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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C01B |
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管理番号 | 1018116 |
異議申立番号 | 異議1998-75748 |
総通号数 | 13 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1988-10-20 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-11-25 |
確定日 | 2000-04-26 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2759077号「安定した粉末状赤燐並びにその製造法」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2759077号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 |
理由 |
1、手続の経緯 本件特許第2759077号の請求項1〜5に係る発明は、昭和63年3月28日(優先日、1987年3月17日、ドイツ)に特許出願され、平成10年3月20日にその特許の設定登録がなされたものである。 これに対して、日本化学工業株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、意見書が提出され、再度取消理由通知がなされ、その指定期間内に平成12年3月30日付けで訂正請求が提出されたものである。 2、訂正の適否 2-1、訂正の内容 本件訂正請求書における訂正の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。 すなわち、特許請求の範囲の減縮を目的として、 ア、訂正事項a 請求項1中の「珪素、チタン、クロム、マンガン、ゲルマニウム、ジルコニウム、ニオブ、カドミウム、錫、鉛、ビスマス及び/又はセリウム」を、「珪素、クロム、マンガン、ゲルマニウム、ジルコニウム、ニオブ、カドミウム、錫、鉛、ビスマス及び/又はセリウム」と訂正する。 イ、訂正事項b さらに、明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書中の「珪素、チタン、クロム、マンガン、ゲルマニウム、ジルコニウム、ニオブ、カドミウム、錫、鉛、ビスマス及び/又はセリウム」(特許公報第3頁第5欄第3〜5行)を、「珪素、クロム、マンガン、ゲルマニウム、ジルコニウム、ニオブ、カドミウム、錫、鉛、ビスマス及び/又はセリウム」と訂正する。 2-2、訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張変更の存否 上記訂正事項aは、酸化安定剤の薄層の第1層成分のうちチタンの水酸化物を削除するものであるから、上記訂正事項aは特許請求の範囲の減縮に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではなく、新規事項の追加にも該当しない。 また、上記訂正事項bは特許請求の範囲の減縮を目的とする上記訂正事項aの訂正に伴うものであり、減縮された特許請求の範囲の記載と明細書の記載を整合させるために、明りょうでない記載の釈明を行うことを目的とする訂正に該当するものであり、しかも願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 2-3、独立特許要件 (ア)特許法第29条第1項第3号、同条第2項違反について (ア-1)、訂正後の請求項1〜5に係る発明 本件訂正明細書の請求項1〜5に係る発明は、訂正明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】粒径最高2mmを有する燐粒子からなり、燐粒子の表面に酸化安定剤の薄層が被覆されている安定した粉末状赤燐において、酸化安定剤の薄層は、水に難溶又は不溶の珪素、クロム、マンガン、ゲルマニウム、ジルコニウム、ニオブ、カドミウム、錫、鉛、ビスマス及び/又はセリウムの水酸化物少なくとも1種の第1層及びメラミンとホルムアルデヒドとの重縮合生成物の第2層からなる安定した粉末状赤隣。 