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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C04B
管理番号 1018288
異議申立番号 異議2000-70258  
総通号数 13 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-03-05 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-01-25 
確定日 2000-06-28 
異議申立件数
事件の表示 特許第2923838号「固結用材料」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2923838号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 1.本件の経緯
本件特許第2923838号は、平成6年8月12日に出願され、平成11年5月7日に設定登録され、同年7月26日に特許公報に掲載されたところ、平成12年1月25日に金田三郎から特許異議の申立を受けたものである。
2.本件発明
本件発明は、本件特許公報に掲載されたとおりの次のものである。
[請求項1]モル比2.8以下の低モル比水ガラスと、微粒子スラグと、シリカフュームおよび微粒子フライアッシュの群から選ばれた一種または複数種とからなり、前記微粒子スラグおよび微粒子フライアッシュがそれぞれ平均粒径約10μm以下、比表面積約5000cm2/g以上である固結用材料。
[請求項2]請求項1の固結用材料にさらにアルカリ材を添加してなる請求項1の固結用材料。
[請求項3]前記アルカリ材がアルミン酸ナトリウムである請求項2の固結用材料。
[請求項4]水ガラスと、微粒子スラグとシリカフュームおよび微粒子フライアッシュの群から選択された一種または複数種と、アルカリ材とからなり、前記水ガラスとアルカリ材に含まれるSiO2とNa2Oのモル比(SiO2/Na2O)が2.8以下であり、前記微粒子スラグおよび微粒子フライアッシュがそれぞれ平均粒径約10μm以下、比表面積約5000cm2/g以上である固結用材料。
[請求項5]請求項4のSiO2とNa2Oのモル比(SiO2/Na2O)が2.5以下である請求項4の固結用材料。
3.特許異議申立人の主張
特許異議申立人金田三郎は、甲第1〜3号証を提出して次のような主旨の主張をしている。
「本件請求項1〜5に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。」
4.特許異議申立人の主張についての検討
甲第1号証(特開平5-98257号公報)には、「シリカ化合物の単独または複数種と、アルミン酸アルカリ金属塩溶液と、多価金属化合物(ただし、シリカ化合物として水ガラス単独を用いる場合は、多価金属化合物としてアルカリ土金属の炭酸塩は除外する)とからなる地盤注入用薬液。」(特許請求の範囲の請求項1)および「請求項1の薬液において、[SiO2]/[Me2O]<2.5、および、[SiO2]/[Al2O3]>5の条件を同時に満足するように調整した地盤注入用薬液。ここで[SiO2]は、混合液中のSiO2のモル濃度(モル/l)、[Me2O]は混合液中のシリカ化合物とアルミン酸アルカリ金属塩溶液中に含まれるアルカリ金属(Me)酸化物のモル濃度(モル/l)、[Al2O3]は混合液中のAl2O3のモル濃度(モル/l)を表す。」(特許請求の範囲の請求項2)が記載されており、また、その[0008]段落には、「本発明に用いられるシリカ化合物としては、水ガラス、スラグ、シリカフュームの他に珪藻土、フライアッシュ、ホワイトカーボン、珪華、白土類等が挙げられる。」(第2欄29〜32行)と記載されている。
しかしながら、その第4欄4行から15行には、実施例で使用する材料として、
「(1)シリカ化合物
代表的なシリカ化合物として次に示す水ガラス、スラグ、シリカフュームの3種類を使用する。
(a)水ガラス
Na2O:9.45%、SiO2:28.36%、比重(20℃):1.399、モル比:3.10
(b)スラグ
SiO2:36.6%、CaO:43.8%、Al2O3:11.0%,その他:(MgO、FeO等)、比重:3.2
(c)シリカフューム
SiO2:97%、比重(20℃):2.2」
と記載されているだけで、甲第1号証には、モル比3.10の水ガラスを使用することは示されているものの、モル比2.8以下の低モル比の水ガラスを使用することは示されていないし、また、使用するスラグの平均粒径や比表面積についても示すところはないし、さらに、シリカ化合物として、水ガラスとスラグとシリカヒュームの三者を同時に使用する実施例も示されていない。
そして、特許異議申立人は、本件請求項1に係る発明に関し、特許異議申立書第8頁6〜24行において、「甲第1号証と本件請求項1に係る発明は、固結用材料として、水ガラス、スラグ、シリカフューム、フライアッシュのシリカ化合物の群から選ばれた1種または複数種を用いる点は同じであるものの、同号証には、用いるスラグ及びフライアッシュの平均粒径と比表面積についての具体的な物性値が記載されていない。この点について考察すると、甲第2号証には、比表面積約5000cm2/g以上の微粒子スラグに相当するものが記載されており、また、甲第3号証には、平均粒子径が10μm以下の微粒子フライアッシュに相当するものが記載されているから、本件請求項1に係る発明の「微粒子スラグおよび微粒子フライアッシュがそれぞれ平均粒子径約10μm以下、比表面積5000cm2/g以上である」という構成要件は、甲第2号証および甲第3号証の教示に基づいて、甲第1号証のスラグ及びフライアッシュの物性値を単に特定したにすぎず別段新規なところがない。」