲第1号証(特開昭51-68553号公報、以下「刊行物1」という。)に記載された発明ということになるから、本願請求項1及び2に係る発明は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない、というものである。
4.よって検討すると、刊行物1には、「公知の方法で得られた、比較的高い、通常2〜0.05重量%の加水分解性塩素含有量をもったビスフェノールAジグリシジルエーテルを・・・(1)・・・アルカリを脱塩化水素化剤として用い、かつ、(2)アルコールと、このアルコールに対して0〜95重量%の芳香族炭化水素とを反応溶媒として用いて脱塩化水素反応せしめることを特徴とする0.03量%以下の極めて低い量の加水分解性塩素を含有したビスフェノールAジグリシジルエーテルの製造法」(特許請求の範囲)についての発明が記載され、「従来において使用されていた芳香族炭化水素類を溶剤として用いて同様の脱塩化水素化を行ったが、当該塩素含有量は、いずれも0.03重量%以下とはなり得ず、また、さらに反応時間を伸ばして反応を進めんとするに至っては重合体の副生が観察された。」(4頁右下欄)ところ、「本発明方法に従えば、このように、目的とする生成物中への副生重合体の混入はなく、短時間で反応を完結せしめることができ、しかも0.03重量%以下という加水分解性塩素含有量の極めて低い、応用特性のすぐれたビスフェノールAジグリシジルエーテルを容易に得ることができる。」(4頁右下欄〜5頁左上欄)と記載されている。
そして「出発原料ビスフェノールAジグリシジルエーテルとこれと反応すべきビスフェノールとの脱塩化水素化反応における加水分解性塩素含有量と反応速度の関係をASTMD-1726に基づく塩素含量が0.20〜0.01重量%までの範囲の内のものについて、(i)ビスフェノールAジグリシジルエーテル/ビスフェノールA(モル比)=3/2 (ii)反応速度:170℃ (iii)触媒及びその量:生成エポキシ樹脂に対して80ppmの水酸化ナトリウム なる反応条件下に行なって、下記第1表の如き結果を得た。」(2頁左下欄)とし、第1表では、ビスフェノールAジグリシジルエーテル中の加水分解性塩素含有量(重量%)が0.01 0.03 0.05 0.20 の各場合についての反応完結時間が示され、この内、同含有量が0.01重量%の場合では、反応完結時間が1時間であったことが記載され、「当該塩素含有量が0.25%より低い場合においても同様に、塩素含有量が低いほど反応が速く進行し完結することが知れる。」と記載されている(2頁右下欄)。
しかしながら、刊行物1には、ビスフェノールAジグリシジルエーテルとビスフェノールAとの反応生成物については、これ以上の記載はなく、したがって、本願第1発明で規定するところの、(x+y+z)/(w+x+y+z)がどの程度の値になるか、あるいはその値をどの程度にすべきかといったことに関しては全く記載されていないといわざるを得ない。
原審においては、特許異議申立人油化シエルエポキシ株式会社が甲第2号証として提出した実験報告書に基づいて本願発明は刊行物1に記載された発明であると判断しているので、以下これについてさらに検討する。
該実験報告書には、刊行物1の実施例4に記載されている方法によりビスフェノールAジグリシジルエーテル(液状エポキシ樹脂)を製造し、それを用い、同刊行物の2頁左下欄に記載されている方法によりこれをビスフェノールAと3/2のモル比で反応させた実験の手順とその結果が詳細に記載されており、同実験は、刊行物1の記載に基づき忠実に実施されたものと認められる。
しかしながら、その実験報告書には、得られた固形エポキシ樹脂のエポキシ当量は863、エポキシ含有量は0.116(当量/100g)、αージオール含有量は0.0035(当量/100g)、加水分解性塩素含有量は0.00029(当量/100g)、フェノール性水酸基含有量は0.0014(当量/100g)であったと記載され、この結果を本願第1発明で規定する(x+y+z)/(w+x+y+z)の式に代入すると、0.043と計算されるから、これは明らかに本願第1発明で規定する範囲外であり、その他、本願第1発明が刊行物1に記載されていたと認めるに足りる根拠は見出せない。
5.したがって、本願第1発明が刊行物1に記載された発明とすることはできない。
また、本願第2発明は、本願第1発明のエポキシ樹脂の製造方法に関するものであるから、本願第1発明と同様刊行物1に記載された発明とすることはできない。
そして、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2000-05-30 
出願番号 特願平4-224863
審決分類 P 1 8・ 113- WY (C08G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石井 あき子松井 佳章冨士 良宏  
特許庁審判長 柿崎 良男
特許庁審判官 船岡 嘉彦
佐野 整博
発明の名称 エポキシ樹脂およびその製造法  
代理人 吉田 俊夫  

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