【請求項2】酸化安定剤の全量は、赤燐の量に対して1.1〜25質量%である請求項1記載の安定した粉末状赤燐。 【請求項3】赤燐の量に対して、それぞれ金属水酸化物成分は0.1〜5質量%であり、メラミン/ホルムアルデヒド樹脂成分は1〜20質量%である請求項1又は2記載の安定した粉末状赤燐。 【請求項4】請求項1から3までのいずれか1項記載の安定した粉末状赤燐を製造する方法において、赤燐の水懸濁液に水溶性金属塩を添加し、それぞれの金属水酸化物の最適沈殿条件によるpH値4〜9を調節し、メラミンとホルムアルデヒドとからなる予縮合物の水溶液を添加した後に緊密に混合し、温度40〜100℃で0.5〜3時間反応させ、予縮合物を硬化させ、最後に燐粒子を濾過過した後に、高めた温度で乾燥することを特徴とする安定した粉末状赤燐の製造法。 【請求項5】最終乾燥を、窒素気流中で温度80〜120℃で行なう請求項4記載の方法。」 (ア-2)、引用刊行物の記載内容 当審が先に通知した取消理由通知に引用された刊行物1(特開昭60-141609号公報)には、赤リン含有組成物及びその製法が記載されており、特に次の事項が記載されている。 (a)「赤リン粒子が大きくても2mmの粒子寸法をもつ赤リン含有組成物において、二酸化チタンまたはリン酸チタンをチタンの重量として表示して0.05〜1.0重量%及び有機樹脂を0.1〜5.0重量%含有することを特徴とする赤リン粒子が大きくても2mmの粒子寸法をもつ赤リン含有組成物。」(請求項1) (b)「有機樹脂がエポキシ樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂あるいは尿素-ホルムアルデヒド樹脂である特許請求の範囲第1項記載の組成物。」(請求項2) (c)「有機樹脂を0.5〜3.0重量%含有する特許請求の範囲第1項または第2項記載の組成物」(請求項3) (d)「赤リンの粒子が大きくても2mmの粒子寸法をもつ赤リン粒子のスラリーにチタン化合物を添加し、スラリーのpHを2〜4に調節して赤リン粒子上にTiとして0.05〜1.0重量%の量の二酸化チタンまたはリン酸チタンの沈着を行ない;水溶性樹脂または水乳化性樹脂をスラリーに添加し、樹脂を赤リン粒子上に0.1〜5.0重量%の量で沈着させ、処理した赤リン粒子をスラリーから分離することからなる大きくても2mmの粒子寸法をもつ赤リン含有組成物の製法。」(請求項4) (e)「チタン化合物が硫酸チタンである・・・後略・・・」(請求項7) (f)「チタン化合物が硫酸チタンであり、・・・後略・・・」(請求項8) (g)「未硬化メラミン-ホルムアルデヒド樹脂または・・・中略・・・スラリー温度を80〜100℃に調節し、スラリーを0.5〜2時間にわたって撹拌することによって硬化した樹脂の沈着を行う・・・中略・・・製法。」(請求項10) (h)「分離した赤リン粒子を洗浄し、100〜130℃の温度で乾燥する・・・中略・・・の製法」(請求項12) (i)「赤リンの二酸化チタンによる処理は赤リン上に水酸二酸化チタンを沈着させるために水相中で行うことができる。この操作において.赤リン粒子を水中に懸濁させるのがよく、また得られたスラリーを約60℃〜約90℃、好ましくは約80℃に加熱する。加熱したスラリーを僅かに酸性のpHで所望の処理レベルを達成するために必要量の水溶性チタン塩、例えばリン酸チタンと徐々に混合する。次にスラリーのpHを約2〜約4の範囲に調節し、赤リン粒子上に水和した二酸化チタンを沈着させる。」(第4頁左上欄第6〜16行) (j)「樹脂沈着工程の完了後、処理した赤リンを例えばろ過により分別し、水洗し、減圧オーブン中で約100℃〜約130℃の温度で乾燥及び脱水を行う。」