という趣旨の主張をし、また、本件請求項4に係る発明に関しても、同書第9頁19〜24行で同趣旨の主張をしているが、本件請求項1の「モル比2.8以下の低モル比水ガラスと、微粒子スラグと、シリカフュームおよび微粒子フライアッシュの群から選ばれた一種または複数種とからなり」という記載は、分析すると、「1.『モル比2.8以下の低モル比水ガラス』と、2.『微粒子スラグ』と、3.『シリカフュームおよび微粒子フライアッシュの群から選ばれた一種または複数種』と『からなり』」ということであって、『モル比2.8以下の低モル比水ガラス』と『微粒子スラグ』と『シリカフュームおよび微粒子フライアッシュの群から選ばれた一種または複数種』は、1〜3のものとして括られて『からなり』に係るものであり、水ガラスと微粒子スラグはそれぞれ必須成分であり、更に、シリカフュームと微粒子フライアッシュは、それらの群から選ばれた一種または複数種とからなる成分を必須成分とするものである。また、本件請求項4の「水ガラスと、微粒子スラグとシリカフュームおよび微粒子フライアッシュの群から選択された一種または複数種と、アルカリ材とからなり」という記載は、分析すると、「1.『水ガラス』と、2.『微粒子スラグ』と3.『シリカフュームおよび微粒子フライアッシュの群から選択された一種または複数種』と、『アルカリ材』と『からなり』」ということであって、『水ガラス』と『微粒子スラグ』と『シリカフュームおよび微粒子フライアッシュの群から選択された一種または複数種』と『アルカリ材』は、1〜4のものとして括られて『からなり』に係るものであり、水ガラスと微粒子スラグとアルカリ材はそれぞれ必須成分であり、更に、シリカフュームと微粒子フライアッシュは、それらの群から選ばれた一種または複数種とからなる成分を必須成分とするものである。このような解釈は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載、例えば段落[0001]、[0007]、[0008]、[0016]、[0041]等の記載と矛盾するものでもない。
そうすると、上述のように、甲第1号証には、シリカ化合物として、水ガラスとスラグとシリカヒュームの三者を同時に使用する例が具体的に示されていないのであるから、甲第1号証と本件請求項1に係る発明や本件請求項4に係る発明は、固結用材料として、水ガラス、スラグ、シリカフューム、フライアッシュのシリカ化合物の群から選ばれた1種または複数種を用いる点は同じであるとする特許異議申立人の主張は誤りであって、甲第1号証には、モル比2.8以下の低モル比の水ガラスを使用することは示されていないこと、また、使用するスラグおよびハライアッシュの平均粒径や比表面積についても示すところがないことに関してさらに論じるまでもなく、本件請求項1に係る発明、その発明を引用している本件請求項2〜3に係る発明、本件請求項4に係る発明、および本件請求項4に係る発明を引用している本件請求項5に係る発明はそれぞれ、甲第1号証に記載された発明であるとは認められない。
なお、甲第2号証(特開平2-167848号公報)には、「注入材料」に関する発明が記載されており、その第2頁右上欄8〜12行には、「微粉スラグの粉末度は、水ガラスと反応して溶解し、注入性を向上させる面から、また、強度増進の面から、ブレーン8,000cm2/g以上が好ましく、8,000〜12,000がより好ましい。」と記載されており、また、甲第3号証(特開平4-356587号公報)には、「裏込め注入材」に関する発明が記載されており、その[0014]段落には、フライアッシュとして最大粒径2.5μのものを使用することが示されているものの、甲第2号証には微粉スラグの平均粒径、甲第3号証にはフライアッシュの比表面積が示されていないし、そしてそもそも、甲第2号証や甲第3号証では、それぞれその発明の事情に応じてそれに示される物性値の微粉スラグやフライアッシュを使用しているのであるから、それらの記載をもって、甲第1号証で使用するスラグ、フライアッシュの平均粒径や比表面積を論じることはできない。
また、甲第3号証の実施番号45には、水ガラスと消石灰とフライアッシュとスラグを同時に使用した例が示されているが、甲第3号証には、フライアッシュの比表面積、スラグの平均粒径と比表面積が示されていないから、結局、甲第3号証の実施番号45を基にしても、本件請求項1〜5に係る発明の新規性進歩性を否定することはできない。
してみると、本件請求項1〜5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるとは到底認められないから、特許異議申立人の主張は理由がない。
5.結び
以上のとおりであるから、特許異議の申立の理由および証拠によっては、本件請求項1〜5に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜5に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-06-06 
出願番号 特願平6-210778
審決分類 P 1 651・ 113- Y (C04B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 坂崎 恵美子  
特許庁審判長 石井 勝徳
特許庁審判官 唐戸 光雄
野田 直人
登録日 1999-05-07 
登録番号 特許第2923838号(P2923838)
権利者 強化土エンジニヤリング株式会社
発明の名称 固結用材料  

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