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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B01J |
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管理番号 | 1018301 |
異議申立番号 | 異議1999-70574 |
総通号数 | 13 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1991-02-19 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-02-22 |
確定日 | 2000-06-30 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2788494号の請求項1〜7項の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2788494号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 同請求項5ないし7に係る特許を維持する。 |
理由 |
(1) 手続きの経緯 本件特許2788494号の発明は、平成1年7月4日に出願され、平成10年6月5日に設定登録され、その後、特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年7月23日に訂正請求がなされたものであり、さらに、訂正拒絶理由通知がなされ、それに対して、意見書が提出されたものである。 (2) 訂正の適否 (訂正明細書の請求項1に係る発明) 訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、本件発明という)は、その特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものである。 「ディーゼルエンジン排ガス中のパティキュレートを構成するSOFを除去するためのハニカム状排ガス浄化構造体であって、 (A)横断面1平方インチ(2.54cm×2.54cm)当り100〜600個のガス流通孔を有し、かつ (B)その横断面の開孔率が40〜95%であるオープン式ハニカム担体に、 (C)該担体の容量1リットル当り、比表面積が50〜400m2/gのアルミナ、ジルコニア、チタニアおよびシリカから選ばれる少なくとも1種の耐火性無機酸化物を50〜400gの割合で担持してなり、かつ (D)構造体の容量がエンジン排気量1リットル当り0.3〜3リットルであることを特徴とする(E)ディーゼルエンジン排ガス中のパティキュレートを構成するSOFを除去するためのハニカム状排ガス浄化構造体。」 なお、符号(A)〜(E)当合議体が、便宜上付したものである。 (引用刊行物記載の発明) 本件発明に対し、当審が訂正拒絶理由通知において示した刊行物1(抄訳)には、次の事項が記載されている。 「この評価試験で使用した触媒は、Engelhard Minerals and Chemical Corporation のモデルPTX-D-616-300NKG白金排ガス浄化触媒であった。この触媒の詳細を次の表2に示す。この触媒コンバーターは典型的な酸化触媒の一つであり、近い将来ディーゼル車両に使用されるであろう。 表2 酸化触媒の明細 製造元 エンゲルハルト産業部 触媒成分 白金 ウォッシュコート アルミナ 基材の型 ラミナーフローモノリス基材のセル数 46.5セル/cm2基材のサイズ 直径14.6cmx長さ15.24cm 」(第111頁) また、表3には、使用されたエンジンはキャタピラー社の10.4 リットルのV-8エンジンであることが記載されている。さらに、SOFが上記触媒によって除去されることが、図12(第125頁)に示されている。 (対比・判断) 本件発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、 刊行物1には、セル数は1平方センチメートル当たり46.5個であると記載されているから、1平方インチに換算すると、約300個になり、本件発明の前記構成要件(A)と一致する。 刊行物1の表2には、この触媒がアルミナを担持していることが明記されており、また、アルミナの比表面積が50〜400m2/g,また,担体1リットル当たりのアルミナの担持量が50〜400gであることも当業者には慣用されている範囲であるから,構成要件(C)についても、実質的な相違があるとはいえない。 刊行物1の表3にはエンジン排気量が10.4リットルであること、また、表2には触媒の大きさが記載され、エンジン排気量(l)当たりの触媒の容積を計算すると、0.245リットルになり、構成要件(D)の0.3〜3リットルとは若干異なる。 刊行物1の表2には、触媒の型がラミナーフローモノリスであることが記載され、これが、ハニカム状構造体であることは自明であり、さらに、SOFを除去することも記載されているから、構成要件(E)とも一致する。 そうすると、両者は、次の点でのみ異なる。そして、この相違点については、訂正拒絶理由に対する意見書で特許権者も認めるところである。 相違点1:本件発明では、担体の開口率が40〜95%であるのに対し、刊行物1には、開口率が記載されていない点。 相違点2:本件発明では、構造体の容量をエンジン排気量1リットル当たり0.3〜3リットルであるのに対し、刊行物1では、0.245リットルである点。 これら相違点につき検討すると、ハニカム状排ガス浄化構造体の開口率を40〜95%することは周知であるから(例えば、SAE Technical Paper Series,800082,page3,1980参照)、相違点1は格別のものではない。 