(第4頁左下欄第17〜20行目) (ア-3)、対比・判断 水酸化チタンは通常、酸化チタンの水和物を指すから、上記(i)の記載における「水和した二酸化チタン」は水酸化チタンと解される。してみると、上記(a)〜(j)の記載から、刊行物1には「赤リン粒子が大きくても2mmの粒子寸法をもつ赤リン含有組成物において、赤リン粒子上に水酸化チタンを沈着させ、次にメラミン-ホルムアルデヒド樹脂を沈着させてなる赤リン含有組成物。」が記載されていると云える(以下、刊行物1発明という。)。 訂正後の請求項1に係る発明(以下、訂正発明1という。)と刊行物1発明とを対比すると、両者は、訂正発明1では、第1層として水酸化チタンが除かれているのに対して、刊行物1発明では、第1層が水酸化チタンである点で相違する。 したがって、訂正発明1は刊行物1発明であるとは云えない。 また、訂正発明1の第1層の成分である珪素、クロム、マンガン、ゲルマニウム、ジルコニウム、ニオブ、カドミウム、錫、鉛、ビスマス及び/又はセリウムの水酸化物が水酸化チタンと同じように赤燐の酸化安定度を向上するということが刊行物1には記載も示唆もされておらず、またこのことが周知の事項であるとも云えないので、訂正発明1は刊行物1発明に基いて当業者が容易に想到し得るものであるとすることはできない。 また、訂正後の請求項2〜5に係る発明は、実質的に請求項1に係る発明を引用しさらに限定する発明であるから、訂正発明1についてと同じ理由で、刊行物1発明であるとは云えず、また、刊行物1発明に基いて当業者が想到し得るものであるとすることもできない。 2-3、まとめ 以上のとおり、訂正後の請求項1〜5に係る発明は特許出願の際、独立して特許を受けることができるものである。 上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び第3項において準用する第126条第2〜4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3、特許異議申立てについて 3-1、申立ての理由の概要 特許異議申立人は、証拠方法として甲第1号証を提出し、請求項1〜5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、請求項1〜5に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである旨主張している。 3-2、甲号各証の記載内容 甲第1号証は、上記刊行物1と同じ。 3-3、本件発明 本件請求項1〜5に係る発明は、上記(ア-1)において摘記したとおりのものである。 3-4、対比・判断 上記(ア-3)で述べたように、請求項1〜5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるとすることはできない。 4、むすび 以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件請求項1〜5に係る発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1〜5に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 したがって、本件請求項1〜5に係る発明の特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。 よって、平成6年改正法附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により上記のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 安定した粉末状赤燐並びにその製造法 (57)【特許請求の範囲】 1.粒径最高2mmを有する燐粒子からなり、燐粒子の表面に酸化安定剤の薄層が被覆されている安定した粉末状赤燐において、酸化安定剤の薄層は、水に難溶又は不溶の珪素、クロム、マンガン、ゲルマニウム、ジルコニウム、ニオブ、カドミウム、錫、鉛、ビスマス及び/又はセリウムの水酸化物少なくとも1種の第1層及びメラミンとホルムアルデヒドとの重縮合生成物の第2層からなる安定した粉末状赤燐。 2.酸化安定剤の全量は、赤燐の量に対して1.1〜25質量%である請求項1記載の安定した粉末状赤燐。 3.赤燐の量に対して、それぞれ金属水酸化物成分は0.1〜5質量%であり、メラミン/ホルムアルデヒド樹脂成分は1〜20質量%である請求項1又は2記載の安定した粉末状赤燐。 4.請求項1から3までのいずれか1項記載の安定した粉末状赤燐を製造する方法において、赤燐の水懸濁液に水溶性金属塩を添加し、それぞれの金属水酸化物の最適沈殿条件によるpH値4〜9を調節し、メラミンとホルムアルデヒドとからなる予縮合物の水溶液を添加した後に緊密に混合し、温度40〜100℃で0.5〜3時間反応させ、予縮合物を硬化させ、最後に燐粒子を濾過した後に、高めた温度で乾燥することを特徴とする安定した粉末状赤燐の製造法。 5.最終乾燥を、窒素気流中で温度80〜120℃で行なう請求項4記載の方法。 【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、粒径最高2mmを有する燐粒子からなる安定した粉末状流動性赤燐並びにその製造法に関する。 従来の技術 赤燐は、周知のように黄燐を安定な赤色の変形体に変換して得られる。黄燐含量0.5〜1.5質量%を有する粗製の赤燐は、反応終了後にちみつな物質を形成する。これは不活性ガス雰囲気下に粉砕し、水懸濁液中で希苛性ソーダ溶液と煮沸して黄燐を除去する[参照:Ullmanns Encyklopaedie der technischen Chemie,第3版、第13巻(1962年)、燐編、第517/518頁、ウルバン(Urban)及びシュバルツェンベルヒ(Schwarzenberg)社刊、ミュンヘン/ベルリン]。最近変換は回転反応器で行ない、赤燐は粉末として生じる。反応器から取出した赤燐の水懸濁液(ヨーロッパ特許第0015384号明細書)は、撹拌容器中で蒸気で加熱し、苛性ソーダ溶液を少量づつ添加して黄燐の残留成分約0.1質量%を除去する。 赤燐は、花火の製造並びにマッチの摩擦面で必要であり、プラスチック、例えばポリアミド又はポリウレタンの火炎保護剤として使用される。 周知のように、湿った雰囲気中では赤燐の表面で化学反応が行なわれ、この反応で酸化及び不均化により異なっている酸化工程(+1〜+5)の燐酸及び燐化水素が形成する。 それ故、赤燐の不十分な酸化安定度を安定にして改良する課題が存在する。 この場合安定化とは、赤燐に大気の影響に対して十分な保護が得られ、このようにして、例えば保存及び更に処理する場合に、燐のオキソ酸及び燐化水素のわずかな形成である方法である。 赤燐を安定にするためには、既に水酸化アルミニウムが提案された[参照:Gmelins Handbuch der anorganischen Chcmie、第8版(1964年)、燐編、B部、第83頁、ヘミー(Chemie)社刊、ワインハイム/ベルクシュトラーセ]。後者の方法は、55〜60℃に加熱した酸性炭酸ナトリウム及び硫酸アルミニウムの10%の水溶液を、燐粒子に連続的に添加して沈澱させる。次いで水懸濁液を濾過し、濾過残渣を乾燥する。この方法は、十分な安定化効果を得るために所望される大量の水酸化アルミニウムを使用しなければならないので、燐は種々の使用分野でのその使用に関して許容されない程度で不純化する欠点を有する。 赤燐を安定にする他の方法(米国特許第2359243号明細書)は、赤燐を0.04N-アルミン酸ナトリウム水溶液に懸濁させることを考慮し、これによれば空気を懸濁液に85〜90℃で10時間通じ、濾過し、熱湯で洗浄し、真空中で乾燥する。 更に、米国特許第2635953号明細書からは、赤燐を安定にするために水酸化アルミニウム以外に水酸化亜鉛又は-マンガンを使用することも公知である。 最後にドイツ公開特許第2813151号によって、赤燐を安定にするために、水酸化アルミニウムと水酸化鉛とからなる混合物を使用することが提案される。 