本件発明では、構造体の容量をエンジン排気量1リットル当たり0.3〜3リットルと規定しているが、容量はSOF除去効果の程度に応じて適宜設定できることであり、また、刊行物1に記載の0.245リットルという数値も一応の目安になると認められ、いずれにしても相違点2は格別な相違点とはいえない。 以上のとおり、本件発明は、上記刊行物1及び周知の事実に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (むすび) したがって、上記訂正請求は、特許法第120条の4第3項で準用する同第126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正請求は認められない。 (3) 特許異議申立てについての判断 (請求項1ないし7に係る発明) 請求項1ないし7に係る発明は、特許明細書の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次の事項によって特定されるとおりのものである。 【請求項1】横断面1平方インチ(2.54cm×2.54cm)当り100〜600個のガス流通孔を有し、かつその横断面の開孔率が40〜95%であるオープン式ハニカム担体に、該担体の容量1リットル当り、比表面積が50〜400m2/gアルミナ、ジルコニア、チタニアおよびシリカから選はれる少なくとも1種の耐火性無機酸化物を50〜400gの割合で担持してなるディーゼルエンジン排ガス中のパティキュレートを構成するSOFを除去するためのハニカム状排ガス浄化構造体。 【請求項2】耐火性無機酸化物のほかに白金、パラジウムおよびロジウムから選ばれる少なくとも1種の貴金属を担持してなる請求項1に記載の構造体。 【請求項3】ディーゼルエンジンの排ガスを請求項1のハニカム状排ガス浄化構造体に接触させて排ガス中のパティキュレートを構成するSOFを除去することを特徴とするディーゼルエンジン排ガス浄化方法。 【請求項4】ハニカム状排ガス浄化構造体の容量がエンジン排気量1リットル当り0.3〜3リットルである請求項3に記載の方法 【請求項5】請求項1のハニカム状排ガス構造体を高温酸素含有雰囲気下に置くことにより、構造体上のSOFを燃焼・分解させて再生することを特徴とする請求項1のハニカム状排ガス浄化構造体の再生方法。 【請求項6】構造体を加熱手段を用いて加熱して再生する請求項5に記載の方法。 【請求項7】構造体を高温排ガスと接触させて再生する請求項5に記載の方法。 ア.特許法第29条第2項違反について 当審が通知した取消理由に引用した刊行物1には、上記「訂正の適否」において示したとおりの発明が記載されている。 [請求項1に係る発明について] 請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明と、開口率の点でのみ相違し、開口率を40〜95%とすることは周知であるから、この相違点は当業者であれば容易になし得る。 [請求項2に係る発明について] 白金をさらに担持させることも上記刊行物1の表2に記載されているから、この発明も当業者が容易になし得る発明である。 [請求項3に係る発明について] 請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明を方法で表現したものに過ぎず、同様に容易になし得るものである。 [請求項4に係る発明について] 容量をエンジン排気量1リットル当たり0.3〜3リットルと規定することは、上記「訂正の適否」の判断で示したとおり、適宜なし得ることである。 [請求項5〜7に係る発明について] 請求項5〜7に係る発明は、「構造体を高温酸素含有雰囲気下に置くことにより構造体のSOFを燃焼・分解させて構造体を再生すること」を構成要件とするものであるが、特許異議申立人が提出した甲第1〜6号証には、かかる構成については記載も示唆もないから、請求項5〜7に係る発明は、甲第1または3号証に記載された発明ではなく、また、甲第1〜6号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものでもない。さらに、申立人は、本件明細書の特許請求の範囲に記載されている「パティキュレートを構成するSOFを除去するための」という記載の技術的意味が明瞭でないと、明細書の記載不備を指摘するが、発明の詳細な説明には、「パティキュレートに含まれる液状の高分子炭化水素からなる有機溶剤に可溶な成分(本発明においては、この成分をSOFという)」なる説明があり、前記表現はこの記載に対応したものであり、何ら特許請求の範囲を不明確にするものではない。 (むすび) 以上のとおり、本件請求項1〜4に係る発明は、刊行物1および周知の事実に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜4に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、本件請求項1ないし4に係る発明の特許は、平成6年附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。 また、本件請求項5〜7にかかる発明の特許については、他に取消理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2000-05-10 |
出願番号 | 特願平1-171095 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZE
(B01J)
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最終処分 | 一部取消 |
前審関与審査官 | 関 美祝 |
特許庁審判長 |
石井 勝徳 |
特許庁審判官 |
山田 充 新居田 知生 |
登録日 | 1998-06-05 |
登録番号 | 特許第2788494号(P2788494) |
権利者 | 株式会社日本触媒 |
発明の名称 | ハニカム状排ガス浄化構造体および該構造体を用いた排ガスの浄化方法 |