従来の前記方法は、最小量の安定剤で酸化に対する赤燐の十分な安定化を保証することは不適当である。即ち、これらの公知酸化安定剤は熱に不安定な欠点を有する。それというのもこれらの安定剤は、高温度で水を脱離するからである。 しかしながら赤燐を火炎保護剤として含有する(この場合赤燐自体が酸化剤を含有する)プラスチックの押出加工では、酸化安定剤は熱に安定であり、温度300℃以上では水を脱離せず、分解しないことが絶対必要である。 最後に挙げたこの欠点は、ドイツ公開特許第2622296号に記載の安定化法にもあてはまる。この場合安定化効果は、わずかな量の種々の酸性正燐酸エステルの金属塩を、赤燐の表面に沈澱させて得られる。 多くの使用分野に対して不十分な酸化安定性は、安定剤としてドイツ公開特許第2631532号による正燐酸の金属塩を使用する場合にも生じる。 ドイツ公開特許第2647093号又は第2632296号によるホスホン酸及びホスフィン酸の金属塩によって、十分な熱及び酸化の安定性が得られるが、このためには比較的高価なホスホン酸又はホスフィン酸約3〜5質量%が必要である。 赤燐の酸化安定性の有効な改良は、ドイツ特許第2655739号明細書及びドイツ公開特許第2705042号に相応して、メラミン/ホルムアルデヒド樹脂の薄層を、赤燐粒子の表面に被覆して得ることもできる。しかしながらこの安定化剤は、不十分であることが判明し、安定化効果としては、安定化燐を熱帯性条件下、即ち湿気/熱保存試験で行なわれる50℃及び空気の相対湿度100%で保存すると著しく失われる。 ドイツ特許第2625674号明細書には、プラスチックの加工温度及びわずかな量の水又は湿気の存在に基づいて、加工すべきプラスチックに対して燐化水素が遊離しないで、赤燐のプラスチックヘの使用が可能な方法が記載されている。この方法は燐粒子をとりまくエポキシド樹脂を包含し、その際樹脂成分は5〜50質量%である。 最後に、ドイツ特許第2945118号明細書には、粒径最高2mmを有する燐粒子及び酸化安定剤からなる安定した粉末状赤燐が請求されている。この中ではエポキシド樹脂と水酸化アルミニウムとからなる混合物が使用され、酸化安定剤は燐粒子を薄層の形で被覆している。 意外なことにも、前記刊行物-即ちドイツ特許第2655739号明細書及びドイツ公開特許第2705042号-により、メラミン/ホルムアルデヒド樹脂を被覆して安定にした赤燐の酸化安定度は、共安定剤として金属水酸化物を使用してなお著しく改良することができることが判明した(後記第2表参照、本発明による例10〜13)。 発明が解決しようとする課題 本発明の課題は、粒径最高2mmを有する燐粒子からなり、燐粒子の表面に酸化安定剤の薄層が被覆されており、その際酸化安定剤の薄層は、水に難溶又は不溶の、珪素、クロム、マンガン、ゲルマニウム、ジルコニウム、ニオブ、カドミウム、錫、鉛、ビスマス及び/又はセリウムの水酸化物少なくとも1種及びメラミンとホルムアルデヒドとの重縮合生成物の第2層からなる安定した粉末状赤燐である。この場合酸化安定剤の全量は、赤燐の量に対して1.1〜25質量%である。殊に赤燐の量に対して、それぞれ金属水酸化物成分は0.1〜5質量%であり、メラミン/ホルムアルデヒド樹脂成分は1〜20質量%である。 安定した粉末状赤燐を製造する方法は、赤燐の水懸濁液に水溶性金属塩を添加し、それぞれの金属水酸化の最適沈澱条件によるpH値4〜9を調節し、メラミンとホルムアルデヒドとからなる予縮合の水溶液を添加した後に、混合物を緊密に混合し、温度40〜100℃で0.5〜3時間反応させ、予縮合物を硬化させ、最後に燐粒子を濾過した後に、高温度で乾燥することである。 好ましくは最終乾燥は、窒素気流中で温度80〜120℃で行なわなければならない。 予縮合物のメラミン:ホルムアルデヒドのモル比は、本発明によれば1:1〜1:6、好ましくは1:1.2〜1:1.8である。 本方法を実施するためには、市場で得られる原料を使用した。この場合個々には、次の生成物である: (1)に挙げた生成物は、75%の水溶液の形の1部分エーテル化したメラミン/ホルムアルデヒド樹脂であり、これは動的粘度300〜500mpa.s(23℃)、pH8.2〜9.2(23℃)及び密度1.20〜1.25g/ml(23℃)を有する。 (2)に挙げたメラミン/ホルムアルデヒド樹脂は、非硬化状態で粉末であり、その50%の水溶液は動的粘度約30mpa.s(20℃)、pH9〜10(20℃)及び密度1.21〜1.23g/ml(20℃)を有する。 (3)に挙げた硬化促進剤はアミン水溶液であり、これはpH6.2〜7.0(20℃)、密度1.16〜1.17g/ml(20℃)及び屈折率1.392〜1.400(25℃)を有する。 酸化安定性の測定。 酸化安定性の測定は、湿気/熱一保存試験によって行なった。 このためには、赤燐5.0gを直径50mmを有する結晶皿中に秤量し、皿を密閉ガラス容器中で50℃及び空気の相対湿度100%で168時間保存した。この場合に形成した燐化水素を、空気気流(10 1/hr)によってガラス容器から駆出し、ガス洗浄ビン中で2.5質量%の塩化水銀(II)溶液と反応さ )試験管を用いて“燐化水素50/a”を検出する。 燐の種々のオキソ酸の含量を測定するためには、燐の試料を250mlのビーカに入れ、1%の塩酸200mlを加え、10分間加熱して沸騰させ、続いて濾過した。次いで濾液で酸に可溶の燐の測定を、測光によりモリブダトーバナダート-燐酸方法によって行なった。 酸に可溶の燐の出発値を測定するためには、赤燐に同じ分析法を、前記湿気/熱-保存を有しないで施す。 実施例 例1(比較例) 赤燐250gの含量を有する燐水懸濁液500mlを、ガラスからなる21の撹拌反応器中で水250mlで希釈し、60℃に加熱した。次いで水酸化アルミニウム2.0gを20%の苛性ソーダ溶液20mlに溶解し、赤燐懸濁液に添加した。5%の硫酸を添加して、pH8を調節した。続いて懸濁液を60℃で1時間撹拌した。 懸濁液、濾過残渣を水で洗浄し、窒素気流中で100℃で乾燥した。分析で、水酸化アルミニウム含量0.79%を測定した。 酸化安定性の値は、第1表に記載されている。 例2(比較例) 例1と同じようにして操作するが、水酸化アルミニウム3.0gを使用した。分析で、水酸化アルミニウム含量1.18%を測定した。 酸安定性の値は、第1表に記載されている。 例3(比較例) 例1と同じようにして操作するが、水酸化アルミニウム5.0gを使用した。 分析で、水酸化アルミニウム含量1.94%を測定した。 酸化安定性の値は、第1表に記載されている。 例4(比較例) 赤燐250gの含量を有する燐水懸濁液500mlを、ガラスからなる21の撹拌反応器中で水500mlで希釈し、60℃に加熱した。5%の燐酸を添加し う1度5に調整した。温度60℃で1時間撹拌した後に、懸濁液を濾過した。濾過残渣を水で洗浄し、窒素気流中で100℃で乾燥した。 赤燐のメラミン/ホルムアルデヒド樹脂成分は6.1%であった。これは樹脂の収率58%に相応する。 酸化安定性の値は、第1表に記載されている。 例5(比較例) 赤燐のメラミン/ホルムアルデヒド樹脂成分は13.7%であった。これは樹脂の収率61%に相応する。 酸化安定性の値は、第1表に記載されている。 例6(比較例) 赤燐のメラミン/ホルムアルデヒド樹脂成分は5.3%であった。これは樹脂の収率75%に相応する。 酸化安定性の値は第1表に記載されている。 例7(比較例) 赤燐のメラミン/アルデヒド樹脂成分は10.7%であった。これは樹脂の収率71%に相応する。 酸化安定性の値は第1表に記載されている。 例8(参考) 赤燐250gの含量を有する燐水懸濁液500mlを、ガラスからなる21の撹拌反応器中で水250mlで希釈し、60℃に加熱した。次いで硫酸アルミニウムAl2(SO4)3・18H2O 12.5gを水100mlにとかした溶 durit MW815 31gを滴加した。温度60℃で2時間反応させた後に濾過した。濾過残渣を水で洗浄し、窒素気流中で100℃で乾燥した。 分析で、水酸化アルミニウム含量1.16%及びメラミン/ホルムアルデヒド樹脂含量7.2%を測定した。これは樹脂の収率77%に相応する。 酸化安定性の値は、第1表に記載されている。 例9(参考) MW 815 45gを使用した。 分析で、水酸化アルミニウム含量1.53%及びメラミン/ホルムアルデヒド樹脂含量9.8%を測定した。これは樹脂の収率72%に相応する。 酸化安定性の値は、第1表に記載されている。 例10(参考) MW 909 27gを使用した。 分析で水酸化アルミニウム含量0.94%及びメラミン/ホルムアルデヒド樹脂含量7.7%を測定した。これは樹脂の収率72%に相応する。 酸化安定性の値は、第1表に記載されている。 例11(参考) MW 909 35gを使用した。 分析で水酸化アルミニウム含量1.63%及びメラミン/ホルムアルデヒド樹脂含量10.2%を測定した。これは樹脂の収率74%に相応する。 酸化安定性の値は、第1表に記載されている。 例12(比較例) 例1と同じようにして操作するが、水100mlにとかした硫酸亜鉛(ZnSO4/・7H2O)7.5gを使用した。 分析で水酸化亜鉛含量0.91%測定した。 酸化安定性の値は、第2表に記載されている。 例13(比較例) 例1と同じようにして操作するが、硫酸亜鉛15gを使用した。 分析で、水酸化亜鉛含量1.75%を測定した。 酸化安定性の値は、第2表に記載されている。 例14(比較例) 例1と同じようにして操作するが、硫酸亜鉛37.5gを使用した。 分析で、水酸化亜鉛含量4.65%を測定した。 酸化安定性の値は、第2表に記載されている。 例15(参考) 物の沈澱及びメラミン樹脂の縮合は、燐酸懸濁液のpH7で行なった。 分析で、水酸化亜鉛含量0.96%及びメラミン/ホルムアルデヒド樹脂含量8.7%を測定した。これは樹脂の収率81%に相応する。 酸化安定性の値は、第2表に記載されている。 例16(参考) 例15と同じようにして操作するが、硫酸亜鉛15gを添加した。 分析で水酸化亜鉛含量1.92%及びメラミン/ホルムアルデヒド樹脂含量9.3%を測定した。これは樹脂の収率83%に相応する。 酸化安定性の値は、第2表に記載されている。 例17(本発明による) 例15と同じようにして操作するが、塩化錫(II)7.5gを使用した。 分析で水酸化錫(II)含量1.87%及びメラミン/ホルムアルデヒド樹脂含量9.3%を測定した。これは樹脂の収率88%に相応する。 酸化安定性の値は、第3表に記載されている。 例18(本発明による) 例15と同じようにして操作するが、塩化錫(II)11gを使用した。 分析で、水酸化錫(II)含量2.73%及びメラミン/ホルムアルデヒド樹脂9.1%を測定した。これは樹脂の収率89%に相応する。 酸化安定性の値は、第3表に記載されている。 例19(比較例) 例1と同じようにして操作するが、硝酸セリウム(III)、Ce(NO3)3・6H2O9.0gを使用した。 分析で、水酸化セリウム(III)含量1.14%を測定した。 酸化安定性の値は、第4表に記載されている。 例20(比較例) 例1と同じようにして操作するが、硝酸セリウム(III)21.3gを使用した。 分析で水酸化セリウム(III)含量2.36%を測定した。 酸化安定性の値は、第4表に記載されている。 例21(本発明による) Madurit MW 909 34gを使用した。金属酸化物の沈澱及びメラミン樹脂の縮合は、燐酸懸濁液のpH8で行なった。 分析で、水酸化セリウム(III)含量1.02%及びメラミン/ホルムアルデヒド樹脂含量10.0%を測定した。これは樹脂の収率74%に相応する。 酸化安定性の値は、第4表に記載されている。 例22(本発明による) 例21と同じようにして操作するが、硝酸セリウム(III)11.4gを使用した。 分析で、水酸化セリウム(III)含量1.96%及びメラミン/ホルムアルデヒド樹脂含量9.7%を測定した。これは樹脂の収率76%に相応する。 酸化安定性の値は、第4表に記載されている。 例23(比較例) 例1と同じようにして操作するが、硫酸マンガン(II)、MnSO4・H2O 5.0gを使用した。 分析で、水酸化マンガン(II)含量1.00%を測定した。 酸化安定性の値は、第5表に記載されている。 例24(比較例) 例1と同じようにして操作するが、硫酸マンガン(II)25gを使用した。 分析で、水酸化マンガン(II)含量4.75%を測定した。 酸化安定性の値は、第5表に記載されている。 例25(本発明による) MW 909 35gを使用した。 金属水酸化物の沈澱及びメラミン樹脂の縮合は、燐酸のpH9で行なった。 分析で、水酸化マンガン(II)含量0.94%及びメラミン/ホルムアルデヒド樹脂含量9.0%を測定した。これは樹脂の収率69%に相応する。 酸化安定性の値は、第5表に記載されている。 例26(本発明による) 例25と同じようにして操作するが、硫酸マンガン(II)15gを使用した。 分析で、水酸化マンガン(II)含量2.82%及びメラミン/ホルムアルデヒド樹脂含量8.9%を測定した。これは樹脂の収率71%に相応する。 酸化安定性の値は、第5表に記載されている。 例27(比較例) 例1と同じようにして操作するが、45%の珪酸ナトリウム溶液20gを使用した。 分析で、水酸化珪素含量1.09%(SiO2として計算)を測定した。 酸化安定性の値は、第6表に記載されている。 例28(比較例) 例1 と同じようにして操作するが、45%の珪酸ナトリウム溶液85gを使用した。 分析で、水酸化珪素含量4.03%(SiO2として計算)を測定した。 酸化安定性の値は、第6表に記載されている。 例29(本発明による) 例15と同じようにして操作するが、45%の珪酸ナトリウム溶液20gを使用した。 分析で、水酸化珪素含量1.02%(SiO2として計算)及びメラミン/ホルムアルデヒド樹脂含量8.6%を測定した。これは樹脂の収率80%に相応する。 酸化安定性の値は、第6表に記載されている。 例30(本発明による) 例15と同じようにして操作するが、45%の珪酸ナトリウム溶液50gを使用した。 分析で、水酸化珪素含量2.44%(SiO2として計算)及びメラミン/ホルムアルデヒド樹脂含量8.2%を測定した。これは樹脂の収率75%に相応する。 酸化安定性の値は、第6表に記載されている。 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 特許第2759077号発明の明細書を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに、すなわち、特許請求の範囲の減縮を目的として、 ア、訂正事項a 請求項1中の「珪素、チタン、クロム、マンガン、ゲルマニウム、ジルコニウム、ニオブ、カドミウム、錫、鉛、ビスマス及び/又はセリウム」を、「珪素、クロム、マンガン、ゲルマニウム、ジルコニウム、ニオブ、カドミウム、錫、鉛、ビスマス及び/又はセリウム」と訂正する。 さらに、明りょうでない記載の釈明を目的として、 イ、訂正事項b 明細書中の「珪素、チタン、クロム、マンガン、ゲルマニウム、ジルコニウム、ニオブ、カドミウム、錫、鉛、ビスマス及び/又はセリウム」(特許公報第3頁第5欄第3〜5行)を、「珪素、クロム、マンガン、ゲルマニウム、ジルコニウム、ニオブ、カドミウム、錫、鉛、ビスマス及び/又はセリウム」と訂正する。 |
異議決定日 | 2000-04-04 |
出願番号 | 特願昭63-72184 |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YA
(C01B)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 大工原 大二 |
特許庁審判長 |
石井 勝徳 |
特許庁審判官 |
唐戸 光雄 野田 直人 |
登録日 | 1998-03-20 |
登録番号 | 特許第2759077号(P2759077) |
権利者 | クラリアント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング |
発明の名称 | 安定した粉末状赤燐並びにその製造法 |
代理人 | 久野 琢也 |
代理人 | 山崎 利臣 |
代理人 | 矢野 敏雄 |
代理人 | 久野 琢也 |
代理人 | 山崎 利臣 |
代理人 | 矢野 敏雄 |